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【PCゲームグッズLab.】
ゲーマー向けサウンドカード
クリエイティブ「X-Fi Ttanium FCS」



●Sound Blasterは今でもゲーマー必携のカードなのか?

PCI Express Sound Blaster X-Fi Titanium Fatal1ty Champion Seriesのパッケージ

 クリエイティブのSound Blasterと言えば、'90年代からずっとゲーマー向けサウンドカードの定番だった。それはジョイスティックを接続するゲームポートや、3Dサラウンドをサポートする「EAX」など、独自の機能がゲーマーに評価されたためだろう。

 今ではゲームポートはその役割を終え、またWindows Vistaでサウンド周りの仕様が一新されたことでSound BlasterのEAXは機能しなくなった。後者の問題については、一部ソフトについてEAXをOpenALに変換する力業で対応している。かつては、Sound Blasterを導入することでゲームのパフォーマンスが劇的に向上した。しかし、今ではPCのスペックの向上に伴い相対的にサウンドの負荷が小さくなっている。サウンドカードを追加しても、FPS(Frame Per Second)が2~3向上する程度ではないか、とそのコストパフォーマンスについて疑念が持たれている。

 オンボードのチップセットが当たり前のように多チャンネルに対応し、S/Nの向上など機能面で追いついて来た感もある。果たしてSound Blasterには今でも導入する価値があるのだろうか? そんな疑問を解消するために実際に試してみた。

●VistaでX-Fiを試す

FCSのパッケージ内容物

 今回取り上げるのは、クリエイティブのゲーマー向けサウンドカード「PCI Express Sound Blaster X-Fi Titanium Fatal1ty Champion Series」(以下FCS)である。インストールから一通り試して行く。

 FCSは8月上旬に発売されたばかりで、現在では実売2万円前後で販売されているようだ。PCI Express接続のサウンドカードはクリエイティブのほか、ASUSUTeKも投入している。

 FCSは今回のシリーズの最上位モデルに当たり、5インチベイ用のフロントインターフェイス「X-Fi I/Oドライブ」が付属する。このほか、中位モデルとしてHDMI入力のピンヘッダを搭載し、ステレオミニ→RCAケーブル(2m)を4本同梱した「X-Fi Titanium Professional Audio」と、EMIシールドとX-RAMを省いたスタンダードモデル「X-Fi Titanium」がラインナップされている。

 サウンドカード部の基本仕様は共通で、アナログ入力は24bit/96kHz/ステレオ対応、アナログ出力は24bit/192kHzのステレオ、または24bit/96kHzの7.1チャンネル出力に対応する。S/N比は109dB。X-Fiプロセッサを搭載し、X-RAMと合わせて低負荷なサウンド再生や、ソフトウェアとの連動による疑似サラウンドとサウンド補完の機能などを備える。これらの機能は既存のモデルをほぼ踏襲しているが、新たに「Dolby Digital Live」と「DTS Connect」に対応し、5.1ch音声データをDDLかDTSに変換してS/PDIFから出力できるようになった。

 製品のパッケージは、カード本体とX-Fi I/Oドライブに加え、それらを接続するケーブル2本、I/Oドライブの取り付けねじ、ドライバCD、その他紙資料からなる。

 以下より、写真とキャプションでハードウェア面の特徴を紹介する。

5.1chのアナログ出力、マイク入力、S/PDIFの入出力を備える I/Oドライブと接続するプラグ メインのDSPは「CA20K2-2AG HF」。CA20K1の後継モデルで、PCI Express 1.1インターフェイスを搭載。EAX 5.0やOpenALをサポートする
ライン入力、マイク入力、ヘッドフォン端子を備える。マスターボリュームとマイクボリュームを調整可能。ほか、赤い3つのボタンで上から順にGame Mode、CMSS-3D、CrystalizerをON/OFFできる。ただし3つのボタンは後述のコンソールソフトを起動していないと機能しない I/Oドライブの背面。シールドは重厚だが、ケーブルがむき出しになっているのが気になる 外枠を外して3.5インチベイで利用できるが、ライン入力は無くなる
I/Oドライブの内部は簡素な作りだ ボタンが赤いため、黒いケースには若干自己主張が強いデザインかもしれない。ヘッドフォンをすぐ手元で抜き差しできるは非常に便利だ

●インストールに難アリがいつものパターン

 ハードウェアのインストールは実に単純だ。PCI Express x1スロットにカードを差し込み、5インチベイにI/Oドライブを取り付け、双方をケーブル2本で接続する。

 マザーボードによっては、ビデオカードのすぐ隣のスロットに取り付けることになるが、今のところ熱によるクラッシュなどは起きていない。ただし、ケーブルを2本も接続するため、PCケース内の配線がさらに込み入った物になってしまう。

 問題はソフトウェアのインストールである。同社のドライバやアプリケーションソフトは扱いが難しい。例えば一昔前のビデオカードのそれと同様で、インストールやアンインストールが綺麗に完了できない場合がある。

 本製品も例外ではなかった。テストマシンからオンキヨーの「SE-90PCI」を取り外し、代わりにFCSを取り付け、その後CDからドライバとアプリケーションをフルでインストールしてみた。この時点でサウンドは鳴るが、FCSの機能を操作するコンソールアプリ「Creative コンソール ランチャ」がエラーで起動しなかった。そこで一度すべてをアンインストールした後、標準でインストールすることで正常に起動した。

 なお、一部のソフトウェアはオンラインのアクティベーションが必要になっており、ソフトウェアのインストールとアクティベーションやアップデートなどで1時間くらいかかった。また、I/Oドライブのライン/マイク入力が機能せず、I/Oドライブのボタンが光らないといった問題があったことを書き添えて置きたい(音量調整やボタン類は機能する)。

【9月5日12時30分追記】クリエイティブによると、最新のドライバをインストールしDDLとDTS Connect用のアップデートを適用すればアクティベーションは不要になった。

インストールからアクティベーションで結構手間がかかった X-Fiの各機能をコントロールする「Creative コンソール ランチャ」のゲームモード
カードとI/Oドライブをケーブル2本で接続するため、ケース内部の配線がさらにカオスになる ボリュームは機能するが、各種入力が機能しないという問題が発生した。ほか、ボタンは機能するがそのボタンが光らないという問題も起きている

●魅力的なゲーマー向け機能を備える

 さて、インストールが終了したことにして、実際の機能面を見ていこう。サウンドカードの各機能を操作するアプリケーションとして「Creative コンソール ランチャ」が用意されているので、それを中心に見ていこう。

 コンソールソフトウェアは、ゲームモード、オーディオクリエーションモード、エンタテインメントモードの3つからなる。各モードはそれぞれの名前に応じた利用シーンが想定されているようで、使える機能が少しずつ異なる。共通してCMSS-3DとCrystalizerが利用可能なほか、オーディオクリエーションモードではミキシングコンソール風の操作が、エンタテインメントモードではEAXのモード設定などが可能になっている。

ゲームモードのシンプルなミキサー。マイク、AUX In、ラインインは排他入力 オーディオクリエイションモードではミキシングコンソール風の操作が可能 エンタテインメントモードではEAXのモード設定が可能。この辺は好みが分かれるところだが、音に締まりがなくなるので使うにしてもジャズクラブまでだろう

 CMSS-3Dは1つ前の世代のX-Fiから搭載された機能で、主に2つの機能がある。1つは2チャンネルのスピーカーかヘッドフォンでバーチャルサラウンドを提供すること、もう1つはステレオソースのサウンドを4.1~7チャンネルにアップミックスすることだ。

 CMSS-3Dはもちろんゲームでも利用可能で、これまでEAXで実現されていたサラウンドを置き換えて行く機能と見られる。VistaでEAXはサポートされず、またEAX 5.0をサポートするソフトは、国内ではほとんど対応ゲームが発売されておらず、すでに集束の方向だからだ。その効果の程を定量的に語るのは難しいが、実際にFPSゲームの「Call of Duty 4」で試してみたところ、敵の銃撃音でその方向を把握したり、仲間のヘリが後方から援護してくれていると言ったことが把握できた。利用する場合にはステレオスピーカーによる曖昧な定位よりも、ヘッドフォンを利用することを推奨したい。

 FPSなどのゲームを嗜むユーザーには言うまでもないことと思うが、1対1~5人1組などのチーム戦において、足音で相手の方向に当たりをつけマップと組み合わせて相手の位置を把握できるのは大きなアドバンテージになる。そういったシリアスなユーザーにとって、この機能は大きな魅力になるだろう。

 Crystalizerについても説明しておこう。これは圧縮音源を再生する際に、24bit/96KHzにアップサンプリングすると同時に補完することでよりよい音質を提供するものだ。一聴してみて、高音と低音が強調された様に感じるが、サウンドが全体的に粒立ち個々の音が聞きやすくなった印象を得なくもない。多くのサウンドが重なった状況下でサウンドを聞き分け、状況把握に役立てることができるならば、こちらもゲーミングにおいてプラスになると思う。

 ちなみに、PCI Express対応のX-Fiは再生リダイレクト機能を備えない。これは本製品も同様であるため、ゲームをプレイしながら“実況”といった用途には不適だ(Windows XP環境では再生リダイレクト機能を利用可能)。

CMSS-3D。設定はシンプルでエンベロープの調整と出力先の選択ができる Crystalizerも効果を調整できるが、あまり強くするとドンシャリの傾向になり、音楽試聴には好ましくない傾向になる

●性能

 FCSの音質やサウンドの特性については、僚誌AV Watchにてチェックされているので、そちらで確認してもらいたい。ひとまずX-Fiを搭載したテストマシンで、「Rightmark 3DSound」のCPU Utilization testを利用してCPU使用率を確かめて見た。

表1:テスト環境

CPUCore 2 Duo E8400(3.0GHz)
マザーボードGIGABYTE GA-EP35-DS3R
チップセットIntel P35 Express
メモリ2GB DDR2-800
サウンドカードPCI Express Sound Blaster X-Fi Titanium Fatal1ty Champion Series
オンボードサウンドRealtek ALC889A
ビデオカードGeForce 8800 GTS
OSWindows Vista Ultimate SP1 32bit

【グラフ1】同時再生音数とCPU使用率(%)

 OpenAL 3D/2DともにX-Fiのハードウェアアクセラレーションを利用している。また比較用にオンボードの「Realtek ALC889A」を掲載した。OpenAL 3D/2Dの8音同時再生のCPU負荷は0.3%未満、60音で0.8%中程という結果になった。数字は前後するものの、ともになだらかな上昇曲線を描き、X-Fiがサポートする最大の128音でも2%を超えていない。

 しかし、オンボードのRealtek ALC889Aは16音以降の結果が乱れている。そのため、X-Fi搭載によるパフォーマンス向上がどの程度になるのかはっきりしないが、オンボードサウンドで同時再生音数が高まった場合、何らかの処理が省かれ正確に再生されていないのは確かなようだ。サウンドの正確な再生という点で、オンボードサウンドはX-Fiに及ぶレベルではないようだ。

 では、実際のゲームでパフォーマンスを確かめようというわけで、先頃発売された「Devil May Cry 4」(以下DMC4)のベンチマークを試してみた。標準状態と負荷を高めた状態の2パターンを下表にまとめた。ちなみに、DMC4のベンチマークはランダム要素が含まれるため結果が一定にならないが、3度計測して同じ傾向になったことを確認している。

【グラフ2】Devil May Cry4ベンチマーク(DirectX 9)
【グラフ2】Devil May Cry4ベンチマーク(DirectX 10)

 ベンチマークの設定は解像度が1,280×1,024で、MSAAがC16xQ、VsyncがOFF、その他諸々の設定はSUPER HIGHとし、DirectX 9と10の2モードで行なった。

 まず、DirectX 9での結果を見てみると、シーン1/2ではFCSでの結果が若干上回ったものの、シーン3/4ではオンボードサウンドの結果が上回った。ベンチマークにランダム要素があるとは言うものの、やはりサウンドの負荷が小さいため、サウンドカードの追加によるFPS向上は数フレームにとどまるか、あるいはほとんど変わらないようだ。

 DirectX 10での結果を見ると、DirectX 10に切り替えたことでFPSが10~20程度低下している。しかし、オンボードサウンドと比較してX-Fi FCSを搭載したテストのFPSは平均4.25~15.11も向上する結果になった。FPSが2桁も向上するとなると、誤差というには大きすぎる結果であり、もちろんFPSの向上が体感できる結果である。とはいえ、DirectX 10環境下でのこれほどのFPS向上は予想外だ。

 DMC4のサウンドが何のAPIを用いているのかは残念ながら公開されていない。このFPS向上が何に起因するものかは不明だが、無数に存在する各ゲームタイトルにおいて、FPSが向上する一例ととらえることは少なくとも可能だろう。

●まとめ

 要点をまとめよう。X-Fi Titanimum FCSは、インストールに若干の難点があるものの、CMSSとClystalizerというゲームプレイに好適な機能を備える。パフォーマンス面では、モードあるいはタイトルによって異なるが一定のパフォーマンス向上に寄与するようだ。

 I/Oドライブベイについては、残念ながらあまり試せなかったが、PC本体がデスクの下に設置してあるある場合、フロントパネルからすぐにヘッドフォンを接続したりできるのは非常に便利だろう。3つの赤いボタンを使うにはソフトウェアの起動が前もって必要になるが、これはボタンでソフトの起動ができた方が便利だったように思う。

 端的に言うと“クセが強い”ということになるが、CMSS-3DもClystalizerも他社のサウンドカードには搭載されていない、クリエイティブ独自の機能だ。そういった機能を魅力に感じるエンスー系のゲーマーならば、ゲーミング環境の強化に役立ててみるのもいいだろう。

□クリエイティブのホームページ
http://jp.creative.com/
□関連記事
【5月19日】Creative、PCIe x1接続のゲーマー向けサウンドカード
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0519/creative.htm
【2005年10月17日】【DAL】新DSP「X-Fi」採用の「Sound Blaster」(AV)
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20051017/dal208.htm

(2008年9月5日)

[Reported by matuyama@impress.co.jp]

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