タイマーICを使ってみよう




 今回はタイマーIC「555」を使ってみましょう。

 まず基本的な回路でLEDをチカチカさせた後、拡張してブザーを鳴らしてみます。最後にLED回路とブザー回路をつなげて、リズムマシーンを作ります。

555は長い歴史をもったチップです。最初のバージョンはシグネティクス社から'70年に登場しました。我々が使用しているのはナショナルセミコンダクタの「LMC555」という製品で、オリジナルの555とは異なる「CMOS(シーモス)」という技術で製造されています
今回の回路を作るときはLMC555を使ってください(NE555などの非CMOS版では動作しません)。共立エレショップでの価格は1個63円でした。他の電子部品店でも容易に入手できるでしょう

 555には2つの動作モードがあります。

 1つは単安定動作モードと呼ばれ、時間を1度だけ測ります。ラーメンタイマーのようなものを作るときに使います。

 もう1つは無安定動作モードです。「無安定」という言葉はこの連載の第6回にも登場しました。無安定マルチバイブレータ回路と同じように、ONとOFFを繰り返すのが、555の無安定動作モードです。

 今回は無安定動作モードを利用して、LEDやブザーを動かします。まず、LEDを点滅させる回路をみてください。

ブレッドーボードの上では、図中の△マークはすべてつながっています。同様にグラウンドを表す斜線の記号もすべてつながっています。この表記法は、第11回で説明しましたね

 電源は3V(ボルト)です。乾電池を2本使いましょう。回路図中のコンデンサC1の記号が、電解コンデンサではなく、普通のコンデンサ(たとえば積層セラミックコンデンサ)のものになっていますが、1μF(マイクロファラド)ならば、どちらでも使えます。LEDは赤色タイプにしてください。

ICの表面に丸いくぼみがあるところが、1番ピンです。そこから反時計回りに1、2、3……と続きます。ICをまたぐように線が飛び交うので、堅い線(単線)ではちょっと作りにくいかもしれません。そう感じたら、より線タイプのジャンプワイアを使いましょう

 電池をつなぐと、LEDがチカチカしはじめるはずです。我々が作った回路の場合、およそ3秒間に2回のペースでLEDが光りました。

 しばらく眺めたら、改造に取りかかりましょう。抵抗器を半固定タイプに交換し、点滅スピードを変えられるようにします。

黄色くなっている部分が変更点です。抵抗器の値が変わっています。そして半固定抵抗器を1つ取り入れました
すでに半固定抵抗器はヘッドフォンアンプの回で登場していますが、今回は使い方が少し違い、回路図上の記号も異なっています。中央とその隣の端子の2本だけを接続してください
半固定抵抗器を回すと点滅スピードが変化します

 我々の回路では、一番ゆっくりチカチカしているときに、毎秒1回の周期で点灯しました。つまり1Hz(ヘルツ)です。半固定抵抗器のツマミを回すと、徐々にチカチカが速くなっていきます。

 そして、あるレベルまで速くなると、チカチカではなく連続した光として感じられるようになりました。

 もし、あなたのテスターに周波数を測る機能があるならば、チカチカが感じられなくなるときの値を調べてみると面白いでしょう。555の3番ピン(OUTPUT)に赤、1番ピン(GND)に黒のプローブを当てて測ります。個人差や周囲の環境による違いがあるはずです。

【動画】抵抗値を変えることで、LEDの点滅スピードが滑らかに変わります(フレームレートの影響で、動画のなかでは変化にムラがあるかもしれません)

 点滅スピードを上げていくと、この回路では毎秒60回近くまで達します。つまり60Hzです。この領域ではもうON/OFFを目で感じません。でも、視覚に代えて聴覚を利用すれば、さらに上の周波数まで感じることができます。

 点滅スピードを最高にした状態でブレッドボードからLEDを抜きとり、代わりにブザーのリード線を挿してみましょう。低い音でブーと鳴るはずです。

使用したブザーは、共立電子で「圧電サウンダ他励振タイプ」という名称で売られているものです。ブザーには他励型と自励型があります。自励型は電池をつなぐだけで音が出て便利ですが、今回の目的には適しません。お店によっては、自励型を「発振回路内蔵タイプ」と表記している場合もあります

 次の回路図は半固定抵抗器で音の高さを変えられるようにしたものです。LEDがブザーに換わり、コンデンサC1は、より高い周波数が出るように小容量のものになっています。

 C1に電気が溜まるスピードが周波数を決めています。C1を小さくするとすぐに電気が溜まるので周波数が上がります。R1、R2を小さくすると、C1に流れ込む電流が増えて、やはりすぐに電気が溜まるようになって周波数が上がります。

音の高さを変えられるバージョン。黄色い部分が前の回路図からの変更点です
もしブザーの音が大きすぎて困るようならば、ブザーと直列に入っている抵抗器R3をもっと大きな値に変更してください。深夜ならば10KΩ(キロオーム)くらいにしてもいいかもしれません

 我々が作った回路では、可変抵抗器のツマミを回すと、100Hzから4700Hzの範囲で音が変化しました。周波数をいっぱいまで上げるとかなり耳障りですが、中間の領域では、なんとなく音楽的に感じられる音もあります。今回作った回路を組み合わせて、楽器を作ってみましょう。

 まず2つ目の回路(可変速LEDチカチカ)をもう一度作ってください。それを3つ目のブザー回路に接続します。合体技により、LEDチカチカに合わせてブザーが鳴るリズムマシーンのできあがりです。

3つ目の回路からワイアを1本抜いて、2つ目と3つ目の間に1本の線を追加するだけです。この図でわかるでしょうか?
リズムマシーン完成。この写真を見たほうがわかりやすいかもしれません。2つのブレッドボードを3本のジャンプワイアで結んでいます。右側の555の4番ピン(RESET)に注目してください。ここにあったワイアを取り除いてから、別の長いワイア(黄色)を用意して、左側の555の3番ピン(OUTPUT)へ飛ばしています。そのほかに追加したのは赤と黒の電源ラインです

 あるICの出力を別のICの入力とすることで、より複雑な回路が実現できます。ここでは、LEDチカチカの信号を、ブザー回路のリセット端子に入れています。LEDが光っている間はブザー回路が動作するので、音が出ます。LEDが消えている間はリセットがかかった状態となり音が出ません。

 リセット機能をこんなふうに使うのは邪道な気もしますが、ほんのわずかの改造で楽しい機能ができあがりました。

【動画】LED側の半固定抵抗器でテンポが変わります。ブザー側の半固定抵抗器で音の高さが変わります。両手を使って左右同時に操作するとより高度な演奏が可能です

 最後に今回使った部品をまとめておきます。部品代は500円ほどでした。次回はこのリズムマシーンをさらに拡張して、もっと電子楽器らしく遊べるものにグレードアップしてみましょう。

【表】今回購入したもの
品名 型番/仕様 数量 参考単価(円)
タイマーIC LMC555 2 63
圧電ブザー(自励タイプ) KPEG110 1 84
半固定抵抗器 50KΩ 2 52
電解コンデンサ 1μF(10V) 1 10
積層セラミックコンデンサ 0.01μF 2 21
積層セラミックコンデンサ 0.1μF 1 21
カーボン抵抗器 2KΩ 1 1
カーボン抵抗器 1KΩ 2 1
カーボン抵抗器 470Ω 2 1
カーボン抵抗器 100Ω 2 1
発光ダイオード 1 20
電池ボックス 乾電池2本用 1 89

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(2008年10月23日)


船田戦闘機、スタパ齋藤、上杉季明によるユニット。電子工作からバンド演奏までさまざまな活動を行なうが、各活動に共通するテーマは“電気が通ること”としている。電子部品・電子回路の玄人ではなく、それらに対して強い興味を抱いている。ブレッドボーダーズは、そんな立ち位置から電子部品・電子回路に触れていくプロジェクトである。


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