塩田紳二のPDAレポート

【CeBIT 2007編】
Windows Mobile 6.0を搭載したスマートフォン



 ドイツで開催されるCeBITは、比較的携帯電話関連の展示が多い。T-System(旧ドイツテレコム)やVodafoneなどの携帯ネットワーク企業が大きなブースや、専用の建物を持っている。ただ、CeBIT 2005のときには、これらのメーカーはまだ出展していたのだが、今回は、3GSM World Congressが2月にバルセロナで開かれたため、NOKIAやMotorolaといった携帯電話メーカーは出展を控えたようである。

 今回は、CeBIT会場で、Windows Mobile 6.0(以下WM6と略す)搭載マシンを中心に取材してみた。

●まだ少ないWindows Mobile 6.0

 結果からいうと,WM6を搭載した機種は、全部で3機種しか見つけることができなかった。一応、主催者が配布している資料を元にPDAやスマートフォン関連のブースは全部まわったのだが、CeBITは、あまりにも会場が広かったので、すべての機種で、バージョンをチェックすることはできなかった。なので、これ以外にまだ見落としがあるかもしれない。

 会場では、新製品としてWindows Mobile 5.0(以下WM5)のものも出展されており、WM6が主流になるにはもう少し時間がかかりそうだ。

 WM6もWM5も、カーネルは、Windows CE 5.xのままで、先頃発表されたWindows CE 6.0 Embeddedに採用されたCE 6.0カーネルではない。このCE6.0カーネルでは、メモリ管理などが大きく変わり、ドライバ仕様なども変更になった。なので、アプリケーションの互換性を保つのは簡単ではなさそうだ。このためCE 5.0カーネルをしばらく使うという判断になったのだと思われる。逆に、このためにWM5からWM6へのアップグレードは可能である。実際にどうなるのかはOEMメーカー次第だが、T-Mobileなど海外キャリアではアップグレードを表明しているところもある。

 ただし、WM5までは、別途インストールが必要だった.NET Compact Framework 2.0やSQL Server Compact EditionがOSの標準コンポーネントになったため、ファイル記憶領域への影響が少なくなった。また、ようやくHTMLメールが表示可能になったり、AJAX対応でMobile IEが強化されているなどの違いがある。

 実際に、WM6のマシンをさわってみたが、GUIなどは、現在のWM5のものと、大きく異なっているところはなく、操作感も変わらない。一見、メジャーバージョンアップ風だが、実際にはマイナーバージョンアップに止まる。便利になる点は見逃せないが、WM6だからといってWM5より絶対的にいいとは言い切れない状態だ。ハードウェアが同じなら、パフォーマンスも同程度で、かえって、枯れたWM5のほうがいいという考え方もできる。

 なお、WM6からは、エディションの名前が変更になった。WM5には、Pocket PCで3つとSmartphoneエディションで計4つのSKUがあったが、これが3つに変更になった。

Windows Mobile for SmartphoneWindows Mobile Standard
同Pocket PC(Standard/Premium)Windows Mobile Classic
同Pocket PC Phone(Premium)Windows Mobile Professional

※Pocket PC Standardは、Mobile Officeを除いた低価格版で一部地域向け

 現状、WM5とWM6が混在しているので、よけいわかりにくい感じがするが、Windows Vistaのエディションと考え方を合わせたのだろう。

 WM5には、Pocket PCのエディションが3種類(Standard、Premium、Premium Phone)と、Smartphone Edtionという4つのSKUがあったのだが、WM6ではこれを3つに絞った。SDKは、ProfessionalとSmartphoneの2種類で、電話機能のないPocket PCには、Windows Mobile Classicという名前が付く。

 現状、電話機能のないPDAが少数派になってきたことをふまえ、電話機能を標準的に扱うということらしい。

●東芝 Portage G900

 東芝はCeBITで、WM6 Professional搭載のPortege G900と、同5.0 SmartPhone EditionのG500を展示。なお、G500は、国産としては初めてのSmart Phone Editionを搭載したものになる。ちなみにPortegeは、これまでノートPCに使われてきたシリーズ名だ。

 G900は、見た目や持った感じは、Softbankの「X01HT」やドコモの「hTc Z」を少し縦に長くした感じ。キーボードの感じなど、非常によく似ているが、hTc Zとは無関係だという。

 縦長なのは、液晶がWVGA(800×480ドット)であるからだ。また、液晶下部にも8つのボタン(ソフトキー2つを含む)とカーソル/実行キーがある。

 本体がスライド式のキーボードになっているため、少し厚みを感じるが、持ちにくさは感じられない。なお、液晶背面には指紋認証リーダーが搭載されている。

G900は、正面からみると、割と縦長の印象。表面の仕上げは高級感がある 「プログラム」フォルダの表示。OperaブラウザやPicselのファイルビューアが搭載されているようだ
本体背面には、デジタルカメラと液晶裏に指紋認証リーダーが装備されている キーボード部分のアップ。左右にソフトキーが配置されている

●ASUS M530W

 ASUSの「M530W」は、WM6 Standard版を搭載するスマートフォン。200万画素の自動マクロカメラを搭載し、名刺の認識機能がある。モノブロックタイプであり、薄くてコンパクトな筐体だ。前回紹介した「NOKIA E61」に似ている。側面にジョグシャトルがあり、スクロールがこれで行なえるため、わりと軽快に使える。GSMとW-CDMA(UMTS)に対応し無線LANとBluetoothも搭載している。CPUにはPXA270を採用、メインメモリ64MBと160MBのフラッシュメモリ(ファイル記憶用)を搭載。

ASUSのM530W。フルキーボードを持つモノブロック型 本体は薄く、側面にジョグシャトルを搭載
キーボード部分のアップ。中国語用と思われる。キー間隔は狭いが、間違って押すことはなさそうだ QVGA(320×240ドット)と思われる液晶を横に使う。Standard版なので、Startページにプログラムアイコンや設定アイコンが並ぶ

●E-Ten GloFiish X800

キーボードがなく、オーソドックスなPDAのスタイルになるX800。カーソルキーは、ジョイスティック形式になっている

 「GloFiish X800」は、GSM/W-CDMAにHSDPAにも対応したWM6スマートフォン。E-Ten Infomation Systemsは台湾のメーカーである。ディスプレイはVGA(640×480ドット)である。バージョン表記にStandardとは出ていなかったので、Professionalエディションだと思われる。キーボードはなく、タッチパネルのみを使うタイプのようである。CPUはSamsungのSC32442でクロックは400MHz、メモリは64MB。無線LANとBluetoothも搭載。また、TV電話用を含め2つのデジタルカメラを搭載する。

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(2007年3月22日)

[Text by 塩田紳二]


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