モバイルプラットフォーム基調講演レポート
|
主席副社長兼モビリティー事業本部長、ダディ・パルムッター氏 |
4月2日(現地時間) 開催
会場:上海国際コンベンションセンター
IDF初日となる4月2日には、デスクトップ、モバイル、UMPCという3つのフォームファクター別に基調講演が実施された。
モバイルプラットフォームの基調講演を担当した、主席副社長兼モビリティー事業本部長であるダディ・パルムッター氏は、今年から来年に投入を予定している、モバイルプラットフォームやモバイル関連技術を次々に紹介した。
●IAが支えるNetTop/NetBook
パルムッター氏の基調講演は、以前からIntelのモバイル関連セッションでは繰り返し述べられている“コンピュータをパーソナル化すること”に主題を置いている。
その課題の1つが、「より多くの人がテクノロジを活用できなければならない」点である。つまり、入手性を向上させるということだ。もちろん、その入手した製品でインターネットが利用できるのは現在の前提条件でもある。
そこで投入されるのが、低価格帯デスクトップの「NetTop」、同じくノートPCの「NetBook」である。IntelのClassmate PCやASUSTeKのEee PC、OLPCといったエマージング市場でも購入しやすい価格帯の製品が話題になっている。しかし、NetTop/NetBookは、米国や日本のような成熟市場に向けても強くアピールしており、家族のため、子供のために、3台目や4台目のPCとして購入できるものとなる。
位置付けとしては、ノートPCとUMPCの間に立つことになる。液晶サイズは10インチ以下程度となり、OSはWindowsだけでなくLinuxの搭載も意識している。
このNetTop/NetBookのCPUとなるのが「Diamondville」で、これはSilverthorneをベースにした低価格PC向けCPUである。そして、このDiamondvilleを使った低コストなマザーボードの紹介を行なった。基板サイズの縮小、アクティブファンやCPUソケットなどを排除することでコストを抑えたものである。
しかし、パルムッター氏はIntelだけでは、このジャンルは確立できず、OEM/ODMメーカーの協力が不可欠であるとした。例えば、低価格/省スペースPCに合わせた電源ユニットや、システムファンを用いない筐体、ストレージデバイス、OS、そして流通経路も含め、低コストに焦点を絞ったシステムの積み重ねによってPCを構築していくことが、より安価で良いものを提供できることにつながるわけで、そのエコシステムの構築に取り組んでいくと述べた。
このNetTop/NetBookは多くのメーカーと協力して、2008年の夏から後半には登場する予定であるしている。
NetTop、NetBookの主なポイント。CPUには45nmのSilverThorneをベースとした、Diamondvilleが用いられる | NetTop向けマザーボードの紹介。基板サイズや高価なファンやソケットの排除、クロック制御により、従来のローコストデスクトップやノートPCに比べて20~25%のコスト削減につながるとする |
基調講演で紹介されたNetBookの1つ | 同じく基調講演で紹介されたNetBook。これらはただ安いだけでなく、スタイルにもこだわった製品であるとアピールした |
●今年後半には最大160GBのSSDを投入
NetTop/Bookに続いてパルムッター氏が紹介したのは、より一般的なノートPCのジャンルに関する話題だ。ここでは、すでに2008年に投入されるMontevinaプラットフォームの紹介が中心となった。
そして、今年(2008年)3月に行なわれたCeBITにおいて表明されているとおり、このMontevinaプラットフォームのブランド名が「Centrino2」となることを改めてアピールした。
このMontevinaプラットフォームの紹介は、3つの大きなテーマに分かれていた。それは「パフォーマンス」、「セキュリティ」、そして「スタイル」だ。
パフォーマンスについて重要なポイントは、“CPUの性能だけに注目したプラットフォームではない”点を強調したことだ。まず、Montevinaのグラフィック機能にフォーカスが当てられた。HDコンテンツの再生を、HQVスコアが120を超えるような高画質で行なえる点や、DisplayPortに対応する点、グラフィックコアを640MHzへ向上させたことで3Dグラフィック性能を2倍に引き上げた点などを紹介。また、省電力機能の充実による電力効率の高さもアピールしている。
そして、Montevinaプラットフォームの紹介でもっとも大きな話題といえるのが、I/O性能の改善に対するアプローチだ。Intelはこれまでシリコンを使って、CPU、グラフィック、メディアチップの性能改善に努めてきたわけだが、I/O性能は大きくボトルネックとなっていた。そこで、Intelでは32~160GBのSSDを今年後半に投入することを正式に表明。そのデモも実施されている。
もちろん、このSSDに関しては慎重な発言もあり、“SSDがあればCPUパワーは必要がないというのは誤解”としている。あくまで、SSDの投入は、ボトルネックを排除することで、CPUから最後の力を絞り出すためのものであるとしている。
Montevinaの話題でもう1つの大きなテーマとなったセキュリティに関しては、vPro機能に強化に関するものだ。IntelではすでにノートPCにもvProを適用しているが、Montevinaプラットフォームでは、これがさらに強化されている。
特にアピールされたのが、ノートPCが紛失や盗難に遭ったときに、ストレージのデータを保護する機能「Anti-Theft Technology」の投入で、今日の強いニーズに応えるものであるとした。
さらに、スリープ状態のノートPCを“無線LAN経由で”レジュームすることを可能にしたり、クライアントからの発動によりアップデートなどのリモート管理を可能にする新しいマネジメント機能が追加される予定だ。
スタイルに関しては、基調講演でも紹介があったがMacBook AirやThinkPad X300でも利用されている小型パッケージのチップを、Motevinaでも投入することを表明。
それだけでなく、従来、モバイル向けCPUのTDPは、最上位のエクストリームを除けば、ノーマル版が35W、低電圧版が17WとなっていたTDP別ラインナップに、25W TDP版を投入することを発表。これにより、より薄くて、軽量で、スタイリッシュなノートPCが登場することに期待を寄せている。
このほかにも、とくに目新しい話題はなかったものの、ノートPCにおける仮想化を利用したセキュリティやパーソナル化の促進や、WiMAXの現状などについても紹介があった。
●NehalemベースのCalpellaプラットフォームへ
この基調講演における最後の話題は、2009年のモバイルプラットフォーム「Calpella(カルペラ)」の紹介だ。これは、デスクトップ向けでは今年後半にも投入する「Nehalem」マイクロアーキテクチャをベースとしたプラットフォームである。
パフォーマンスの向上、ビジュアルコンピューティングの促進、マネージビリティの向上、革新的なパワーマネージメントの搭載、といった点が強調されているが、このうちパワーマネージメントに関しては今回デモが行なわれた。
それは、Wi-Fiデバイスの省電力化に関するもので、YouTube視聴中の消費電力が大幅に抑えられているといったもの。デモではバッテリライフ換算で2倍近い効率向上が現れている。
冒頭でも紹介したとおり、パルムッター氏の基調講演のテーマはパーソナルコンピュータをよりパーソナルなものにするというものだ。そこには、パフォーマンスやセキュリティ、バッテリ駆動時間、入手性といった実用的な面は大きなポイントとなる。この点については、基調講演の節々で“IAアーキテクチャである優位性”をアピールしている。テラフロップスクラスのHPCからMIDに至るまで、すでに実績のあるIAアーキテクチャで提供されるという強みをアピールしたものだ。
しかし、パルムッター氏は、“ユーザーの望むもの”という点も至る場面で強調した。とくに、スタイルやデザインといったところから入る“機器に対する愛情”という面の重要性もアピールされた。
成熟市場から新興市場へ製品展開をするということは、それだけで人々のニーズは違うものになる。1つの市場のなかでも、人の嗜好による違いがある。個人にとっても昼と夜、職場と家庭では違うニーズが存在する。あらゆるニーズに応えることが今のPCの課題でもあり、大きなビジネスチャンスでもある。そのことを改めて考え直させる基調講演だったといえる。
2009年に投入されるNehalemベースのプラットフォーム「Calpella」 | Calpellaで投入される無線LANアダプタの省電力機能に関するデモ | 緑色が新しい省電力機能を搭載した場合の消費電力。グラフでも差は歴然としているが、バッテリライフに換算すると、従来品では約40分相当のバッテリを消費するのに対し、新しい機能を利用することで22.64分相当の消費で済むようになる |
□Intelのホームページ(英文)
http://www.intel.com/
□IDFのホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/
(2008年4月3日)
[Reported by 多和田新也]