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【PDC 2008基調講演レポート】
「Microsoft Researchの試み」

ステージに立つMicrosoft Research担当上級副社長のRick Rashid氏

10月26日~30日(現地時間) 開催

会場:ロサンゼルス コンベンションセンター



 PDC3日目のキーノートはMicrosoft Research担当上級副社長のRick Rashid氏によって、同社の研究機関としてのMicrosoft Researchの概要について紹介された。

 Rashid氏は、

「もし、みなさんが、MacやiPhoneを使っているなら、それは、はっきりいっておすすめできないな。だって、それを使っているということは、私が四半世紀以上前に書いたコードを使っているからなんだ。私がカーネギー・メロン大学にいたときに開発していたMachは、のちにNeXT(Step)となり、それがAppleに渡って、今のMac OSのコアになっているんだからね」

 そんな軽口をたたきながら、自身の経歴とMicrosoft Researchの歩みを紹介した。

●設立18年目の基礎研究部門

 Microsoft Reserchは、同社の基礎研究部門として'90年に設立されている。当時のMicrosoftは、まだ小さな会社で、年間売り上げもようやく数十億ドルに手が届く規模だったという。

 Rashid氏が同社に入社したのは'91年で、Microsoft Researchのディレクターを担当、以来、ずっとMicrosoft Researchを担当しているという。オペレーティングシステムが専門だった同氏は、当時OSの会社の1つだったMicrosoftにとって、きわめて親和性の高い人物だったようだ。そして、今、同社のエグゼクティブの中で、これほど長く、同じ部門を見ている人物はいないらしい。

 Microsoft Researchの活動は、今日、製品化されている、さまざまなプロダクトに生かされている。それらは、Microsoft Researchの地道な基礎研究が形になったものであるという。

 また、同氏は、資金の多くを大学に対して投資していることにも言及、自分の管理下にある基礎研究資金の15%は、そのまま各大学に廻すなどで、アカデミックコミュニティに貢献していることを紹介した。

●多数のセンサーでできること

 Microsoft Researchの概要を一通り紹介したあと、現在、進行中の研究がいくつか紹介された。

 まず、ステージには、研究員のFeng Zhao氏が登場、センサーネットワークによる消費エネルギーの削減と環境保護に関する研究内容を発表した。

基調講演会場に取り付けられた超小型センサーの様子 センサーを紹介する研究員のFeng Zhao氏。左手の大型のものはプロトタイプ 会場内センサーのモニタイメージ

 同氏は生活を豊かにするコンピュータではあるが、数百mWで稼働する携帯電話があるかと思えば、千万~億Wクラスの電力を要するデータセンターのコンピュータまでがあることに言及、電力消費と処理性能はトレードオフの関係にあることを説明した。

 そこで、同氏らは、バッテリレスで作動するプロセッサ内蔵の無線を使って情報を送信する小型センサーデバイスを開発し、この手の研究で大きな負担となるセンサーバッテリの交換が必要のない調査環境を作り上げた。

 このセンサー約90個がキーノートの会場に設置されていることを明かし、たとえば、前日のキーノートで、エキサイティングな発表があって会場が沸くと、会場の温度が上がることを示して見せた。

 こうしたセンサーの応用で、データセンターの熱設計を細かく調査することができるようになり、その結果をレイアウトなどの設計に生かせば、データセンター全体のエネルギー効率を高めることに貢献でき、地球に優しいクラウドコンピューティングが実現するという。

 同氏によれば、Microsoftのデータセンターを、世界でもっともエネルギー効率が高いものにすることも重要なミッションであるらしい。同社のデータセンターには、約1万個のセンサーが稼働し、状況をリアルタイムで分析しているという。

 このセンサーは屋外にも設置可能で、将来的な目標としては、地球全体でどのようにエネルギーが使われているかを理解することがあるといい、その段階に達するまでにあと少しのところにきているということだった。

●8歳の子供に使えるプログラミング環境

 続いて、ヘルスケア関連、教育関連等の基礎研究が発表されたあと、Rashid氏は8歳と9歳になる2人の息子の写真を紹介、氏の婦人が、今年から彼らにVisual Studio 2008によるC#のプログラミングを教えていることを告白した。

 9歳の兄は、すでにプログラミングができるようになり、弟が「Fairy Table」と呼ぶWPFを使ったゲームを制作中であるという。

Rick Rashid氏の二人の息子たち。長男はWPFでゲームを制作中 Bokuを紹介するMatt MacLaurin氏。Xbox360のコントローラでプログラミングができる プログラミンもビジュアルでインタラクティブにできる環境

 氏はもっと子どもたちがプログラミングのロジックを学習しやすい環境を得られるようにとMicrosoft Researchが開発した「Boku」という環境を紹介した。

 ステージに呼ばれてBokuを紹介する研究員、Matt MacLaurin氏はプログラミングにはモチベーションが必要で、子どもは特にそれが能力を高めるとした。

 Bokuを起動するとジャンプするキャラクタが登場し、これがプロンプト代わりとなる。そして、Xbox360のコントローラーを使って、そのキャラクタをコントロールするプログラムを作っていけるのだ。

 最後に紹介されたのが、Microsoft Surfaceに関する研究の経過だ。Micorosoft Serfaceは、テーブル状のコンピュータで、表面がディスプレイになっていて、その上にさまざまなオブジェクトをおくことで反応させたり、ディスプレイに映るオブジェクトを手でなでたり、こすったりするインタラクティブな操作でコントロールできるシステムだ。

 今回は、「SecondLight」と呼ばれる新たな技術が紹介された。

 これは、Surfaceにもう1つのディスプレイを持たせるテクノロジーで、最初は普通のトレーシングペーパーを使ったデモが披露された。

surfaceに表示された星座の上にトレーシングペーパーをかざすと星座名などが映し出される 動物の写真ならその解説などを知ることができる 新たに開発されたデバイスではそれ自体が表示能力を持ち、別の映像を映し出し、ポインティング操作ができるようだ

 Surfaceのディスプレイに映し出された星雲に、トレーシングペーパーをかざすと、そこに星座の名前などが表示されたり、動物の写真の上にかざせば、その名前と解説が表示されるなど、Surfaceのインタラクティブ性を、さらに親和性のあるインターフェースで高めるというものだった。

 また、新たなデバイスが開発され、それを拡張ディスプレイとして使うことで、トレーシングペーパーを使ったときよりも、もっとインテリジェントな表示ができることもデモされ会場を沸かせた。仕組みとしては、そのディスプレイデバイスが赤外線カメラを内蔵し、Surfaceの表示を認識した上で、別の映像を表示するようになっているようだ。

 最後に、Rashid氏は、これらの技術をきわめて早い時期に紹介できたことをうれしく思うとして基調講演を終えた。

□Microsoftのホームページ(英文)
http://www.microsoft.com/
□PDC2008のホームページ(英文)
http://www.microsoftpdc.com/
□Microsoft Researchのホームページ(英文)
http://research.microsoft.com/
□PDC2008デモンストレーション概要(英文)
http://research.microsoft.com/conferences/msrpdc2008/

(2008年10月31日)

[Reported by 山田祥平]

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