マイクロソフトのBlueTrack搭載マウスを試す
10月31日 発売 価格: マイクロソフト株式会社から、新しい青色LEDセンサー「BlueTrackテクノロジ」を採用したマウス「Explorer Mouse」(以下Explorer)、「Explorer Mini Mouse」(同Explorer Mini)が10月31日より発売される。発売に先立って入手できたので、試用レポートをお届けする。 BlueTrackについては、すでにニュースなどで紹介されているが、改めておさらいしておくと、発光源に青色LEDを採用しつつ、光の照射角度とCMOSイメージセンサーへの入射角を最適化し、通常のレーザーと比較して4倍広い面積の光線を照射することにより、コントラストが高い像を広範囲で認識させることができる。 これにより、従来の光学式やレーザーが苦手としていた光沢のある素材の上でも使用可能になり、従来のように場所を気にせずマウスを利用できるというもの。ただし、従来と同様、ガラスや鏡の上で利用するこはできないとされている。 ●やや大柄で使いにくいExplorer 両モデルともに、パッケージはいずれもブリスターパッケージである。しかし、従来のように強く貼り合わせてあるパッケージではなく、セロハンテープでフタを閉じているタイプである。このため開封は非常に容易で、好感がもてる。 Explorerは、充電台と充電池が付属したモデル。本体はかなり大柄で、特に横幅が広いのが目につくだろう。手のひら全体を載せてゆったり使うタイプといえるだろう。 特筆すべきなのは左右ボタン部の塗装。ツルツルした光沢のある塗装は、指紋がつきやすいというイメージを持つのだが、本製品はそのようなことはなく、ツルッとした高級感を保ち続けることができる。一方、側面の塗装はシャンパンゴールド塗装のプラスチックだったりと、ややチープな部分も見られるが、全体的な仕上がりは悪くない。 ボタンはカチカチとしっかりしたクリック感のあるタイプで、感触は良好。ホイールは、回転する部分のみ金属製で、ややチープな印象を受けるが、同社の過去のチルトホイールみたいにヌルッとした滑りではなく、サラサラとした滑りで、使い勝手は上々だ。 底面に目を向けると、青色LEDセンサーと電池室、充電用の端子、ライトアップされるラインなどが見える。さらに注目すべきなのは前後に配置された大型のソールだろう。さまざまな素材の上で利用されることを想定してか、ソールはかなり大きくなっている。 さて、Explorerの実際の使い勝手だが、「かなり使いづらい」という評価を下さざる得ない。使いづらさの原因を探ってみると、どうやら本体後ろ寄りに配置されたセンサーが問題のようだ。 筆者が普段使っているマウスのセンサーは中央にあり、手のひらを載せたときに中指の第2関節あたりにくるようになっている。一方Explorerは人差し指と中指の付け根後ろ寄りに来ている。このため、一般的なマウスでは指を左右に振る感覚で使えるが、Explorerは手首ごと動かさないと、ポインタが思うように移動してくれない。もちろん個人差はあるだろうが、これを使いやすいと評価する人は少ないだろう。 また、ソールは大型ではあるものの、滑りはそれほど良好というわけでもない。155gという重い筐体と、左右に広がったフォルムが、使いにくさに拍車をかけている印象だ。 ●軽量コンパクトで使いやすいExplorer Mini 一方、Explorerを一回り小さくした感じなのがExplorer Mini。大まかなフォルムはExplorerを継承するが、左右への広がりはExplorerほどではなく、これぐらいがちょうどいいと感じた。 Explorerとの一番大きな違いは本体サイズのほかに、充電機能の有無がある。Explorer Miniでは充電に対応しておらず、単3型アルカリ乾電池一本で駆動するようになっている。ただし駆動時間はExplorerの3週間に対して4カ月と大幅に長くなっている。なお、この駆動時間は発表当初6カ月とされていたが、発売直前に変更された。 また、メインボタンのスイッチもExplorerとは違い、ストロークがやや浅く、しっとりとした静かなタイプのものに変更されている。 サイドボタンの配置もExplorerと同じだが、メインボタンと同様にスイッチが秀逸。類ないしっとりとした感触で、ボタンがクリックされて反応すると、さらに力をかけてもそれ以上は凹むことはなく、底でしっかり受け止めてくれる。Explorerのボタンにも同様のスイッチを採用して欲しかった。 底面に目を向けると、やはり大型のソールを装備していることがわかるが、電池室とセンサーの位置がExplorerとは逆であることに気づくだろう。センサー配置は相変わらずマウスの後ろ寄りになっているが、先端をそろえた場合、Explorer Miniのほうがセンサーが前に来る。手のひらを乗せると薬指の第2関節~付け根の位置にセンサーが来るようになり、Explorerほど手首を動かさなくてもポインタ操作が可能だ。本体もExplorerより軽いため、負担が少ない。
Explorer Miniは充電できないという点に目をつぶれば、スイッチの質感や操作性では、Explorerよりも一歩上という印象だ。BlueTrackの「Go Anywhere」というコンセプトからしても、コンパクトなExplorer Miniのほうがふさわしいと言える。購入する際は2製品をよく比較して、どちらが自分の用途に合うか検討されたい。 なお、ソフトウェアに関しては従来と同じく「IntelliPoint」を利用するが、バージョンが6.3にあがっている。ExplorerとExplorer Mini、Arc Mouseのサポートを追加した以外、大きな機能の変更はないので、ここでの紹介は省略させていただく。 ●謳い文句通り大抵の素材上で利用可能
次は実際どの素材の上で動くか試してみた。比較にはExplorer Miniのほか、2007年に発売した「Mobile Memory Mouse 8000」、およびロジクールの最新製品「V450」を用意した。なお、Mobile Memory Mouse 8000はBluetooth接続にも対応しているが、今回は付属のレシーバを用いた。 具体的に試した素材と結果については下表の通り。なお、「微妙にマウスポインタが反応する」や「マウスポインタが飛ぶ」などの結果については、一律使えないもの扱いで×とした。なお、下記の素材はいずれも編集部で試した結果であり、ほかの同様の素材でも必ず同じ結果にならないことをあらかじめ断っておく。 【表】テスト結果
結果は、21素材中動かなかったのは、Explorer Miniが5つ、Mobile Memory Mouse 8000が7つ、V450が5つとなった。 このうち鏡とガラスはいずれもダメなのは承知の上なので除外すると、Explorer Miniが動作しなかったのは黄色のビーズ入り枕、陶磁器、ヘアライン仕上げの金属の上の3つだ。 ここで断っておきたいのだが、BlueTrackのリフトオフディスタンスはかなり短い。リフトオフディスタンスとは、マウスを持ち上げてからセンサーが反応しなくなるまでの距離である。Mobile Memory Mouse 8000とV450は素材面とマウスの間に十円玉を1枚挟んでも反応するが、Explorer Miniでは反応しない。このため、力により大きな起伏が生じる枕や、今回のテストで使用した起伏のある陶磁器の上で使えないのだ。
むしろ意外な結果だったのはヘアライン仕上げの金属で、Explorer Miniをいくら横に振ってもポインタは縦にしか動かなかった。レーザー2製品が使えたということを考えるとやや惜しい結果と言える。 マイクロソフトの旧レーザー製品と比較すると、光沢面や半透明面での利用に強くなったと言える。対ロジクール製レーザー製品においても、半透明面で使えるというアドバンテージがあると言えよう。 ●センサーの性能は高い。総合的な使い勝手改善が課題 以上見てきたように、BlueTrack技術を搭載したExplorerとExplorer Mini、そのセンサーは新世代と呼ぶにふさわしいトラッキング性能を持っており、マウスの利用場所の拡大を図れる画期的な製品であることがわかる。 その一方でExplorerのように、センサーが後部に配置されていることや、やや大柄で重い筐体など、総合的な使い勝手の面から判断すると、必ずしも使いやすくないというのが実情。現時点ではExplorer Miniのほうが完成度の面では一歩進んでいるという印象で、もし購入するならばそちらのほうをおすすめとしたい。 今までマウスを使いたくても使えなかった素材面を持っているユーザーにとって、今回の新技術は朗報といえるだろう。ハードウェアのブラッシュアップも含め、今後の展開に期待したい。 □マイクロソフトのホームページ (2008年10月31日) [Reported by ryu@impress.co.jp]
【PC Watchホームページ】
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