パナソニックのモバイルノート「Let'snote」シリーズの、2008年夏モデルが発表された。2008年夏モデルは、全モデルとも2008年春モデルからの大きな仕様変更はなく、HDD容量の増量などが中心のマイナーバージョンアップにとどまっているが、一部、これまでにない機能を搭載するモデルも用意されている。その中から今回は、Let'snote R7 プレミアムエディションを取り上げたいと思う。 ●ついにSSD搭載モデルが追加
Let'snote R7 プレミアムエディション 2008年夏モデル(以下、本製品)の最大の特徴となるのが、SSD搭載モデルが追加されたという点だ。従来より要望の多かったSSDの採用が、今回ついに実現されたのである。 搭載されるSSDは、SAMSUNG製の「MCBQE32G5MPP-0VA」。2.5インチサイズで、接続インターフェイスがSATA II、容量32GBのSSDだ。SSD搭載によるメリットは、重量の軽量化とバッテリ駆動時間の延長、騒音の低減、そしてファイルへのアクセス速度の向上による体感速度の向上などが挙げられる。このうち、最も重要な部分は、やはりファイルへのアクセス速度の向上による体感速度の向上だ。そこでまず、HDDなどのストレージデバイスのベンチマークソフトである「Crystal DiskMark V2.1」を利用して、SSDのアクセス速度を計測してみた。 今回は、比較用として筆者が普段利用しているLet'snote T4を利用し、搭載HDD(日立グローバルストレージテクノロジーズ HTS541616J9AT00に換装済み)のアクセス速度も計測した。Let'snote T4は、HDD接続インターフェイスがパラレルATAで、チップセットや搭載CPUも世代が大きく異なるうえに、OSも違う(Windows XP Professional SP2)ために、比較対象としては不適切だとは思うが、今回は同世代のノートPCが手元になかったためご了承願いたい。加えて、デスクトップPCの3.5インチHDD(Western Digital WD3200AAKS)でも同じテストを行なっておいた。
結果を見ると、SSDの高速さが一目瞭然となっている。データの読み出し速度は、2.5インチ・パラレルATA HDDはもちろんのこと、3.5インチ・SATA II HDDとの比較でも大きく上回っている。書き込み速度に付いても、シーケンシャルライトはもちろん、512KBおよび4KBのランダムライトでも2.5インチ・パラレルATA HDDを大きく上回っている。3.5インチ・SATA II HDDとの比較では、4KBのランダムライトこそ上待っているものの、シーケンシャルライト、512KBのランダムライトではやや下回っている。とはいえ、書き込みが遅いと言われることの多いSSDながら、これだけの書き込み速度が実現されていれば、遅いと感じることはないはずだ。 また、ベンチマークの結果だけでなく、実際にいくつかアプリケーションを導入して使ってみたが、とにかく何をやるにも非常に快適であった。OSやアプリケーションの起動が非常に高速で、起動まで待たされるという感覚が大幅に低減し、何をやらせててもきびきびと動いてくれる。容量は32GBと少ない(本製品のHDD搭載モデルでは容量320GBのHDDが搭載されることになっているため、より少なさを感じる)ものの、これだけ快適に利用できるのなら、SSD搭載モデルを選択するメリットはかなり大きいと感じた。
●SSD搭載で、より一層の軽量化や静音化も実現 では、SSD搭載によるアクセス速度以外のメリットもチェックしていこう。 まず、本体重量だが、HDD搭載モデルが940gであるのに対し、SSD搭載モデルでは910gと30gの軽量化を実現している。実測値では、約906.5g(オンボードメモリ1GBのみでメモリ増設のない状態での測定)であった。今回は、HDD搭載モデルとの比較は行なえなかったが、その違いはわずか30gのため、実際に手に持って比較しても、軽くなったという印象はほとんど感じないかもしれない。とはいえ、もともとSSD搭載によるメリットとして軽量化という点はそれほど重要なものではなく、特に目くじらを立てる必要もないだろう。 次に、騒音の低減。実際に本製品を使っていて強く感じたのは、アクセス速度の速さによる快適さに加えて、とにかく静かだという点。HDDの動作音が一切しなくなっているため、利用中に聞こえてくる音は空冷ファンの動作音のみ。その空冷ファンの音も、ベンチマークテスト中など高負荷時には耳に届くこともあったが、普段は特にうるさく感じることもなく、全く気にならないレベル。空冷ファン非搭載時のLet'snoteシリーズと同等の静かさと言えばわかりやすいかもしれない。逆に、HDDのアクセス音がなくなったことで、アプリケーション起動時などに、ちゃんと動作しているのか不安に思うほどであった。
また、本体を多少無造作に扱ったとしても、HDDクラッシュなどのディスクトラブルが発生しにくいという点も大きなメリットの1つになる。もちろん、だからといって無造作に扱っていいというわけではないが、常に持ち歩いて利用するモバイルノートとして、保存データの安全度が飛躍的に向上するという点は非常に心強いはずだ。 最後に、バッテリ駆動時間だが、こちらはカタログ値で8時間と、HDD搭載モデルの7時間と比較して1時間の延長を実現している。ちなみに、店頭販売モデルのバッテリ駆動時間は7.5時間なので、そちらとの比較では30分の延長にとどまっている。そういった意味では、バッテリ駆動時間が飛躍的に向上しているというわけではないかもしれないが、当然延長自体は歓迎すべき部分だろう。
●SSD搭載以外のスペック面は従来通り 本製品の特徴は、ここまで紹介してきたSSDに集約される。実際、それ以外の基本スペックは従来モデルから全く変わっておらず、CPUは超低電圧版Core 2 Duo U7700(1.33GHz動作)、メインメモリはオンボード1GB(最大2GB)、チップセットはIntel GM965 Express(ビデオ機能内蔵)となる。ちなみにHDD搭載モデルでは、搭載HDD容量が320GBに増量され、従来通りIntel Turbo Memoryも標準搭載となる。また、OSがWindows Vista Business SP1(Windows XPダウングレード権含む)になっている。 基本スペックだけでなく、搭載される液晶パネルやキーボード、ポインティングデバイスのホイールパッドなども従来同様。もちろん、本体稼働中の76cmの高さからの落下(底面)と、本体非動作時の30cmの高さからの落下(26方向)に対する耐衝撃性、100kgfの圧力振動に対する耐圧性、そして全面防滴仕様のキーボードを採用することによる防滴性などの堅牢性にも変更はない。 ちなみに、天板カラーは標準色のジェットブラックに、スパークリングブラック、ミッドナイトブルーを加えた3色の中からの選択となり、2008年春モデルで用意されていた、プロミネントレッドモデルは、2008年夏モデルでは用意されない。
●SSD以外のパフォーマンスに変化はない では、いつものベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と「3DMark05(Bulid 1.3.0)」、「3DMark06(Build 1.1.0)」の3種類。Windows Vistaに用意されているパフォーマンス評価の結果も加えてある。ちなみに、試用機はメインメモリの増設が行なわれていない状態での貸し出しであったため、手持ちの1GBモジュールを搭載してメインメモリを2GBに増設した状態でテストを行なっている。 結果を見ると、Let'snote R7 プレミアムエディション 2008年春モデルとの比較では、HDD関連の結果以外にほとんど差がないことがわかる。これは、HDD以外の基本スペックに全く差がないのだから当然の結果だろう。そういった中で、やはりSSD搭載によるHDD関連の結果の良さが目立つ。基本スペックは変わっていないが、実際に各種アプリケーションを利用する上での体感速度は大幅に向上しており、スペック以上の快適さが実現されていると言っていいだろう。
本製品のSSD搭載モデルは、従来通りPanasonic PC直販サイト「マイレッツ倶楽部」限定で販売されるが、販売価格は295,000円と、HDD搭載モデルと比較して37,000円高価となっている。この差を高いと取るか安いと取るかは、どういった用途に使うかによって変わってくる。 常に大量のデータやアプリケーションを入れて持ち歩きたいというのであれば、さすがに32GBという容量では厳しく、HDDモデルの購入をオススメする。しかし、持ち歩くデータやアプリケーションは必要最小限でいいというのであれば、俄然SSDモデルをオススメしたい。HDD搭載モデルに対する体感速度や、静音性、データの安全性などの違いを考えると、この金額差は大きなものではなく、SSD搭載によるメリットの方が遙かに大きい。SSDの容量を割り切って使えるというのであれば、間違いなく満足できるはずだ。 □パナソニックのホームページ (2008年4月25日) [Reported by 平澤寿康]
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