Intel Developer Forum 2008 アナンド・チャンドラシーカ基調講演レポート
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Intel上級副社長兼モビリティ事業本部 本部長 アナンド・チャンドラシーカ氏 |
会期:8月19日~21日(現地時間)
会場:米San Francisco Moscone Center West
ウルトラモビリティ事業本部を統括するアナンド・チャンドラシーカ上級副社長は、IDFの2日目に当たる8月20日朝(現地時間)に行なわれた基調講演に登場し、Centrino Atomを搭載した製品をアピールした。また、同社が来年に投入を予定している次世代プラットフォームのMoorestown(ムーアズタウン、開発コードネーム)についてもふれ、現在開発中のウェハを公開したほか、試作基板などを公開し、その小ささをアピールした。
●人々は制限のあるインターネットよりも、フル体験できるインターネットを望んでいる
チャンドラシーカ氏は、同氏の基調講演では定番となりつつある、IA(Intel Architecture)のインターネット環境におけるアドバンテージから話を始めた。
チャンドラシーカ氏は「インターネットのトラフィックの増加は実に著しい。こうしたトラフィックの増加を引き起こしているのは、新しい使い方が登場しているからだ。例えば、10年前ではAOL、Yahoo!、Microsoftなどが上位を占めていたが、現在ではそれらに加えて、YouTube、Google、Live、Facebook、MySpaceなどが上位を占めている。なかでもソーシャルネットワーク(SNS)やYouTubeは驚異的な増加を続けている」と述べ、ユーザーのインターネットの使い方が変化していることを指摘した。
「それらのサイトにアクセスする時に、ユーザーはどんなことを望んでいるだろうか。我々の調査によれば、ユーザーの2/3以上は、機能に制限があるインターネット環境よりも、常にフルの機能を活用できるインターネット環境を望んでいる」とし、互換性の問題が発生する他のプラットフォームよりも、互換性の問題がほとんどないIAプラットフォームの方がアドバンテージがあるとアピールした。
インターネットのトラフィックは高まるばかり | インターネットの使い方は変わりつつある。'99年の上位と2008年の上位は大きく変わってきている |
SNSやYouTubeのような新しい使い方が急速に伸びつつある | 制限なしのインターネットをモバイルで使いたいと考えているユーザーは増加している |
●モバイル環境でもIAを利用することで、ユーザーの利便性が向上する
その具体的な例として、チャンドラシーカ氏はモバイルSNSの「Gypsii」を、MID上で走らせるデモを行なった。Gypsiiは位置情報機能を利用可能なSNSで、無線LANのアクセスポイントやGPSなどから位置を認識し、友人が書き込んだ近くのお店のレビューを読んだりなどのさまざまなコミュニケーションが可能になっている。
サンフランシスコ周辺の友人のお薦めを見たり、さらにリンクがあればPCのフルブラウザを利用してアクセスする様子などがデモされた。
このほかにも、中国のNeusoftのMID向け新ユーザーインターフェイス、5月にβが発表されたFlash 10を利用した写真編集ソフトなどを紹介し、「これらの機能は、IAだからこそ利用できる」と強調し、モバイル環境でもIAを利用することで、ユーザーの利便性が向上するとアピールした。
Gypsiiのデモ。青いバルーンは、友人が紹介しているレストランなど |
Flash 10のβ版で動作する写真の編集ソフトのデモ | Neusoftの新しいユーザーインターフェイス。3Dを利用して、タッチパネルでの操作に適している。もう1つは医師用の電子カルテ |
●Atom搭載版のOQOが1080pビデオの再生デモに利用される
チャンドラシーカ氏はソフトウェアの重要性に加えて、それを実行する環境であるCentrino Atomの性能面に関してもアピールすることを忘れなかった。「Atomは、Pentium 4と同じトランジスタ数を搭載している。しかし、ダイサイズや消費電力は圧倒的に小さい」と、Atomの利点を述べた。
その性能の具体例としてWebページを閲覧する際のパフォーマンスやビデオ再生時の処理能力について触れた。実際にAtomプロセッサを利用して、3Dを利用したWebサイトにアクセスし、それが充分に表示できることをアピールした。また、1080pのMPEG-4 AVCのビデオを再生し、MIDでそれが再生できることをアピールしてみせた。
なお、その際に利用されたMIDは、OQO「Model02」のケースを使用していた。その後、表示されたスライドでOQOが新しいパートナーとなることが発表されたので、おそらく今後Model02のボディにAtomを搭載した製品がリリースされることになるだろう(現時点ではOQOのWebサイトにはそれに関する情報は何も掲載されていない)。
Atomプロセッサの特徴を説明するスライド | Webページを閲覧する際のパフォーマンスを、ARMと比較したベンチマーク結果 | 3Dゲームをやっているデモ、一見するとデスクトップPCでデモしているように見える、が…… |
実はそれはカバーだけで、中からMIDが登場 | MIDで1080pの動画を再生している様子。利用されているデバイスはOQOのModel02のAtom版と思われる | OEMリストの中にOQOが追加されているので、今後Atomを搭載した製品が発売される可能性は高い |
●松下電器やクラリオンがステージに呼ばれAtom搭載製品をアピール
今回の基調講演には、製品のリリース後ということもあり、実際にAtomやCentrino Atomを搭載したMIDを採用した製品をリリースしているベンダが招待されており、その製品のアピールが行なわれた。
今回ゲストとして呼ばれたのは松下電器とクラリオンの2社で、いずれもCentrino Atomを搭載したMIDやカーナビのデモなどが行なわれた。なかでもクラリオンは、同社が発表を計画している「MiND」と呼ばれるAtomベースのカーナビのデモを行なった。
MiNDは、日本で行なわれたAtomの発表会でもデモされたものだが、米国でデモされるのは初めてで、大きな注目を集めていた。タッチパネルを利用した斬新なユーザーインターフェイスを持ち、カーナビの機能のほか、音楽やビデオの再生、YouTubeへのアクセス機能などインターネット関連の機能も用意されている点などがアピールされた。
米Panasonicの関係者が壇上に呼ばれ、Atom搭載製品である「CF-U1」をアピール | 衝撃対策などがとられていることをアピールするため、わざと落としてみせるデモはお約束 |
LenovoのIdeaPad S8のデモだが、残念ながら起動せず、そのまま終了となってしまった | LOOX UのAtom版が発表されたこともアナウンスされた | クラリオン ビジネス開発オフィス ジェネラルマネージャのナカムラ・トモアキ氏が登場し「MiND」をアピール |
MiNDには、新しい形のユーザーインターフェイスやMySpaceやYouTubeにアクセスできる機能など、これまでのカーナビにはないインターネットを活用する機能が搭載されている |
●MoorestownのウェハとMoorestown搭載超小型システムボードを公開
Lincroftのウェハを持つチャンドラシーカ氏 |
基調講演の終わりに、チャンドラシーカ氏は次世代のCentrino AtomとなるMoorestownについて触れた。「Moorestownは最初のCentrino AtomであるMenlowをベースに改良し、待機時の消費電力を1/10に削減する。これにより、スマートフォンのようなコミュニケーションデバイスもターゲットになる」と、従来からのMoorestownの特徴を繰り返した。
今回は、2チップ構成となるMoorestownのCPU側のチップ「Lincroft"(リンクロフト)」のウェハと、それを搭載した超小型のシステムボードのサンプルを公開し、さらに小さな基板に納めることが可能になるため、スマートフォンのような小型のフォームファクタも実現可能であることをアピールした。
ただし、公開されたMoorestownの情報はここまでで、チャンドラシーカ氏は「Moorestownの詳細は、10月に台北で行なわれるIDFで公開する予定だ」と述べるにとどまった。
2009年にリリース予定のMoorestown | Moorestownの2つのチップ。CPU側がLincroft、サウス側となるのがLangwell | Moorestownのサンプルシステムボード。スマートフォンにも充分入りそうなボードになっていた |
□Intelのホームページ(英文)
http://www.intel.com/
□IDFのホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/
□IDF 2008 レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/link/idf.htm
(2008年8月22日)
[Reported by 笠原一輝]