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ISSCC 2008前日レポート

低消費プロセッサと低コスト不揮発性メモリ

ISSCCの会場風景

カンファレンス会期:2月4日~6日(現地時間)

会場:米国カリフォルニア州サンフランシスコ Marriott Hotel



 半導体回路技術に関する世界最大の国際会議、ISSCC(International Solid-State Circuits Conference)が今年もサンフランシスコで始まった。ISSCCには例年、PCやサーバー、デジタル家電、携帯電話機などの将来を担う、最先端および次世代のプロセッサやメモリ、無線ICなどの半導体チップが数多く登場する。

 今回も、例年と同様に半導体チップの最新の開発成果が披露される。今年は2月3日と7日(現地時間)がセミナーの開催日、2月4日~6日(同)がISSCCのメインイベントであるカンファレンスの開催日だ。前日レポートでは、カンファレンスで発表予定の注目講演を紹介しよう。

●2月4日:次世代のSPARCプロセッサが登場

 カンファレンスは例年と同様に、プレナリセッション(セッション番号1)で始まる。このセッションは合計4件の招待講演で構成されている。1件目は韓国Samsung Advanced Institute of Technologyによるデジタル家電市場に関する講演、2件目は米Microsoft Researchによるコンピュータの将来像に関する講演、3件目は英ARMによる組み込みプロセッサに関する講演、4件目は米Numentaによる人工知能に関する講演である。

 2月4日の午後から、一般講演が始まる。6本のセッション(セッション2~7)が並行して開かれる。各セッションのテーマは「イメージセンサおよび画像処理技術(セッション2)」、「フィルタとアンプ(セッション3)」、「マイクロプロセッサ(セッション4)」、「高速トランシーバ(セッション5)」、「UWB(セッション6)」、「生命科学(セッション7)」である。

 この時間帯は「マイクロプロセッサ」のセッションに注目したい。まず米Sun Microsystemsが、16コアで32スレッドを並行に処理する高性能SPARCプロセッサを発表する(講演番号4.1および講演番号4.2)。動作周波数は2.3GHz。アウトオブオーダーを採用しており、トランザクションメモリーを実装する。チップ面積は396平方mm。製造技術は65nmのCMOSプロセスである。

 続いて米IBMと米Toshiba America Electronic Components、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が共同で、Cell B.E.(Broadband Engine)を65nm SOIプロセスから45nm SOIプロセスに移行させる作業について述べる(講演番号4.3)。移行作業の大半を設計自動化ツールで実行した。それからルネサス テクノロジと日立製作所、早稲田大学は共同で、8個のCPUコアと8個のユーザーメモリを内蔵するマルチコアプロセッサを発表する(講演番号4.5)。電源ドメインを17個に分割して消費電力を抑えた。そして米Intelが、4コア内蔵Itaniumプロセッサのソフトエラー対策について述べる(講演番号4.7)。エラーの発生率を80分の1~100分の1に低減した。

 また興味深いのが「生命科学」のセッションである。日立製作所が、人体の生命活動を直接モニターして状況を無線で送信する携帯型モジュールを発表する(講演番号7.1)。消費電流が5μAと非常に低いので、電池の寿命が3年と長い。英Toumaz Technologyと英Future Wavesは共同で、人体の生命活動を直接モニターして状況を無線で送信する用途に向けたシステムLSIを試作した(講演番号7.2)。消費電力を低減するため、電源電圧を0.9Vに下げている。チップ面積は16平方mm。使い捨てタイプの用途を想定して開発した。

●2月5日:携帯電話機用の大規模低消費プロセッサ

 2月5日の午前は、7本のセッションが同時に進行する(セッション8~14)。セッションのテーマは「医療とディスプレイ(セッション8)」、「ミリ波とフェーズドアレイ(セッション9)」、「携帯電話機用トランシーバ(セッション10)」、「光通信(セッション11)」、「高効率データコンバータ(セッション12)」、「モバイルプロセッサ(セッション13)」、「埋め込みDRAMとグラフィックスDRAM(セッション14)」である。

 注目セッションは「モバイルプロセッサ」だ。米IntelがMobile Internet Device(MID)とUltra-Mobile PC(UMPC)の両方に向けたx86プロセッサを発表する(講演番号13.1)。2命令を同時発行するインオーダーのパイプラインアーキテクチャを採用した。4,700万トランジスタを集積しており、512KBの2次キャッシュを内蔵しているにも関わらず、チップ面積は25平方mmしかなく、消費電力は2W以下と低い。製造技術は高誘電率膜/メタルゲートの45nm CMOSプロセスである。441端子のμmFCBGAパッケージに封止する。

 米Texas Intruments(TI)は、携帯電話機のベースバンド処理とアプリケーション処理の両方を担う3.5世代機用プロセッサを開発した(講演番号13.2)。動作周波数が840MHzの「ARM1176」コアと480MHzの「TMS320C55x」DSPコアを内蔵する。製造技術は45nmのCMOSプロセス。ルネサス テクノロジとNTTドコモ、富士通、三菱電機、シャープ、ソニーエリクソンは共同で、携帯電話機のベースバンド処理とアプリケーション処理の両方を担うプロセッサを発表する(講演番号13.3)。

 「埋め込みDRAMとグラフィックスDRAM」のセッションも興味を引く。韓国Samsung Electronicsが、GDDR5インターフェイスを備えたグラフィックスDRAMについて述べる(講演番号14.5)。ピン当たりのデータ転送速度は6Gbpsと非常に高い。メモリ容量は512Mbit、入出力バス幅は32bitである。製造技術は60nmのCMOSプロセス。

 2月5日の午後は、6本のセッションが並行して開催される(セッション15~21)。テーマは「信号と電力の伝送(セッション15)」、「低消費電力デジタル(セッション16)」、「広帯域レシーバ(セッション17)/MOSメドレー(セッション18)」、「PLLと発振器(セッション19)」、「WLAN/WPAN(セッション20)」、「SRAM(セッション21)」である。なおセッション17とセッション18は、同じ会場で連続して開催される。

 この時間帯で目を引くのは、ソニーが発表する高性能デジタル画像処理プロセッサだ(講演番号16.4)。1080pのフルHDビデオを60fpsで処理する能力がある。演算処理性能は動作周波数が500MHzのときに512GOPS。消費電力当たりの演算処理性能は動作周波数が250MHzのときに115MOPS/mWである。製造技術は65nmのCMOSプロセス。

●2月6日:マルチレベルの大容量フラッシュメモリ

 カンファレンスの最終日である2月6日の午前は、6本のセッションが組まれている(セッション22~27)。テーマは「時間的な変化の測定と補償(セッション22)」、「不揮発性メモリ(セッション23)」、「アナログパワー技術(セッション24)」、「高速トランシーバのビルディングブロック(セッション25)」、「無線周波数の生成(セッション26)」、「ΔΣデータ変換器(セッション27)」である。

 注目セッションは「不揮発性メモリ」。大容量フラッシュメモリの発表が続出する。まず米SanDiskと東芝が共同で、マルチレベルセル(4値セル)の16Gbit NANDフラッシュメモリの開発成果を披露する(講演番号23.1)。データ転送速度が34MB/secと高い。製造技術は56nmのCMOSプロセス。続いてイスラエルのSaifun Semiconductorと中国SMICが共同で、4bit/セルの8Gbit不揮発性メモリを発表する(講演番号23.2)。90nmのCMOSプロセスで製造しながら、チップ面積を155平方mmに抑えた。そして米Intelが、セルフアライン(自己整合型)コンタクトによってビット当たりのコストを既存品の半分に下げた1Gbit NORフラッシュメモリについて講演する(講演番号23.3)。

 休憩を挟んで午前の後半も注目講演が相次ぐ。米Micron Technologyと米Intelが共同で、データ読み出し速度が200MB/sec、データ書き込み速度が100MB/secときわめて高速なNANDフラッシュメモリを発表する(講演番号23.4)。メモリ容量は8Gbit。データ入出力用にシンクロナスDDRインターフェイスを内蔵した。続いてスイスSTMicroelectronicsと米Intel、伊University of Paviaが共同でマルチレベルの相変化型メモリ技術について述べる(講演番号23.5)。2bit/セル技術によって256Mbitチップ(物理的には128Mbitチップ)を試作した。そして東芝と米SanDiskが共同で、チップ面積が120平方mmと小さな16Gbit NANDフラッシュメモリを発表する(講演番号23.6)。43nmと微細なCMOS技術と、4値のマルチレベル技術を駆使した。

 2月6日の午後は、5本のセッションが並列に予定されている(セッション28~32)。テーマは「不揮発性メモリとデジタルクロック(セッション28)」、「通信回路と通信システム(セッション29)」、「データ変換技術(セッション30)」、「RFおよびミリ波のパワーアンプ(セッション31)」、「MEMSとセンサー(セッション32)」である。

 午前に引き続き、不揮発性メモリの講演に注目したい。米SanDiskと東芝は、 3bit/セル技術による16Gbit NANDフラッシュメモリを発表する(講演番号28.1)。製造技術は56nmのCMOSプロセス。韓国Samsung Electronicsはマルチレベルの4Gbit NANDフラッシュメモリについて述べる。製造技術は45nmのCMOSプロセス。

 このほかにも注目すべき講演は数多い。PC Watchでは順次、現地レポートをお届けする予定なので期待されたい。

□ISSCCのホームページ(英文)
http://www.isscc.org/isscc/
□関連記事
【2007年2月13日】【ISSCC】最先端のプロセッサとメモリが続出
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0213/isscc01.htm

□ISSCC 2007レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/link/isscc.htm

(2008年2月4日)

[Reported by 福田昭]

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