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【特別企画】台湾ネットブック開発者インタビュー MSI編
〜10型というサイズから生まれた快適さや拡張性

Wind Netbook U100


 現在、急速な勢いでネットブックの市場が立ち上がりつつある。ネットブックの立役者は言うまでもなく「Eee PC」シリーズを発売したASUSTeKであるが、この夏までに他の主立った台湾ノートPCメーカーからも製品が日本市場に投入された。直近では米Dellの製品も発売されたほか、Lenovoも海外では製品発表を行ない、日本のメーカーも水面下では準備を進めつつあるという。

インタビューを行なった台湾中和市にあるMSI本社

 現時点で発売済みあるいは仕様が公開されている製品は、一部を除きほとんどがAtomプロセッサを採用。また、MicrosoftやIntelが規定するネットブックの仕様に従うため、製品の大まかな仕様や価格帯は似てきてしまう。こういった点から、ネットブックを買いたいが、どれにしようか迷ってしまうというユーザーも少なくないだろう。

 今回、台湾のネットブックメーカー各社の開発者にインタビューする機会を得た。各社製品のコンセプトや、差別化のポイント、今後の製品展開予定など、製品の仕様やレビューからだけでは伝わってこない点について紹介していくので、製品選択の際の一助となれば幸いだ。

 最初に紹介するのは、「Wind Netbook U100(旧称Wind Notebook U100)」を擁するMicro-Star International(MSI)だ。インタビューには、ノートブック統括部門でプロダクトマネージャを務めるNeo Lin氏とIris Chuang氏、および開発担当マネージャのMonica Lo氏、意匠担当マネージャのHenri Chen氏らが応じてくれた。

●10型液晶を前提に開発が進んだU100

Q まず、Wind Netbook U100(以下、U100)の製品を開発するに当たって、基本に据えたコンセプトについて教えてください。

Neo Lin氏(左)とIris Chuang氏(右)

Chuang氏 ご存知のように、ネットブックではASUSTeKが先駆けとなってEee PCを発売しました。そこで我々は、Eee PCについてマーケットリサーチを行ないました。そこで分かったのは、当初ネットブックが想定していた新興市場だけでなく、成熟市場でも大きな需要があるといことです。しかしEee PCは7〜9型の液晶を搭載しており、やや小さすぎるという不満があることも分かりました。その結果、我々はキーボードのサイズの観点からも10型の液晶が、使う上で快適であり、重量も重くなりすぎないと判断し、これを基準に製品の仕様を決定しました。また、ネットブックでいち早くHDDを採用し、十分な容量を確保したことも自負しています。

Q Windというネーミングには何か由来があるのでしょうか。

Lin氏 これは「WIfi Network Device」を意味しています。

日本では発売されていない、模様の入ったホワイトモデル

Q ネットブックにとって重要な要素は何であると考えていますか。

Lin氏 ネットブックは新興市場をターゲットにしているので、低価格であることが重要です。我々は部材レベルでさまざまな低価格化を図っています。しかし、成熟市場ではメインPCではなく2台目以降の用途として、気軽に持ち運んで使う状況が多くなっています。その点では、バッテリ駆動時間や、外観なども非常に重要になってきます。我々はカラーバリエーションなど、デザインも重視しています。

Q 低価格化のための要素についてもう少し教えてください

Lo氏 ネットブックについては、IntelとMicrosoftがそれぞれ推奨する規格というのを提案しています。これに従った仕様にすることで、我々はチップやOSをより安価に入手できます(編集部注:Microsoftは規格を満たしたネットブックに対して、Windows XP Home Editionを通常より安価に提供している)。

Q MSIにとって、ネットブックはビジネスモデル上、どのような役割を果たしているのでしょうか。

Lo氏 我々はノートブックメーカーとして、(DellやHPなどが1st Tierであるのと違い)2nd Tierです。そのため、ネットブックは、我々の立場を引き上げていく上で、良い機会になると考えています。

Lin氏 ネットブックは1台あたりの単価および利益は少ないですが、その分、売れる数量は多くなります。そのため、十分利益は確保できます。

Q 現在、U100は日本で供給量が十分でなく、買いたくても買えないユーザーがいますが、その理由は何でしょう。

Lin氏 日本だけでなく世界各地でU100に対する需要が非常に大きく、製造が間に合っていないのが実情です。これについては、現在最大限努力しています。

Q 液晶パネルにノングレアタイプを選んだ理由は何でしょう。

Lin氏 まず我々は、輝度や消費電力の観点からLEDバックライトのパネルを使うことを選択しました。実は現在、LEDバックライトでワイド10型のパネルにはノングレアタイプしかないのです。

Q 液晶パネルに1,280×768ドットなどより高解像度のものを選択する考えはなかったのでしょうか。

Lin氏 それもやはり現在入手可能なパネルがこれしかなかったのです。将来的には差別化のため、他のメーカーとは異なるタイプのパネルを装備していく必要があると認識しており、16:9のパネルなどを検討しています。その際も、10型であることが前提になります。

Q タッチパネルを採用する予定はあるのでしょうか。

Lin氏 その予定はありません。コストが上がりますし、タッチパネルはUMPCでは有効でしょうが、ネットブックでは必要性があるとは思えません。

U100のマザーボード。HDDの右横にSO-DIMMスロットがある。オンボードメモリは裏側に実装(写真は6月に撮影したもの)

Q U100はオンボードで1GBメモリを搭載していますが、使われていないSO-DIMMスロットもあります。これはどういった理由からでしょうか。

Lin氏 Microsoftの規格では、液晶は10型以下、HDDは160GB以下、メモリは1GB以下となっています。しかし、この規格は随時変更される可能性があります。幸い、U100は10型液晶を採用したことでマザーボード上にSO-DIMMスロットを設けるのに十分なスペースを確保できました。これにより、例えばメモリの上限が2GBに変わっても、我々はすぐに対応できます。

Lo氏 また、製造上の理由もあります。というのも、SO-DIMMのコストは頻繁かつ大きく変動します。例えば、SO-DIMMの価格が高い時は、オンボードメモリを使い、SO-DIMMの価格が下がったら、オンボードの代わりにSO-DIMMを使うと言うこともできるのです。

Q ただ、ユーザー各自のアップグレードの観点から言うと、SO-DIMMスロットにアクセスするには大がかりな分解が必要となりますね。

Lin氏 それは本体コストを下げるために、構造をなるべく簡素にしたかったからです。

●専用のアクセサリの発売を計画

Q 小型化や軽量化の得意な日本のメーカーに言わせると、台湾のネットブックのマザーボードは大きいという指摘があります。

Lin氏 確かに日本の製品のようにマザーボードのレイヤー数を増やすことで、小型化することはできますが、そうするとコストが跳ね上がってしまいます。我々はまず、10型の液晶を使うことを決定しました。その上で、設計し、完成したのが今のマザーボードなのです。

Monica Lo氏

Lo氏 U100のマザーボードは6層です。

Q U100の製品名は「Wind Notebook U100」から「Wind Netbook U100」に変わりましたが、キーボード左上のロゴはまだ「Notebook」のロゴがついています。

Lin氏 それは今後のバージョンで「Netbook」に変わる予定です。

Q 6月に行なわれたCOMPUTEXでは、U100の革張りモデルが展示されましたが、これを製品化する予定はあるのでしょうか。

Lin氏 将来的に、より多くの色や模様のモデルを出す計画はありますが、革張りモデルは完全なコンセプトモデルで、製品化の予定はありません。

Q タッチパッドのボタンを2つではなく1つにしたのはどういう理由でしょうか。

Henri Chen氏

Chen氏 構造を簡素にすると言うのが大きな理由です。ただし、将来の製品ではこれは変わるかもしれません。

Q 今、日本に入荷されているものは二次出荷分からタッチパッドのメーカーが変わったことで、タッチパッドをなぞってスクロールできなくなったという問題があるようです。

Lin氏 スクロールについては、問題ではなく、それが今の仕様なのです。特に欧州のユーザーからのフィードバックで、本体が小さいネットブックでは、手がタッチパッドに当たって、意図しないスクロールが発生するという声がありました。そこで、我々はなぞってスクロールされないよう仕様を変更したのです。

Q それ以外にも、二次出荷分以降で、ハードウェアが変わったにも関わらず、添付CDのマウスドライバが前のハードウェア用のものであるため、一部の機能が使えないようです。

Lo氏 2種類のハードウェアが存在するのはタッチパッドに限らず、安定供給を受けるためです。ドライバについては出荷時は、Microsoftの標準ドライバをインストールしています。添付CDドライバの問題は、我々は正確に問題を把握していないので、症状を教えていただければ、対策を講じたいと思います。

Q U100やネットブックに限らない話ですが、携帯機器にとっては、アクセサリー類などエコシステムを充実させることも重要です。これについて何か計画はあるのでしょうか。

Lin氏 その点は我々も同じ考えです。実際、内部ではすでにU100専用のマウスやポーチの準備を始めているところです。また、「Designed for U100」のようなロゴプログラムも計画していますし、サードパーティとも協業を始めています。

Q SDカードスロットは、中にSDカードを完全に挿入できないので、カードを挿入したまま持ち運ぶのに問題があります。

Lin氏 我々は、デジタルカメラなどのデータを移動するのを主目的としたからです。ですが、確かにストレージ用途として使うには、中に入りきった方が便利ですね。今後のモデルで検討したいと思います。

Q ACケーブルはもう少し細くできなかったのでしょうか。

Lo氏 それは3ピンのプラグを選択したからです。

Lin氏 そういう要望があるのであれば、2ピンタイプのACアダプタ/ケーブルを検討したいと思います。また、今のACアダプタは40Wですが、35Wでより小型にすることも検討したいと思います。

●6セルバッテリは準備完了。日本は10月発売

Q 6セルバッテリの予定はどうなっているのでしょうか。

Lin氏 すでに台湾ではオプションとして発売しているほか、標準で6セルを搭載したものも用意しています。日本では6セルバッテリ単体を10月に発売する予定です。ちなみに、6セルバッテリは本体の奥方向ではなく、下に出っ張る形です。6セル搭載機の本体重量は1,250gです。

U100に6セルバッテリを装着したところ 下に1cmほど出っ張る形となり、本体を置いた時に若干の傾斜がかかる

Q 天板のデザインについてなにか特徴はありますか。

Chen氏 我々はローコストで光沢のあるIMRという技術で塗装を施しています。素材は他の部分も含めABS樹脂を使っています。他社製品にはアルミ素材を使ったものがありますが、アルミ素材はコストが倍になってしまいます。耐圧については、点加重で天板の9カ所について25kgの耐圧性能を確保しています。デザインについては、我々はノートブックの対象セグメントごとに変化を持たせています。U100では、多くのユーザーになじみやすいデザインを目指しました。「MSI」のロゴのデザインが本製品だけ違うのもそのためです。

Q U100のシステム全体の消費電力を教えてください。

Lo氏 最大負荷時で32〜34W、アイドル時で6W以下です。

Q U100のコンポーネントの中でもっとも消費電力が高いのは何でしょうか。

Lo氏 USBです。U100では、WebカメラやBluetoothなど多くのデバイスがUSBにつながっており、これが液晶パネルやCPUなどよりも大きな電力を消費しています。

Q 出荷時にWebカメラがOFFになっているのはそのためでしょうか。

Lin氏 その通りです。

Q ファンレス化は検討したのでしょうか。

Lin氏 Atomではファンレス化も不可能ではありません。しかし、そうしてしまうと本体が非常に熱くなり、腿の上に置いて使うことができなくなってしまいます。そのため、ファンを搭載しました。熱設計については、HP、工人舎、東芝、富士通など各社の製品とも比較し、それらに勝るとも劣らないレベルになっていると自負しています。

Q SSDを使うという選択肢はなかったのでしょうか。

Lin氏 ご存知の通り、Eee PCはSSDを使っていますが、容量が小さくなっています。我々が調査した結果では、SSDの長所よりも容量の大きさの方が重要視されることが分かりました。また、容量の大きなSSDは価格が高くなってしまいます。SSDはネットブックよりも、性能が求められる一般的なノートブックに向いていると思います。

●年末にHSDPA搭載の第2世代モデル

Q 今後の製品について、製品ラインナップはより拡大していくのでしょうか。

U100と同じ筐体に8.9型液晶を搭載したU90

Lin氏 現時点では1〜2つのラインナップが適切だと思っています。具体的には、U100の下位モデルとして、同じ筐体で液晶を8.9型にした「U90」を台湾ではすでに発表しました。その後、U100の後継モデルとして年末を目処に、3.5G HSDPA対応の「U120」シリーズを予定しています。液晶は10型ですが、このモデルの外観は全く新しいものに変わる予定です。こちらも、同じ筐体で8.9型の「U91」を予定しています。この後の第3世代の製品では、もう少しラインナップを広げ、例えばパワーユーザー向け製品も用意するかもしれません。

Q VIAのNanoプロセッサを使う計画はありますか。

Lin氏 現時点ではその予定はありません。もちろん、VIAの今後のプロセッサについてはその都度検討していきますが、当面はIntelプロセッサになります。

Q デュアルコアAtomの登場が近いと言われていますが、ネットブックに採用する予定はあるのでしょうか。

Lin氏 ネットブック向けのデュアルコアAtomは2009年以降に予定が後退しました。そのため、製品はそれ以降ということになりますが、採用は前向きに検討しています。ただし、消費電力が2倍になってしまうため、いろいろ解決しなければいけない課題が残っています。

Q ネットブックにWindows Vistaを採用する予定はあるのでしょうか。

Lin氏 現在、Microsoftの規格もありますが、Atom用チップセットが2GBまでしかメモリを搭載できないという理由から、Windows Vistaは荷が重いと考えています。ただし、新しいプラットフォームが出てくれば、Windows Vistaを使う可能性もあるでしょう。

Q 最近になってMicrosoftは、ネットブック向けの規格を変更し、タッチパネルや14型液晶も対象に含めたそうですが、それが直近の製品展開に影響することはあるのでしょうか。

Lin氏 その話は事実です。しかし、もう一方のIntelの規格もあるのです。

Lo氏 その通りで、現時点でIntelはネットブックでは10型以下の液晶を規定してます。ですので、まだしばらくはこれよりは大きくはならないでしょう。

Q ありがとうございました。

 このように、Wind Netbook U100は、開発当初から見やすさや打鍵のしやすさから10型というサイズを選び、その結果、ネットブックの中で、メモリ面でもっとも拡張性が高いというメリットも持ち合わせたことが分かった。第2世代の製品でも、この10型というサイズは踏襲されるようだ。

 また、安価な「ネットブック」を提供するには、MicrosoftとIntelそれぞれの規格、すなわち思惑が大きく影響していることも分かる。低価格、小型、性能面での一定の妥協といったネットブックの要素は、今後もしばらくは変わらないと思われる。しかし、もともとは新興市場だけを対象にしていたネットブックが、予想を超えて成熟市場でも受け入れられたように、その用途がメーカーの想定とは異なったものに変化していくことは十分考えられる。市場の変化にスピーディに対応していくのは台湾メーカーの得意とするところだが、そういった際にMicrosoftとIntelの規格が、大きな制約とならないよう願いたい。

□MSIのホームページ(英文)
http://global.msi.com.tw/
□製品情報
http://www.msi-computer.co.jp/products/NB/U100.html
□ネットブック/UMPCリンク集(MSI)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/link/umpc.htm#msi

(2008年9月17日)

[Reported by wakasugi@impress.co.jp]

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