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Intel Developer Forum 2008

スティーブ・ウォズニアク対談レポート

対談の模様

8月21日 開催



 IDF 2008最終日のスペシャルイベントには、Apple創業者の1人スティーブ・ウォズニアク氏が登場した。同氏は、Apple I、Apple IIの設計者であり、著名なエンジニアである。もちろん、米国を代表する企業であるAppleの創業者ということでも有名で、米国では一般的な知名度も高い。

 今回も昨年と同じくNPR(National Public Radio)で、Tech Nation、BioTech NationのホストであるMoira Gunn博士がインタビュー役を務めた。本来は、インタビュワー形式なのだが、聞き役のGunn博士の進行があまり上手ではなく、話が前後したこともあり、全体を編集してのレポートとさせていただく。(以下 敬称略)

●お金が少ない方がうまくいく

スティーブ・ウォズニアク氏

 エンジニアの本質とは、という質問に対してウォズニアクは、「ロジックを考えたり、電子がどう動くかを考えるなどいろいろなことがあって、非常に頭脳的な努力が必要で、すべてがうまく機能するように考える必要がある。いろいろなチップを入れたらどうだろう、というだけではダメで、細かいところも含めて、たとえば、電圧は合っているかなども調べて、細かいところにも気を配らねばならない。ただ、私のアプローチは、ほかの人とは違う。他人に見せても違っていると言われる。なにかをするのに非常にコンパクトにやることが多い。私は、常にいいエンジニアでありたいと考えている」。

 さまざまな開発に関しては「お金は、少しぐらい足りないほうがいい。そのほうが、いろいろな『トリック』が出てくるから。トリックというのは頭の中に浮かぶ、本にないような工夫のこと。他人のやったとこでなく、そのアーキテクチャを理解して覚えたり、さまざまなものを記憶していると、突然、アイディアが浮かぶ。これとこれをつないでみたらいいんじゃないか、といったようなこと。お金が足りない方がいろいろな工夫をしてその結果、いいものになるのだと思う。私は、Apple IIの200ページのマニュアルも自分で書きました。当時は、ほかの人に書いて貰ったりすることはできませんでしたから。それから基本ソフトウェアも自分で書かねばなりませんでした。BASICも最初のものは自分で作りました。これは大学で学んだりしたわけではなくて、言語のマニュアルを見て、構造を自分で考えました」。

 ウォズニアク氏は、ハードウェアだけでなくてソフトウェアも自分で作った点で、賞賛されることがある。特に、最初のApple IIのROMソフトウェアは、機械語モニタ、16bit CPUエミュレータなどを含む高機能なものが、2KBというコンパクトなサイズにまとめられている。

 コンピュータのデザインについては「成功したコンピュータのデザインは、リーダーが明確な方向を示すことができる小さなグループで行なわれた。最もいい考えは、小さいグループの中に生まれる。これは、あなたたちが、多くの従業員を抱えるGoogleやMicrosoftのような大企業よりもうまくできることを意味している。私は幸運にも、Appleに競って入社しようとする多くの人たちがいなかったので、いろいろなことを言われずに仕事ができました」。

 コンピュータとの出会いは「高校生のときには、父のようにエンジニアになろうと考えていました。当時は、電子回路がエンジニアの扱うもので、電子技術を学ぶ学校に行きました。もちろん、PCを作ることになるとは思ってもいませんでしたが、コンピュータやデジタル技術は好きでした。あるとき、スモールコンピュータハンドブックというミニコンピュータについて書かれた本を見つけました。これで、私は、コンピュータを理解したのです。尊敬する人を挙げろといわれれば、この本の著者でしょうか」と述べた。

 この本はおそらくDoug Coward氏の「The Small Computer Handbook」('66)ではないかと思われる。これは、PDP-8などの初期のミニコンピュータについての書籍である。

 その後、ウォズニアク氏は、スタンフォード大学のリニアックセンター(高エネルギー物理の実験施設)にある図書館に頻繁に通い、コンピュータのマニュアルや雑誌などを集め始めたという。

●Appleとウォズニアク

 またジョブズ氏がAppleを一度去ったことについては「不誠実だと思ったが、今では戻ってきてくれたことがうれしいし、それに世界を変えるようなデバイスを作っています。いつでも彼は望む人になることができるし、私は、そのために1人のエンジニアになることを望んでいます。ジョブズは、シェークスピアとかアインシュタインのように100年以上も有名であり続ける偉大な人になることを夢見ていました。いつだって、私は、彼が売ることを望むコンピュータを作ります。その4番目のものはApple IIでした」。

 Apple IIが4番目というのは、おそらく大学時代に作ったBlueBox(電話のタダ掛け装置)と、ジョブズ氏がATARIにいたときに手伝ったBreakOutゲームマシン(ジョブズ氏は、部品数削減を命じられ、ウォズニアク氏にこれを依頼した)、そしてApple Iを数えてのことだと思われる。このとき、ウォズニアク氏は、HPに在籍していたが、ジョブズ氏の説得もあって、会社を辞めることになる。実際には、Apple Iを作ったときに会社の上司やジョブズ氏が勤めていたATARIの上司にもApple Iを見せたのだが、どちらも製品を理解できず、それぞれの会社がApple Iを製造することはなかった。前述の「お金は足りないほうがいい」は、ときにこのApple Iのときのことを指しているのだと思われる。2人は、車や高価なプログラミング電卓を売って、材料を購入して、Apple Iをガレージで作っていたという。

 「私は、社員番号が1番で、Appleが始まってからずっと、組織図の一番下にいました。ときどき、私はApple Storeに買い物に行きます。それで社員割引を頼みます。すると、店員が社員番号は何番って聞くんです。そのときに1番だよって答えます。それで、マスコミの人にいいたいのだけど、私は、iPhoneを買ったときには割り込みしませんでしたよ。それから、いつも社員割引で製品を買いますが、25%引きで、決してタダで貰うことはありません」。

 これについては、iPhoneの発売時にウォズニアク氏がセグウェイに乗って、Appleストアにやってきたこと、そして列の先頭を譲られて、買っていたという報道に対してのものだ。

 Intelアーキテクチャへの移行については、「私は、AppleへのIntelチップの採用は、いいと思っていました。特に低消費電力のアーキテクチャが我々のノートブックにぴったりで、これでかっこいいノートブックPCを作ることができると思いました。多くの人は、これに狼狽しましたが、これは正しい判断だっと思います。あのとき、IBMは、我々よりもソニーのゲームマシンのほうが重要で、我々の望むプロセッサを作ってはくれなかったからです」。

●名前を変えて大学へ再入学

聞き役を務めたMoira Gunn博士

 '85年に名前を変えてカルフォルニア大学バークレー校に再入学したことについては、「子供にお父さんは、ちゃんと大学を卒業した」ということを話したかったからだという。また、最近では、ボランティアで子供にコンピュータについて教えている。これは、学校の先生と違って、先に進む必要がなく、きちんと教えることができるのだという。

 教育については「私の父は、これをしなければならないという押し付けはなかった。トランジスタはどうやって動くの聞けば、電子の動きから化学的なことなど、細かいステップで教えてくれた。何かを理解できないのは、一度に入る情報が多すぎるからで、細かくステップを踏んで、段々と教えれば誰でもちゃんと理解できます。たとえば、スプレッドシートがうまく扱えないというのは、なんとなく理解しているけど、細かくステップを踏んで理解していないからだと思います。私の父は、良い価値観をたくさん教えてくれました」と述べた。

 ウォズニアク氏は、セイモア・クレイ氏やジーン・アムダール氏といったコンピュータ業界の偉人たちと、肩を並べるほど高く評価する人もおり、特にハードウェア、ソフトウェアの設計と実装を1人で行なったApple IIのデザインのすばらしさはいまでも賞賛されることが多い。

 今回のイベントは内容的には少し散漫だったが、「開発は少しぐらい予算が足りないほうがいろいろ工夫していいものができる」、「小さなグループから成功したコンピュータシステムができた」といった知見などにはなるほどとうなずけるものがあった。

【お詫びと訂正】初出時に一部誤訳の可能性がある記述がありましたので削除させていただきました。お詫びして訂正させていただきます。

□IDFのホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/
□ゲスト紹介(英文)
http://www.intel.com/idf/us/fall2008/highlights/guest.htm
□WebCast(英文、Day 3にリンクあり)
http://www.intel.com/pressroom/kits/events/idffall_2008/video.htm
□IDF Spring 2008 レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/link/idfs.htm

(2008年8月25日)

[Reported by 塩田紳二 / Shinji Shioda]

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