ノートPCには、余分なケーブルの引き回しや、突起物がないのが理想だ。必要なすべてのデバイスは内蔵され、本当に理想的には、電源ケーブルさえない方がいい。非接触の充電などが実用化されるのが待ち遠しい。それまでの間は、別の工夫で、理想に近づける。そのソリューションのひとつがナノレシーバーだ。 ●隠しUSB端子が欲しい 以前、あるPCベンダーと話をしているときに、隠しUSB端子をつけてほしいと提案したことがある。そのときは、結構おもしろがってくれて、次の製品にでも装備してくれそうな勢いで、PC 1台あたり、いくらのアイディア料が妥当か、といった話までしていたのに、いっこうに、そんなPCは出てきそうにない。 ぼくが考えた隠しUSB端子というのは、パソコン本体内部に、空洞を作り、その中にUSB端子を設けるような仕組みだ。ちょうど、乾電池駆動のデバイスの電池室のようなイメージで、そこにUSBデバイスを装着して蓋をしておけば、余計な出っ張りもなく、各種の拡張ができるというものだ。USBメモリを入れてもいいし、マウスやBluetoothのレシーバーなどを入れてもいい。 構造上、どうしても、本体の底部に設けることになるので、おそらくは、電波を発するデバイスの場合、届く範囲は極端に落ちるだろうし、蓋の素材などについても考えなければならない。それをユーザー責任でというわけにはいかないのが、PCメーカーの姿勢ということなのだろう。それに、どのくらいのサイズのデバイスまでを許容するかというのも悩みどころだ。 ぼくが普段持ち歩いているノートパソコンには、出っ張りがいやだなと思いながらも、イー・モバイルの通信カードがPCカードスロットに挿さったままだ。また、Bluetoothを内蔵していないパソコンを使う場合は、必要に応じて、USB端子にBluetoothアダプタを装着する。横に飛び出すのはさすがに抵抗があるので、くるくるアダプタを使って方向だけは変えて装着するようにしている。 多くのユーザーが、もっとも不便に感じているのは、おそらくワイヤレスマウスのレシーバーだろう。日常的に使うデバイスだけに、できれば挿しっぱなしにしておきたい。省スペースデスクトップとして使うノートPCで、ほとんど机の上に置きっぱなしというなら、現状のサイズでも我慢できるが、毎日の持ち歩きに装着しっぱなしというわけにはいかない。何かのショックで折れてしまうのが心配だ。折れるのがレシーバーなら、あきらめもつくが、本体側の端子が壊れた場合は、結構な額の修理代が発生するだろう。 ●挿したことを忘れるレシーバー 9月7日の発売がアナウンスされたロジクールの無線レーザーマウス「VX Nano Cordless Laser Mouse for Notebooks」は、そんな悩みを持っていたユーザーにとって待望の製品だ。ホイールのクリックでホイールを回したときのクリック感の有無を切り替えられるマウスで、超小型の新型レシーバーを採用している。 そのキャッチフレーズは、「プラグ・アンド・フォーゲット」だ。さすがに挿したことを忘れるというほどには小さくないが、装着時の突起が8mmしかないというのは、これまでのレシーバーのイメージを大きく変えてしまう。 実際に、自分のノートパソコンに装着して使ってみたが、これはいい。ただ、8mmとはいえ突起は突起なので、デイパックのように、PCを縦にカバンに入れるようなときには、突起が上になるように気をつけた方がいいだろう。ぼくの普段使っているレッツノートR6は、左にPCカードスロットがあり、ここにイーモバイルの通信カードが挿しっぱなしだ。そしてUSB端子は右側にある。だから、両側に突起が出てしまい、両方をつけっぱなしでカバンに縦に収納する場合は、どうしても、レシーバー側を下にするのだが、それで大丈夫なものなのかどうか、ちょっと心配だ。 さらに、装着したレシーバーが端子に固定されているわけではないので、何かの拍子に抜けてしまわないかどうかも心配だ。あまりにも小さいので、抜け落ちて、床に転がっても、きっと気がつかないだろう。粘着ゴムのようなもので、補助的にはずれにくくしておくような工夫をしておけば安心かもしれない。 ●極小Bluetoothアダプタも登場 ノートPCに接続したいデバイスがマウスだけなら、これで問題は解決し、当面は快適に使えるだろう。だが、本当ならワイヤレスでオーディオを楽しみたいし、PocketPCとのデータ交換や、携帯電話との通信、GPSの接続など、各種のデバイスを汎用的にカバーするために、Bluetoothが欲しくなる。 今年の初め、Newton Peripheralsから、「MoGo Dapter」という超小型のBluetoothレシーバーの発売がアナウンスされたが、発売は延び延びで、いっこうに出荷される気配がない。ところが、思わぬところから、極小レシーバーが出荷されるという。 プリンストンテクノロジーの「PTM-UBT3S」は、国内最小最軽量級を称するBluetooth USBアダプタで、そのサイズは14×19×4.5mm(幅×奥行き×高さ)、重さもわずか5.5gだ。 ロジクールのマウスレシーバーは14.4×18.7×6.1mm(同)で重さは2gなので、重さは倍近いといってもここまでくれば誤差の範囲だろう。サイズ的にもほぼ同等とみなしていい。端子に装着したときの出っ張りも、ほとんど同じだ。たとえ、海外製のMoGo Dapterが出荷されたとしても、日本国内での認可を、どこかのベンダーが取得して販売してくれない限り使えないので、当分の間は、この製品を愛用しようと思っている。 最終版のサンプルを使わせてもらったが、製品版では筐体の色が少し濃く、内部のアンテナが見えない点、また、コネクタ部分にPrincetonの刻印がない程度の違いだそうだ。 スタックは東芝製のものを使う。同社には、USB Bluetoothアダプタとして、PTM-UBT2という製品があるが、そのソフトウェアと同等のものになるという。サンプルでは、PTM-UBT2のドライバ、スタックをそのまま使うように指示があったので、おそらく、同等の回路が、このサイズに凝縮されたということなのだろう。 対応プロファイルは、DUN、FAX、LAP、SPP、HID、HCRP、FTP、OPP、A2DP、AVRCP、GAVDP、HSP、HFP、PAN、BIPで、個人的にはこれで十分だ。気になる到達距離は、仕様では約10mとなっているが、Bluetoothヘッドフォンでオーディオを再生してみたところ、PCと同じ部屋の中にいる分には大丈夫だが、隣の部屋に行くととぎれてしまうといった状況だ。でも、これで特に不自由を感じることはなさそうだ。 Bluetoothは、PCベンダーと、携帯電話キャリア、デバイスベンダー、そしてユーザーの間で、それぞれの思惑というか、温度差が大きく、なかなか標準的な環境にならない。内蔵PCがそれほど多くないため、実際には自分の携帯がBluetoothに対応しているのに、パソコンに接続して使ったことがないといういユーザーも多いだろう。それに、将来的にはワイヤレスUSBなどに置き換わってしまうことも考えられる。でも、こうしたデバイスの登場によって、ワイヤレス環境でPCがさらに快適で便利なものになっていくことを、多くのユーザーに知ってもらうことができそうだ。BlutoothはPCのワイヤレス環境を充実させる、唯一の解ではないにせよ、当面は、そこに頼るしかなさそうだからだ。
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(2007年8月31日)
[Reported by 山田祥平]
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