発売中 価格:BTO デルから8月末に登場した「Studio Hybrid」は、机の上やリビングのAVラックなどに違和感なく置くことができる小型のデスクトップPCだ。 本体を覆うカバーの色を6色から選択できたり、カバーの材質に竹を選択できたりするなど、サイズが小さいというだけでなくデザインがユニークだということも大きな特徴となっている。また、消費電力の少なさも売りになっており、デルでは「標準的なデスクトップPCと比べて消費電力を約70%削減した」と謳っている。実際、使用するACアダプタの出力は最大65Wしかなく、ノートPCと変わらない。 Studio Hybridは、今まであまり見たことのない、小型でユニークなデザイン、低消費電力という特徴を持った新しいタイプのデスクトップPCだ。 ●ここまで小さくできた理由は本体を開けると一目瞭然 デスクトップPCを選ぶ際に気になることと言えばスペックだ。まずはStudio Hybridのスペックを見ていこう。今回試用したStudio Hybridのスペックは下の表のとおりだが、Studio HybridはBTOでスペックをある程度自由に指定できるので、各パーツの選択肢についても簡単に紹介する。 【表】今回試用したStudio Hybridのスペック
まず、CPUにはCore 2 Duo T9300(L2キャッシュ6MB、2.5GHz)、Core 2 Duo T7250(L2キャッシュ2MB、2GHz)、Celeron 550(L2キャッシュ1MB、2GHz)を選択できる。T9300のStudio Hybridを使ってみた感想としては、デスクトップPCとして十分な性能を持っており、何の不自由もなかった。当たり前ではあるが、このクラスのCPUを搭載していれば、Webブラウズや日頃のPCの操作、動画の再生、音楽の変換などでCPUパワーに不足を感じることはない。 チップセットにはIntel GM965を搭載する。チップセットの名称に「M」が付いていることから分かるように、ノートPC向けのチップセットだ。前述したCPUも、ノートPC用のCPUである。Studio Hybridは、ノートPC用のパーツを使用することで小型化を実現したデスクトップPCというわけだ。小さなデスクトップPCを実現するために、ノートPC向けのパーツを使用する手法はPCメーカーではよく使われている。液晶ディスプレイとPC本体が一体になっているPCのほとんどは、Studio Hybridと同様に中身はノートPCだ。 ノートPC用のパーツを使う理由は、本体サイズを小さくするとPC内部の放熱が追い付かないためで、とくにCPUの発熱量の差が大きい。たとえば、デスクトップPC向けのCore 2 Duo EシリーズはTDPが65Wだが、ノートPC向けのCore 2 Duo Tシリーズは35Wであり、ノートPC向けのCPUを使うだけで放熱面の設計がグッと楽になる。しかも、3Dゲームなどをやらないのであれば、どのCPUを使っても性能は十分なので、ユーザー側のデメリットは価格が少し高くなるという以外には何もない。Studio Hybridも、デバイスマネージャなどを確認しなければ、中身がノートPCだとは普通は気付かないだろう。 次に、グラフィックス機能はIntel GM965が内蔵するGMA X3100だ。グラフィックスカードなどを追加するオプションはない。そのため、Studio Hybridは3Dゲームの用途には向いていないPCということになる。これは、後述するベンチマークテストの結果を見ても明らかだ。 メモリは、PC2-5300 DDR2 SO-DIMMを最大4GB搭載可能だ。HDDは、5,400rpmの2.5インチHDDを160GB、250GB、320GBから選択できる。接続はSATAである。光学ドライブには、DVDスーパーマルチドライブか、Blu-ray Disc(再生専用)とDVD±R/RWのコンボドライブを選択できる。このサイズのPCでBDドライブを搭載できるのはうれしい。HDMI出力も備えているので、リビングに置いてBDの再生機としても利用できる。中身がノートPCなので無線LAN機能も簡単に追加でき、IEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LAN機能を購入時に選択可能だ。 OSにはWindows Vista Ultimate SP1、Windows Vista Home Premium SP1、Windows Vista Home Basicを選択できる。いずれも32bit版だ。 ●よく光るが高級感があり縦置き横置き両対応で使い勝手は上々 Studio Hybridには専用のスタンドが付属していて、それを使えば縦置きでも横置きでもどちらでも設置を行なえる。1つのスタンドで縦置きと横置きの両方に対応できるので便利だ。本体サイズは、スタンドを付けない状態で横置きにすると横196mm×奥行き211mm×高さ71mm、スタンドを付けると横が201mmに、高さが97mmに増える。縦置きの場合はスタンドを付けた状態で横76mm×奥行き211mm×高さ224mmだ。いずれも実測値であり、デルの仕様に書かれている数値とは若干異なっている。縦置きの場合、スタンドを付けなければ本体が立たないので、スタンドは必須だ。実際に机の上に置いてみると、横置きだと設置面積が大きくなるので、縦置きで使ったほうがより狭いスペースに設置できる。一方、液晶ディスプレイの下にスペースが空いている場合や、リビングなどに置きたい場合には横置きのほうがスマートな雰囲気になる。 本体を覆っているカバーは、アクリルのような材質のものが6色と、竹製のものが用意されていて、購入時に好きなカバーを選べるほか、あとから別売りのカバーを購入することもできる。色は、サファイアブルー、スレートグレー、ルビーレッド、クォーツピンク、ジェードグリーン、トパーズオレンジの6色、竹は本物の竹なので竹色だ。
カバーを交換できることもユニークだが、6色+1材質が用意されていることもユニークで、このカバーの存在がStudio Hybridの大きな魅力になっている。事実、カバーはなかなかスタイリッシュで、パッと見ただけではStudio HybridはPCには見えない。楕円形の本体は机の上に置いても違和感はなく、リビングに置いても家電製品とよく馴染む。購入時にワイヤレスマウスとワイヤレスキーボードを選んで、さらに無線LAN接続を利用すれば、本体に接続するケーブルはディスプレイケーブルと電源ケーブルだけになり、かなりスタイリッシュに使える。小さな本体の魅力をうまく引き出している良くできたPCだ。 ACアダプタも出来が良くて驚いた。デルと言えば、巨大なACアダプタが付いていることが当たり前だと筆者は思い込んでいたが、Studio HybridのACアダプタは大変薄くて小さい。サイズは実測で、66×125×15mm(幅×奥行き×高さ)しかなく、置き場所に困ることはない。ACアダプタに付いている固定用のゴムバンドを使えば、ACアダプタを机の脚などに固定することも可能で、使い勝手も大変良い。 Studio Hybridは、やたらと光るPCだ。しかし、その光り方が上品でうるさくないために、光るPCにありがちな安っぽさがない。まず、本体前面の電源ボタンを押すと電源ボタンが白く光る。そして、前面下部にhybridの文字が白く浮かび上がってくる。このhybridの文字は縦置き時と横置き時で文字の向きが自動で回転するようになっていて、文字が常に正しい向きで見えるようになっている。PCの性能とは関係ないが、おもしろいギミックだ。 ほかには、電源を入れるとHDDのアクセスランプと光学ドライブのイジェクトスイッチも白く浮かび上がってくる。光学ドライブのイジェクトスイッチはメディアを入れたときにだけ浮かび上がる仕組みになっていて、その部分を手で触れるとメディアが排出される。いずれも、見方によっては印刷に見えるような光り方なのでまぶしく感じるようなことはなく違和感はない。 本体の両側面にはDELLのロゴが光って浮かび上がるようになっているが、こちらもおだやかな光り方だ。光りの色は白だが、使用しているカバーによって青く見えたり赤く見えたりする。そのほか、ACアダプタの端子部分も光る。こちらは青色だ。ここだけはコンセントに刺さっているだけで光るので本体の電源を切っても光り続けるが、本体の背面に隠れてしまうので通常の使用時に端子部分の光りが見えることはない。 どの部分も、ただ光らせるだけでなく、きちんと高級感を演出したものになっていて評価できる。筆者はPCをわざわざ光らせるということがあまり好きではないので、Studio Hybridのやたらと光るギミックが必要だとは思わない。ただ、Studio Hybridの光り方ならあっても悪くないと感じた。 ●欠点が見当たらない上質な省スペースPC 最後に、Studio Hybridのベンチマークテストの結果を見てみよう。使用したソフトはいつものHotHot REVIEW!で使用しているお馴染みのものだ。 結論から言ってしまえば、3Dグラフィックスの処理以外は十分に高性能で何の問題もない結果となっている。結果の傾向は大変分かりやすく、たとえばPCMark05とWindowsエクスペリエンスインデックスの結果を見てみると、グラフィックスの項目だけ妙に値が低いことが分かる。Studio Hybridは、Intel GM965チップセットが内蔵するGMA X3100グラフィックスコアを使用しているので、これは当然の結果だ。つまり、Studio Hybridでは3Dグラフィックスを使用するようなゲームは快適に楽しめないということになる。このことはFINAL FANTASY XIの結果を見ても分かる。比較的古い技術を使用しているFINAL FANTASY XIであってもHighの値は1,357しかなく、快適にゲームを楽しむことは難しい。Lowなら何とかなりそうだが、あえてLowで遊びたいという人はいないだろう。3DMarkの結果などは、もう触れても仕方がないというレベルの値だ。 Studio Hybridにはグラフィックスカードを追加するような選択肢はなく、最初から3Dゲームなどを楽しむ用途は考えていない設計になっている。だからこそ、これだけ小さく、かつスタイリッシュなPCを実現できたとも言える。筆者が1週間ほどStudio Hybridを使用した限りでは、性能に不満を感じたことは1度もなく、動画の視聴や、Webブラウザの使用、WordやExcel、Power Pointの使用、簡単な画像処理、音楽CDの変換、テキストエディタの使用などなどを快適にこなしてくれた。ゲームも日本製の簡単な3Dゲームや、2Dゲームなら問題なく楽しむことができた。これだけのスペックであれば当たり前ではあるのだが、多くの人にとってStudio Hybridは十分に高性能なPCとして使用できる。 せっかくBDドライブを搭載しているので、BDの映画を購入して見てみたが、何の問題もなくスムーズに再生できた。再生ソフトはデルのMedia Directというマルチメディア統合ソフトで、再生時のCPUの負荷は50~60%程度だった。ソフトの使い勝手は良いとは言えないが、映画を見る程度の使い方なら大して気にならない。 ちなみに、購入したのは「earth」というドキュメンタリー映画である。Studio Hybridとは直接関係はないが、やはり1,920×1,080ドットのHD映像というのはかなりキレイだ。今まで、BDドライブの必要性はあまり感じていなかったが、これなら映画などのためだけにBDドライブを持っていてもいいかもしれないという気持ちになった。Studio Hybridの用途に映画の視聴が含まれているならBDドライブの選択を検討してみるとよいだろう。 【表】ベンチマークテスト結果
まとめると、Studio Hybridは省スペースPCの購入を考えている人にとって、かなり有力な候補となり得る。ライバルには、AcerのAcerPower1000シリーズや、ASUSのEee Boxあたりが入ってくるだろう。それぞれStudio Hybridとの大きな違いは、AcerPower1000シリーズはCPUがAMDということと、デザインがPCそのものということ、そして大きさが少し大きいという違いがある。また、Eee BoxはCPUがAtomなので性能面で差があるということと、光学ドライブを搭載していないという違いがある。 Studio Hybridは、PCらしくないユニークなデザインに、高級感、BDドライブを搭載できるなどアドバンテージは多い。スペックを高くするとそれなりに高価になってしまうが、価格に見合う満足感は得られるはずだ。どうせ買うなら良いものが欲しいと考えている人に最適な省スペースPCと言える。 □デルのホームページ (2008年9月17日) [Reported by 小林 輪]
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