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【特別企画】台湾ネットブック開発者インタビュー VIA編
~HPへの搭載実績で採用に弾み

新店市にあるVIA本社


 VIA Technologiesの「C7-M」は「HP 2133 Mini-Note PC」やEverexの「Cloudbook」シリーズのCPUとして採用されており、IntelのAtomと共にネットブックのプロセッサとして位置づけられている。すでにVIA Technologiesは、C7の後継として、アウトオブオーダーのマイクロアーキテクチャを採用した「Nano」(開発コードネーム:Isaiah、CNA)を発表しており、まもなく市場に製品が投入される予定となっている。

 今回はVIA Technologies CPU製品マーケティング シニアディレクターのEpan Wu氏に話を聞く機会を得たので、その模様をお伝えしてきたい。

●HPに採用されたことで、大手OEMベンダへの売り込みが進む

VIA Technologies CPU製品マーケティング シニアディレクター Epan Wu氏

Q HPのネットブックなどに搭載されるなど、C7の採用が以前に比べると進んでいる印象があります。

Wu氏 おかげさまで、販売の方も好調と聞いており、ほっとしています。これからクリスマス商戦に向けても、大きなボリュームが期待できると聞いています。

Q HPに採用されたことはVIAにとって大きな前進と言えるのではないでしょうか。

Wu氏 おっしゃるとおりです。これまで我々は大手OEMベンダには、低価格のデスクトップPCなどで採用されたことがあるぐらいでした。1つには我々のメインターゲットが中国などの成長市場にあったからです。しかし、HPが採用してくれたことで状況は大きく変わりつつあります。実際、今は新しいNanoも含めると、トップ10のOEMベンダのすべてにご評価していただいております。

Q HP以外の製品への採用はどうなっていますか。

Wu氏 EverexのCloudbookやODMベンダのQuantaのネットブックなどに採用されています。Quantaの製品はチャネル向け製品で、インドや南米といった成長市場向けの製品となっています。

●差別化が難しいネットブックにこそNanoを

Q VIAとしてネットブック市場をどのようにとらえていますか。

Wu氏 1つには我々がずっと唱えてきた低価格のPCというソリューションが現実になってきたというのがあります。ネットブックに関しては、これまでの低価格PCとは異なる側面があると考えています。例えば、過去には199ドルのデスクトップPCという取り組みもありました。話題になったのは事実ですが、ビジネスとして成功したかと言えばそうではなかった。なぜなら、ユーザーは199ドルで低機能なPCを望んでいなかったからです。しかし、ネットブックには本当のユーザーニーズがあります。人々はいつでもどこでもインターネットを使いたいと考えています。また、それを低価格でやりたいと考えているのです。

Q ネットブック市場でのVIAのアドバンテージはなんですか。

Wu氏 まず指摘したいのはネットブックでOEMベンダは差別化できるのでしょうか、という点です。ご存じのように、ネットブックではIntelやMicrosoftがガイドラインを用意して、それに沿った形での製品となっているものがほとんどです。その結果、Atomプロセッサを採用して、液晶は8.9型で……とスペック的には同じようなものになってしまいます。そうした状況に対して、我々は別のバリューを提供したいと考えているのです。我々が今後リリースするNanoプロセッサは、Atomに比べて性能で勝っていると考えています。かつ、コンポーネントレベル(CPU+チップセット)で見れば、価格は同じレンジです。そこに、ネットブックにおけるVIAプロセッサの存在する意義があると考えているのです。

Q Intelはネットブックの定義に10.2型以下という制限を加えていますが、VIAはいかがですか。

Wu氏 我々はこうした製品をネットブックと呼んではいますが、別にノートPCと区別しているわけではありません。もちろん、ある特定の仕様をメーカーに押しつけるということもやっていませんので、OEMベンダは自由に設計していただけます。MicrosoftのULCPCの定義が14型まで拡張されたことで、Windows XP Home Edition ULCPC版を搭載した12型や14型のネットブックを製造することも可能です。弊社の競合他社の場合、その市場はもっと高いプロセッサを購入しないと作れないわけですが、弊社の場合には低価格なC7やNanoを使って製品を作っていただくことが可能です。

Q そのNanoプロセッサですが、現在の状況はどうなっていますか。

Wu氏 Nanoプロセッサはサンプル出荷を第2四半期から開始しています。また、今月からは製品版の出荷も開始しています。まずは、弊社のEPIAシリーズやOEMベンダのMini-ITXボードの形で市場に出回ることになると考えております。弊社のEPIAに関しては私は担当ではないので詳しいことはわかりませんが、今月中にも正式な発表をする予定だと聞いています。

Q Nanoプロセッサのネットブックへの搭載の可能性はどうでしょうか。

Wu氏 現在複数のOEMベンダでプロジェクトが進んでいます。ただし、Mini-ITXなどのボードに比べるとネットブックやノートPCなどはシステムになるので、評価などにも時間がかかりますので、もう少し時間はかかると思います。最低でもサンプルから半年程度は必要になりますので、早くても来年の第1四半期以降ということになると思います。年明けのInternational CESでは何らかの形でお見せできるかもしれません。

Nanoを搭載したネットブックのサンプル。パームレストのC7のシールを見てもわかるように、C7をNanoに置き換えただけのシンプルな製品

Q どのような形の製品があり得るのでしょうか。

Wu氏 もちろん新しいシャーシの製品もありますし、すでにあるC7-Mを搭載した製品をNanoに置き換えた製品もあると思います。というのも、ご存じの通り、NanoはC7-Mとピン互換になっており、OEMベンダはC7をNanoに置き換えるだけでNano搭載製品へと変更することができるのです。

Q 消費電力などは大丈夫なのでしょうか。

Wu氏 Nanoの熱設計消費電力の枠はC7のものを引き継いでいます。さらにアイドル時の消費電力に関してはC7が240mWであるのに対して、Nanoは200mWとさらに低くなっています。ご存じのように、実利用環境ではCPUがアイドルになっていることが多いので、このことはバッテリ駆動時間にもよい影響があると考えています。

Q では、例えばHP 2133 Mini-Note PCをNanoに置き換えて出荷することも可能なのでしょうか。

Wu氏 我々の立場としては技術的には可能だ、とだけ申し上げておきます。これ以上はHPの判断ということになりますので、HPにお聞きいただければと思います。

●SSE4をサポートしたCNBはサンプル生産。来年にはデュアルコア版CNC

Q Nanoが発表されたばかりで気が早い話なんですが、Nanoの今後はどうなりますか。1月に米国でグレン・ヘンリー氏(C7/Nanoを開発しているCentaur Technologyの社長兼CEO)にインタビューした時には、現在のNano(CNA)の後継として、CNBを用意しているというお話でしたが。

Wu氏 CNBはすでに最初のサンプルが今月にできあがるところです。CNBでは、SSE4への対応などのいくつかの新しい機能を実装しますが、基本的にはNanoファミリーの1つのSKUという形になり、特に新しいブランド名を冠するという予定はありません。また、来年にはCNBのデュアルコア版となるCNCを計画しています。CNCは競合他社の製品のように基板上に2つのダイを実装するという形ではなく、ネイティブのデュアルコアとなる製品になります。また、その先にはさらに統合度を高めた製品を計画していく予定になっています。

Q 現在のNanoは65nmプロセスルールを採用しています。45nmへの移行計画はありますか。また、45nm世代でも引き続き富士通のファウンダリを利用しますか。

Wu氏 CNC以降の世代では45nmプロセスルールへ移行する予定です。ただ、現時点ではどのファンダリーを利用するかはまだ決定されていません。

Q チップセットの方はいかがですか。特にHPの製品ではビデオ再生周りでユーザーの不満があると思うのですが。

Wu氏 HPの製品の場合、設計された時期の関係でCN896というやや古い世代のチップセットになっています。動画の再生支援機能などが最新のチップセットに比べるとやや不満があるということは事実です。しかし、すでに新しいチップセットとして「VX800」をリリースしており、MPEG-2やWMV9、VC-1などのアクセラレーション機能を提供しています。OEMベンダがこちらを選択していだければ性能面では大きな改善が見られると考えています。このVX800はシングルチップチップセットで、6カ月間、我々のメインチップセットとなると考えています。

 さらに次世代ではH.264のアクセラレーションを追加し、消費電力を下げる改良を加えます。これは来年の年頭あたりにリリースする予定です。さらにその数カ月後にはその後継となる製品も計画しており、そちらではH.264とVC-1のハードウェアデコード機能を追加する予定となっております。

Q 最後に日本のナショナルブランドなどでC7やNanoなどが採用される可能性はいかがでしょうか。

Wu氏 日本のPCベンダの方は製品の品質に非常に気を配っていて、新しいコンポーネントの評価は非常に慎重に行ないます。このため、どうしても他国のOEMベンダに比べて弊社のような新しい参入者の搭載製品のリリースがやや遅めになってしまいます。しかし、HPに採用していただいたことで、我々も1つの実績を残せましたので、日本のOEMベンダの方も積極的に弊社のプロセッサを評価していただいています。今すぐにどこかのPCベンダからリリースされるということはなさそうですが、来年には日本のPCベンダから弊社のプロセッサを搭載したシステムがリリースされることもあるのではないか、そう考えています。

Q ありがとうございました。

 VIAのC7がリリースされたのは2005年。Mini-ITXボードや成長市場向けのホワイトボックスなどには採用例が多数あったのだが、なかなかトップ10のOEMベンダには食い込めない時期が続いていた。しかし、HP 2133 Mini-Note PCに採用されたことでそのバリアを破り、Nanoで次のステップへと進もうとしている、というのがVIAの現状だ。

 日本のユーザーとしては、やはりナショナルブランドのPCベンダへの採用を期待したいところだ。我々にとって良いニュースとしては、VIAのプロセッサ関連の担当者は1週間おきに来日して日本のメーカーと折衝などを続けているのだという。そこまで熱心に日本にアプローチしているということは、何らかの話は進んでいると考えることができるだろう。

 Wu氏もいうように、選択肢がAtomだけでは、ユーザーの選択肢が狭まるし、何よりもIntelが敵なしと悠然と構えているようでは技術の進化も期待できない。多くの読者は覚えていると思うが、2000年にTransmetaがCrusoeをリリースしたあと、Intelは急遽、超低電圧版をリリースしたりと、矢継ぎ早に対抗策を打ってきて、Banias以降の低消費電力プロセッサへの流れへとつながった。1ユーザーとして筆者は、そういった競争と技術の進化を願うばかりだ。

□VIA Technologiesのホームページ(英文)
http://www.via.com.tw/
□ネットブック/UMPCリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/link/umpc.htm

(2008年9月25日)

[Reported by 笠原一輝]

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