[an error occurred while processing the directive]

VLSI 2008 前日レポート

次世代高密度メモリやHDTV用プロセッサなどに注目
2008 Symposium on VLSI Technology

2008 Symposium on VLSI Technology
会期:6月17~19日(現地時間)

2008 Symposium on VLSI Circuits
会期:6月18~20日(現地時間)

会場:米国ハワイ州ホノルル市
   Hilton Hawaiian Village



 半導体のデバイス技術とプロセス技術に関する国際会議「Symposium on VLSI Technology」(VLSI Technology)と、半導体の回路技術に関する国際会議「Symposium on VLSI Circuits」(VLSI Circuits)が、米国ハワイ州ホノルル市でそれぞれ現地時間の6月17日と6月18日に始まる。

 VLSI TechnologyとVLSI Circuitsは毎年6月に、同じ場所、ほぼ同じ日程で開催されてきた。両者を総称して「VLSIと年号の組み合わせ」で表すことが多い。2008年の今回は「VLSI 2008」となる。開催場所は日本と米国で1年交代と決まっており、日本では京都、米国ではハワイと会場もずっと同じである。ハワイ開催のときは、Hilton Hawaiian Villageが会場に選ばれてきた。

 半導体の研究開発コミュニティでは、12月の国際電子デバイス会議(IEDM)と2月の国際固体回路会議(ISSCC)が開発成果を披露する2大イベントとして定着している。VLSI TechnologyとVLSI Circuitsは、2大イベントに比べると規模は小さいものの、プロセッサやメモリなどの開発動向をこまめにウォッチするためには知っておいた方がよい学会である。またデバイス技術の開発者と回路技術の開発者が同じ会場で顔を合わせられる、貴重な機会ともなっている。

 それではVLSI 2008の概要を紹介しよう。

●VLSI 2008の初日(6月17日):22nm時代のトランジスタを探る

 6月17日はVLSI Technologyの初日である。午前の始めは例年と同じく、プレナリセッション(セッション1)となっており、基調講演となっている。太陽電池の講演とインテリジェントセンサーの講演がある。午前の後半はFETの将来像を探るセッション(セッション2:FinFET and Multi-Gate MOSFETs)、pn接合の将来技術セッション(セッション3:Advanced Junction Technology 1)となっている。IBMとAMD、東芝が22nm技術のFinFETの共同研究成果を報告する予定だ(講演番号2.1)。

 昼食休憩を挟んで午後の前半は、ナノワイヤFETのセッション(セッション4:Nanowire FETs)と高誘電率/金属ゲートFETのセッション(セッション5:High-k/Metal Gate Stack)がある。午後の後半は、ゲルマニウムMOS FETのセッション(セッション6:Ge MOSFETs)と高誘電率/金属ゲートの信頼性に関するセッション(セッション7:High-k/Metal Gate Reliability)となっている。

●VLSI 2008の2日目(6月18日):IBMチームのHigh-k/Metal Gate技術

 6月18日はVLSI Technologyの2日目、VLSI Circuitsの初日である。

 VLSI Technologyでは午前の始めに、積層ゲートの信頼性に関するセッション(セッション8:Gate Stack Reliability)が予定されている。VLSI Circuitsではプレナリセッションとなっており、超小型電源の基調講演と高効率並列処理の基調講演がある。

 午前の後半はVLSI TechnologyとVLSI Circuitsの共同セッションが予定されている。「技術ハイライト(Technology Highlights)」と名付けられたセッションである。まずHynix Semiconductorが、44nmの1Gbit DRAM技術を披露する(講演番号9.1)。メモリセル面積が0.015平方μmと小さいのが特長である。試作チップはフル動作しているという。続いてIBMとFreescale Semiconductor、Chartered Semiconductor Manufacturing、Infineon Technologies、Samsung Electronicsの共同研究チームが32nmの高誘電率/金属ゲートFET技術を報告する(講演番号9.2)。

 なお午前の後半にVLSI Circuitsだけは、高速アナログデジタル変換技術のセッション(セッション2:High Speed Data Converters)も予定されている。

 午後の前半は、VLSI Technologyでは次世代不揮発性メモリ技術のセッション(セッション10:Alternate Non Volatile Memory Technology)と次世代プロセス技術のセッション(セッション11:Advanced Process Technology)がある。IBMとMacronixが共同で、相変化型メモリ(PCM:Phase Change Memory)の信頼性について述べる(講演番号10.1)。Samsung Electronicsは、2bit/セルのPCM技術の開発成果を報告する(講演番号10.2)。Samsung Electronicsはさらに、64Mbitの強誘電体不揮発性メモリを披露する(講演番号10.4)。

 VLSI Circuitsでは並列処理のセッション(セッション3:Parallel Processing)と低消費/再構成RF回路のセッション(セッション4:Low-Power and Reconfigurable RF)がある。167個と数多くのプロセッサを並列に動作させる計算プラットフォーム技術をUniversity of Californiaが解説する(講演番号3.1)。167個のプロセッサの中で164個がプログラマブルなプロセッサであり、電源電圧とクロック周波数を動的に変更できる。残りの3個が固定のアルゴリズムを処理する。また、自動車の衝突前安全システムを狙った画像処理LSIをNECエレクトロニクスが披露する(講演番号3.4)。128個のVLIWプロセッサを並列に動作させた。

 午後の後半は、VLSI TechnologyではNANDフラッシュメモリのセッション(セッション12:NAND Flash Memory)と高誘電率/金属ゲート歪み技術のセッション(セッション13:High-k/Metal Gate and Strain)がある。Macronix Internationalは20nm以降のNANDフラッシュメモリ技術を解説する(講演番号12.1)。続いてSamsung Electronicsが、NANDフラッシュメモリ技術を3件続けて講演する(講演番号12.2~12.4)。1件は書き込み不良を低減する技術、もう1件はFin FETによる高密度化技術、3件目は3次元構造による高密度化技術である。

 VLSI CircuitsではSRAM内のばらつきに関するセッション(セッション5:SRAM Variability)と有線伝送の信号整形技術のセッション(セッション6:Wireline Signal Conditioning)が予定されている。東芝が0.7Vと低い電源電圧で動くSRAM技術の開発成果を述べる(講演番号5.3)。Intelは電源雑音に強いSRAM技術を報告する(講演番号5.4)。

●VLSI 2008の3日目(6月19日):HDTV用プロセッサ

 6月19日はVLSI Technologyの最終日、VLSI Circuitsの2日目である。

 午前の始めは、VLSI Technologyでは電荷捕獲型不揮発性メモリのセッション(セッション14:Trapped Charge NVM)と次世代CMOSのセッション(セッション15:Advanced CMOS)がある。Freescale Semiconductorが埋め込み用のスプリットゲート型フラッシュメモリ技術を発表する(講演番号14.1)。Samsung Electronicsは、SONOS型NANDフラッシュメモリに適したナノワイヤMOS FET技術を報告する(講演番号14.2)。

 VLSI Circuitsではクロック技術のセッション(セッション7:Clocking and Signaling)とデータ変換/バイオのセッション(セッション8:Data Converters and Biomedical Circuits)が予定されている。ここではIntelが「Nehalem」プロセッサのクロックアーキテクチャを解説する(講演番号7.1)。

 午前の後半は、VLSI Technologyでは、ばらつきに関するセッション(セッション16:Variation)と次世代SOI技術のセッション(セッション17:Advanced SOI)がある。45nm SRAMのしきい電圧ばらつき低減技術をNECエレクトロニクス(講演番号16.2)とTexas Instruments(講演番号16.3)がそれぞれ発表する。

 VLSI Circuitsでは周波数生成技術のセッション(セッション9:Frequency Synthesis Components)とマルチモード対応RF回路のセッション(セッション10:Multi-Standard RF)がある。

 午後の前半は、VLSI Technologyでは高性能CMOSのセッション(セッション18:Performance Enhanced CMOS)とpn接合の将来技術セッション(セッション19:Advanced Junction Technology 2)が予定されている。

 VLSI CircuitsではHDTV用プロセッサのセッション(セッション11:Processors for HDTV)と、PLLおよび無線トランシーバのセッション(セッション12:PLLs and Wireless Transceivers)がある。256mWと低消費電力のフルHD用H.264コーデックLSIをルネサス テクノロジと日立製作所が共同で発表する(講演番号11.1)。H.264のHigh Profileに対応した。動作周波数は162MHz、製造技術は65nm CMOSである。HDTV放送用のH.264/MPEG-2エンコーダLSIをNTTが報告する(講演番号11.3)。H.264 High ProfileとMPEG-2 High Profileに対応した。257GOPSの動き推定(ME)/動き補償(MC)エンジンを内蔵する。モバイル機器向けの地上デジタルHDTV受信用LSIを琉球大学、マグナデザインネット、三洋電機が共同で発表する。2/4/8アンテナのダイバーシティ受信に対応した。消費電力は310mW。

 午後の後半は、VLSI TechnologyではCMOSイメージセンサーおよび新型メモリのセッション(セッション20:CMOS Imager and Novel Memory)と高移動度デバイスのセッション(セッション21:High Mobility Devices)がある。

 VLSI Circuitsでは、低消費メモリおよびインターフェイス技術のセッション(セッション13:Low Power Memory and Interface Techniques)と電力管理技術およびイメージセンサーのセッション(セッション14:Power Management Circuits and Image Sensor)が予定されている。論理LSIとプロセスの互換性があり、ソフトエラーに強いメモリセル技術を日立製作所とルネサス北日本セミコンダクタ、ルネサス テクノロジが共同で開発した(講演番号13.1)。16Gbps/リンクと高速のメモリインターフェイスセルと差動入出力セルをRambusがそれぞれ発表する(講演番号13.3および13.4)。

●VLSI 2008の最終日(6月20日):サブマイクロ秒で回路を起動

 6月20日はVLSI Circuitsの最終日である。午前の前半には、起動回路技術のセッション(セッション15:Power Aware Techniques)と60~120GHzの無線受信回路技術のセッション(セッション16:60-120GHz Wireless Receivers)がある。サブマイクロ秒で起動するパワーゲーティング技術を富士通研究所が述べる(講演番号15.1)。突入電流のバイパス回路を設けて電源電圧の変動を抑えた。90nm CMOS技術で試作した2Mゲートロジックの起動時間は0.24μs、電源電圧変動は2.5mV。

 午前の後半は、高速タイミング回路のセッション(セッション17:High Speed Timing Circuits)とオーバーサンプルA/D変換器のセッション(セッション18:Oversampled Data Converters)が予定されている。

 午後の前半は、微小電力プロセッサのセッション(セッション19:Power-Aware Processing)と高速トランシーバのセッション(セッション20:High Speed Transceivers)がある。University of Michiganは、スリープモードでの消費電力が29.6pW、動作時の消費電力が2.8pJ/サイクルと極めて小さいプロセッサ「Phoenix Processor」を発表する(講演番号19.2)。センサーと組み合わせる電池駆動回路を想定した。

 午後の後半は、キャッシュと埋め込みメモリのセッション(セッション21:Cache and Embedded Memory)とパイプラインA/D変換器のセッション(セッション22:Pipelined A/D Converters)が予定されている。2GHzと高速に動作する埋め込みDRAM技術をIBMとAMDが共同で報告する(講演番号21.1)。45nmのSOI CMOS技術を駆使した。

 このほかにも興味を引く講演が少なくない。PC Watchでは順次、レポートをお届けする予定である。

□VLSI 2008のホームページ(英文)
http://www.vlsisymposium.org/
□関連記事
【2月8日】ISSCC 2008 レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/link/isscc.htm
【2007年12月14日】【IEDM 2007】次世代不揮発性メモリもマルチレベルを指向
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1214/iedm06.htm

(2008年6月17日)

[Reported by 福田昭]

【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp
お問い合わせに対して、個別にご回答はいたしません。

Copyright (c)2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.