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【IDF 2007基調講演レポート】

エリック・キム氏基調講演レポート
~“Intel Inside TV”がもたらすリッチなTV体験

エリック・キム上席副社長兼デジタルホーム事業本部長

会期:4月17日~18日(中国時間)

会場:Beijing International Convention Center



 中国・北京で開催されているIDF Spring 2007、初日に行なわれた基調講演の3人目のスピーカーとして登場したのは、Intel上席副社長兼デジタルホーム事業本部長のエリック・キム氏だ。“Intel Inside TV”の登場を宣言する同氏の基調講演は、同社の今後の戦略を考える上で、きわめて興味深いものだった。

●オーディオがビデオに置き換わるトレンド

デモされたJoostの画面

 ステージに登場したキム氏は、今年(2007年)は約750億本のビデオクリップがダウンロードされるだろうし、来年は1,000億本を超えるはずだと断言した。以前は、オーディオクリップが主流だったが、現在では、ビデオがオーディオに置き換わっている。しかも、その主導者は、コンテンツベンダーであるとは限らず、一般市民であり、人々は積極的に自分のビデオコンテンツを作ってそれを世界に対して公開している。いうまでもなく、これは、YouTubeのトレンドが作り出した現象だが、今、1億本以上のビデオコンテンツを抱えるYouTubeは、決して無視できない存在になっているという。

 もちろん、超メジャーなコンテンツベンダーであるTV局なども、誰もが楽しめるコンテンツをインターネットを使って公開しているし、中国でも、日本のNHKに相当するCCTV中国中央電視台(China Central Television) が数十のチャンネルを提供している。

 ただ、現在、インターネット経由でPCで視聴できるビデオコンテンツは、きわめて限定的な体験しか提供していないとキム氏は指摘する。画面も小さく、TVとはわけがちがうというのだ。

 ここでキム氏がデモンストレーションしたのが、Joostだ。TVの画質をPCに提供するというもので、中国国内にサーバーがあるわけでもないのに、高品質な映像を配信し、さらに、独自のUIで、チャットやフィードのサービスを利用することができるというものだ。

●つながることより、参加すること

 今日のインターネットは、EthernetによるTCP/IP接続が前提だ。ただし、世の中の各種のデバイスでインターネットにつながるものは決して少なくないが、インターネットに参加しているわけではなかったとキム氏は続ける。携帯電話でSNSや掲示板を積極的に利用している日本の現状を考えれば、ちょっとピンとこないが、少なくともIntelでは、そう考えているらしい。2011年までには1.7億台のデバイスがつながるというキム氏だが、今はグランドゼロの状態だという。

 今の世の中には2つのアイランドがあるとキム氏。1つはTVで、もう1つはPCだという。その中で、人々はPCやインターネットの利用に時間を使う。でもTVはなくならない。結果として、TVがPCを、PCがTVを置き換えるかというと決してそうはならない。コンシューマは、両方を使い続けるのだという。

 キム氏は、自分の子どもたちの行動を例にあげる。彼らは、リビングルームでTVを見ているかと思えば、ソファやフロアに寝そべって、自分のノートPCで友だちとコミュニケーションするなど、2つのことを同時にやっているという。キム氏は、これがコンバージョンされた経験だと定義する。

 今、ユーザーのニーズは、次にあげる4つの「C」に集約されるというのがキム氏の考えだ。

・Control
・Choice
・Clarity
・Community

 つまり、複数のデバイスをコントロールし、何百万もあるコンテンツの中から見たいものを選び、高品質で視聴し、他の誰かとそれを見た感動を共有するというのが、キム氏のいうところの新しい時代のデジタルパラダイムだ。

 これらのCを達成するために求められるのは、一貫性のある共通アーキテクチャだが、現状ではそれがない。でも、TVの中にもそれが必要で、だからこそ、Intel Inside TVなのだ。

 キム氏は、今までのコンシューマエレクトロニクス製品はシングルファンクションだったが、これからは、アプリケーションベースの処理が求められるという。そして、さらに、インターネットとの互換性だ。それによって、ソフトウェアベースでリッチなユーザー体験を提供できるという。

 スタートは過去においてPCであったが、その資産が、ユーザーのTV体験にイノベーションを起こす。それをコンシューマエレクトロニクスの世界に反映していきたいとキム氏の鼻息は荒い。

●成長し続けるPCにも注力

 続くプレゼンは毎年13%、特に中国では20%の規模で伸びているPCを、エンスージアスト、メインストリーム、ライフスタイル、エントリの4つのセグメントに分けて説明、そこにも注力を忘れていないことを強調した。

 特に、オールインワンPCやスモールフォームファクタが急成長しているライフスタイルセグメントでは、Appleを例に挙げ、同社が製品の美観とユーザビリティを大事にすることで成功を収めたと指摘する。PCがコンシューマ製品に近づけば近づくほど、消費者はこの点を気にするようになり、OEMベンダーとして、その部分を気にしているところは、大きな利益をあげることができるだろうとした。

 また、この夏には Santa Rosa DTとして、新たなデスクトップ用のプラットフォームが登場することを宣言、コンシューマカテゴリに大きな変化が訪れることを告げた。

 さらに、今後は、家庭内におけるPCの管理性が重要になってくることも指摘、PCのアップタイムが長くなるにつれて、クラッシュしたり、ウィルス感染したときに、どのような対処ができるかが、とても重要であるという。Intelには、企業内PCの管理ソリューションとして培ってきた各種のテクノロジがあり、それを家庭向けのソリューションとして2008年には提供する予定で、サードパーティベンダーは、それをうまく活用してビジネスにしてほしいという。

●TVはどう変わるのか

 TVは今、TV1.0からTV2.0へと移行の過程にある。IA in CE、すなわち、Intel Inside家電として最初に登場したのは、Apple TVだが、今後、各社から登場する製品はIntelが提供するワンチップのSoC(システム・オン・チップ型メディア・プロセッサー)を採用する。また、2008年にはさらに新しいSoCの提供も予定されているという。それによって、Intel製品が、より多くの家電製品に使われることになり、さまざまなメリットをユーザーに提供できるはずだとする。

 また、2つのアイランドを結ぶために、ホームネットワーキングはとても重要だとし、Ultra Wide Bandを使ったワイヤレスPANの技術で、ユーザーの要求事項を満たしていきたいという。

 常に変化してきたインターネットは、コンシューマが求める4つのCを満たすための要件を求めてきた。これまではPCだけがそれに対応できていた。でも、これからは、家電でもそれができる。PCと同じ良さを、家電の世界にももたらしたい。そんなことができるのは、開発者にとって、今しかなく、一生に一度のチャンスであり、大きな成長の機会だとキム氏。成長は始まったばかりなのだと、会場に集った中国の開発者たちを激励した。

□IDF 2007のホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/
□Joost(英文)
http://www.joost.com/

(2007年4月18日)

[Reported by 山田祥平]

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