[an error occurred while processing the directive]

NVISION08レポート

トニー・タマシ上級副社長テクニカルセッションレポート
「NVIDIAが描く5年後のGPUの姿」

NVIDIA トニー・タマシ上級副社長

会期:8月25日~27日(現地時間)

会場:米国カリフォルニア州サンノゼダウンタウン



 NVISIONでは基調講演、NVIDIAのパートナー企業などによる展示会などの他、テクニカルセッションと呼ばれる技術説明会も開催されている。その中の1つでNVIDIAのトニー・タマシ上級副社長(SVP、Contents & Technology)の「Evolution of Computer Graphics」では、ここ10年間のGPUの進化と、今後5年間の予想が語られた。

●ムーアの法則を上回る勢いで性能向上するGPU

 NVIDIAのテクノロジーマーケティング部隊を率いるタマシ氏は、過去10年のGPUの歴史を振り返り、「ここ10年、GPUは固定機能の時代、そしてその後動的なプログラムシェーダの時代と進化してきた。そして、今まさにフルプログラマブルなグラフィックスの時代を迎えつつある」と述べた。

 10年前のGPUと言えば、「RIVA128ZX2」などの時代で、まだGeForceシリーズもリリースされていない時代だ。その頃のGPUは、あらかじめ規定された動きだけを行なうハードウェアのレンダリングパイプラインなどを利用して描画しており、ジオメトリ演算などもCPU側で行なわれていた。

 タマシ氏は'98年のゲームの例としてDoom/Quakeシリーズの画面を見せ、「'98年の最新のゲーム画面がこれだった。16bitのカラー、テクスチャなどこの当時の最新の技術を利用している、これが今はハンドヘルドで動く時代になっている」と述べ、3D技術がこの10年で大きく進んだことを強調した。

GPU進化の歴史。固定機能の時代から始まり、プログラマブルシェーダの時代を経て、フルプログラミングが可能な現在へ '98年から各年に追加された機能の説明、毎年何かが追加されている '98年におけるゲームの画面。Doom/Quakeシリーズと説明されたが、年代や画面から考えて「Quake2」と思われる

 さらにタマシ氏は、「2003年にはプログラマブルなピクセルシェーダやバーテックスシェーダなどが導入され、かつGPU自体の性能も'98年に比べて飛躍的に向上した」と述べ、わずか5年の間に3Dグラフィックスの技術が大幅に向上したことを強調した。

 そして、'98年のハイエンド製品である「RIVA128ZX2」と2003年のハイエンド製品である「GeForce FX 5800」の性能を比較して見せた。例えば、テクスチャの処理能力は'98年が0.1Gテクセル/秒だったのに対して2003年は4Gテクセル/秒に、同じくアンチエリアシングの処理能力は'98年が0.1Gサンプル/秒であるのに対して2003年は2Gサンプル/秒に、ビデオメモリの帯域幅は'98年が1.6GB/秒であるのに対して2003年は16GB/秒へと強化されていると説明した。

 タマシ氏は「これらの進化は大雑把にいって1年で2倍となっている。ムーアの法則は18~24カ月で半導体の性能は倍になるというものだが、GPUの進化はそれを上回るものだと言っていいだろう」とした。ほぼムーアの法則にしたがって性能が向上していくCPUに対し、GPUがそれを上回る勢いで進化していることを強調したのだ。

2003年前後に追加されたGPUの新しい機能 '98年と2003年におけるGPUの各性能の比較 2003年時点でのゲームの代表例である「Call of Duty」

 そして、2003年の3Dゲームである「Call of Duty」を見せ、多くの人や環境マッピング、ポリゴン数の増加などさまざまなイメージ面への影響を指摘し、'98年に比べて表示品質が大きく向上していることを説明した。

●新機能の追加でプログラマの自由度が上がる

 さらに、今日のGPUの姿についてタマシ氏は説明した。まずは、1年で2倍という数字から、'98年から2008年までの進化の予測を示した。そして同社の最新GPUである「GeForce GTX 280」の数字を示し「予測には若干足りないが、おおむね10%以内に留まっている。ほぼ予測のレベルに到達している」と述べ、現在も1年で2倍という進化は継続しているとした。

 その上で、「2008年から始まった新しいトレンドはフルプログラマブルになったことだ。そしてユニファイドシェーダになったこと、新しいジオメトリシェーダの機能が追加されたこと、さらにはC言語を利用してプログラミングモデルが導入されたことにある」した。特に、ユニファイドシェーダにより、ハードウェアの利用率が向上するなどのメリットがあることを強調した。その上で、CPUとGPUとの浮動小数点演算性能(FLOPS)の比較を示し、2004年頃から急速にGPUの浮動小数点演算性能が向上し続け、現在ではCPUと大きな差がついていることを強調した。

2007年までの性能のトレンド、おおむね1年ごとに2倍で来ている 2008年の実際のGPUの性能。1年で2倍で計算するとやや足りないが10%以内の誤差ではあると説明された 現在はフルプログラマブルGPUの時代であるという。さりげなく、2009年に次世代のGPUが入っている
現在のGPUの特徴、フルプログラマブルでユニファイドシェーダ、ジオメトリシェーダなどが特徴となっている 浮動小数点演算性能でGPUはCPUを大幅に引き離している

 現在の3Dゲームの例として、今年リリースされる予定の「Far Cry 2」のビデオを流し、2003年時点と比べてもさらに表現力が向上したことを示した。

今年リリースされる予定の「Far Cry 2」の画面、今年のGPUではここまでリアルタイム描画できるという例としてビデオが流された

●2013年にGPUは20TFLOPSを超える性能を実現

 このように現在までのGPUの歴史を振り返った後、5年後となる2013年のGPUの姿を予想して見せた。今後GPU業界にとってテーマになりそうな内容として、バーチャルパイプライン、C++への対応、完全なポインタのサポート、選択的なワークロードのパーティショニングなどを上げた。

2013年のGPUへたどり着くまでに解決すべき課題。仮想パイプラインやC++への対応、完全ポインタのサポートなどが示された 2013年GPUの姿。汎用プログラミングモデルやハードウェアによりスレッドやパイプラインの管理などが想定されている 2013年への性能のトレンド。引き続き1年で倍の性能向上が想定されている
2013年への性能のトレンド。引き続き1年で倍の性能向上が想定されている 2013年GPUの性能

 そして、それらを実現する2013年のGPUのスペックとして、次の要素を示した。

・中間データフロー
・汎用プログラミングモデル
・特別用途のハードウェア(テッセレータなど)
・ハードウェアにより管理されるスレッドとパイプライン
・グラフィックスとコンピュータ演算の同居の自由度が向上

 これらの機能を実現すべく、今後もGPUの性能向上は続いていくと語る。2013年のGPUでは、テクスチャの処理能力は1Tテクセル/秒以上、アンチエリアスは10Tサンプル/秒以上、浮動小数点演算は20TFLOPS以上、メモリ帯域は1TB/秒以上になると予想し、今よりもさらにリアルに近づいた3D画面を描画することができるようになるだろうと述べた。

 最後にタマシ氏はBlizzard Entertainmentによる「World of Warcraft:Wrath of the Lich King」関連画像のビデオを見せた。この画像はオフラインレンダリングによるものだが、「2013年にはこうしたコンテンツがリアルタイムで実行できるようになる。より現実に近づくことが可能になるはずだ」とし、NVIDIAは、今後もCinematic(映画のようなリアルな感じ)なコンテンツをリアルタイムで実行できるように努力を続けていくとまとめた。

Blizzard Entertainment「World of Warcraft」のオフラインレンダリング映像ビデオ

□NVISION08のホームページ(英文)
http://www.nvision2008.com/

(2008年8月28日)

[Reported by 笠原一輝]

【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp
お問い合わせに対して、個別にご回答はいたしません。

Copyright (c)2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.