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InfraNT「ReadyNAS NV+」レビュー
~柔軟な拡張性と迅速なサポートが魅力のNASキット

InfraNT「ReadyNAS NV+」


 RAIDの採用やテラバイトクラスへの容量アップといった高機能化が進む一方で、ホームユーザーを想定した低価格設定の製品や凝ったデザインの製品が登場するなど、さまざまな製品が登場しつつあるNAS市場。そんなNAS製品の中で注目を集めているのがInfraNTのNASキット「ReadyNAS NV+」だ。柔軟な拡張性を備えた高機能NASの実力を検証してみた。

●NAS製品の分野で注目されるInfraNT

 InfraNTのReadyNAS NV+は、ハイエンドのホームユーザー、もしくはSOHOや小規模オフィス向けのNASキットだ。

 国内ではあまり馴染みのないメーカーかもしれないが、ネットワークストレージプロセッサの開発やNAS製品の提供を行なっており、先日、ネットワーク機器メーカーのNETGEARの傘下となったことでも話題となった企業だ。

 企業の規模としてはさほど大きくなく、現在はラックマウントタイプやコンパクトタイプなど、「ReadyNAS」シリーズと呼ばれるいくつかのNAS製品をラインナップしている程度だが、その中でハイエンド指向の強いユーザーの注目を集めているのがコンシューマー向けのコンパクトな製品となるReadyNAS NV+だ。

 さすがに家電量販店などでは、取り寄せ扱いだが、秋葉原の一部ショップなどの店頭でデモ機が設置されていることもあるので、見かけたことがある人もいるのではないだろうか。

 本製品の特徴は、何と言っても柔軟性の高さだ。ハードウェアやソフトウェアなどの構成が比較的ユーザーに解放されており、いわゆるLinux Boxほど自由ではないものの、ソフトウェアのアドオンなどによって必要な機能を追加することなどができるようになっている。もちろん、高いパフォーマンスやX-RAIDと呼ばれる独自のハードウェアRIADなど、高い性能や信頼性も確保されており、企業などでの運用実績もある製品となっている。

 国内メーカーのNAS製品の低価格化が進む中、価格的には決して安くないが(HDDなしで95,000円前後、2TBモデルで16~17万円前後)、機能的にはかなり見るべき点の多い製品となっている。早速、その特徴を見ていこう。

●液晶パネルを搭載し、フロントからのホットプラグに対応

 それでは外観から見ていこう。まずはサイズだが、ReadyNAS NV+の本体サイズは132×222×200mm(幅×奥行き×高さ)と確かにコンパクトだ。ただし、最近ではアイ・オー・データ機器の「LANDISK Home」などのようにRAID対応でもかなりコンパクトな製品も存在することもあり、RAID対応のNASとしては一般的なサイズといったところだろう。

 外観で目に付くのは、何と言ってもフロントの液晶パネルだ。本体下部に搭載された液晶パネルには、電源ONの直後に表示される「Booting」といった状態を示すメッセージやDHCPなどで割り当てられた本体のIPアドレス、ディスクの状態などのシステム情報が表示されるようになっている。

 一般的なNASの場合、設定情報や状態などは、基本的にブラウザやユーティリティを使って本体の設定画面にアクセスしないと確認できない。しかし、ReadyNAS NV+の場合、簡単な状態であれば液晶のみで確認することが可能だ。たとえば、稼働中に本体のHDDを取り外せば液晶に「Disk X(番号) Fail」と表示されるし、再び装着すれば「Disk X Insert」、そしてRAIDの再構築が始まれば「Disk X Sync」と、常に状態が表示される。

 通常、ステータスに関してはLEDなどでも表示されることが多いが、これだと何が起こっているのかをすぐに把握できない。これに対してReady NAS NV+はハードウェアの目の前ですぐに状態を把握し、トラブルなどへの対処が可能だ。

 HDDに関しては、フロントのパネルを開くことで装着可能となる。縦置きに最大4台まで装着可能となっており、シリアルATAのHDD(試用機はHGSTのHDT725050VLA360を使用)にロック機構を搭載した専用のトレイを装着してから、スロットに差し込む方法となっている。ショップなどでは750GB×4台で3TBのモデルも販売されているが、互換性の問題もあり、装着できるHDDの容量やモデルに一部制限もあるようなので、詳細はメーカーサポートページを参照していただきたい。

フロント下部に液晶パネルを搭載。簡単なステータスが表示されるようになっている フロントパネルを開けることでHDDの脱着が可能。HDDは専用トレイを装着して利用する

 インターフェイスはフロントにUSBメモリ用のUSB×1、背面にUSB×2、Gigabit Ethernet、電源となっている。USBにはプリンタを接続して共有したり、USB HDDを接続して増設することも可能だが、このほかにUPSを接続することも可能となっている。USB接続に対応したUPSを利用すれば、電源の状態に合わせてReadyNAS NV+のシャットダウンなども可能となっている。こういった機能は、企業ユーザーにはありがたいところだ。

本体前面にUSB×1、背面にUSB×2を搭載。前面のUSBはメモリコピー用として利用可能でボタンを押すことでメモリのデータをReadyNAS NV+に自動コピーできる。UPSも接続可能なので企業ユースにも最適だ

 本体の冷却は背面に搭載されている92mmのファンによって行なわれている。フロント側がメッシュ構造になっているため、前面から空気を吸い込んで、HDDや電源などを冷却しつつ背面側に排気するというしくみだ。ファンの回転数は動作状況や温度などによって可変となっており、たとえば起動時は比較的回転数が高く、次第に収まってくるように調整されている。回転数などを手動で設定することはできないが、キャリブレーションと呼ばれる自動調整機能は搭載されている。2,500rpmを越えるとかなりうるさいが、1,800rpmあたりで落ち着いてくれれば許容範囲といったところだ。

 なお、プロセッサにはInfraNT独自のIT3107ネットワーク・ストレージ・プロセッサが搭載されており、メモリは標準で256MBとなっているが、メモリに関しては1GBに増設可能だ。ショップなどで動作確認済みメモリが販売されているので、これを入手すると良いだろう。

●X-RAIDで自動的にRAIDを構成

 実際の利用方法で特徴的なのはRAIDの構成だろう。通常のNASであれば、設定画面からRAIDのモードを設定し、最初に初期化を行なうといった使い方になるが、ReadyNAS NV+の場合はこのような設定が一切不要となっている。

 もちろん、手動でRAIDの構成をすることもできるが、標準ではX-RAIDと呼ばれる同社独自の方式が採用されており、装着したHDDの台数によって自動的にRAIDの構成が行なわれるようになっている。

 たとえば、500GBのHDDを利用した場合は以下のような構成となる。

台数容量モード
1台500GB冗長性なし
2台500GBミラー(RAID 1)
3台1TBRAID 5
4台1.5TBRAID 5

 このため、RAIDのモードなどがよくわからないといった場合でも、装着したHDDの台数によって最適なモードが自動的に構成されることになる。NASを次第にステップアップさせていくという使い方も可能で、最初は1台のHDDから使い始め、徐々に増やしていくという場合でもデータを保持したままステップアップ可能だ。

RAIDの設定や構成確認は設定画面からチェック可能。ただし、基本的にはHDDを装着するだけで自動的に構成される

 なお、専用チップによるハードウェアRAIDとなるため、ソフトウェアRAIDのようなパフォーマンスの低下も心配ない。なかなか柔軟な設定が可能だ。また、HDDの装着は基本的にReadyNAS NV+の電源を入れたままの状態で行なう必要がある。

 もちろん、ホットプラグ対応なので、HDDの故障の場合なども、電源を入れたまま、NASの運用を続けながら、HDDの交換ができる。HDDを交換すると、自動的に同期が行なわれ、数時間後に同期が完了すれば元通りの状態で利用できるようになる。

 とにかく難しいことを一切考えずに、増設や交換などができるのは大きな魅力と言えるだろう。

 というわけで、ハードウェア構成とReadyNAS NV+独自の機能となるX-RAIDについて紹介した。次は、機能面やパフォーマンスを中心に紹介する。

●豊富なサービスを搭載

 ReadyNAS NV+は利用可能なサービスも非常に豊富なNAS製品だ。CIFS、いわゆる通常のファイル共有サービスに加えて、NFS、AFP(Apple Filing Protocol)、FTP、HTTP/HTTPS、Rsyncの各プロトコルをサポート。これにより、WindowsやMacから共有フォルダを利用できるだけでなく、FTPによるファイル転送に利用したり、HTTPやHTTPSを使ってブラウザから共有フォルダにアクセスすることも可能となっている。

ReadyNAS NV+の設定画面。設定はRAIDarと呼ばれるユーティリティ、もしくはブラウザから「http://xxxxxxxxx/admin/」にアクセスすることで表示できる サービスの設定画面。CIFS、NFS、AFP、FTP、HTTP/HTTPS、Rsyncなどのプロトコルを必要に応じて有効/無効に設定できる

 個人的には、HTTP/HTTPS(WebDAVとしても設定可能)を外部とのファイル共有などに利用すると便利ではないかと感じた。もちろん、セキュリティには十分配慮する必要があるが、特定のフォルダ(既存の共有フォルダにリダイレクト設定することも可能)をHTTP/HTTPSで公開し、ルーターなどでポートマッピングの設定をしておけば、外出先などからでもブラウザを利用して手軽にNAS上のファイルにアクセスできるようになる。

 筆者などのような仕事であれば、編集部にHTTP/HTTPSでのアクセスが可能なアカウントを発行しておくことで、NASに保存しておいた原稿や画像などをリモートから取得してもらったり、逆にPDFなどのゲラを保存してもらうといった使い方ができる。

 こういったサービスは、インターネット上のストレージサービスやファイル転送サービスなどを使う方向が主流となってきているが、容量の制限などがあって思うようにファイルを転送できない場合もある。ビデオなどの大容量ファイルのやり取りに使うと非常に便利そうだ。

 ちなみに、ファイル共有については、一般的なNASと同様にオーソドックスな設定だ。共有フォルダを作成して制限なしにアクセスできるようにすることもできれば、ユーザーやグループごとにアクセス権を設定することもできる。もちろん、既存ドメインとの連携も可能となっており、手軽なホームユースから本格的な企業ユースまで、幅広く対応できるようになっている。

HTTP/HTTPSを有効にすると、ブラウザを利用して共有フォルダにアクセス可能。ルーターを適切に設定しておけば外部からのアクセスも可能となる ファイル共有は、共有フォルダごとにパスワードを設定する「共有モード」に加えて、ユーザーモード、ドメインモードを用意。一般的なユーザーモードでは、ユーザーやグループごとにアクセス権を設定できる 共有フォルダの管理画面。サービスの有効無効を設定できるほか、サービスごとにアクセス権の設定などができる

●メディアサーバーとしても利用可能

 このほか、ストリームサービスとして、iTunesサーバー機能、UPnP AV機能をサポート。さらに、海外環境向けの機能としてSlimServerという機能が搭載されており、「SLIM DEVICES」と呼ばれるストリーム再生機能を搭載した専用のオーディオプレーヤーなどのサーバーとして利用する機能も搭載されている。

 試しに、ReadyNAS NV+に標準で用意されている「media」フォルダに音楽や画像、動画などの各ファイルを保存し、デジオンのDiXiM Media Clientからアクセスしてみたが、問題なくReadyNAS NV+を認識し、保存されているメディアファイルを再生できた。また、iTunesに関しても、最新の7.3を利用して問題なくReadyNAS NV+上の音楽ファイルを再生することができた。

iTunesサーバー機能を有効に設定。iTunesの左側のメニューにReadyNAS NV+が表示される。共有フォルダにAACファイルを保存しておけば再生が可能だ DiXiM Media ClientからReadyNAS NV+を参照したところ。再生できるファイルはクライアント側の環境にも依存するが、映像に関してはWMVとMPGの再生が可能だった

 ただし、標準で搭載されているUPnP AV機能はバージョンが古いこともあり、互換性の点で問題が発生する可能性がある。また、実際にどのようなファイルを再生できるかは、クライアントの環境にも大きく依存する。クライアント側が再生に対応していないファイルの場合、ファイルが一覧に表示されたとしても再生できないケースもある。PS3なども接続可能とという報告もあるが、注意が必要だ。

●アドオンで機能を強化可能

アドオンを追加することで機能を拡張可能。必要に応じて進化させることができる。サポートも比較的充実しており、日本語のフォーラムなども利用できる

 もしかすると、メディアサーバーとしての制限を残念に思うユーザーも少なくないかもしれないが、実はこのような機能面の不足を手軽に解消できるのもReadyNAS NV+の魅力の1つでもある。

 たとえば、前述したメディアサーバーとしての機能であれば、TwonkyVisionからDLNAサーバー(TwonkyMedia)の試用版なども提供されており、これを利用することで、より多くのフォーマットがサポートされるようになる。また、Windows Vistaをクライアントとして利用したときのパフォーマンスを向上させるためのアドオンやファンの回転数を最小限に抑えるアドオンなども提供されている。

 いわゆるLinux Boxほど自由度は高くないが、カスタマイズできる要素がユーザーに残されているところに心を動かされるユーザーも少なくないだろう。


●パフォーマンスは良好

 さて、気になるパフォーマンスについてだが、これはなかなか良好だ。FDBENCHによるテストを実施してみたところ、22,990KB/secとリードのパフォーマンスがかなり高い結果が得られた。この結果はJumbo Frameを無効にした状態の値なので、有効にすれば大容量のファイル転送などがさらに有利になるだろう。

クライアントにWindows XP SP2搭載機(Athlon 64 X2 3800+/メモリ1GB/HDD 160GB/nForce4オンボードNIC)でReadyNAS NV+の共有フォルダをネットワークドライブにマウントして計測

 ただし、このようなパフォーマンスは設定によって大きく異なる場合がある。たとえば、前述したサービスのうち何を動作させるかで変化してくる。また、HDDの設定でジャーナリングシステムを有効にするかどうか、スナップショット機能(ファイルの状態を一定期間おきに保存しておく機能)を有効にするかどうかなどによって異なる。

パフォーマンス関連の設定も豊富。ただし、安全性とパフォーマンスのどちらを重視するかをよく検討する必要がある

 また、省電力機能などでHDDのスピンダウンを設定している場合も、スピンアップ開始からアクセス可能になるまで、若干のタイムラグが発生する。こういった設定はパフォーマンスというよりは、普段の使い勝手に影響するので慎重に設定した方が良いだろう。

 前述したFDBENCHの結果は、標準設定(スナップショット無効、フル・データ・ジャーナリングを行なわない、ライトキャッシュ許可、CIFS書き込みの高速化)での結果となるため、安全性を重視した設定にすればパフォーマンスが犠牲になる可能性もある。このあたりは、どこでバランスを取るかが重要だろう。

 個人的には、標準設定のままでも、文書や写真などであれば、PCからローカルとほぼ同じような感覚でファイルの読み書きができ、まったくストレスを感じることはなかったので、おそらくパフォーマンス面で不満に思うことはないはずだ。


●投資した金額に見合う性能を手に入れられる

 以上、InfraNTのNASキット「ReadyNAS NV+」を検証してみたが、機能が豊富で性能も高く、しかもハードウェア、ソフトウェアともに拡張性も高いと、ほぼ文句のない製品と言える。

 海外の製品でありながら、国内のサポート体制もしっかりと整えられており、インターネット上のフォーラムでの活動もしっかりと行なわれている。担当者のレスポンスの速さにも定評があり、安心して使えるというユーザーの声が多いのも特徴だ。

 個人的にも、冒頭で紹介したHTTP/HTTPSアクセスによる新しい使い方ができる点などが気に入った。できれば、ファイル転送サービスのようにワンタイムの転送が可能なしくみが搭載されてほしいところだが、それは贅沢と言うものだろう。

 強いて気になる点を挙げるとすれば、価格と音だろうか。国内メーカーがかなり低価格なRAID対応NASを提供していることを考えると、確かに多機能で信頼性も高いのだろうが、やはり高く感じてしまう。また、音に関しても、気温が低く、使用頻度も低ければ、ファンが静かに回ってくれるのだが、現在のような夏場は回転数が高くなりがちで、結構うるさい。オフィスなら気にならないが、個人宅では結構気になるだろう。

 価格は機能を考えると仕方がない部分もあるが、音に関しては、大型のファンにして回転数を抑えるとか、フロントのメッシュの部分の形を変えて音が静かになるようにするなどの工夫はできそうなので、そういった改善に期待したいところだ。

□InfraNTのホームページ
http://www.infrant.com/
□製品情報
http://www.infrant.com/products/products_details.php?name=ReadyNAS%20NVPlus

(2007年8月9日)

[Reported by 清水理史]

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