海外通販での決済と英文メールを考えよう




 前回は、海外のパーツショップやそこで購入できる部品を見てきました。今回はもう少し実践的に、海外通販サイト利用について見ていきましょう。

 海外のオンラインショップから部品を買う段になって、誰もが心配するのはトラブルでしょう--海外のショップに自分のクレジットカード番号を伝えても大丈夫? 代金が間違って請求されたら? 注文とは違う品物が届いたら?

 決済や取引に関わる不安は、オンラインショップであれば海外・日本問わず同様に無視できないものです。しかし、海外ショップでのトラブル時は英語でやり取りすることになり、不安がより大きくなります。

 そこでまず、決済に関わる不安をなるべく抑えましょう。具体的にはPayPalの利用です。

 海外通販サイト利用者にとってのPayPalは“相手にクレジットカード番号を知らせずにカード決済を行えるサービス”です。PayPalにはこちらのクレジットカード番号を知らせる(登録する)必要がありますが、PayPal対応の通販ショップを使うなら、どこで購入してもショップ側にこちらのカード番号が伝わることはありません。

 また、充実した購入プロテクションプログラムを備えているので、他の決済方法よりも安心して利用できます。なお、PayPal経由で代金を支払う場合、支払いに係わる手数料は無料です。

 では、実際にPayPalにアカウントを作ってみましょう。

PayPalのサイトは日本語で利用できます。ページ内を良く読み、サービス内容を把握したら[新規登録]からアカウントを作ってみましょう
アカウントは3種類ありますが、PayPalを使って支払いだけをするならパーソナルアカウントで問題ありません
パーソナルアカウントを選び、[利用開始]をクリックした後、個人情報を入力します
支払いに使うクレジットカード番号も入力します。PayPal経由で決済を行うと、このカードから代金が引き落とされます

 以上でPayPalのアカウント作成は完了です。ただ、即座にPayPalを使い始めることはできません。

 アカウント取得後、登録したクレジットカードに対し、PayPalから小額が請求されます(今回の登録時は200円でした)。この請求のクレジットカード利用明細項目名は「####PAYPAL--*EXPUSE」といったふうになっています。この“####”は4桁のPayPalコードです。

 後日、このPayPalコードをPayPalサイトのマイアカウントページに入力すると、以降、PayPalのサービスを利用できるようになります。PayPal利用開始にはこのような流れがありますので、利用明細をオンラインで参照できるクレジットカードを使用すべきです。

PayPalアカウントを登録した直後の状態です。「ステータス:未認証」とあり、まだPayPalを使っての支払いを行えません
PayPalアカウント登録の数日後(直後のこともあります)、PayPalに登録したクレジットカードの利用明細に「7632PAYPAL--*EXPUSE」という項目名が出てきました。この「7632」が今回のPayPalコードです
PayPalコードを得たら、PayPalサイトのマイアカウントページにその4桁の数字を入力します
すると、アカウントが「ステータス:認証済み」となり、PayPalで支払えるようになりました

 なお、前述のPayPalからクレジットカードに請求された小額は、後日、このアカウントの残高として返金されます(今回は200円)。クレジットカード会社経由でユーザーの銀行口座などに返金されるわけではありません。

 ともあれ、これで通販サイトにクレジットカード番号を伝えずに買い物ができるようになりました。比較的に多くの大手海外通販サイトはPayPalに対応していますので、不安の少ないオンラインショッピングを楽しめるようになります。

 さて、決済方法はひとまず安心できたとしても、取引上のトラブルが起きないわけではありません。注文したものと違った部品が届いた、荷物がなかなか到着しないなど、細かいことを含めればトラブルは必ずあると言ってよいでしょう。我々は何度も海外オンラインショップから部品を購入していますが、年に数度はトラブルを経験します。

 ほとんどの海外オンラインショップは英語ベースで、トラブルの際のやり取りも英文メールで行うことになります。この「何かあったら英文メールでやりとり」という点も、海外ショップ利用のハードルとなっているのではないでしょうか。

 そこで、以下に我々が実際に遭遇した小さなトラブルと、それに関する英文メールのやり取りを紹介してみます。我々は英語が得意でなく、拙い英文をお見せするのは恥ずかしいのですが、それ以上に間違った英文の例示は問題です。そんなわけで、ここではプロの翻訳家の添削・アドバイスとともにご紹介してみます。なお、個人情報保護のため、一部伏せ字(****)としています。

 まず、前回例示したSparkfunでのトラブルです。複数の部品を注文し、届きましたが、注文とは違う部品がひとつ混ざっていました。そこで、こんなメールを出しました。

Dear sirs,

I had ordered your products, following.
( My order number is 12345 )
Then, now I have received some products from web-shop of SparkFun. But, an item is not arrive here yet.
The item is "Breakout Board for FT232RL USB to Serial (SKU#:BOB-00718) = $14.95 ".

And there is an item it seems like "Crystal 16MHz SKU#: COM-00536" in the baggage. Of course I did not order this "Crystal (maybe)".
So, please send me "Breakout Board for FT232RL USB to Serial (SKU#:BOB-00718) = $14.95 ".
With that, what shall I do about this "Crystal (maybe)" ?
Anyway, I would appreciate to receive your answer. By e-mail, better !

Truly yours,

****(こちらの名前) / a fan of SparkFun !

 すると、すぐにこんなメールが返ってきました。

****(こちらの名前),

I apologize for the mistake made in packaging your order. The missingboards will ship to you tomorrow.

Best Regards,

*****(ショップ担当者名)
Customer Service
SparkFun Electronics
303-***-****

 どうやら通じたようです。しかし、果たしてこの英文で良かったのか、早速翻訳家の方に添削・アドバイスをお願いしました。なお、以降の翻訳・アドバイスは、金井哲夫氏によるものです。多数の著書・訳書・記事翻訳を手掛ける傍ら、エンタテインメントコンテンツも製作しているフレンドリーな方です。

 結果として通じたから適正に対処してもらえたわけで、なんとか自分なりに書けば通じるもんであります。ただ、問題は文章が複雑になっちゃっていること。こうした事務的な連絡は、なるべく短くシンプルな文章が望ましいところ。もう箇条書きでもいいくらい。例えば……

I had ordered your products, following.
( My order number is 12345 )

 最初にこの文が来ると、注文したのに……どうした? という感じになっちゃうので、これは要りません。でも、最初にオーダーナンバーを書いておくのは、わかりやすくていいかも。

Then, now I have received some products from web-shop of SparkFun. But, an item is not arrive here yet.

 それからこの文章は「そして届きました。でも届いてません」となるので、ちょっと混乱します。商品が届いたんだけど、足りないものがあります、と言うべきですな。

And there is an item it seems like "Crystal 16MHz SKU#: COM-00536" in the baggage.
Of course I did not order this "Crystal (maybe)".

 この文章も、もっと簡潔に。それと、baggageは手荷物。小包ならpackageかpercelです。英語では、2回目からは代名詞でオーケーなので、いちいち Crystal(maybe)と書かなくても大丈夫だよ。

Anyway, I would appreciate to receive your answer. By e-mail, better!

 reply の一言でメールでの返信を意味するので、Please reply me. だけで大丈夫。すぐに返事が欲しいときは、その後ろに as soon as possible と付けます。略語で asap とすることもあります。

Truly yours,
**** / a fan of SparkFun!

 最後のこの一言で、いい感じで事が進みそうです。でも、正しくはa fan of Sparkfun's! と書きます。Sparkfun'sのアポストロフィーエスは、Friend of mineと同じ使い方。

 ニュアンスとしてはI am a big fan of SparkFun's!ならもっとよかった。「サインください、私あなたの大ファンなんです! 」なんてとき、I am a big fan of your's.と言います。

 とにかく、こっちは怒ってないよ、SparkFunのファンなんだから、って感情を伝えることはとっても大切だよね。

 それでは、最初の文章を短くまとめてみましょ。

Dear Sirs/Madams,
(order number 12345)

I have received my percel, but there was an item missing.
It is "Breakout Board for FT232RL USB to Serial (SKU#:BOB-00718) = $14.95 ".
And there is an item I haven't ordered.
It looks like "Crystal 16MHz SKU#: COM-00536."
Please send me Breakout Board for FT232RL USB to Serial (SKU#:BOB-00718).
And please tell me what I should do with the Crystal.
Please reply as soon as possible.

Thank you.

Truly yours,
**** / a fan of SparkFun's !

 こっちが英語圏の人間じゃないことは相手もわかっているので、こんなたどたどしい英語でも、たぶんわかってくれます。大切なのは、要点をかっちり伝えること。そして最後の言葉、Thank you.です。

 もうちょっと英語っぽくしてみましょう。このメールで伝えなければならない要点は、

(1)届いた荷物の中に、1つだけ注文したものが入っておらず、かわりに、違うものが入っていた。
(2)欠けている商品をすぐに送ってほしい。
(3)間違って届いている商品をどうしたらよいか。

の3点だよね。これをまずハッキリ伝えましょ。

Dear Sirs/Madams,

各位

I am afraid there was a missing item, and was a wrong item instead, in a parcel that I received today. (order# 12345)
(すいませんが、今日受け取った荷物には、足りないものがあって、余計なものが入ってました。オーダー番号12345です)

The missing item is Breakout Board for FT232RL USB to Serial. SKU#:BOB-00718.
(足りないものは、Breakout Board for FT232RL USB to Serial。SKU#:BOB-00718です)

The wrong item is "Crystal 16MHz SKU#: COM-00536" (I am not quite sure but it looks like so.)
(余計なものは、"Crystal 16MHz SKU#: COM-00536"です---ハッキリわかりませんが、そう見えます)

Please send me the boards immediately, and let me know what I should do with the wrong item.
(ボードを早急に送ってください。また、余計なヤツをどしたらいいか教えてください)

Please reply as soon as possible.
(なるべく早く返事をください)

Thank you!
(よろしくお願いします!)

Sincerely,

**** (送信者名)
I am a big fan of SparkFun's !

(****より。ボク、SparkFun大好きです)

 この文章をちょっと解説してみます。

 まず、冒頭の Dear Sirs/Madams, から。担当者の名前がわかっていれば Dear Tom, とか名前を書きますが、わからないときは、これが無難でしょう。担当者が女性の場合もあるので、Sirsだけじゃなくて、Madamsも入れます。

 次に、I am afraid... というのはとっても柔らかい書き出しなので、怒っているときは、入れなくてもいいと思います。でも英語でガンガンやり合う自信がなければ、穏やかに話を進めるほうがいいでしょうね。

 それから、用件。

there was a missing item. 品物が足りません。
there was a wrong item. 品物が違ってます。

 事務的な話なので、文章はできるだけ短く簡潔にするのが鉄則です。商品名などのデータを伝えるときは、箇条書きがいちばん。いくつか欠品があり、それを列挙したいときは、

The missing items are as follows;
A
B
C

...

と書きます。are as follows; は「下記のとおりです」という意味なので、いろいろに使えます。My address is as follows; とか。

 それから、Please reply as soon as possible. は決まり文句として入れておきましょう。そして、最後の Thank you. は日本語の「よろしくお願いします」に相当する言葉なので、ありがたいと思っていなくても書いておきます。

 あと、Sparkfun担当者から戻ってきたメールには、余分な部品に関することが書かれていません。返せと言っていないので、わざわざ送料を負担して返送する必要はないでしょう。

 でもどうしても気になるのなら、さらにメールをしましょう。今度は、もうぐっと砕けて、こんな感じでオッケーです。

Dear ****, (ショップ担当者名)

Thank you for your quick handling.

By the way, there is an item -- looks like a Crystal 16MHz SKU#: COM-00536 -- that I haven't orderd.
What should I do with this?

(素早い対応をありがとう。ところで、注文してないモノ --Crystal 16MHz SKU#: COM-00536みたいなの-- がここにあるんだけど、どうしたらいい?)

**** (こちらの名前)

 おそらく、この程度の小さなものなら、Keep it. (あげる)と言ってくるでしょう。

 とても参考になる添削・アドバイスがいただけました。少し長くなりますが、続いて、もう1つの事例を見てみましょう。

 Futurlecというショップで買い物をしたときのことです。注文したのをすっかり忘れ、3カ月ほど経ちました。クレジットカードから注文代金が引き落とされたのを見て、注文したことを思い出しました。しかし、品物は届いていません。そこで、こんなメールを出してみました。

Dear sirs,

I had ordered your products, following.
( My order number is ABC1234 )
I ordered them on 1st-July, but the products have not arrived yet.
Also, AU$161.20 was withdrawn by the credit-card company from my bank account.

So, Please let me know the status of my order.
I would appreciate to receive your answer. By e-mail, better !

Truly yours,
**** (こちらの名前)

 すると、このような返信がありました。

Dear ****

Thanks for your email. You might not receive our prior message.

Your order is packed and ready for shipment; however the total shipment weight of your order is 2 kgs.As such, it will incur an additional shipping charge of USD 18 Kindly authorize us to proceed this amount to your credit card account by replying to this email asap.

Should you have any further enquiry, please feel free to contact us.

Best Regards

*** (ショップ担当者名)

Futurlec

www.futurlec.com

 どうやら、その後にショップから送られてきたメールを見落としていたようです。また、送料の問題で発送できていなかったようで、送料追加の許諾を求めています。このメールに対して、こう返信しました。

Dear sirs,

I appreciate for your rapidly E-mail reply.

I will approve the following matters.
Perhaps, my spam-protection-software deleted the prior messages from your shop.
In any event, additional shipping will be out of the problem.
Of course, I will pay the additional shipping by my credit card.
If you need my credit card information, Please reply to this e-mail.

Anyway, Thanks a lot!

Truly yours, ****(こちらの名前)

 このメールを送った後、担当者から発送の手続きを進める旨のメールが届きました。クレジットカードに追加送料を請求することも書いてあり、結果、無事に品物を受け取ることができました。この件のメールも金井氏に添削・アドバイスしてもらいましょう。

 クレジット関連のトラブルは慎重に対処しないとね。でも、ちゃんと話が通じてよかった。この手紙はけっこうマトモに書けていますが、もうちょっと整理できるね。まず、最初に送ったメールから。

Dear Sirs/Madams,

I placed my order on July 1, AU$161.20 was withdrawn by my credit card company from my bank account, but the item isn't delivered yet.

Would you let me know the status of my order?
Please reply as soon as possible.

Thank you.

Yours,
**** (こちらの名前)
Order#ABC1234

 こんなふうに整理すると、要点を簡潔に伝えることができます。

 2通目に送ったメールはなかなかオッケーです。ちょっとした文法の間違いや、よくわからないところがあっても、相手には通じてます。最後のAnyway, Thanks a lot! の Thanks a lot! はとてもグッドです。けれど、Anywayと付けると、「いろいろ不満な点はあるけど、とにかくありがとう」みたいな意味に取られかねないので、付けないほうがいいでしょう。

 そのあたりも踏まえて、敢えてちょっと直してみましょう。

Dear Sirs/Madams,

I appreciate your rapid reply, and I am sorry for troubling you.
It seems that my computer somehow discarded your last mail.
I understand the situation.
I agree to pay additional 18.00USD, and would like my order proceeded.

Thank you.

Truly yours,
****(こちらの名前)

 意味は「素早い返事をありがとう。いろいろ面倒かけてごめんなさい。ボクのコンピューターがナゼかあなたからの前のメールを消しちゃったみたいです。状況はよくわかりました。18米ドルの追加支払いに同意します。そのまま進めちゃってください。よろしく」という感じです。

 いくつか添削してみたけれど、添削前の英文メールでちゃんと相手に通じてます。あれでいいんだよ。

 それから、ショップ担当者の人柄に関する考察(※BreadBoardersが金井氏にお願いしました)だけど、相手はきわめて冷静で丁寧で普通。「こーんな英語じゃわかんないもーん」というニュアンスは一切感じられません。もっとめちゃくちゃな英語メール送ってくる人はたくさんいるはず。アメリカ国内でも英語できない人はたくさんいるしね。

 あ、あとは、どうしても相手の言ってる意味がわからないときは、わからないと言いましょう。

I am sorry but my capability for reading English is not enough to understand the point of your mail.
Could you please write me again in a little more plain English?

とかって書いて送るんです。言ってる意味がわからんと聞き返すのは当然の権利。わかったフリするのがいちばん危険です。それから、相手の英語力の低さを馬鹿にする人なんていません。少なくとも、国際的に商売をしている人にはね。みんな、もっと自信を持って英文のやりとりを楽しむといいんじゃないかな。

 海外のオンラインショップには多種多様な部品があり、前述のように安心して支払えるシステムもあります。トラブル時のやりとりも、シンプルな英語でなんとかなるようです。ぜひ皆さんも、海外の珍しく興味深い電子部品を楽しんでください。

 最後に、我々メンバーのひとりがflickrでやりとりした英文メッセージを見てみましょう。ブレッドボード上に組まれた回路の写真が投稿されていましたが、そのブレッドボードは日本では見たことのない青色のものでした。メンバーは、これについて以下のように問いかけました。

Nice picture, nice circuit.

Where did you buy this blue breadboard?

それに対して、こう返答がありました。

I got the breadboard years ago -- I forget where, although I was given another blue one recently. I think breadboards of this colour were often sold in the UK in the 1970s and 1980s.

 この返答をもらったメンバーは、さらに「どこで買ったか思い出してくれ」としつこく訊いてみたいと思ったそうです。青いブレッドボードに惚れ込んでいたのです。しかし、どう言って良いのかわからず、諦めてしまいました。

 このとき、どういった英語を書けば良かったかを金井氏に訊いてみたところ、「こんなふうに書けば熱意が伝わるかもよ」と例文を書いてくれました。

Thank you for replying me.
I really love this blue one.
I really want to have it.
Please give me any information that you remember, or clue that you think of.

Please, please!
Thank you, very much!

 有用なアドバイスを多々与えてくれた金井さん、本当にありがとう!

□関連記事
【10月9日】【武蔵野】海外のショップで部品を買おう
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0918/musashino010.htm

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(2008年10月16日)


船田戦闘機、スタパ齋藤、上杉季明によるユニット。電子工作からバンド演奏までさまざまな活動を行なうが、各活動に共通するテーマは“電気が通ること”としている。電子部品・電子回路の玄人ではなく、それらに対して強い興味を抱いている。ブレッドボーダーズは、そんな立ち位置から電子部品・電子回路に触れていくプロジェクトである。


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