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WinHEC 2007 Tokyo 基調講演レポート

マイクロソフト、拡大するWindowsエコシステムをアピール
~Server 2008の仮想化技術の紹介も

6月18日 開催



 マイクロソフト株式会社は18日、技術者向けカンファレンス「Windows Hardware Engineering Conference(WinHEC) 2007 Tokyo」を開催した。会期は6月18日~19日まで。事前登録制で、参加登録は締め切り済み。

 WinHECは、Windows向けハードウェアや周辺機器について、Microsoftのビジョンと技術を説明するカンファレンス。WinHEC 2007 Tokyoは、米国で開催されたWinHECより抜粋されたプログラムで運営される。基調講演は、マイクロソフト株式会社 業務執行役員 最高技術責任者 加治佐俊一氏と、米Microsoft プラットフォーム コンポーネント クリエーション&コラボレーション担当VP ウィリアム・ミッチェル氏が担当した。

 このほか、記者向け説明会を開催し、Windows VistaビジネスのアップデートやWindows Server 2008の紹介を行なった。

●最も強大で強力なWindowsエコシステム

 基調講演冒頭では、加治佐氏が15年前を振り返って挨拶。

 「当時は開発の立場だったが、メーカー各社がそれぞれのブランドで出していたものをマイクロソフトのプラットフォームとして仕上げることに注力していた。それが15年前」。

 そして現在に至るまで、各社と連携を強化してきたと強調した。また、日本では独自の機能を搭載したデバイスが多く、Vistaに対応したプリンタドライバ5,500本のうち8割が日本のデバイスであり、その熱心なメーカー各社の取り組みを称えた。ネットワークにおいては、Windows VistaとWindows Server 2008(コードネーム:Longhorn)でIPv6に対応したことを挙げ、進んだネットワーク環境の中で日本の果たす役割は大きいとした。

マイクロソフト株式会社 業務執行役員 最高技術責任者 加治佐俊一氏 ハードウェアエコシステムをアピール

 次いで、Microsoftのウィリアム・ミッチェル氏が登場し、Windowsを取り巻くエコシステムを「最も強大で強力なエコシステム」とアピール。

 多くの顧客からPCの将来は横ばいから下落になるのではないかという疑問が寄せられているが、それに対してはビル・ゲイツ氏のウィンストン・チャーチルの引用を利用した応答を示し、「始まりの終わりである」と一蹴した。

 PCのハードウェアだけではなく、それにつながるデバイスやソフトウェアなど、多くの成長トレンドがあり、エコシステムのパートナーと協力することで新しい可能性が生まれつつあり、PDAや車載向けなど、顧客に新しい価値を提供するサービスオリエンテッドなアーキテクチャが生まれてきている。この1年を振り返ってもWindows VistaとOffice 2007のローンチがあり、我々は顧客からの反応に満足し、パートナーからも良い反応を得ているとした。

Microsoft プラットフォーム コンポーネント クリエーション&コラボレーション担当VP ウィリアム・ミッチェル氏 ビル・ゲイツ氏のウィンストン・チャーチルの引用 多くの成長トレンド

 その勢いについては、Vistaの好調なローンチを挙げて説明したほか、ポータブルデバイスや、UMPC、SideShowデバイスの拡大を挙げてアピール。加えて、それらを繋ぐ物としてWindows Rallyテクノロジーを紹介。Windows Rallyは、デバイスを簡単セキュアに接続するプラットフォーム。同氏は、「Windows Rallyは業界を完全に様変わりさせる力を持つ、USBのような存在」と期待を示す。

 そのデモとして、5分間でワイヤレスルーターを設定し、カメラ、マスストレージ、ピクチャフレームを接続して見せ、プラグ&プレイでスタートし、インストールをクリックするだけで優れたエクスペリエンスを提供できるとした。次いで、HDコンテンツに対応したメディアブリッジ「Media Center Extender」をデモ。PCとXbox 360をワイヤレスで接続し、HDコンテンツをIEEE 802.11nでストリーミング再生した。

Windows Rallyのデモの様子 接続したストレージのガジェットでスタータスを表示するなどの付加価値も提供 Windows Rallyに賛同するパートナー

 講演終盤には、小型から、エンタープライズ、クラスタ型へと展開するWindows Serverのラインナップに触れ、家庭内ストレージ向けのWindows Home Serverを紹介。そのもう一方の端になるのが、Windows Server 2003を強化し、基礎を改善したというWindows Server 2008という。Server 2008では、Power Shellによるスクリプティングの強化や、BitLockerやTPMによるセキュリティの強化、パフォーマンスの改善などが行なわれているという。Server 2008は“Vista Waveに乗って”2007年度中にリリースする予定。

 今後のビジョンについてウィリアム・ミッチェル氏は、現在はタッチスタイルやタッチペン、音声認識、近接の検知などに取り組んでおり、今後はこういったデバイスによりユーザーが混乱する世界に成る可能性もあるとしながらも、コンテキストベースの振る舞い検知に対応していくとした。

 また加治佐俊一氏は、これまで通りにスケールアップが続けられない状況があり、今後の方向としてはマルチコア、メニイコアへ進むと考えられるが、現状のプログラミングでは難しい。来るべき超並列処理と複雑さへの挑戦があり、「如何にマネージし、克服するかが次のチャレンジ。エコシステムとハードウェアの技術は引き続き重要で、これからもパートナーと連携を強めていきたい」と語った。

幅広く展開するWindows Server Windows Server 2008の特徴 展示されたUMPCや、SideShow対応デバイスのコンセプトモデル

●VistaとWindowsは健全なビジネス

 基調講演の後に開催された記者向け説明会では、マイクロソフト 業務執行役員 Windows本部 本部長 ジェイ・ジェイミソン氏が国内のWindowsビジネスの現状をアップデート。

 同氏は、「エコシステムのサポートにより、イノベーションあふれる動き(Momentum)があり、VistaとWindows全体は健全な状態で、もっと伸びる」とその好調さを強調した。

 その理由として、Windows Vistaの認知度がPCユーザーの90%に達していることや、サポートデバイスやオンラインサービスの拡大を挙げた。また、企業向けには5つのコンポーネントからなる「Desktop Optimization Pack 2007」を7月1日より投入し、Windows Vistaの採用を加速させるとした。

マイクロソフト 業務執行役員 Windows本部 本部長 ジェイ・ジェイミソン氏 Windows Vistaの国内PCユーザーからの認知率は90%
拡大するWindows Vistaのビジネス Desktop Optimization Pack 2007を企業向けに提供

 エコシステムの拡大については、Windows Vistaの新機能に対応したデバイスをデモ形式で紹介。ReadyDriveによるパフォーマンス向上や、Windows Mobile機でのSideShow利用、Windows Rallyによるワイヤレスプロジェクタの接続などを紹介した。Windows MobileでSideShowを利用可能にするソフトは、β版を秋口にリリースする予定。

 そのほか、Webへの展開としてWPF(Windows Presentation Foundation)を紹介。その採用例として、Webプラネタリウム「メガスター」のβ版をデモした。ジェイミソン氏は、「コンテンツオーナーとWebが協業してアプリケーションを開発できるのがWPF。WPFとVistaのプラットフォームで、ビジネスと消費者の双方が可能性を実現するチャンスを拡大できる」とアピールした。

SideShowに対応するWindows Mobile Windows Rallyに対応したワイヤレスプロジェクタのプロトタイプ WPFを採用したWebプラネタリウム「メガスター」のβ版。中央にはオリオン座

●Server 2008の仮想化をアピール

 記者説明会後半では、マイクロソフト 業務執行役員 サーバープラットフォームビジネス本部 本部長五十嵐光喜氏が、Server 2008の現状を説明。

 サーバーなどのTCOは60%が人件費で、手動による管理の割合が未だに多いと現状を指摘。それに対してServer 2008は、管理機能の向上、セキュリティの向上、柔軟性の向上の3つの価値を提供するという。

 管理機能については、Power Shellによるスクリプティングの強化のほか、余分な機能を省いてインストールするサーバーコアなどの機能を提供。セキュリティについては、ネットワークのセキュリティを管理する「Network Access Protection」や権限を最適化した「Windows Service Hardening」設計が導入されている。

マイクロソフト 業務執行役員 サーバープラットフォームビジネス本部 本部長五十嵐光喜氏 管理機能の向上、セキュリティの向上、柔軟性の向上の3つの価値を提供 Network Access ProtectionやWindows Service Hardeningなどによるセキュリティの強化

 そして、柔軟性の向上として取り入れられたのが仮想化である。これまでの仮想化はホストOS上でハードウェアを仮想化し、その上にゲストOS、アプリケーションという構造になっていた。Server 2008では、サーバーのハードウェア上で仮想化レイヤーを動作させ、その上でハードウェアを仮想化してゲストOS/アプリを動作させる構造になっている。

 より具体的には、Server 2008のターミナルサービスがホストとなって仮想化を行ない、クライアントはプレゼンテーション(画面表示)のみを仮想化レイヤー上に表示する。これにより、仮想化レイヤーが圧縮されることでパフォーマンスが向上するほか、ホストOSが不要なためセキュリティリスクが軽減される。また、Server 2008はSoftGridにも対応し、クライアントはサーバーよりアプリケーションを取得し、クライアントのホストOS上のSoftGrid上でアプリケーションを動作させることもできる。SoftGridはアプリケーションのキャッシュが可能なのが特徴だが、ターミナルサービスの場合はアプリケーションのインストールが不要で、クライアントPCに影響を与えずに利用出来る。

 同氏は、「高価なハードウェアをいかにフレキシブルに使うかが仮想化のコンセプト。しかし、単なるハードウェアの柔軟化にとどまらず、ユーザーの環境に応じたフレキシブルなサービス提供が狙い」とまとめた。

 なお、Server 2008は現在β3の段階で、第3四半期にRC、第4四半期にRTMをリリース予定。

SoftGridの模式図 ターミナルサービスの模式図
仮想化のデモ Server 2008のリリース予定

□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
□WinHEC 2007 Tokyoのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/events/winhec/
□ニュースリリース
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3100
□関連記事
【5月18日】【WinHEC2007】Windows Server 2008の製品展開やロードマップが公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0518/winhec03.htm

(2007年6月18日)

[Reported by matuyama@impress.co.jp]

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