元麻布春男の週刊PCホットライン

新記録モード搭載のICレコーダ
「ソニー ICD-SX77」を試す




●ICレコーダは付加機能付きタイプが主流に

ICD-SX77

 今、ソニーのポータブルオーディオ製品で話題といえば、動画に対応したウォークマン「NW-A8xx」シリーズに違いない。が、同じ3月、NANDフラッシュメモリを搭載し、MP3ファイルの再生能力を持った別の製品も発売になっている。それがICD-SXx7シリーズだ。内蔵するフラッシュメモリの容量により512MBの「ICD-SX67」(オープン価格:ソニースタイルによる直販価格は19,800円)と1GBの「ICD-SX77」(同24,800円)の2モデルからなるこの製品は、いわゆるICレコーダである。

 ICレコーダの世界は大きく2つに分かれる。1つはPCに接続して録音したデータを転送できるもの、もう1つはスタンドアロンで利用するタイプだ。おおむね後者の方が安価であるものの、市場の中心は付加価値の高い前者へ移りつつあるようだ。もちろんICD-SXx7シリーズも前者に属する製品である。

 NANDフラッシュメモリが高価だった以前は、メモリ内蔵量が32MB〜64MBと少なかったり、フラッシュメモリカードを利用するICレコーダも少なくなかった。が、NANDフラッシュメモリのバイト単価がこなれて、ICレコーダとして十分な量を、リーズナブルな価格で内蔵できるようになってからは、256MB〜512MB程度のメモリを内蔵するものが主流となっている。中には1GB〜2GBと、ICレコーダとしては過剰なほどの容量を内蔵しているものもあるが、こうした製品のほとんどは音質を重視し、圧縮率の低いCODECを採用していることが多い。

 512MBあるいは1GBのメモリを内蔵するICD-SXx7シリーズも、従来製品に比べて高音質であることが大きなセールスポイントの1つ。録音レベルのマニュアル調整が可能なほか、最良の録音モードでは周波数レンジも80Hz〜20,000Hzと、ICレコーダとしては広い。

 同社には、音楽録音に対応するレコーダとして20万円級のPCM-D1(これもICレコーダと呼べなくはない)も控えており、本格的な録音用途にはこちらということになるのだろうが、ちょっとした楽器やカラオケの練習といった目的ならこのICD-SXx7シリーズでも十分なクオリティを持つ、ということのようだ。筆者は楽器やカラオケの練習をしようというわけではないので、それほど高音質は必要としない。それでも大は小を兼ねるというわけで、1GBのICD-SX77を購入してみた。

●ペン型形状、ボタンは多数搭載

 ICD-SX77のパッケージは、最近のソニー製品の多くに採用されている紙製のコンパクトな箱。おそらく環境問題を意識してのものだろう。中には本体に加え、キャリングポーチ、スタンド、インイヤータイプのレシーバ(ヘッドフォン)、USBケーブル、単4形ニッケル水素充電池(ソニー版エネループ)、PC用アプリケーションソフトであるDigital Voice Editor(後述)が納められている。電池の充電は本体によるUSB充電で、特にACアダプタなどは付属しない。

 本体はICレコーダとしては標準的なペン型。重量は72g(付属の電池込み、実測値)と軽量だ。1GBのICD-SX77はガンメタリック、512MBのICD-SX67はシルバーと色は決まっている。ウォークマンのような再生機に比べるとかなりボタンが多いのが特徴だ。メニューの項目もそれなりに多いので、最初はマニュアルに目を通す必要があるだろう。

ICD-SX77のパッケージ 取り外し式のスタンドにセットした本機。中央にUSBのミニBコネクタがあり、USB経由でデータの転送と充電を行なう 普段利用する操作ボタンのほとんどは右側面に集中する
ICD-SX77の底面。小さくてもスピーカーがあるのがICレコーダ取り外し式のスタンドは底面に三脚穴が用意してあり、三脚と組み合わせることで設置位置を自由に調整できる

 本体の先端部には3つのマイクがあり、2つがステレオ録音用マイク、残る1つが指向性マイク(モノラル)となる。両者の利用は排他で、切り替えは本体横のスライドスイッチで行なう。本機はステレオで3段階(STHQ、ST、STLP)、モノラルで2段階(SP、LP)の音質設定があり、メニューから設定するが、指向性マイクを選択すると、メニュー設定にかかわらずモノラル録音となる。録音可能時間は、容量的には最も音質の良いSTHQで17時間25分、最も音質の低いLPで374時間55分(いずれもICD-SX77、ICD-SX67はこの半分)だが、実際にはバッテリが19〜13.5時間程度で先になくなる(付属のニッケル水素充電池の場合)。

●独自CODECを採用。Vista対応はこれから

 ソニー製ICレコーダの大半に共通する特徴の1つは、録音データがLPECと呼ばれる独自のCODECで圧縮処理されていることだ。それは本機も例外ではない。データを即、さまざまな環境で活用するという点では、Windows標準のWMAフォーマットで直接録音可能なオリンパス製、MP3ファイルとして録音できる三洋電機製に分があるが、編集機能の豊富さという点で、本機にも一定のメリットがある。たとえば、データを分割しても、録音した時刻の情報が維持される(10:00から30分間録音したデータを真ん中で分割すると、前半部の録音開始時刻は10:00に、後半部の録音開始時刻は10:15分になる)といったキメ細かさは、独自CODECのおかげかもしれない。

Digital Voice Editorのメイン画面。左側にICレコーダ、右側にPCのペインが表示される Digital Voice Editorの起動中にICレコーダを接続すると、データの自動転送を行なうダイアログが表示される 自動転送の詳細設定で、転送時にMP3変換まで行なうかどうかの設定も可能
書き起こしなどに便利なミニプレーヤーモードも搭載
ミニプレーヤーの操作を行なうキーボードショートカットはカスタマイズ可 付属ソフトはParallels Desktop for Macでも動作する

 また本機の録音データは独自CODECではあるものの、付属のアプリケーション(Digital Voice Editor)を使って簡単にMP3へ変換することが可能だ。変換はデータをPCで読み込んだ後だけでなく、読み込みながら自動変換することも可能だから、Digital Voice Editorを使っている限り、CODECが独自であることを意識する必要はほとんどない。ただMP3に変換してしまうと一部の編集機能が利用できなくなるので、変換は保管時にした方が良いだろう。なお、MP3への変換をサポートしていることから想像できるように、本機はMP3ファイルの再生も可能だ(曲名、アーチスト名の表示も可)。

 もし問題があるとしたら、現行のDigital Voice Editor(Ver 3.0)が対応しないOSを利用している場合だろう。今のところ対応したOSはWindows 2000〜Windows XP SP2に限られる。Windows Vistaに対応したDigital Voice Editor Ver 3.1の提供(ダウンロードサービス開始)は5月上旬が予定されているものの、現時点では利用できない。この辺り、独自CODECが辛いところだ。なお、メーカー保証外の使い方となるが、筆者が利用した範囲ではMacBook上のParallels Desktop for Mac最新版(Build 3188)とWindows XP SP2の組み合わせでDigital Voice Editorは問題なく動作した。

 このDigital Voice Editorだが、Vista対応の問題はあるにせよなかなか良くできている。画面は大きく3つに別れており、左上にUSB接続されたICレコーダのフォルダ、右上にPC上のデータ保存用フォルダが表示され、下に操作ボタンが並ぶ。ICレコーダ本体内部のファイル、PC側にコピーしたファイルを問わず、ほぼ同じ操作が可能だ。もちろんリピートやピッチコントロール、聞きづらい音声の音量を上げるボイスアップなど、ICレコーダ本体で可能なさまざまな再生支援機能のすべてを利用することができる。さらに録音データをPC上で書き起こすのに便利なよう、書き起こし用のミニプレーヤーモードまで備えている。

 MP3やWMAといった標準フォーマットで録音できるICレコーダの場合、フォーマットは標準なのでプレーヤーは好きにしてね、といったアプローチの製品が多いが、CODECが独自である本機は、ソフトウェアも独自に頑張る姿勢が見て取れる。これはこれで評価して良いように思う。

 なお、付属のソフトは音楽CDのリッピングも可能だが、セットアップ時に入力したユーザー名がセットされたICD-SXx7シリーズ以外での再生ができなくなる。ICD-SXx7シリーズは、付属ソフト以外で作成されたMP3ファイルを何の問題もなく再生できるから、大きな問題ではないのだが、ちょっと注意が必要だ。本機はUSBのマスストレージクラスデバイスであり、エクスプローラーなどでMP3のファイルをフォルダごとドラッグ&ドロップするだけで構わない。

 さて最後になったが、本機で録音したデータの音質である。ICレコーダとしては、STHQモードの音質は十分以上で、会議などの録音ならオーバースペックだろう。ただ、一度STHQモードの音を聞いてしまうと、会議の録音であってもLPモードの音は聞きたくなくなってしまう。こればっかりはしょうがないところだ。条件はあまり良くないが、簡単なサンプルを作成したので、何かの参考にして欲しい。サンプルはすべて、LPECのままDigital Voice Editorに転送し、カットした後にMP3へ変換したものである。いずれもオートゲインコントロールとリミッターはONのままだ。

STHQ(高感度)(MP3)
STHQモードでマイク感度を「会議(高感度)」に設定して録音した猫の鳴き声
STHQ(低感度)(MP3)
東京ビッグサイトにて開催中のPIE 2007キヤノンブースにて。イベントで周囲も騒がしい中の録音
LPモード(指向性)(MP3)
上と同じキヤノンブースにて、最も品質の低いLPモードと指向性マイクの組み合わせ

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ICD-SX77製品情報
http://www.sony.jp/products/ic-recorder/
□関連記事
【2月6日】ソニー、新記録モードと直径10mmのマイクで音質を向上させたボイスレコーダ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0206/sony.htm

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(2007年3月26日)

[Reported by 元麻布春男]


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