【やじうまPC Watch】MIT、無線電力転送の実験に成功
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実験を行なったチーム。背後にあるのが機材 |
6月7日(現地時間)発売
米マサチューセッツ工科大学(MIT)は7日、Marin Soljacic教授が率いるチームが無線電力転送の実験に成功したと発表した。
無線電力転送の方法は、古くから電磁放射が知られている。これは全方位に拡散するため、情報の転送には好適だが、電力の転送には効率の面で適していない。他方、レーザーは指向性があるが、見通しが必要なため、やはり実用的ではない上、利用上の危険性もはらむ。
今回Soljacic教授らが開発したのは共振体を利用したシステム。共振周波数が同じ2つの共振体は効率的にエネルギーを交換し、他の非共振体とはほとんど干渉しないという特性を持つ。
同チームは共振体の中でも、磁性共振体に着目。2つの電磁共振体はほとんど磁場によってのみ結びつけられ、両者の距離が自身の大きさの数倍程度であっても、その結合が強いことが分かった。また、一般的な物質や生体は磁場との干渉がほとんど無いため、安全性が高いという。
実験に用いたのは、2つの銅コイルによる自己共振体で、2m以上離れた60Wの電球を点けることに成功した。片方は電源に接続され、周囲に電磁波を放射する代わりに、MHzクラスの周波数を発生させる非放射性磁場で満たす。これにより、非放射性場が、磁場と共振するよう設計された残りのコイルとの電力交換を仲介する。
非放射性場を利用することで、受け側のコイルに受け取られなかった電力は、送る側のコイルの近辺に束縛されるメリットがあるほか、電力の転送範囲が限定される。ノートPCサイズのコイルの場合、ノートPCを動かすのに必要な電力を一部屋分の距離まで見通しの善し悪しに関係なく転送でき、バッテリレスの運用すら可能になるという。
同チームでは、このシステムを「WiTricity (Wireless Electricity)」と称している。
□MITのホームページ(英文)
http://web.mit.edu/
□ニュースリリース(英文)
http://web.mit.edu/newsoffice/2007/wireless-0607.html
(2007年6月8日)
[Reported by wakasugi@impress.co.jp]