Seagate、29年でHDD 10億台出荷の歩みを振り返る
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Seagateの最新HDD |
5月30日 開催
10億台出荷とその先 |
日本シーゲイト株式会社は30日、都内でプレス向けにワークショップを開催し、29年間で10億台のHDDを出荷した米Seagate Technologyの歩みを紹介した。また、その席上で、2008年にSeagateがSSDを投入する予定であることを明らかにした。
●Seagateの成り立ち
日本シーゲイト 小林剛氏 |
ワークショップの前半では、日本シーゲイト 代表取締役社長 小林剛氏が、会社組織としてのSeagateの成り立ちを説明した。
Seagateはもともと、Shugart Technologyという名前で、アル・シュガートを筆頭にした5人の企業家によって'79年に発足。8ページの事業計画書に基づき、それぞれが10,000ドルずつ出し合うことでベンチャーのスタートアップのように成立したという。
当時は、IBMがHDDを扱っていたが、14インチのプラッタを採用し、高さ約1.2mになる巨大な製品だった。そこへSeagateは5.25インチ/約7.5cmという非常に小型で革新的な製品「ST506」を投入したという。そして、現行の「Cheetah 15K.6」(2008年発売)は、ST506の92,000倍の容量を備え、データ転送速度が32倍に、信頼性が145倍になりながら、価格が約半分になっている。
ロゴと社名の変遷 | Shugartは5人の企業家により発足した | HDDの略歴 |
その間、Seagateは、ImprimisやConnerなどのグループに加え、Quantamを吸収したMaxtorを吸収するなど、多くのグループを取り込むことで非常に複雑な系譜を持つ、巨大な組織として成長した。過去には100以上の企業がHDD事業にかかわっていたが、今では、Western Digital、HGST、Samsung、東芝、富士通が残るのみで、「今後の展開が興味深い」と同氏は語った。
10億台出荷達成については、2003年に家庭向けとオフィス向けが逆転し、その後家庭向けが上回ったことを取り上げる。同氏は、「デジタルコンテンツの一般化により、きわめて急速に出荷台数が拡大した。出荷台数は幾何級数的に増えており、次の10億台は5年以内に達成見込み」と語った。
また、HDDやハイブリッドHDD、SSDの展望について、HDDが絶対数では大きく上回るものの、ハイブリッドHDDとSSDの需要もさらに伸びるとし、2008年にSSDを投入することを発表した。
Seagateの成り立ち | 現在の主なHDDメーカー |
デジタルコンテンツの一般化により家庭向けHDDが伸びた | IDCによるHDDやハイブリッドHDDの展望 |
●10億台出荷を実現した製品群と要素技術
日本シーゲイト 佐藤之彦氏 |
ワークショップ後半では、同社フィールド アプリケーション エンジニアリング部 シニアマネージャー 佐藤之彦氏がSeagateの歴代製品と、その要素技術を紹介した。
Seagateはまず、'80年に初の5.25 HDDとなるST506を投入。2枚プラッタで容量は5MB、回転数は3,600rpm。サイズ的には画期的だったが、技術的にはステップモーターの伝達にベルトを利用するなど、非常に原始的な製品だったという。'81年には容量10MBの製品「ST412」も投入した。
AppleがMachintoshを発売した'84年には、従来の半分の厚さとなる「ST225」を投入。'87年には3.5インチHDDを投入した。その後、Imprimisを買収したことで、Control DataのHDD部門からエンタープライズ向け製品のヘッドやアームなどの技術を獲得。生産量を大幅に拡大した。当時は1年で約40万台のHDDを生産していたが、それは現在の1日分の生産台数となっている。また'87年には、プラッタの外側の記録密度を高めるZone Bit Recording技術を開発した。
ST506 | ST412 |
ST225 | Zone Bit Recording技術 |
'91年にはSeagate初の2.5インチHDD「ST9051」を、'92年には世界初の7,200rpm製品として「Barracuda」シリーズを投入した。インターフェイスはSCSIだった。'95年には、熱揺らぎ問題により、40Gbit/平方インチ限界説がささやかれた。これに対して同社は、ヘッドの素子設計と製造プロセスの革新に取り組んだ。ヘッドはもともと手作業でコイルを巻きつけていたが、のちにフォトマスクで蒸着する方式に変更された。
'96年、世界初の10,000rpm HDD「Cheetah 10K」を投入した。この頃には、読み取り方式をPeak Detect復号から、Viterbi復号法のPRMLへと変更した。Peak Detectは波形の頂点を利用するが、PRMLは一連の波形をまとめて復号する方式だ。'94年には、サーボ面サーボが非効率的であることから、プラッタのデータ面にサーボを搭載したデータ面サーボへと移行している。
'97年、ボールベアリングから流体軸受けモーターになり、HDDが静音化した。ボールベアリングは点で支えるが、流体軸受けでは面で支える。同年にはファイバーチャネルインターフェイスの製品を投入した。
「Barracuda」シリーズ | |
Peak Detect復号とPRML | 流体軸受けで静音化 |
2000年に世界初の15,000rpm製品「Cheetah X15」を、2002年に世界初のSATA HDD「Barracuda ATA V」を投入した。Seagateは株式を再公開している。2003年には、「日本勢に押されていた」という2.5インチHDD市場にMomentusで再参入。2002年にヘッドをヒーターで暖めて制御する世界初のAFH技術を確立し、2006年にかけてヘッドReaderを順次高感度化したことで垂直磁気記録方式を実現した。
Cheetah X15 | Barracuda ATA V |
ヘッドReaderを順次高感度化し | AFH技術 |
その後、コンシューマ向けの外付けHDDやハイブリッドHDDなどを順次発売。並行して、最新の技術開発をピッツバーグのSeagate Researchで行なっており、現在研究中のものとして「HAMR」(熱アシスト磁気記録方式)を紹介した。
記録面はある程度の磁気の保持力が必要だが、保持力の高い素材では記録密度の高い書き込みが難しくなる。そこで記録時にレーザーを当てて温め、書き込みを容易にし、その後自動的に冷却されることで書き込みを保持する。これを実現するために、新たにSolid Immersion Mirrorを搭載するが、既存のフォトマスクで蒸着する方式で実装可能なところまで技術開発ができているという。
同社はこれらの技術によりプラッタの面密度を増大させ、HDDのさらなる大容量化を目指す。
熱アシスト磁気記録 | HAMRの模式図 | 面密度の増大を予想 |
□日本シーゲイトのホームページ
http://www.seagate.com/www/ja-jp/
□Seagateのホームページ(英文)
http://www.seagate.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.seagate.com/ww/v/index.jsp?locale=en-US&name=null&vgnextoid=43afb55a61379110VgnVCM100000f5ee0a0aRCRD
□関連記事
【2002年8月23日】Seagate、50Tbit/平方インチの記録密度を実現するHAMR技術をデモ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0823/seagate.htm
(2008年5月30日)
[Reported by matuyama@impress.co.jp]