発売中 価格:278,000円~ 今では国内大手PCメーカーもれぞれが直販サイトを運営し、個々人のさまざまなニーズに応えるカスタマイズモデルを販売している。そのなかでも東芝のPC直販サイト「東芝ダイレクトPC」にはかなりマニアックなノート製品がある。周知であると思うが、「オンラインゲームセットモデル」は3Dゲームが快適に楽しめるハイスペックモデルだ。今回はこうしたゲーミングモデルのなかから「dynabook Qosmio WXW/79GW」を紹介していこう。 ●最新Core 2 DuoにGeForce 9800M GTXを組み合わせたモンスターノート このモデル、すでに6月には発表されており、当時、次世代Core 2 DuoとGeForce 9800M GTXを搭載したモデルと説明されていた。今回テストするのは「dynabook Qosmio WXW/79GW」シリーズで型番が「PAWW79GLN10W」。CPUにCore 2 Duo T9400(2.53GHz)を搭載し、チップセットはIntel PM45 Express、メモリは最新のDDR3 SO-DIMMを採用し、肝心のGPUはGeForce 9800M GTXを搭載している。ゲーミングモデルというだけあって、最新/ハイエンドなパーツ構成だ。 ディスプレイは17型ワイド。液晶解像度は1,680×1,050ドット(WSXGA+)。表面コートは光沢タイプであり、ゲームやDVDなどの映像をより鮮やかに映し出す。サイズで見ると、17型液晶は15.4型液晶と比べて視野が広がりゲームの迫力も増している印象だ。また、解像度も15.4型液晶で一般的な1,280×800(WXGA)よりも2段階ほど解像度の高い1,680×1,050ドット(WSXGA+)であり、より高精細な映像を楽しめるわけだ。ただし、最近のゲーマー向け17型ノートでは1,920×1,200ドットパネル(WUXGA)を採用している例も多い。1,680×1,050ドットパネルというWXW/79GWの液晶解像度は製品選びの分かれ目になるだろう。
●「PAWW79GLN10W」の構成 ここからは、さらに細かなスペックを確認していこう。搭載するCPUは先述のとおりCore 2 Duo T9400(2.53GHz)。このCore 2 Duoは45nmプロセスで製造され、FSBも現在のモバイル向けCore 2 Duoでは最も高い1,066MHzとなる。これに組み合わせられているのはIntel PM45 Expressチップセット。こちらも最新のチップセットである。
メモリはDDR3を採用している。Intel PM45/GM45 Expressチップセットが発表され、同チップセットを搭載した製品が市場に登場してきているが、DDR3メモリを採用しているモデルはまだ比較的少ない。コストとの兼ね合いからDDR2を選ぶメーカーが多いのが実情だ。そのようななかWXW/79GWがDDR3を採用したのは、コストよりもパフォーマンスを追求するというポジショニングのためだろう。コスト高というイメージのDDR3 SO-DIMMも、すでに流通し始めた秋葉原での価格を見ると2GBモジュール1枚で約12,000円前後(DDR3-1066)だ。恐ろしく高価だったデスクトップ用のDDR3 DIMM登場時とは状況が異なる。同容量のDDR2 SO-DIMMと比べれば2倍近い価格ではあるが、コストコンシャスなメーカー戦略では難しくても、個人なら手が届かないことはないだろう(PCにゲームを求める層であればなおさら)。 PAWW79GLN10Wでの容量は2GB。1GBモジュール2枚であり、標準搭載OSであるWindows Vista Home Premiumを動作させるには十分ではある。ただ、ゲームなどより積極的な用途で使用すると考えると、2GB×2枚で4GBまで拡張するのが理想だ。
HDDはSATAドライブを採用しており、本体底面から開けられるベイには2台まで搭載可能なスペースが用意されている。PAWW79GLN10WはWXW/79GWはラインアップ中で比較的スタンダードな構成で、容量160GB、7,200回転のHDDを1基という構成。評価機に搭載されていたのはHGSTの「Travelstar 7K200-160」だ。なお、シリーズ最上位の「PAWW79GLN20W」は64GBのSSDと160GBのHDDを組み合わせた2ドライブモデルである(現在のところHDD×2基のモデルは無い)。
本製品の最大の特徴であるGeForce 9800M GTXについて少し詳しく説明せねばならないだろう。このGPUは、執筆時点でNVIDIAのモバイル向けGPUの最上位製品である。GPU-Zでは正しく認識されていないが、ストリームプロセッサ数は112基とされている。その他の仕様は、GPUコアが500MHz、シェーダーが1,250MHz、メモリが799MHz(DDR:1,598MHz)、メモリ容量は1GB(GDDR3)だった。このGeForce 9800M GTXは、ファンクション面ではDirectX 10への対応はもちろんのこと、PhysXも利用でき、対応ゲームではリッチな映像/シーンが楽しめる。そしてCUDAも利用可能であり、ビデオエンコードやその他のコンピューターシーンにおけるアクセラレーションも可能。さらに、第2世代のPureVideo HDに対応しており、HD動画をスムーズに再生できる。 キーボードは10キー付きのフルキーボードだ。キーピッチも広く、ストロークも申し分ないのだが、少し気になる点がいくつかある。まずはキーがツルツルである点で、キーを押した際にすべる感触がある。個人差もあると思うが、筆者の場合は短い試用期間中ついに慣れることがなかった。もう1つはFnキーの位置。現在、ノートブックPCでは、左Ctrlの右にFnを置くものと、Fnの右に左Ctrlを置くものとがあり、WXW/79GWは前者だ。筆者は普段後者のレイアウトのノートブックを使っているため、FnやCtrlを伴うキーを押す際の感覚(とくにショートカットで指を開く間隔)が異なる。一方、パームレストは17型筐体だけに面積が広い。また、タッチパッドの表面には小さな凹凸があり、タッチパッドが苦手な筆者の誤操作を軽減してくれた。タッチパッドの下には、中央に指紋認証センサーを搭載した左右クリックボタンを装備している。ツルツルなキートップにはややマイナスな印象を受けたものの、ゲーム目的でWXW/79GWを購入するユーザーであればおそらく外付けのゲーム用キーボードを別途用意するのではないか、とも思う。 東芝のハイエンドノートといえばHarman/Kardonスピーカー。WXW/79GWではキーボード上部の左右、そしてパームレストの左右にそれぞれ搭載されている。実際にはキーボード面の4chに加え底面のサブウーファーを加えた4.1ch仕様となるHarman/Kardonスピーカーは、FPSゲーム中の飛び交う弾丸の音などの位置感覚までもリアルに伝えてくれる。ゲーマーにとって強力な武器だ。音にこだわるゲーマーの場合、PCに専用のハードを追加しさらにAV機器を繋ぐこともあるだろう。しかし、WXW/79GWは標準でも十分に満足できる音響を備えているのが魅力だ。1つ気をつけたいのは、スピーカー部は開放型である点。ゴミが入りやすいので喫煙者は取り扱いに注意すべきだし、飲料を飲みながらの操作は控えた方がよいと思う。 電源はACアダプタ式で、容量を見てみると19V×9.5Aでおよそ180Wの供給能力があるようだ。このスペックの製品となると当然なランチボックスサイズ。しかしデスクトップに匹敵する性能と液晶ディスプレイまでを含めて考えればやむを得ないサイズだろう。
外観チェックの最後にインターフェイス類を確認しておこう。WXW/79GWは大型ボディである分、インターフェイスも豊富である。IEEE 1394aやUSB 2.0はもちろん、特徴的なのはeSATA/USB 2.0共有ポート。eSATA/USB 2.0共有ポートはeSATAおよびUSB 2.0ケーブルがそのまま挿せ、そして自動的に認識されるポートだ。eSATAで高速かつ大容量な外付けドライブを接続すれば、2.5インチの本体内蔵ドライブを補うこともできる。映像出力はミニD-Sub15ピンに加えHDMI端子を装備。HDTVとの接続も簡単だ。そのほか、今となっては希少なダイヤル式の音声ボリュームもゲーマーにとって便利なところだろう。 ●WXW/79GWの性能は? ではベンチマーク結果を見ていこう。 3DMark06のスコアは、やはりメインストリームGPUを超えてハイエンドGPUの領域である。ワイドアスペクトでテストしているため、ディスクリートカードとは少し比較しづらいところがあるが、3DMark06の標準解像度である1,280×1024ドットは、1,440×900ドットよりもわずかにピクセル数で多い程度である。そこから換算すると1,280×1,024ドットでテストしたならば9000 3DMarks前後の記録となっただろう。
3DMark Vantageは標準設定に任せてあり、Peformance設定で3938 3DMarksを記録している。このスコアは、ディスクリートカードを搭載したデスクトップと比較してしまえばやや控えめな数値である。しかし、Graphicsスコアは3644ポイントと高く、スコアの低下はグラフィックによるものではなくノートブックという制約からくるHDDやメモリ等の足回りに起因するものと予想される。
そのほか、DirectX 10タイトルによるベンチマークでは、FPSとしては平均30FPSを下回っているが、スコアとして他のグラフィックスカードテストと比較すればかなり健闘した内容と言える。また、DirectX 9タイトルのベンチマークでは、高画質設定での計測においても60FPSという指標を上回っている。
なお、1,680×1,050という解像度は、今回のベンチマークスコアを見る限り妥当な解像度ではないかと思う。1,920×1,200ドットの最高画質で最新FPSタイトルを楽しむには、現在最強の構成のWXW/79GWをもってしてもおそらくやや荷が重く、相当画質設定を落とさなければならないだろう。また、液晶ディスプレイの場合、解像度を下げるとスムージング処理されて画面いっぱいに拡大されるのだが、やはり画質が落ちるものである。ならば、1,680×1,050ドットというパネルは、WXW/79GWのスペックにとってバランスの良いものと言えるだろう。 PCMark Vantageのスコアも高く、ベーススペックはノートブックとしては十分なものがあると言えるだろう。メインストリームパーツで固めたデスクトップと比べると、もちろんコストは比べようもないが、性能では上回るものを見せている。これがノートブック型という省スペースで実現するのだ。また、よほどの負荷がかからない限りは動作音も静かだ。さすがにファンコントロールが働かない起動時、そしてフルロード時は耳障りなファンノイズであるが、それも短時間の我慢と思えばトレードオフでパフォーマンスメリットに軍配が上がるだろう。
□東芝のホームページ (2008年10月2日) [Reported by 石川ひさよし]
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