山田祥平のRe:config.sys

誰がためのテクノロジー




 地デジの普及により、これまでのテレビ視聴のスタイルを変えざるをえなくなりつつある。録画した番組を、任意のメディアにコピーし、好きなデバイスで、好きな場所で、好きなときに見るといったことは、もうできなくなってしまうのだろうか。

●下がる一方のストレージ容量単価

 PC Watchの調査によれば、東京・秋葉原では1TBのHDDベアドライブが、8,000円割れを記録し、1GBあたりの単価がついに7円台に達したそうだ。格安のDVD-Rでも数十円はするし、BD-Rなどを使おうものなら、単価はもっともっと高くなる。いや、単価もそうだが、二層のDVDにしたって容量が中途半端すぎてめんどうくさい。

 だから、巨大なファイルの保存には、単価の安いHDDを使いたい。実際、手元の環境では、録画した番組のファイルは、USB接続した大容量のHDDに保存し、容量がいっぱいになったところで、新しいHDDと入れ替えるという方法で保存している。どれを削除してどれを残すかなどということは考えない。

 ただ、こうした方法をとれたのは、アナログ地上波を録画したMPEGファイルだったからだ。大容量のHDDはGBあたりの単価も下がる一方なので、すこぶるリーズナブルだ。買い換えのときには、一回り上の容量のものが手頃な価格になっていることも期待できる。

 ところが地デジとなると、そうは問屋が卸さない。USB接続したHDDに録画済み番組を蓄積していっても、PCの買い換えなどで、そのファイルは再生できなくなってしまう。手元に残しておき、将来、見ようと思っていても、見ようと思った時点で、録画時の環境がなければ再生することができないのだ。

 今週は、アイ・オー・データ機器からUSB接続の地デジキャプチャアダプタ「GV-MVP/HZ2W」が発表され、Wチューナーになったことだし、そろそろ手を出そうかと思っていたのだが、今よりも、不便になるのかと思うと、購入をためらってしまう。もちろん、製品が悪いといっているわけではない。あのサイズでWチューナー搭載で、複数アダプタを同時接続可能と聞けば、専用にPCを1台用意しようかと思うくらいだ。

 このサイトを訪れる読者の多くは、PCに関しては、かなり野心的だと思う。おそらくは、2年程度で新しいPCに移行しているのではないだろうか。でも、その2年で、蓄積したデータがなくなってしまうのに等しいというのを、どう考えているのだろう。

 だったらBDレコーダーを使えばいいという案もある。BDレコーダーなら、専用機として5年程度は使い続けるだろう。だが1TB程度のHDDしか内蔵していない以上、本体に保存しておける番組はたかがしれている。結局は、残す番組はBDにということになってしまう。

 一方、バッファローが同社製品の「LT-H90DTV」にUSB接続のHDDに録画する機能を追加するという。これはリーズナブルだ。「裸族のお立ち台」とセットにでもして、廉価なベアドライブをストレージに使えば、無限に番組を保存していける。Wチューナーではないのが残念だが、そういう製品が出てくるのも時間の問題だろう。

 個人的にはソニーが「Xビデオステーション」の地デジ版を出して、外付けUSBストレージに番組を保存できるようにしてくれればそれでいいのだが、残念ながら、いっこうにその気配がない。

●SDメモリーカードの著作権保護機能がなぜ有効に使われないのだろう

 地デジで不便なのは、自宅における番組の保存だけではない。実質的に外に持ち出して視聴するのが著しく不便になるのだ。DVD-RやBD-Rに書き込んで、それを再生すればいいのだが、視聴するデバイスが、それを読めるドライブを搭載しているとは限らない。

 著作権保護の機能を持つメディアとしては、SDメモリーカードがあるはずで、こちらもGB単価は下がる一方で、容量もそれなりにある。でも、SDメモリーカードに地デジ番組を書き込み、外に持ち出して視聴するといったスタイルは、まだ、実現しそうな気配がない。

 外出先での一時的な視聴のために、SDメモリーカードに書き出してしまうと、ダビング回数が1回減算されてしまうということを懸念するかもしれない。でも、1回見ればそれでいいというような番組だったら、マイナス1は、そんなに気にならないんじゃないだろうか。もちろん、ゼロが理想だが大人の事情はそれを許さない。

 ある録画番組があって、それを持ち出そうとする場合、問題になるのは、別のメディアにコピーするために要する時間だ。1時間番組1本に10分程度なら待てるが、30分は長すぎる。

 結果として、コピーする時間が短くなるのであれば、トランスコードも歓迎するが、果たしてどうだろうか。家庭内のLANはまだまだ速くなるだろうし、プロセッサも高速になりトランスコードに要する時間も短くなる。大きなファイルのコピーには時間がかかるが、トランスコードが瞬時に終了すれば、ファイルは小さくなり短時間でコピーができる。トランスコードに時間がかかるのなら、高速なネットワークでストレージに丸ごと転送すればいい。うまい具合にイタチごっこで、時間が短くなればどちらの方法だってかまわないわけだ。

 現時点では、ファイルに何も手を加えず、ベタにコピーし、それを再生できるという段取りが合理的だ。そうした上で、SDメモリーカードなどに鍵の役割を持たせ、それが装着されたデバイスなら再生が可能というような機構は難しいのだろうか。microSDにでもコピーし、それを携帯電話やネットブックでも再生できるようになれば素晴らしい。あるいは、ネットワークから切り離された状態で、キャッシュされたデータをストリーム再生できるオフラインDTCP-IPのような仕組みは考えられないのだろうか。

 また、録画するレコーダーを買い換えても、あるSDメモリーカードとペアリングされた番組は、ストレージを問わず、そのSDメモリーカードさえレコーダーに装着すれば、必ず再生できるような仕組みがあれば、それなりに安心して使い続けることができるだろう。

 ストレージの容量あたり単価が安くなること、ネットワークの帯域が広がること、プロセッサの処理能力があがり、トランスコードが短時間でできること、セキュアなメディアで著作権が保護できること。これらはみんなテクノロジーの恩恵だ。

 こうしたテクノロジーが束になってかかっても、不便はのしかかってくる。消費者に強いられる不便には、大人の事情もあり、ある程度、仕方がない面もあるのだろう。でも、その不便をうまくベールに包み込み、結果として不便を意識しなくてもよいようにできなくて、何のためのテクノロジーかと思う。

□関連記事
【2007年1月26日】【山田】Vistaという木に竹をつなぐWindows Media Center
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0126/config143.htm
【2月28日】「ダビング10」とは何か。デジタル録画緩和策の実際(AV)
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080228/dub10.htm

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(2008年12月5日)

[Reported by 山田祥平]


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