IBM、電流で磁区を動かすメモリ技術「racetrack」
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racetrackの動作原理 |
4月10日(現地時間) 発表
米IBMは10日(現地時間)、高性能/大容量/低電力でかつ低コストを実現できるというメモリ技術原理「racetrack」を発表した。
この新しいメモリ技術は、データを記録するための磁性材料を繋げたワイヤーを“競技用トラック(track)”と見立てて、その上をデータが“駆けめぐる(race)”ことから名付けられた。
データを記録するための“磁区”をワイヤー状に繋げ、この磁区自身を電流でワイヤーに沿って高速に動作させる。トラックの途中にはMTJ(磁気トンネル接合素子)を置き、磁区が通過する際にMTJが磁場を発生させ、磁区の極を書き替えることで、データ書き込みを行なう。書き込みとシフトのサイクルタイムは20~30ns程度としている。
これまで、磁区をワイヤーに沿って動作させるためには高価かつ複雑な設計が必要なだけでなく、大量の電力を必要としていた。しかし今回、スピン偏極電流と磁壁との相互作用から生じるスピン移行トルクを利用することでこの問題を解消。磁場発信器を使用せずに済むため、回路が簡素化できるという。
また、ワイヤーをMTJが配置されるシリコンに対して垂直に折り重ねて3次元的に配置させることで、実装面積を削減できる。1つのMTJ素子に対して10~100bit程度の情報を記録でき、安価かつ高速なメモリデバイスが実現できるという。また、HDDのように可動部がないため磨耗せず、フラッシュメモリのように書き込みの寿命制限もないとしている。
racetrackにより、10年以内に大容量なメモリの実現が期待されるとしており、現在のMP3プレーヤーの約100倍の容量を、低コストかつ低消費電力で実現可能としている。
□IBMのホームページ(英文)
http://www.ibm.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www-03.ibm.com/press/us/en/pressrelease/23859.wss
(2008年4月11日)
[Reported by ryu@impress.co.jp]