元麻布春男の週刊PCホットライン

バッファローのEee PC 901-X用SSDを試す




Eee PC 901-X

 8月29日、ASUSTekは同社のミニノートPCであるEee PCシリーズに、「Eee PC 900-X」と「Eee PC 701 SD-X」の2モデルを追加すると発表した。このうち後者は下位モデルであるEee PC 4G-Xの後継、前者はEee PC 701 SD-Xと上位モデルであるEee PC 901-Xの中間に位置づけられる製品だとしている。いずれもCPUに採用したのはCeleron M 353(超低電圧版Dothan)であり、Atomの供給量が足りていないことを強く示唆している。

 それはともかく、既存のEee PCユーザーにとってこの2機種がショックなのは、Cドライブに使われているSSDの容量が8GBと16GBにそれぞれ増量されていることだ(現時点で国内モデルがSLCなのかMLCなのかについて正式な発表はないが、下位モデルとという位置づけならMLCであろう)。従来モデルでは、上位モデルとされるEee PC 901-XですらCドライブは4GB(これと別に8GBのDドライブあり)にとどまっていた。

 4GBのSSDでWindows XP Home Editionを運用するのは結構ギリギリの線で、メモリを2GBに増設するとハイバネーションファイルを作成することもできない。つまりスリープとシャットダウンのみの運用で、休止を選択することはできない。

 901-Xの場合、出荷状態で仮想記憶も無効になっているが、それでもCドライブの空き容量は1.3GB程度。Windows Updateで最新の状態にすると、IE7をインストールしなくても1.01GB、IE7をインストールすると819MBまで空き容量は減る。アプリケーションをDドライブにインストールしても、一部のファイルはWindowsのシステムフォルダ(Cドライブ)にインストールされるし、ブラウザプラグイン、ブラウザのキャッシュなど、Cドライブを圧迫する要因には事欠かない。

 メールにWebメールを使うなど、Intelの言うように、インターネット接続を前提にした使い方をしたとしても、4GBのSSDでは常にCドライブの空き容量が気になる。大昔のMS-DOS時代ではあるまいし、いまさら不要なファイルを気にしながらPCを使うのはストレスが貯まる。8GBや16GBのCドライブを持つ新モデルは、これを気にしなくて済むだけでも楽だろう。Eee PC 901-Xも、Cドライブを増量したモデルへの切り替えが不可欠ではないだろうか。

●SSDで容量不足を補ってみる

 とはいえ、いくら願ったところですでに901-Xを使っているユーザーのドライブ容量が自動的に増えるわけではない。ドライブ容量を増やすには、ドライブを大容量のものに交換する以外に方法はないのだ。

 ご存じのように901-Xの内蔵ドライブは、4GBのSLC SSDと8GBのMLC SSDで構成される。バイト単価で不利なものの、性能に優れるSLC SSDをシステムドライブ(Cドライブ)に、性能は若干劣るものの、バイト単価で優位なMLC SSDをデータドライブ(Dドライブ)に割り当ててあり、1つのドライブとして扱うことができない。

 また、取り付け位置や物理形状も異なっており、底面のカバーを外すだけで交換が可能なMLC SSDに対し、SLC SSDは本体を分解しない限りアクセスできない位置に取り付けられている。形状も、SLC SSDの基板はMLC SSDより全長が短く、物理的に両者を入れ替えることはできない。

 こうした制約を持つ901-XシリーズのDドライブ用専用SSDを置き換えるものとして、バッファローが大容量MLC SSDの販売を予定していることは以前紹介した。今回、前回のレポートで間に合わなかった64GB版のサンプルを入手できたので、この性能を前回と同じ簡単なベンチマークテストで調べてみる。と同時に、BIOSでCドライブとDドライブを入れ替え、ここにシステムを移してみることにした。MLC SSDにOSをインストールした場合、体感レベルで差が分かるかどうかが気になるからだ。

 というわけで手元に届けられた64GBモジュールだが、シリアルナンバーこそSampleとなっているものの、メーカーロゴと型番が入ったシールが添付されており、かなり製品に近くなった印象だ。コントローラーチップはこのシールで隠されており型番は読めないが、基板の型番も同じことから、おそらく32GB版や純正品と同じPHISON ElectronicsのPS3006だろう。使われているNAND Flashチップは前回の32GB版に使われていた東芝製の32Gbit MLCチップ(TH58NVG5D1D)に代わって、同じ東芝製の64Gbit MLCチップ(TH58NVG6D1D)が8個。計64GBの容量となる。

バッファローが発売するEee PC 901-X専用64GB SSDモジュール 東芝製の64Gbit MLC NANDフラッシュチップを計8個実装する

 早速このモジュールをEee PC 901-Xに取り付けて、簡単なベンチマークテストを実施してみる。その結果を見る限り、容量は違っても性能的には32GB(SHD-EP9M32G)と変わりはないようだ。工場出荷時に取り付けられている8GBのモジュールより性能は若干だが良い。

CrystalDiskMark 2.1.5(MB/sec)
標準内蔵4GB(C)標準内蔵8GB(D)SHD-EP9M64G (MLC)SHD-EP9M32G (MLC)SLC 16GB (試作品)KINGMAX USB 外付け8GB(参考)
Seq Read 33.1630.3332.3633.1140.1419.44
Rnd Read 512k 32.6330.073333.1439.0919.52
Rnd Read 4k 5.9946.9866.2286.2698.5034.6
Seq Write 10.6610.812.0312.4125.988.998
Rnd Write 512k 4.9242.3142.4622.5776.0691.573
Rnd Write 4k 0.0610.0230.0230.0270.0650.013
FDBench 1.01(KBytes/sec)
ReadWrite 188591607018724183722460010783
Read 324252924831960319603680818669
Write 1081498141185010128220593939
Random Read 258972323528240286113485318098
Random Write 630127852845278846802429
Copy 9257470272507360115251308
2k 12611823015018915
32k 1628252302720443603411
256k 1643529461184111757164592242
Variable 18841153911390415491258492564

 64GBという容量は、HDDを搭載した一般的なノートPCとも十分比べられるものであり、そこに不満を持つ人は少ないだろう。実際には4GBのSLC SDDも引き続き利用できるから、トータル容量は68GBということになる。問題は、これがDドライブに固定されているという点だ。

 しかし冒頭でも紹介した通り、BIOSの設定を変更することで、CドライブとDドライブを入れ替えることができる。つまり64GBのMLC SSDをCドライブに、4GBのSLC SSDをDドライブに設定することが可能だ。もちろん、ドライブを入れ替える以上は、システムの入れ替えも行なう必要がある。

 というわけで手元で使えそうなツールを探したら、「Drive Image 5.0」が見つかった。シンプルなDOSベースのツールで、ドライブのイメージバックアップを作成できるほか、ドライブの完全なコピーと、パーティションサイズの変更ができる。発売はWindows XPのリリース直前だったが、Windows XPでも使えた記憶があったので、とりあえずこれを試してみることにした。Eee PC 901-Xは、リカバリDVDが付属しており、万が一の場合も外付けUSB DVD-ROMドライブから起動して、簡単に元の状態に復元することができるので、このあたりは気楽だ。実際の作業を行なう前に、まずDドライブのデータ(Eee PC 901-Xは一部のアプリケーションをDドライブのProgram Filesフォルダにインストールしてある)をUSBメモリや外付けHDDにコピーしておく。

 次にDrive ImageをCドライブにインストールした後、Windows上からDrive Imageのアイコンをクリックすると、Windowsがシャットダウンされ、ハードディスクの別パーティションにコピーされたDOSとともに、Drive Imageが起動する。Cドライブの2つのパーティション(CドライブとEFIシステムパーティション)をDドライブにコピーする設定を行なうと、Dドライブに空きがあるよ、と警告される(ドライブサイズが異なるため)ので、空き容量をすべてシステムパーティションで使い切るようサイズを変更しておく(デフォルトでそのようなサイズが提示される)。後はコピーが終わるのを待つだけだ。

 コピーが終わったらシステムを再起動し、BIOSでドライブの入れ替えを行なうと、問題なく64GBのMLC SSDがCとなってシステムが起動した。この時点で元のCドライブ(4GB SSD)のパーティションは見えなくなっているので、Windowsの管理ツールからいったんパーティションを削除し、Dドライブとして利用できるようパーティショニングとフォーマットを行なう。これで64GBのCドライブと4GBのDドライブが利用可能になる。バックアップしておいたDドライブのデータを新しいDドライブにコピーして、とりあえずの作業は完了した。

●SSDのエクスペリエンスは……

 これで64GBのMLC SSDからシステムが起動するようになったわけだが、SLCとMLCの違いは、ある程度体感できる。ベンチマークの結果では、MLCとSLCの違いは結構小さいと思っていたのだが、システムをインストールして使っていると、思わぬところで反応が数秒間止まったりする現象に出くわした。たとえば、スパイダソリティアを開始したら、表になった1枚目のカードが配られてから次のカードが配られるまで1~2秒待つ、といったケースだ。あるいは、アプリケーションのボタンを押してから、反応が返ってくるまで、1~2秒待たされることがある、という感じである。アプリケーションの開始時、あるいは新しい機能を呼ぶ出す際に、「引っかかり」を感じることがあるとでも言えば良いのだろうか。いずれの場合も、ロードが終われば普通に利用できるのだが、普段は遭遇しないことだけに、「アレッ」と思ってしまう。

 それならということで、前回テストした16GB SLC SSDの試作品と入れ替えてみることにした。システムを転送する手順は上の通り。今度は16GBのCドライブと4GBのDドライブの組合せとなる。すると今度はMLCドライブの時に感じたひっかかりはない。さすがにSLCは値段が高いだけのことはある。現状ではシステム起動に使いたいのであれば、SLC SSDを使った方が良いのは間違いない。

 だが、だからといってMLC SSDがダメだと決めつけるのは間違っている。SSDはようやく市場が立ち上がろうとしているところであり、まだコントローラチップ等の改善も緒についたばかりだ。DRAMによるキャッシュ、ウェアレベリングアルゴリズムの改善、ハードウェアによるECC処理、並列読み出し/書き込みによる高性能化など、MLCで改善できることは少なくない。これらに配慮したSSD専用のコントローラを採用した製品が出てくれば、また評価も変わってくるハズだ。

 残念ながらEee PC 901-XのSSDは、独自形状の専用品であると同時に、基板面積も限られているから、こうした新しい技術の恩恵をどれだけ受けられるのかは分からないが、誰もが手を出せる価格帯でSSDを採用したさきがけ的な製品として、歴史的にも評価されるのではないかと思う。

□関連記事
【8月18日】【元麻布】バッファローに、Eee PC 901-X用SSDの詳細を聞く
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0818/hot563.htm
【8月18日】バッファローのEee PC 901-X用SSDが先行モニター販売
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0818/buffalo.htm
【7月30日】バッファロー、「Eee PC 901-X」用SSDの詳細を正式発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0730/buffalo.htm

バックナンバー

(2008年9月2日)

[Reported by 元麻布春男]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp ご質問に対して、個別にご回答はいたしません

Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.