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ARM、IntelによるAtom優位の主張に強く反論

代表取締役社長の西嶋貴史氏

9月9日 開催



 大手CPUコアベンダー英国ARM Ltd.の日本法人アーム株式会社(以下ARMと略)は、9日に東京都内で報道機関向けの説明会を開催した。説明会の案内文には「MID(モバイル・インターネット・デバイス)市場に関するラウンド昼食会のご案内」とあったものの、実際には米Intelの主張に対する反論の場となった。

 Intelは最近、AtomプロセッサとARMプロセッサの性能比較を盛んに公表し、Atomプロセッサの優位性を積極的に訴えている。これまで、ARM側からは表だった反論は行なわれていなかったが、堪忍袋の緒が切れたと見えた。

 初めに代表取締役の西嶋貴史氏が、ARMワールドワイドの状況を簡単に説明した。2007年の売上高は5億1,430万ドルで、ARMコア内蔵製品の出荷数量は約30億個に達した。ARMコア内蔵製品の売上高はおよそ4兆円と推定している。

ワールドワイドの2007年売上高。対前年比で約6%伸びた 2008年第2四半期時点でARMコアをライセンス導入している企業の例

平田一行シニアマネージャー(左)

 続いてマーケティング&ビジネスデベロップメントのシニアマネージャーを務める平田一行氏が、Intelの主張するAtomの優位性を示したスライドや図版などに対し、問題点を指摘した。

 まず挙げたのは、AtomプロセッサはARMコアに比べ、EEMBCベンチマークでは2倍ほど高い演算性能を発揮したという性能比較結果である。この比較に使われたARMコアの動作周波数はAtomプロセッサの半分しかなく、ARMコアには古いコンパイラを使用し、ARMコアは2次キャッシュを持たない状態と指摘した。

 動作周波数を同一にして最新のコンパイラを使用し、同じ容量の2次キャッシュを使用してARMが比較したところでは、EEMBCベンチマークの5種類の用途別セット(Suites)の内、4種類でARMコア(Cortex-A8コア)がAtomよりも高い数値を示したという。

Intelが主張するAtomの演算性能優位(上側)とARMの反論(下側)

 続いてWebページ7種類のレンダリング時間を比較した結果を俎上に上げた。Intelの作成した図版では、Atom Z530はARMコアに比べると非常に短いレンダリング時間を示している。しかし比較に使用したARMコアは4年前の2004年にリリースしたARM1136で古いコアであり、しかもZ530が1.6GHz動作で512KBの2次キャッシュ付きなのに対し、ARM1136は400MHz動作で2次キャッシュなしの条件であった。

 そこでIntel側をAtom Z500の800MHz動作で512KBの2次キャッシュ付き、ARM側を最新コアの「Cortex-A8」の800MHz動作で512KBの2次キャッシュ付きと条件をそろえたところ、ARMの推定では7種類中5種類のWebページではレンダリング時間がARMコアの方が短くなった。

Intelが主張するWebページのレンダリング時間(上側)とARMの反論(下側)

 またNokiaの携帯電話「N810」によるWebページのレンダリング時間がAtomプロセッサよりもはるかに長いとIntelは述べてきた。動作周波数1.6GHzのAtom Z530は16倍速く、同800MHzのAtom Z510は4倍速いというのがIntelの主張である。

 これに対してARMは、N810は動作周波数が400MHzのARM1176を搭載しており、ARM1176は2年前のCPUコアなので、最新プロセッサであるAtomと比較するのはあまり適切ではないと指摘した。そして最新のARMコアであるCortex-A8を動作周波数768MHzで走らせた場合は、2倍の動作周波数である1.6GHz動作のAtomとの性能差は25%程度に縮まると主張した。

Intelが公表したWebページの閲覧時間比較(左側、携帯電話機N810とAtom)と、ARMの反論(右側、Cortex-A8とAtom)

 そしてARMコア搭載の携帯電話機はいくつかのWebページを閲覧できないとのIntelの指摘に対しては、プロセッサ・アーキテクチャの違いによるものではなく、機器が搭載しているソフトウエアの違いによるものだと反論した。

 具体的には、Flash 9とCKJフォント(中国語、韓国語、日本語のフォント)を実装すると、x86プロセッサでもARMコアでも閲覧できないWebページはゼロになるとしている。

左側は、ARMコア搭載の携帯電話機では閲覧できないWebページが少なくないとのIntelのスライド。右側は搭載するソフトウエアを変えてWebページの閲覧状況を比較したARMの検証結果

 さらに、IntelはAtomプロセッサの消費電力が低いと強調しているが、同じ計算方法だとARMコアの消費電力はAtomプロセッサよりもはるかに低くなると指摘した。Intelは動作時間の80%をディープスリープモードとし、動作時間の1%だけフルスピードになると仮定してAtomの標準的な消費電力を214mWと算出した。

 同じ仮定をCotex-A8コアに当てはめると、標準的な製造プロセスでは32mW、低消費電力版の製造プロセスでは9mWとなり、Atomよりもずっと低い消費電力になるという。

Atomの消費電力とCortex-A8の消費電力。Intelの仮定条件をCortex-A8に当てはめると、Cotex-A8の消費電力はAtomよりもはるかに低くなる

 以上のようにARMの反論は丹念かつ詳しいものだった。ARMとしてはこれまで、Intelのプロセッサとの性能比較はあまり行なったことがなく、今回の資料発表はIntelの宣伝攻勢に対する対抗的な措置としている。Intelからのリアクションが期待されるところだ。

□ARMのホームページ
http://www.jp.arm.com/
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【6月4日】【COMPUTEX】Intel、“Diamondville”こと「Atom」を正式発表
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【1月15日】携帯電話の標準CPU「ARMコア」の現状
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0115/arm.htm

(2008年9月10日)

[Reported by 福田昭]

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