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AMD、200ドルで1TFLOPS越を実現するRadeon HD 4850を6月25日出荷
〜映画とゲームの融合“Cinema 2.0”を推進

AMDが公開した次世代GPUのATI Radeon HD 4800シリーズ(RV770)のダイ。左の硬貨(1セント)と比較すると小ささがよくわかる

6月16日(現地時間)発表



 NVIDIAが「GeForce GTX 200」シリーズを発表したまさにその日、米AMDは米国サンフランシスコ市内で記者会見を開催し、同社が今後数年にわたり映画製作会社やゲーム製作会社などと協力して進めていく“Cinema 2.0”と呼ばれる構想に関する説明を行なった。

 その中でGPUグラフィックス製品事業部ジェネラルマネージャ兼上級副社長リック・バーグマン氏は「来週に1TFLOPSの処理能力を持つATI Radeon HD 4850を出荷開始する」ことを明らかにした。同製品は、GeForce GTX 200シリーズに比べて小さなダイサイズを採用することで消費電力も少なく、価格も200ドル程度と比較的低価格に設定されているのが特徴だ。

●映画とゲームの融合を実現するCinema 2.0構想

 バーグマン氏は「現在の映画は、すでに多くのCGを利用しており、リアリティを実現しているが、残念ながらインタラクティブではない。それに対してゲームはインタラクティブではあるが、リアリティが足りていない。これは現在の技術では両方を実現するのが難しいからだ」と、ハリウッドに代表されるような映画業界、ゲーム業界それぞれに足りないものがあると指摘。

 「しかし、我々は今後7年の間にそれが変わると信じている。映画のリアリティがゲームにもたらされ、逆にゲームのインタラクティブ性が映画にもたらされる。それにより、例えば映画の映像をそのままにゲームのようにプレイできる、ということが当たり前になると考えている」(同氏)。そしてAMDは、そうした映画とゲームの融合というビジョンをCinema 2.0と名付け、各映画製作会社やゲーム開発会社などに働きかけていくという。

 また、同氏は「こうしたビジョンは映画業界にとっても、ゲーム業界にとっても大きなチャンスだ。そしてこの考え方は別に新しいものではなく、すでに映画がヒットした後で作られるCGゲームという形ですでに実績もある。それがより進んだ形として実現されるようになる」と述べ、AMDのような半導体メーカーだけでなく、映画業界やゲーム業界にとっても新しいビジネスチャンスになるとアピールした。

AMD GPUグラフィックス製品事業部ジェネラルマネージャ兼上級副社長リック・バーグマン氏、手に持っているのはRV770ことATI Radeon HD 4800シリーズのダイ 映画のクオリティをゲームに、ゲームのインタラクティブ性を映画にというビジョンをGPUの描画性能などで実現するCinema 2.0のビジョンをアピール

●1TFLOPSを超えるRadeon HD 4800シリーズを来週に出荷と明らかに

 バーグマン氏はCinema 2.0が実現するまでの課題として、現時点ではGPUを含めたハードウェアは映画をリアルタイムレンダリングするまでには足りておらず、今後も、GPUの性能を上げていく必要があることを挙げ、同社が来週投入する予定の次世代GPUである「RV770」ことATI Radeon HD 4800シリーズに関しても言及した。

 「我々は約200ドルという価格で1TFLOPSの演算性能を実現するATI Radeon HD 4800シリーズを来週投入する予定だ。このGPUは非常に強力な処理能力を持っており、よりリアリティのある画面を描画できる」

 バーグマン氏はさらにATI Radeon HD 4800シリーズを利用した新しいデモ公開した。AMDのRadeonシリーズのデモと言えば、Rubyと呼ばれる女性のキャラクターを利用したものがよく知られているが、今回公開されたものはその最新版。非常にリアリティのある町並みや巨大ロボット蜘蛛などが登場し、とてもリアルタイムにレンダリングされているとは思えないほどのリアルな画質が実現されていた。

RV770では1TFLOPSの演算性能を実現 COMPUTEX TAIPEIでGIGABYTEが展示していたATI Radeon HD 4850を搭載したビデオカード 以前のRubyのデモ。当時はすごいと思ったものだが、見慣れた今見ると、割と普通とも思える
新しいRubyのデモ、車に風景が反射する様子や光の当たり方などで非常にリアリティある映像になっている

●従来型のGPU設計から脱却した新アーキテクチャ

 記者会見後にバーグマン氏は、ATI Radeon HD 4800シリーズの概要を説明した。それによると、「我々はすでにGPUのデザイン哲学を変更した。まずスケーラブルなチップを作り、それをスケールアップすることでハイエンドに対応する。こうするメリットは、小さいダイサイズで、低消費電力のGPUを作ることができ、かつユーザーに安価に提供できることだ」といい、AMDが従来のGPUの設計思想から脱却し、新しい設計思想でGPUを設計していることを強調した。

 これまでのGPUの設計思想は、まずハイエンド向けにダイサイズの巨大なハイエンドチップを作り、それをダウンスケールしていき、メインストリーム、ローエンドというチップを作っていくというものだった。この場合、最初に作るハイエンドチップは、どうしてもダイサイズが大きくなってしまい、消費電力が増え、価格が高くなってしまうことが避けられない。そこで、AMDはまずメインストリームに適用できるチップを作り、それを複数組み合わせてハイエンド対応にするというアプローチをとることに変更した。すでにAMDはこの思想をRadeon HD 3870でも実行しており、Radeon HD 3870 X2は、RV670の名前で知られるチップを2つ組み合わせた製品になっている。

従来のGPU設計では、まず大きなダイサイズのハイエンドチップを作り、それから機能を削っていくことでメインストリーム、バリュー向けを作っていった。これだと、最初のハイエンドチップは高コストで、消費電力も増えてしまう AMDの新しいアプローチでは200〜300ドル前後の価格帯のチップを作り、それをハイエンドにあてはめていく。これによって電力あたりの性能やダイサイズあたりの性能が最適化される

 バーグマン氏によれば、今後AMDは以下のような製品を計画しているという。

【表】AMDがリリースする予定のGPU(AMDが公開した資料より作成)
開発コードネーム ブランド名 対象市場 対抗製品 投入時期
R700 未定 超エンスージアストゲーマー GT200/9800GX2 8週間以内
RV770 XT ATI Radeon HD 4870 エンスージアスト 9800GTX 7月8日(米国時間)
RV770 PRO ATI Radeon HD 4850 パフォーマンス 8800GT/8800GTS/9600GT 6月25日(米国時間)

 開発コードネームでR700、RV770 XT、RV770 PROの3製品が計画されており、このうちRV770 PROはATI Radeon HD 4850として6月25日(米国時間)に、RV770 XTはATI Radeon HD 4870として7月8日(同)に発表/投入される計画であるという。なお、R700に関しては詳細は明らかにされなかったが、おそらくRadeon HD 3875 X2のように何らかの形で複数のチップが搭載される形になる可能性が高い。

 バーグマン氏は同日にNVIDIAが発表した新世代GPUのGeForce GT 200シリーズにも触れ、「GTX 200は570平方mm程度であるのに対して、RV770はおおむね250平方mm程度と半分程度に過ぎない。にも関わらず、GTX 280を超える1TFLOPSを実現し、GDDR5、Direct3D 10.1とGTX 200シリーズが実現していない機能を実装し、消費電力あたりの性能で1.9倍、ダイサイズあたりの性能で2.8倍という効率性を実現している」と、RV770のアドバンテージをアピールした。Radeon HD 4850の消費電力は110W程度だという。

ATI Radeon HD 4850は110Wの消費電力で1TFLOPSの処理能力を実現 AMDがこれからリリースする予定のGPUを説明するスライド NVIDIAのGeForce GTX 200シリーズとRadeon HD 4800シリーズを比較するスライド

●明らかにGeForce GTX 200シリーズを意識した記者会見の設定

 なお、現時点では、Radeon HD 4870の価格や、ゲーム環境におけるベンチマークの結果、内部アーキテクチャなど、上記以外の詳細は未公開で、6月25日の発表にあわせて明らかにされる。つまり、この説明通りの性能を持っているのかは、6月25日の発表を待つ必要がある。

 もちろん、NVIDIAのGeForce GTX 200シリーズの発表日に、このCinema 2.0の記者会見を当て、しかもその中でRadeon HD 4800シリーズの概要を説明したというのは、GeForce GTX 200シリーズを意識したもので、それほどAMDが新製品に自信を持っているのかもしれない。それだけに、実際のパフォーマンスがどの程度であるのか気になるところで、ハイエンドユーザーとしてはGeForce GTX 200シリーズに行くべきか、それともRadeon HD 4800シリーズを待つべきか、6月25日の発表まで悩ましい時間が続きそうだ。

□AMDのホームページ(英文)
http://www.amd.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.amd.com/us-en/Corporate/VirtualPressRoom/0,,51_104_543~126630,00.html

(2008年6月17日)

[Reported by 笠原一輝]

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