有限責任中間法人中古情報機器協会(RITEA)が、6月25日に発表した2007年度の中古情報機器の販売台数実績は、前年比33%増の165万1,000台となった。そのうち、中古PCの出荷台数は158万9,000台。前年比30%増という高い成長率となった。 新品のPC市場全体の成長率が前年比横ばいという実績に留まっているのに比べると、この成長率は特筆できるものといえよう。 また、年間に出荷される国内の新品PCが、1,304万2,000台という実績(MM総研調べ)であることに比較すると、12.2%に相当する規模に達したともいえる。昨年の実績では、9.4%と10%以下に留まっていたが、いよいよ中古PCが新品に対して、1割以上の構成比にまで拡大してきた。 ●中古PC市場の規模は東芝を抜く? さらに、こんな見方をしてみると興味深い。 MM総研から発表された国内のメーカー別出荷台数を見ると、トップシェアのNECは、2007年度実績で267万台、2位の富士通は251万6,000台、3位のデルは198万2,000台。そして、4位の東芝が129万5,000台。中古PCの市場規模は、デルに次ぐ規模、東芝を上回る規模なのである。 前年実績では、東芝の実績を下回り、5番手に当たるポジションだったことから、2007年度には東芝を抜いて順位をあげたという言い方もできる。さらに、同調査のカバー率から逆算すると、推定される中古PCの市場規模は、3位のデルと僅差といってもいいだろう。 ●下取りに出すユーザーが増加傾向に では、なぜ、中古PC市場が、これだけ高い成長率を遂げているのだろうか。 1つには、調査参加会社数の増加の影響があげられる。昨年の調査対象となったのは31社。それに対して、今回の調査では36社となっている。同協会によると、前年調査では80%以上としていた市場カバー率が、今回の調査では85%以上に拡大。これにより、数値そのものが上昇しているのである。
RITEA常務理事・事務局長の小澤昇氏は、「成長率の半分程度は、市場カバー率の上昇によるものと推測できる」とする。 この点では、中古PC市場そのものを成長力を推し量ることはできない。 だが、これだけの高い成長率は、当然、調査対象会社の増加だけが理由ではない。「市場カバー率の増加が成長の半分」という言葉からも、既存の調査対象に限定しても、2桁増の成長を維持していると見ることができるからだ。 その要因としてあげられるのが、中古PC市場そのものが徐々に認知されてきたことだ。 大手量販店の店舗においても、中古PC売り場や、買い取りコーナーが併設されるなど、取り扱い店舗数が増加傾向にある。中古PCに関連する販売/買い取りスペースも拡大傾向にあるといえよう。こうした動きに伴って、PCを下取りに出して、新たなPCを購入するという仕組みで買い換えるユーザーが増加しているのだ。 PCを廃棄しようとした場合、古いPCではリサイクル費用の支払いが必要になることから、少しでも金銭的メリットがある下取りに出すユーザーが増加したこと、また、「HDD消去用のソフトが登場したり、当協会で認定した事業者であれば、個人情報などを消去してくれることから、安心して中古PCとして下取りに出せるという環境が整ってきたことも見逃せないだろう」(小澤常務理事)という。 中古PC市場は慢性的な品薄となっており、良質な製品確保が大きな課題となっている。つまり、中古市場に拠出される良質なPCが増加するということは、そのまま市場拡大に直結すると考えていい。 ●企業における環境意識の高まりも影響? 加えて、企業における環境意識の高まりを背景にした動きもある。 これまで企業から排出される使用済みPCは、リサイクルに回されることが多かった。だが、すぐに廃棄してしまうのではなく、リユースという形で、拠出する動きが増加しているという。実際、同協会が発表した中古情報機器による環境負荷削減効果は、2007年度実績で20万9,736トン規模に達すると推計されている。これは、135万2,000本の樹木が1年間にCO2を吸収する量に相当するという。 こうした企業ユーザーの意識の変化によって、リサイクルからリユースへと、使用済みPCが流れるルートが変化し、中古PC市場の活性化につながっているというわけだ。それは、中古サーバーの台数が、前年比263%増と大幅に伸びていることからも裏付けられよう。 「これまで中古サーバーという考え方はあまり定着はしていなかったが、企業から中古サーバーが排出されるようになったこと、その中古サーバーを、SOHOの基幹サーバーとして、また個人ユーザーが家庭に設置するサーバーとして購入する例が出てきており、これが中古サーバーの大きな成長につながっているのではないか」と、同協会では見ている。 一方で、興味深いのが、発売から3年以内の中古PCの比率が前年に比べて減少していることだ。昨年の調査では、49%が発売3年以内のPCが占めていたが、今年の調査では41%に減少した。 小澤常務理事は「確実なことはいえないが」と前置きしながら、「Windows Vistaが落ち着くまでは、Windows XPを使っていたいというユーザーの存在が、比較的新しい中古PCの流通を、抑制することになったのでは」と分析している。 ●デジカメは「下取り→購入」のサイクルが定着か? なお、今回の調査では、昨年に引き続き、単体で発売されている情報機器用ディスプレイ装置(PC一体型、セット販売分を除く)についても調査。前年比13%増の63万6,000台となった。 また、新たな調査対象として、企業で利用されている「ビジネス用プリンタ・コピー機」、ルーターやHubなどの「情報通信機器」のほか、「PDA」、「デジタルカメラ」、「メモリカード単体」の調査結果も発表した。 「デジタルカメラでは、中古カメラ店を通じた販売も数多く想定され、当協会の調査でカバーできる範囲は狭いという認識はあり、むしろ、カバー率が算定できない状況でもある。だが、今回の調査から、これら分野に対象を広げたのは、中古製品として流通する際に、データ消去が必要な機器という観点から、市場規模の把握が必要と判断したため。今後も会員会社の協力を得ながら、継続的に実施していく」(小澤常務理事)という。 いずれもカバー率が低いと見られることから、数値としては参考値程度にしかならないだろうが、デジタルカメラにおいて、3年以内の製品比率が、デジタル一眼レフカメラでは95%、コンパクトデジタルカメラでは83%、デジタルビデオカメラが87.9%と、極めて高いことが浮き彫りになるなど、興味深い傾向が明らかになっている。 「デジカメは、商品サイクルが早いことから、買い換えるならば商品価値がある早い時期に下取りに出すという仕組みが定着しているのだろう」(小澤常務理事)と分析している。 ●中古PC市場の構築に向けた仕組みづくりが進む このように、中古PC市場は着実に拡大傾向にある。 同協会でも、「リサイクルという選択肢しかなかったPCに、リユースという方法があることが浸透しはじめ、企業ユーザー、個人ユーザーの意識が変わり始めた転換点に来ている。買い換え、買い増しが中心となっている市場だけに、この意識が浸透すれば、今後も中古市場が拡大していくことが想定される」と見る。 市場規模が拡大するのに従い、いよいよ設立3年目に突入するRITEAの役割も重視されることになろう。 2006年7月の設立時点では、同協会は28組織・団体でスタートしたが、現在では49組織・団体の規模にまで拡大。中古情報機器の適切な対応をしている事業者に対して、認定資格を付与する「RITEA認定中古情報機器取扱事業者制度」も、2007年度実績で33社を認定した。 今年度は、企業単位から事業場単位へと認定制度を進化させるとともに、認定内容として、監視カメラの設置または24時間警備システムによる盗難防止対策の強化など、新たに3項目を追加。全36項目において審査をし、これまでに35社47事業場を認定した。 「新たに追加した監視カメラなどの設置は、データ消去前のPCが事業場から盗難されないようにするための対策の1つ。使用済み情報機器の保有者が、より安心して売却できる環境を確立するのが狙い」というわけだ。
さらに、同認定事業者が再生品化を行ない、データ消去作業が終了した完動品に対して貼付する「RITEA認定中古情報機器取扱事業者ラベル」を作成しており、これは、一般ユーザーが安心して、中古PCを購入できる環境の確立という狙いがある。 「安心して売却、購入できる仕組みが構築されれば、製品価値があるうちに買い換えを行なうという利用者が増加し、中古市場が形成され、新たな需要層にPCを広げるといった効果がある。中古市場の活性化が、結果として、情報機器の長寿命化につながること、製造工程が省略できることの特徴を活かし、廃棄物の発生抑制やCO2排出量削減にも貢献できる。これにより、中古車市場が形成されたような道を辿ることになるだろう」とする。 いずれにしろ、今回の調査によって、中古PCの市場規模が、新品PCに対して約1割の市場規模に達したことが明らかになったことで、市場における存在感はより明確になったのは間違いないといえる。 □RITEAのホームページ (2008年6月25日) [Text by 大河原克行]
【PC Watchホームページ】
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