【PCゲームグッズLab.】
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発売中
価格:4,980円
ARTISANのサイト |
2008年末、株式会社グロウアップ・ジャパンはゲーミングブランドARTISANを立ち上げ、企画から生産まで国内で行なった純国産マウスパッド「SMART PAD ARTISAN Cloth Type」を発売した。初回生産数はごく少量で、ひっそりとしたデビューだった。
グロウアップ・ジャパンと言えば、静音HDDマウンタの「SMART DRIVE」シリーズが代表的な製品だろう。競合よりも若干高めな価格だが、その品質で静音派ユーザーの支持が厚く定番の製品となっている。
そんな同社がゲーミングデバイスを投入するということで、最良な製品を追求するハードコアなゲーマーの期待は高まった。最初の製品はマウスパッドということで、デバイス(装置的な意味で)と銘打たれていたことを考えると、肩すかしとも思えるが、今後の展開に期待を込めて紹介したい。
●SMART PADの滑りと安定感
今回取り上げるのは、前述のマウスパッドの幅広版「SMART PAD ARTISAN Cloth Type/WL」だ。発売は2月4日で価格は4,980円。
WLということで、サイズは450×300mm(幅×奥行き)とかなり大きい。低感度でマウスを使うユーザーがターゲットだ。厚さは3mm。昨年末に発売されたノーマルは250×230mm(同)と、フルキーボードの脇にも無理なくおけるサイズになっている。ちなみにノーマルの価格は2,980円だ。
SMART PAD ARTISAN Cloth Type/WLのパッケージ | パッケージはマウスパッドと紙のペラ1枚で最小限 |
サイズは450×300mmで会社で使うにはためらわれる大きさ。低感度でマウスを使うユーザーがターゲットだ。比較用のSteelSeries Qck miniは250×210mm | 厚さは3mmで重量感がある。Qckは2mm |
マウスパッドとは、マウスの滑りをよくするものである。具体的には、マウスの滑り出しに必要な力を抑え、かつマウスを狙ったポイントで止めやすくする。滑り出しのスムーズさと、止まりやすさ、その二律背反の特性をもったスペースをユーザーに提供する。だから、ゲーミングはもちろん、デスクワークでも、マウスパッドでマウス捌きをスムーズにできることに違いはない。
さて、SMART PADではそういったスペースを提供するに当たり、表面に日本製織り生地を、下地に日本製ゴムベースを採用しているという。さらに、一般的なソフトタイプのマウスパッドは熱圧縮処理が施されているが、これを行なわないことで表面の目地を均一に保っている。
触ってみると、表面はさらさらしていて、織物でありながら硬い感触。表面を拡大してみると、均一な折り目が粒だっていて、表面の硬さを裏付けている。この折り目と素材が、滑りやすく止まりやすい表面を実現しているわけだ。若干使い古したSteelSeriesと比較してみると、こちらは肌触りがソフトで、マウスの滑り出しがわずかに重たい。そしてマウスを切り返す時には、手首に若干の力が必要になる。これと比べると、SMART PADはキレがあると言えるだろう。が、どれほどのキレかと問われると定量的に表わすのは難しく、実際に手にとって確かめてもらいたい。
表面はさらさらしていてハードな感触 | さらに拡大してみると均一なサイズの目地になっている | 使い古したQck miniの表面はつぶれていて、その分柔らかい |
また、SMART PADは単純に滑りやすく止まりやすいわけではなく、表面を支えるラバーベース部分も素晴らしい。コシがあるため、パッド全体が歪んだりずれたりせず、常に一定の滑りを提供してくれる。これもやはり、日本製のゴムベースによるもので、細かな粒によるラバーが適度な弾力と硬さで表面を支えている。その背面はノンスリップを謳うメッシュ加工になっていて、その重量と合わせて滑ることはない。
マウスの滑りとパッドの安定感は高く、総じてSMART PADは良い素材を用いて作り込んである印象だ。
ラバーベース。下がSMART PAD、上がQck Mini | 背面はノンスリップを謳うメッシュ加工で安定し、滑らない |
●実際に使ってみる
Flashのミニゲーム「Shoot」 |
以上のように、SMART PADの特徴を踏まえた所で、Flashのミニゲーム「Shoot」で試してみた。これは移動する的をマウスカーソルで狙って撃つという単純なゲームである。結果はスコアとして表示される。
比較対象として、プライベートで使っているSteelSeries Qckを用いた。これは最近では量販店で入手可能になっており、定番的な製品と言っていいだろう。マウスはプライベートで使っているSteelSeriesのIkari Laserを用いた。
テストは最初に各マウスパッドで2回ずつ練習し、その後交互5回ずつ行なった。結果は下表の通り。ヒット数は命中した回数、Great確率は的の中心に命中した確率、スコアはそのまま得点の意味。
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SMART PAD ARTISAN Cloth Type | SteelSeries QcK mini | ||||
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ヒット数 | Great確率 | スコア | ヒット数 | Great確率 | スコア |
1回目 | 41 | 0.98 | 81 | 41 | 1 | 82 |
2回目 | 43 | 0.95 | 84 | 42 | 0.98 | 83 |
3回目 | 43 | 0.88 | 81 | 41 | 0.93 | 79 |
4回目 | 41 | 0.95 | 80 | 42 | 0.98 | 83 |
5回目 | 42 | 0.95 | 82 | 44 | 0.93 | 85 |
平均 | 42 | 0.942 | 81.6 | 42 | 0.964 | 82.4 |
結果、2つのマウスパッドでポイントに大きな差はなかった。それどころか、普段使っているQckの方がスコアが高い。端的に言って、習熟しているマウスパッドの方が成績が良かったが、その差はわずかだ。
多くのメーカーがしのぎを削ってよりよい製品を投入しているのだから、現状ではマウスパッドを換えたところで大きくポイントが上がらないのも当然のことだ。性能的に拮抗している、つまり必要十分な機能を提供しているのだ。
とはいえ、筆者のSMART PADへの習熟度が低いことや、そのパフォーマンスの高さを考えると、伸びしろはあると指摘できる。また、マウスのソールは主にフッ素系樹脂のテフロンが用いられているが、素材の配合率やサイズによって摩擦は大きく異なる。このあたりの相性やユーザーの好みなど、変動要素は十分にあるので、ユーザー各自で実際に試してパフォーマンス追求してもらいたい。
SMART PADはWLもノーマルも、価格的に他の製品と比べて一回り大きい設定だ。良質な表面に、コシのあるハードなゴムベースを組み合わせたことで、ハイレベルに作り込まれている。Artisan、すなわち「職人」の看板に偽りはない。パフォーマンス面では明確に他社の製品より抜き出るものではないが、今後展開を期待させるには十分な魅力を備えている。
同社は3月上旬に実際にマウスパッドを試用できるスペースARTISAN CRAFT WORKS」をオープンする予定だ。同社の今後の製品展開に期待したい。
□グロウアップ・ジャパンのホームページ
http://www.gup.co.jp/
□ARTISANのホームページ
http://www.artisan-gaming.jp/
(2009年3月2日)
[Reported by matuyama@impress.co.jp]