レノボ、コンシューマPCによる国内市場参入を検討
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アジア太平洋地区社長 デイビット・ミラー氏 |
11月22日 開催
レノボ・ジャパン株式会社は22日、Lenovoグループ上級副社長兼アジア太平洋地区社長のデイビット・ミラー氏の来日に伴い、レノボの最近の取り組みやアジア、日本における展開などに関する記者会見を開催した。
●2008年4月以降にコンシューマPC投入の可能性
そのなかでミラー氏は、今後の成長戦略において、500人以下の企業やSOHO、コンシューマ市場を対象に全世界で展開している「トランザクションモデル」の重要性に言及。「トランザクションモデルにおいて、コンシューマビジネスは大変重要な領域。世界規模でコンシューマPCの専任組織をつくり、キーとなる主要な地域で展開していくことになる。日本市場もキーとなる市場の1つであり、適切なタイミングで、適切な製品を用意していくことになる」とした。
また、レノボ・ジャパンの天野総太郎社長は、「社長に就任して1年3カ月を経過し、この間、最大の課題として掲げた“利益ある成長”を実現することができた。第2四半期となる7~9月は日本市場でも2桁増の成長を記録し、レノボ・ジャパンとして過去最高の利益率、利益額を達成した。これを確固たるものとした段階で、日本におけるコンシューマPC市場参入の検討を開始することになる。少なくともあと2四半期は状況を見る必要があるだろう。コンシューマPCの参入は、それ以降の動きになる」とし、同社新年度が始まる来年(2008年)4月以降、日本において、レノボブランドのコンシューマPCが投入される可能性を示唆した。
レノボ・ジャパン 天野総太郎社長 | 利益ある成長を実現 |
どのような製品が市場に投入されるかは未定だが、「レノボは、グローバル企業であり、各市場におけるユーザーの声を反映した製品を用意していく体制としている。コンシューマPCについても、日本の市場の声を反映させたものを用意していく必要があるだろう」などとした。
すでに、中国では、コンシューマ市場向けにPCを投入しているほか、アセアン諸国やインドでも実績をあげている。
●4つの戦略的重要項目を掲示
ミラー氏は会見の冒頭、レノボのグローバル体制について説明。「レノボは、ワールドソーシングという言葉を使っている。キーとなる全世界のあらゆる市場において、優秀で革新性を持つ人材、強力なインフラや、ローカルな専門性、テクノロジー、ファシリティを調達することができる。レノボは、本社の所在地がない組織ともいえる。別の言い方をすれば、あらゆるところに本社の要素がある。CEOは、米国人だがシンガポールにいる。会長は中国人だが、米国のラーレイにいる。また、サプライチェーンはシンガポール、マーケティングはインド、人事などのバックエンドはマレーシアに拠点がある。研究開発は、ThinkPadの父がいる日本の大和事業所のほかに、ラーレイと北京に拠点がある。こうした体制によって、本社所在地というバイアスがかからず、各地域の顧客ニーズにフォーカスした形でのビジネスが可能になる。市場のローカルニーズに対応していくこと大切であり、それに対応できる組織体制を構築している」などとした。
また、ミラー氏は、「トランザクションモデルの展開」、「サプライチェーン」、「デスクトップの競争力強化」、「ブランド」の4点を戦略的重要項目とし、この実行がレノボの成長につながるとした。
「中国市場以外では、IBMが得意としてきた大手企業分野に注力しており、トランザクションモデルでカバーする急成長市場にはフォーカスしていなかった。レノボは、中国において、トランザクションモデルによって成長してきた。もっと大きなビジネスへと拡大させるためには、中国市場以外において、ローエンド製品によるトランザクションモデルにもしっかりと足を踏み入れ、シェアを獲得することが大切だ。また、その実現のためには、グローバルサプライチェーンの効率性を高めていく必要がある。コスト競争力を持った、品質の高い製品を、短い時間に顧客のもとに届けることに力を注ぐ」とした。
レノボのグローバル体制 | 4つの戦略的重要項目 |
天野社長も、「日本においても、物流の改善による競争力の強化は大きな課題。ワールドワイドでのサプライチェーンの強化に加えて、日本におけるサプライチェーンの強化も重要な取り組みになる」と語った。
また、デスクトップの競争力強化としては、「競争力のあるデスクトップの開発を推進し、これに伴う出荷からサービスに至るまでの価値を継続的に提供する」と語る。
さらに、ブランドという観点では、「レノボをグローバルカンパニーとして理解していただき、しっかりとした製品を提供する企業としてのイメージを定着させたい。中国以外でしっかりとしたブランドを確立していく」と語った。
Think製品をレノボブランドへと移行する計画を前倒しで推進し、「レノボとしての認知を高めていくことに取り組む」とも語り、ワールドワイドでのレノボブランドの浸透を図る考えを示した。
レノボのビジネスモデルについて | レノボのワールドワイド戦略の核 |
一方、研究開発に関しては、「売上高に占めるR&D投資比率は、業界のトップにあると自負している。IBMのPCディビジョン時代よりも投資額は拡大している」と前置きし、「PCは、コモディティ化した製品だとは思っていない。常に、顧客のニーズをデザインに組み込み、反映していくことが必要である。レノボには、“イノベーション・トライアングル”があり、ThinkPadは、研究や製品戦略、管理を米国で、ハードウェアのデザインやマーケティングを日本で行ない、中国で生産する体制となっている。さらに、インドでマーケティングを行ない、世界中に出荷していくことができる。まるで、太陽を追いかけながらビジネスをしているようなものだ」などとした。
●高い成長をアピール
さらに、ミラー氏は、レノボの最新四半期(7~9月)の業績が好調であったことにも触れた。
同社の発表によると、売上高は前年同期比20%増の44億ドル、純利益は178%増の1億500万ドル。そのうち、アジア太平洋地域の売上高は5億3,900万ドルと、全体の12%を占めている。同社では、統合段階を完了し、利益ある成長段階に入ったことを改めて証明したものと位置付けている。
レノボが掲げる“イノベーション・トライアングル” | 第2四半期の業績 |
ミラー氏は、「IBMのPC部門の時代には、8年以上赤字のままだった。だが、今では利益が生めるようになっている。PCの出荷台数も前年同期比23%増となり、特定の地域ではなく、あらゆる地域で、業界全体を上回る成長を遂げており、日本でも高い成長を遂げている。日本では、まだビジネスを始めたばかりだという認識であり、当社からのメッセージを積極的に発信していく」と語った。
天野社長は、日本における重点的施策として、ミラー氏同様、「トランザクションモデルの展開」などの4つのテーマを掲げたが、「レノボの企業認知度は、まだまだ改善の余地がある。さまざまなアクションを実行して、さらなるブランド浸透を図りたい。日本においても、この1年で、500人以下の従業員を対象としたトランザクションモデルが成長し、なかでも、オンラインビジネスが成長している。500人以上の企業を対象にしたリレーションモデルを引き続き強化する一方、今後は、150万社といわれる500人以下の企業に対して、パートナー戦略を強化。特に、2次店の強化に乗り出すことで、効率的なビジネスに取り組みたい。トランザクションモデルの強化をはじめとする4つの戦略により、日本におけるビジネスの成長を加速させ、利益ある成長を確固たるものにしたい」とした。
□レノボ・ジャパンのホームページ
http://www.lenovo.com/jp/ja/
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(2007年11月22日)
[Reported by 大河原克行]