パナソニック、初のAtom搭載ヘルスケア向けPC2009年3月10日 発売 価格:オープンプライス パナソニックは、Atomを搭載した初のヘルスケア向けPC「TOUGHBOOK CF-H1」シリーズを2009年3月10日に発売する。価格はオープンプライスで、実売予想価格は26万円前後の見込み。 “医療現場で使える”タブレット型PCを目指して開発された製品。Intelが提唱する医療向けプラットフォーム設計「Mobile Clinical Assistant(MCA)」に準拠する。 TOUGHBOOKシリーズの「タフ」を医療向けに強化し、耐薬品性能を付加。新規開発した表面材質により、アルコールや次亜塩素酸などで拭いたときの腐食を防止する。数万回におよぶ拭き取り耐久試験をクリアしたという。 また、筐体の材料を高剛性/耐薬品樹脂とし、内部をマグネシウムシャーシ構造とすることで基板を保護。「MIL-STD-810F 516.5」準拠の耐衝撃性能を実現した。さらに、ファンレス設計、ボタンと一体化した防水シート、インターフェイスのフタにロック機構などを設けることで、全方位からの水滴やホコリの侵入を防止。JIS C0920.IP5X準拠の防塵性とJIS C0920 IPX4の防沫性を実現した。 使い勝手にも配慮し、本体上部に持ち運びに適したハンドルを設けたほか、背面にストラップを装備し、片手で持てるデザインとした。手のひらにフィットするドーム形状の背面で、長時間使用においても疲れにくいという。また、本体を凹凸が少なくスムーズな表面とし、拭き取りやすい形状とした。 バッテリは左右に1基ずつ装備され、動作中のホットスワップが可能。駆動時間は約8時間。オプションで2連式バッテリチャージャー付きのクレードルと、4連式のバッテリチャージャーを用意し、24時間の連続バッテリ稼働を可能にした。 また、ログオン時やバッテリ交換時に、本体の拭き取りを促す「クリーニングユーティリティ」を用意。ユーティリティを起動すると画面全体が暗くなってロックがかかり、画面上では拭いたところがから元の画面になる仕組みを採用した。 このほか、処方箋や薬剤管理に必要とされる、RFIDリーダや、2次元バーコードリーダ(オプション)を装備。また、200万画素オートフォーカスカメラや、指紋認証センサーや非接触スマートカードリーダなどを備え、業務効率の改善を図った。
主な仕様は、CPUにAtom Z540(1.86GHz)、メモリ1GB(最大)、Intelシステムコントローラハブ(ビデオ機能内蔵)、80GB HDD、1,024×768ドット(XGA)表示対応10.4型タッチパネル/デジタイザ液晶ディスプレイ、OSにWindows Vista Business(SP1)またはWindows XP Tablet Edition(Vistaのダウングレード権を利用)を搭載する。 インターフェイスは、IEEE 802.11a/b/g/n(ドラフト2.0)対応無線LAN、Bluetooth 2.0+EDR、TPMセキュリティチップ、モノラルスピーカーなどを備える。本体サイズは264×268×34~58mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.5kg。
●ヘルスケア市場の課題に応えた製品
11月6日に都内で開かれた製品発表会では、パナソニック株式会社 AVCネットワークス社 副社長 伊藤好生氏が、ヘルスケア市場へ進出した経緯について説明した。 現在、ヘルスケア市場における課題としては、看護師不足の深刻化、患者/高齢者数の増加、および看護師のペーパーワーク/管理業務の増加などがある。これらを解決するためには、医療現場のIT化を推進する必要がある。しかし未だ、ヘルスケアに特化したPCがない。それを打開するために、今回の開発に踏み切ったという。 伊藤氏は、「開発にあたって、ヨーロッパを中心に約100件の病院でヒヤリングした。そこで得られた意見を元に、2003年よりNHS(国立成育医療センター)と共同で開発。TOUGHBOOKが持つ軽量、長時間駆動、タフ設計、ワイヤレス技術をすべて投入したのが、今回の新しい製品」と述べた。 今後のヘルスケア向けモバイルPCの市場は、世界全体で年率22%増という急速な伸びになると予測。その背景には、看護師の人手不足や経費削減による圧力があるからだという。今回の新製品は、その高成長市場に向けた製品であると強調した。 また、2012年には、MCA端末の市場規模が18万台になると予測。その時点では、10万台でシェアNo.1を獲得したいという意向を示した。
インテル株式会社 事業開発本部 本部長の宗像義恵氏もゲストとして発表会に招かれ、「現在、ヘルスケアにおけるモバイルPCの活用性は高まっている。モバイルPCを利用すれば、リアルタイムに必要な情報にアクセスでき、医師や看護師間の効果的な連携を実現できる。また、医療現場でのワークフローをITによって最適化することで、投薬ミスなどの医療ミスを減少させる効果がある」と語った。 MCA導入効果の実例についても紹介され、米国カリフォルニア州でのデータによれば、投薬ミスが30%減少したほか、医療ミスにつながる患者情報の転記作業が80%減少。また、イスラエルでは医療スタッフ同士の情報確認時間が90%短縮したという結果を残したという。これらの結果から、MCAは医療業務の効率化と安全性の向上役立つことを再度強調した。
また、ゲストとして招かれた国立成育医療センター 医療情報室長の山野辺裕二氏は、「現時点で病院に導入されているPDAは落とすと壊れやすく、バッテリ駆動時間が短いなどの問題がある。一方ベッドサイドではベッドサイドPCまたはノートPCが使われているが、導入コストの問題や堅牢性の問題がある。今回の製品はこれらの弱点を克服した製品であり、医療現場のIT化を新たに開拓する製品となるだろう」と語った。
□パナソニックのホームページ (2008年11月6日) [Reported by ryu@impress.co.jp]
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