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【特別企画】国内ネットブック/UMPC開発者インタビュー【東芝編】
〜国内大手メーカー製ネットブックの意義

NB100


 国内大手PCメーカーである東芝のネットブック「NB100」が他社に先駆け、10月の下旬から発売となった。といっても、これは台湾メーカーから数カ月遅れてのことである。これまで、DellやHPといった世界的シェアを持つ海外メーカーでさえ苦戦してきた国内PC市場において、認知度の低い台湾メーカーが一定のシェアを持つことはこれまでは考えられなかった。しかし、現状では台湾メーカーがこの分野で大きな成功を収めつつある。果たして東芝は、どのような考えと目標を持ってこの市場に参入したのか。そのあたりの話を、同社PC第一事業部PCマーケティング部マーケティング担当参事の荻野孝広氏に伺った。

●ネットブック参入の経緯

Q NB100の開発を始めた時期、および、なぜ東芝がネットブック市場に参入しようと決断したのかを教えてください。

東芝の荻野孝広氏

荻野氏 具体的にいつからというのはお答えするのが難しいのですが、「dynabook」や「Qosmio」など従来の製品より期間が短いのは確かです。コストパフォーマンスも重要なのであまり時間をかけなかったというのもあります。ネットブックは、その基本用途がネットの閲覧とメールのやりとり程度に限定されています。そのため、通常の製品と違って、機能をどんどん削っていき、何を残すのかを決めていく形で開発を進めました。

 従来、日本でモバイルPCというと、高機能でありながら、薄くて軽く、それでいて長時間バッテリが動くといったものを差しており、それらを満たしたハイエンドな製品が売れていました。例えば、1スピンドルにして、その分安く、軽くした方がいいかとユーザーに聞くと、ダメだという答えが返ってきていたのです。ですので、台湾メーカーがネットブックを発表した時、国内市場で簡単には受け入れられないだろうと、静観していました。しかしながら、結果としてはニーズがあり、しかも市場の規模も大きいと言うことが分かりました。また、我々はノートPCに特化したメーカーですから、このジャンルについても商品を出すことは一種の使命であると考え、参入を決定しました。

Q 少なくとも現時点でネットブックは一定の成功を収めていますが、その理由は何だと考えますか。

荻野氏 ネットとメールという用途では、携帯電話で十分と考える人も多くいます。しかし、画面の小ささや、文字入力に不満を抱いている人もいます。ネットブックは、携帯電話より大きく、従来のノートPCより小さい。そして価格帯は従来製品よりずっと安く、携帯電話と同じ程度です。また、一般の新聞などでも大きく報道されたことも注目を集めるきっかけとなりました。

 ただし、それら一般紙の報道では「ノートブックが5万円で」というニュアンスでした。これだと、詳しくないユーザーは多機能なノートブックが5万円で買えると勘違いする可能性があります。その点で親切さが足りなかったのではとも思います。

Q NB100の対象となるユーザー層はどのようなものでしょう。

荻野氏 PCリテラシーが高く、ネットブックの用途を分かっていて、2台目/3台目として買おうと考えるようなパワーユーザーです。

Q ネットブックが売れることで、従来の一般製品が売れなくなりませんか。

荻野氏 それはないと思います。例えば、写真の編集などをしようとすると、ネットブックでは力不足で、Core 2 Duoなどのプロセッサや、もっと良い仕様のものが必要になることが分かるでしょう。一般的ノートブックの売り上げは増えてますし、店頭にネットブックを買いに行ったが、店員の説明を聞いて、結局は一般的ノートブックを買ったという例もあるほどで、マイナスの影響はないと考えます。

Q 開発で苦労した点はどこでしょう。

天板中央には大きくTOSHIBAのロゴがある

荻野氏 強いて挙げるならデザインでしょうか。天板には「TOSHIBA」のロゴが入っています。海外ではTOSHIBAは社名と言うよりブランドとして認知されているのですが、実はこれは国内ではあまりうけないのです。ただし、今回はコストを下げるために、全世界で共通のデザインとしました。

Q 開発の中心は日本だったのでしょうか。

荻野氏 開発の中心は日本に拠点がありますが、この製品はグローバルで作業しました。これはこの製品だけでなく、従来製品もすでに多くがグローバルな開発体制を取っています。

Q NB100は、なぜdynabookやQosmioといったブランドをつけなかったのでしょう。

荻野氏 ネットブックは通常のPCと目的/用途が異なっています。NB100にQosmioといったブランドをつけてしまうと、多用途なPCとユーザーに勘違いされてしまいます。また、例えば世界一軽いとか、世界一薄いとか、当社ならではの付加価値を持たせた製品でもないので、新たなブランドはつけませんでした。

Q 液晶のサイズを8.9型にした理由を教えてください。

荻野氏 我々は後発なので、市場動向を見据えつつ仕様を決定しました。平均から外れてしまうと、その分コストが上がるので、液晶は8.9型を選びました。仕様では差別化できないのがこのジャンルだと思っています。

●価格モデルについて

Q 発表以降、ユーザーからの反応はどのようなものでしたか。

荻野氏 発売からはまだ1週間も経っていないので、これからフィードバックを集めていくところです。ただ、メディアからの反応としては、良い点、悪い点、両方について意見を頂きましたが、うまくまとめ上げたという意見を多く頂きました。

Q 発表当初の店頭予想価格は74,800円でしたが、発売前に店頭で69,800円に値下げされました。

荻野氏 当初は74,800円という価格が適正だと思っていました。店頭での価格については、市場が決めることですが、値下げされた事実については、真摯に受け止めるしかないと思っています。

Q 値下げされてもなお、台湾メーカーの製品より1万円から1万5千円高い値段です。この違いをユーザーに説得する材料はどこにあるのでしょうか。

荻野氏 ネットブックは基本スペックでは差がほとんど出ません。ただ、実際に使って頂くと、本体の質感や、専用ソフトウェアの機能、キーボードのしっかりした作りなど、スペックに出ない使い勝手の面において差があることを実感して頂けると思います。NB100も当社の品質基準をクリアしており、サポートも充実してるので安心して長く使って頂けます。ハードウェアで敢えて違いを言うなら、他社製品より小さく、わずかではありますが軽いところや、Bluetoothを搭載している点、またNECさんの製品よりバッテリ駆動時間も長くなっています。

Q バッテリについては絶対値としては駆動時間は短いように見えます。

荻野氏 バッテリの性能については、ユーザーが普段携帯電話でネットやメールを見る時間が2〜3時間程度であるという結果を考慮して、それくらいの時間を目安にしました。ただ、今後は改良していきたいと思っています。

●日本メーカーならではのアドバンテージとは

右にあるのはdynabook SS RX

Q パワーユーザーの多くはすでにネットブックを購入済みです。投入のタイミングがやや遅かったのではないでしょうか。

荻野氏 逆に、我々の製品が出るのを待たずに買ったことを、早まったと考えるユーザーもいるのではないかと思います(笑)。

Q NB100独自の特徴やセールスポイントを教えてください。

荻野氏 細かな点はいくつかありますが、大きな特徴としては我々独自のユーティリティがあります。これによって、簡単に無線LANアクセスポイントにつなげられます。また、画面をキー操作で拡大/縮小したり、静音モードにしたりできます。全体的な使い勝手としてもよく仕上がっていると自負しています。

Q NB100の競争相手はAcerやASUSTeKの製品なのでしょうか。

荻野氏 ネットブックという意味では確かにそうなると思います。もっと近い競争相手となるとNECさんでしょうか。

Q ネットブックにおける日本メーカーのアドバンテージは何だと考えますか。

荻野氏 きめの細やかさ、品質、サポート、小さなPCを作る上でのノウハウなどが挙げられます。ちなみに、ネットブックのユーザー層に特化して売る分には、台湾メーカーも実績を残すことができると思います。しかし、彼らがバリエーションを増やして、モバイルノートで攻め入ってきたとしても、我々やNECさんパナソニックさんが負けるとは思いません。

●今後ネットブックが進む方向

Q 今後ネットブックはどのように進化していくと考えていますか。

荻野氏 ネットブラウズとメールという目的はそのままに、使い勝手をどう上げていくかだと思います。具体的にはポータビリティで、コストを上げずに本体を小さくしたり、逆に本体サイズを変えずにキーボードや液晶を大きくしたり、軽くしたりしていくのではないでしょうか。

Q “ネット”ブックであるなら、3G通信機能などを標準装備するべきではないでしょうか。

荻野氏 現時点では通信アダプタをユーザーが別途選んだ方が、価格を安くできます。また、将来的にはその可能性はあるでしょうが、3G通信機能などを先に搭載するのはネットブックではなく、dynabookになるでしょう。そういった技術がこなれてきて初めて、コモディティ製品であるネットブックにも転用されていく形になると思います。

CESで展示された東芝の試作機

Q 1月に行なわれたCESではCentrino AtomベースのUMPCが展示されましたが、その後、進展はあるのでしょうか。

浅川氏(広報担当) あれは参考展示のもので、現時点であの試作品についてはコメントできません。

Q ネットブックの市場は今後どのように推移すると見ていますか。

荻野氏 今後も現在と同じノートブック全体の10〜20%の割合が続くのではと見ています。

Q ネットブック市場におけるNB100での販売台数目標があったら教えてください。

荻野氏 具体的な数やシェアについては申し上げることができません。ただ、東芝のノートブックの中でも、10〜20%がネットブックになるのではと予測しています。

Q ありがとうございました。

 このように、東芝はこの分野に遅れて参入してきたものの、先行する台湾勢に対しては、日本メーカーならではのきめ細やかな配慮、サポート、全体的な使い勝手といった点で一定の支持を得られると踏んでいるようだ。

 同社は、ネットブックによって、従来のノートブックのエントリークラスの製品が食われることはなく、ネットブックの分だけ売り上げは上積みされると見ている。同時に、ネットブックの性格を知らないまま、dynabookやQosmioの一種と思ってNB100を買われることに不安も抱いている。

 このあたりは台湾メーカーも同じなのだが、興味深いのは、製品開発への姿勢の違いが明確に現われている点である。どちらかというと、台湾メーカーは、ネットブックという限られた枠組みの中で、独自の肉付けや色付けをしようとしている。一方、東芝では従来のノートブックからぜい肉をそぎ落として、ネットブックの用途に必要な最低限の仕様へと近づけるアプローチを採っていると感じた。

 これはどちらが良いというわけでもなく、最終的にはどのメーカーも、ぱっと見は似たようなパーツで似たような構成になってしまうのだが、できれば、東芝にはもう少し「今後はネットブックでも市場をリードしていく」くらいの意気込みも見せて欲しいものだ。

 とはいえ、荻野氏の言葉にある通り、東芝も使命感を持ってこの市場に臨んでいる。東芝としてはグローバルでこの市場を見ているだろうが、国内においてネットブック、ひいてはPC全体の図式がどう変わるのか、成り行きが楽しみだ。

□東芝のホームページ
http://www.toshiba.co.jp/
□製品情報
http://dynabook.com/pc/catalog/nb/080929nb1/
□ネットブック/UMPCリンク集(東芝)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/link/umpc.htm#toshiba

(2008年10月29日)

[Reported by wakasugi@impress.co.jp]

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