GeForce 8シリーズのミッドレンジ向け製品が発表され、そのうちGeForce 8600 GTSの記事を前回お届けした。今回は、同時に発表された下位モデル「GeForce 8500 GT」搭載製品をMSIから借用することができたので、そのベンチマーク結果を紹介したい。 ●リファレンスデザインに準拠したMSI製品をテストに使用 今回発表された、GeForce 8シリーズのミッドレンジ向け製品であるGeForce 8600/8500シリーズの概要については、前回記事をご覧いただきたい。ここで取り上げるのは、そのうち、もっとも下位に位置付けられるGeForce 8500 GTである。 借用したのは、MSI製の「NX8500GT-TD256E」。赤い基板とMSI製品ではおなじみの丸いファンが特徴の製品だ(写真1)。ただ、NVIDIAが公表しているリファレンスデザインの写真(写真2)と比べると、ボード自体はリファレンスデザインに準拠しているようで、ファンのみをMSIオリジナル品に変えただけのようだ。 メモリは400MHz動作が可能な、Hynixの2.5ns品(写真3)。256MbitのGDDR2メモリを8枚搭載して計256MBとなっており、いずれも仕様通りである。 nTuneによる動作クロックの表示では、コアクロックが459MHzと、若干ながら定格よりも高め(画面1)。メモリクロックは定格どおり400MHz(データレート800MHz)になっている。
●GeForce 7600 GSとの比較を実施
それでは、さっそくベンチマークの結果をお伝えしていきたい。環境は表の通り。今回の主な比較対象はGeForce 7600 GSとし、BIOSTAR製の搭載製品を用意している(写真4)。ただし、この製品は、コアクロックは400MHzと定格通りなのだが、メモリクロックが1.4GHz(700MHz DDR)で、定格動作の1.6GHz(800MHz)よりも遅い動作となっている。このほか、参考までに前回記事からGeForce 7600 GTとGeForce 8600 GTSの結果を流用し、併せてグラフ化している。
【表】テスト環境
では、3DMarkシリーズから順にテスト結果を見ていきたい。「3DMark06」(グラフ1~4)、「3DMark05」(グラフ5)、「3DMark03」(グラフ6)の結果を示している。 3DMar06と3DMark05の結果は似たような傾向を示した。GeForce 8500 GTは今回の比較対象の中ではスコアがもっとも低く、大雑把に見てGeForce 7600 GSのスコアに対して70~80%前後のスコアとなった。解像度が向上してもそれほど差が開かない点は評価できるが、絶対的性能が低い印象を受ける。 3DMark06のFeature Testの結果は、GeForce 8600 GTSの記事で触れた内容から推測できる範囲に留まっている印象だ。GeForce 8600 GTSの記事で示した結果に比べると、とくにVertex ShaderやShader Particlesの両テストで伸び悩みを感じるかも知れないが、GeForce 8500 GTはStreaming Processor(SP)が16基に制限されている点が大きく影響しているのだろう。 次に3DMark03の結果だが、これはGeForce 8600 GTS同様、GeForce 7シリーズに対して大きく差をつけられる結果となった。GeForce 7600 GSと比較した場合、3DMark06/05のスコア差は先に触れた通り70~80%前後であったが、こちらは50~60%に留まっている。
また、実際のゲームを利用したベンチマークも、前回記事同様に、「Splinter Cell Chaos Theory」(グラフ7、8)、「Call of Duty 2」(グラフ9)、「F.E.A.R.」(グラフ10、11)を試しているが、Call of Duty 2でアンチエイリアス適用時に描画が乱れるトラブルも変わらず発生している。GeForce 7600 GSとのスコア差も60~70%前後で、3DMark03ほど大きな差はつかなかったものの、やはり3DMark06/05と比べても極端に低い結果に収まっている。 GeForce 8600 GTSとはドライバが同じなので比較結果を見てみたい。テストにより多少の違いはあるが、GeForce 8600 GTSのスコアに対して30~50%程度といったところ。多くのテストは30%台のスコアになっているが、SPが半分になっているのに加え、クロックも落ちているわけだから、半分以下のスコアに留まるのも納得できる。 最後に消費電力測定の結果である(グラフ12)。GeForce 8500 GTの消費電力は、おおよそGeForce 7600シリーズと同等に近いと見ることができる。パフォーマンスはより低いが電力は同等程度に消費するわけで、あまり良い印象は残らない。
●ファンレスモデルなら価格勝負ができるか? ということで、駆け足で結果を見てきたが、この製品は価格勝負の立場ということになるだろうか。従来はGeForce 7600 GSの下にGeForce 7300 GTという存在がいたが、GeForce 8500 GTは仮にも百の桁に“5”という数字がついている。この製品名から、NVIDIAはGeForce 8500 GTを、GeForce 7300シリーズが属するローエンド、バリューといったセグメントではなく、セミミッドレンジという位置付けていることが分かる。 だが、そのポジションにいる製品としては、あまりに3Dパフォーマンスが低い印象を受ける。さらには、消費電力もGeForce 7600 GS程度に達してしまっている。GeForce 7600 GSより優れているといえるポイントは1万円台前半が予想される価格と、DirectX 10対応、第2世代のPureVideo HDに対応したビデオプロセッサといった点。もっとも、GeForce 7600 GSでも1万円半ばに近い価格の製品があるので、極端に優位性があるわけではない。 3Dパフォーマンスに興味がない人は、そのビデオプロセッサだけでも魅力になるかも知れないが、NVIDIAはOEMに対して、GeForce 8500 GTのメモリインタフェースを64bitに制限した「GeForce 8400 GS」という製品を出荷する予定になっている。そのことを考えると、GeForce 8500 GTという製品は実に微妙な立場にあると言える。 ただ、GeForce 8400 GSはOEM向けのみの出荷とされているので、単体で入手できる自作市場に流れてくるとは限らない。仮に出てくるとしても、今日明日のことではないだろう。そのため、このビデオプロセッサを実装し、“確実に単体入手できる”製品としては一番安価なモデル、というのがGeForce 8500 GTの持つアピールポイントとなり得る。 ちなみに、リファレンスデザインではファンを搭載しているGeForce 8500 GTだが、GeForce 7600 GSでもファンレス製品が少なくなかったことを考えれば、同等の消費電力を持つ本製品のファンレス製品も多く登場する可能性は高い。この点もGeForce 8500 GTの持つ魅力として浸透していくかも知れない。 □関連記事 (2007年4月20日) [Text by 多和田新也]
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