Windows Mobileが勢いづいている。特に、HTC製端末のTouchシリーズの人気が高い。マイクロソフトがこの勢いを見逃すはずもなく、「Touch! Windows Mobileイベント」を開催、キャンペーンの実施を発表するなど積極的だ。そして、その縁の下の力持ちとなるはずなのが、新しくなるWindows Liveだ。 ●SIMフリーで海外でも格安運用 久しぶりに、Windows Mobile機を使ってみた。イー・モバイルから話題の機種ということで、HTC製の「Touch Diamond」をお借りして、海外出張時を含む2週間ほど評価させてもらった。 Windows Mobile機を使ってみていつも思うのは、これがどうしてWindowsなのだろうということだ。Microsoft Mobileというならわかるのだが、UIにウィンドウが介在しているという印象がほとんどない。それでもWindowsを冠するのは、やはり、Windowsというブランドには、きっと大きな威力があるということなのだろう。 Touch Diamondは、先行して発売したイー・モバイル以外にも、NTTドコモやソフトバンクからも発売が予定されている。イー・モバイル版は、同社が正式にサポートするわけではないが、SIMフリーが大きな特徴で、日本でイーモバイル網を利用する以外に、海外にでかけたときに、プリペイドなどのSIMカードを購入して端末にセットすれば、ローミングを利用するよりも、ずっと廉価に通話やデータ通信が楽しめる。 今回は、取材でロサンゼルスに出かけたので、現地でAT&TのSIMを25ドルで購入して装着した。これで、米国内での通話は1分あたり25セントとなり、ローミングで日本の通信事業者を利用するよりもかなり安上がりだ。ただし、かかってきた電話に関しても1分あたり25セントが必要となる。 また、AT&Tは、1カ月20ドルで、アンリミテッドのデータ通信サービスを提供しているので、今回はこのオプションも申し込み使ってみた。 Touch DiamondとPCの接続にはBluetoothを使った。ただし、同機はプロファイルとしてDUNを含まないので、インターネット接続共有を使う必要がある。接続のためには、端末側で接続共有を有効にし、PC側から接続操作をしなければならない。これでは、ポケットの中に端末を入れたまま、開いたノートPCを操作するだけで接続するという気軽さがない。そこで、インターネットを探してみたら、Windows Mobile用のDUNハックが見つかったので、それをインストールしたところ、快適にDUNプロファイルを使った接続ができるようになった。接続の際には、端末にAPNをセットする必要があるが、これは、モデムのプロパティで設定できる初期化コマンドで解決した。 ロサンゼルスは、3Gネットワークがとても不安定で、つながったりつながらなかったりした。つながっても、きわめて遅く使いものにならないなど不便が多かったが、PDCとWinHECの間に出かけたヨセミテ国立公園では、いつの間にかAT&Tの3Gネットワークが使えるようになっていて(ただし、AT&Tローミングするはずのドコモの端末では圏外だった)、バレーフロアと呼ばれる広い範囲で、実に快適にインターネットを楽しめた。 滞在中はほとんど土砂降りという不運な天候で、予定していたハイキングはできなかったのだが、次回は、ハーフドームの頂上にPCを持って上がってインターネットを使うなんてこともできそうだ。ただ、AT&Tのアンリミテッドデータ通信サービスが、今月で終了してしまうとのことで、20ドルで使い放題というわけにはいかないかもしれない。 ●Widnows Liveサービスがもたらすつながる環境 さて、肝心のTouch Mobileだが、何といっても、その98gという軽さがうれしい。本体の厚みも11.9mmしかなく、ポケットの中に入れておいてもほとんど気にならない。 Windows Mobileの取っつきにくさをうまく回避しようという姿勢も評価したい。いわゆるシェルとして、「TouchFLO 3D」と呼ばれるグラフィカルなタッチインターフェイスが用意され、電話、連絡先、インターネット、メール、音楽、写真といった機能を自由に操れるようになっている。ただ、ちょっと細かい操作をしようとすると、すぐに難解なWindows Mobileのインターフェイスに切り替わってしまうのが難点だ。その落差が大きすぎる。 カーナビなどでは、ベースにWindows CEを使っていても、そのルック&フィール、すなわちシェルやアプリケーションを自由に作り込め、ベンダーごとにとても同じベースであるとは思えない仕上がりになっているが、Windows Mobileでは、そうはいかないようで、TouchFLO 3Dもまた、アプリケーションの1つとして、Windows Mobileの標準的なUIを呼び出す手段にすぎないことがわかる。それでも、何もしないよりは、はるかにいい。 ハードウェアとしての端末はバッテリの持ちが気になる程度でおおむね良好だ。満充電で持ち出し、特にヘビーな使い方をしていなくても、その夜に充電を忘れようものなら、翌日はおそらく途中でダウンしてしまうので、毎晩の充電は必須といえる。 また、2.8型液晶にVGAという解像度には賛否両論あるだろう。視認性が高い低いという問題以前に、画面上のオブジェクトがあまりも小さすぎて操作のしにくさを感じることも多かった。スクロールバーの操作などを指で行なうのはたいへんで、付属のスタイラスを使わないと難しい。だからこそ、タッチで操作できるGUIとしてTouchFLO 3Dが用意されているのだが、その世界ですべてを完結できるかというと、まだ、作り込みが足りないように思う。iPhoneやiPod touchがハーフVGAという解像度で、それなりにリッチな操作性を提供しているのと比べると、もう少し、できることがあるんじゃないだろうか。 そのWindows Mobileだが、メールにしても予定表にしても、企業などで使われているExchange Serverとの親和性はきわめて高く、たぶん出荷状態で初めて電源を入れた状態で設定を始め、その10分後には無線LAN経由で完全にメールと予定表が同期され、愛用端末として使えるようになっているはずだ。このあたりはすごい。もっともこれは、iPhoneやiPod touchでも同様で、Exchange Serverこそ、コンシューマに開放すべきサービスではないだろうか。 だが、望みはある。この手軽さをコンシューマも享受できるようにする要となるのは、おそらくWindows Liveになるはずだからだ。 マイクロソフトは、先週、Windows Liveの最新版を発表、各種のデバイスが協調し「いつでも、どこでもつながる環境」を提供することを表明している。 PC上のOutlook、あるいはLiveが提供するPC用のメールクライアント、カレンダーアプリと、クラウド上のメール、カレンダー、そして、Windows Mobile上のデータがうまく同期し、オンラインでもオフラインでも活用できるようになれば、Windows Mobileの使い勝手は格段に向上するはずだ。 Liveの新しい機能に関しては、これから順次公開されていく予定だが、何せ、世界中で5億人近いユーザーを抱えるサービスであり、段階的に導入が行なわれるため、全ユーザーが新機能を使えるようになるには、まだ少し時間がかかるということだ。また、Windows Mobileから、新しいLiveを使うと、何がどのように便利になるかといった詳細は、まだはっきりしていないが、かなりの変化があることは期待できそうだし、その変化こそが、今後のWindows Mobileの方向性や可能性を決めることになるだろう。そして、それは、Windows 7の世界にもつながっていく。 こうした切り替わりの時期であり、2週間という短い期間の試用だったため、Touch Diamondがもたらす世界感を完全に使い込むという段階には至らなかったが、新しいLiveが稼働し始めた時点で、もう一度使ってみて、その感触をレポートしたいと思う。おそらくは、Windows MobileもWindows 7も、Live抜きには成立しえないはずだからだ。 □関連記事
(2008年11月21日)
[Reported by 山田祥平]
【PC Watchホームページ】
|