12.1型液晶ディスプレイを搭載し重量が約1kgという、携帯性重視のモバイルノートの中で最も売れ筋の仕様を持つ製品として人気がある、NECの「LaVie J」シリーズ。そのLaVie Jシリーズの新モデルが約1年ぶりに登場した。それが「LaVie J LJ750/HH」である。 CPUとして超低電圧版Core Duoを採用し、OSとしてWindows Vista Home Premiumを標準搭載。しかも、DVDスーパーマルチドライブを内蔵する2スピンドルマシンに進化している。 ●Vista対応のためにCPUやチップセット、メインメモリを強化 LaVie Jシリーズは、長期間仕様変更がなかったため、新モデルの登場を待ち望んでいた人も多いはずだ。なぜ長期間新モデルの投入がなかったのか。それは、おそらく最新OSであるWindows Vistaの登場を見据え、Vistaを快適に利用できるスペックを実現するということに注力していたからではないだろうか。 LJ750/HHでは、OSとしてWindows Vista Home Premiumが搭載されている。Vistaを快適に利用するには、デュアルコアCPUの搭載や、1GB以上のメインメモリ搭載が事実上の最低条件となる。それだけでなく、新UI「Windows Aero」を利用するには、グラフィック機能、それも3D描画能力にある程度高いパフォーマンスが要求される。前モデルの仕様であるPentium MやIntel 855GME内蔵グラフィック機能の3D描画能力では、Vistaの快適動作は厳しいだけでなく、Aeroも利用不可能。つまり、Vistaを搭載させるからには、携帯性重視のモバイルマシンとはいえ、スペック面で大きく妥協するわけにはいかない。 そこで、マイナーチェンジモデルを投入することなく、時間をかけてスペック面の強化を実現させたというわけだ。事実LJ750/HHは、前モデルと比較し、搭載CPU、チップセット、メインメモリの搭載量と、パフォーマンスに関係する基本スペックの全てが強化されている。 CPUは、超低電圧版Core Duo U2400(1.06GHz)を搭載。前モデルの超低電圧版Pentium M 753(動作クロック1.20GHz)よりもコアの動作クロックは下がっているが、デュアルコアCPUであるためにVista利用時のパフォーマンスは大きく向上する。 チップセットはIntel 945GMS Expressが搭載され、内蔵グラフィック機能はGMA 950に強化された。デスクトップ向けチップセットであるIntel G965 Expressに統合されているGMA X3000と比較すると3D描画能力は劣るが、Windows Vista Capableロゴを取得しており、Aeroは利用可能だ。 そして、メインメモリの搭載量は標準で1GBとなり、標準512MBだった前モデルから大きく進化している(PC2-4200対応DDR2 SDRAM)。Windows Vistaを快適に利用するには、1GBのメインメモリ搭載量はやや心許ないものの、最低条件はクリアしていると考えていいだろう。 ただし、メインメモリ1GBは、オンボードの512MBと512MBのSO-DIMMモジュールを合わせて実現しているため、最大でも1.5GBまでしか搭載できない。メインメモリ増設時には、取り付けられている512MBのSO-DIMMモジュールを外す必要がある。チップセット内蔵グラフィック機能のビデオメモリとしてメインメモリの一部が利用されることも考えると、オンボードメモリの搭載量を1GBにして、最大2GBまでメインメモリが搭載できるような仕様なら良かったのだが、それでも標準で1GB搭載している点は十分評価できる。
●DVDスーパーマルチドライブを本体に内蔵 前モデルであるLJ700/EEは、光学ドライブを内蔵しない1スピンドルマシンであったが、LJ750/HHは光学ドライブを内蔵する2スピンドルマシンに進化している(1スピンドル仕様の「LJ700/HH」もラインナップされている)。搭載されている光学ドライブは、±R DL対応DVDスーパーマルチドライブで、本体右側面からのアクセスとなる。 ドライブは着脱式ではないため、ウエイトセーバーとの交換による更なる軽量化などは行なえない。とはいえ、光学ドライブを内蔵した状態でも本体重量は約1,227gと十分軽量だ。1スピンドルマシンであるLJ700/EEよりも重量は200g弱増えているが、光学ドライブを内蔵していることを考えると全く問題ない。 また、光学ドライブを内蔵するスペースを確保するために、本体の厚さが若干ながら増えている。LJ700/EEでは、本体の厚さは最薄部26.2mm~最厚部37.2mmだったが、LJ750/HHでは最薄部34.0mm~最厚部38.6mmとなった。さらに、1スピンドルモデルであるLJ700/HHと比較して、液晶パネル部よりも本体部が1cmほど手前に長くなっていたり、各種ポート類の配置が異なるといった違いもある。 本体手前の最薄部が8mmほど厚くなっていることもあって、見た目にはかなり厚くなったという印象を受ける。携帯性を重視するモデルであることを考えると、もう少し薄い方が有利なのは間違いない。次機種では、機能面の充実に加え、本体の薄型化も実現してもらいたいところだ。
●LEDバックライト採用の12.1型TFT液晶を搭載 搭載される液晶ディスプレイは、XGA表示(1,024×768ドット)表示対応の12.1型低温ポリシリコンTFT液晶だ。パネル表面はノングレア処理が施されており、ホームユースをターゲットとする「LaVie」シリーズに採用されているスーパーシャインビュー液晶とは仕様の異なるものだ。 これは、LJ750/HHのベースモデルである、ビジネス向けのモバイルノート「VersaPro UltraLite タイプVM」の仕様を継承しているからだろう。実際、画像を表示させた時の鮮やかさは若干物足りない印象を受ける。とはいえ、全体的な発色や視認性に不満はない。パネル面への映り込みはほとんどなく、視野角も十分広く輝度や発色のムラも少ない。不満に感じることはほとんどないはずだ。 液晶パネルのバックライトにはLEDバックライトが採用されている。まぶしいと感じるほどではないものの輝度は十分に高く、野外での使用時でも十分な視認性が確保される。もちろん、消費電力の低減が実現されているのは言うまでもなく、長時間のバッテリ駆動を実現するために有利となる。 ちなみに、容量は5,800mAhの標準バッテリを利用した場合の駆動時間は約5.5時間となっている。前モデルの約6時間よりも若干短くなっているが、消費電力の大きいデュアルコアCPUに強化されていながら、バッテリ駆動時間の低下は抑えられている。これも、LEDバックライトを採用するなどの省電力化を行なっているからだろう。さらに、オプションのバッテリパック(L)を利用すれば約11時間のバッテリ駆動が可能となる。
●無線LANに加えBluetoothも標準搭載 LJ750/HHには、IEEE 802.11a/b/g対応無線LANに加え、Bluetoothも標準で搭載されている。そして、Bluetooth接続のワイヤレスマウスが標準添付されている。マウスだけでなく、Bluetooth接続のワイヤレスヘッドセットを利用してIP電話機能を活用したり、Bluetooth搭載の携帯電話などを接続してデータ通信を行なうなどの活用が可能だ。 本体に用意されているインターフェイス類は、Type2 PCカードスロットと、SDHC対応のSDカードスロットを本体左側面に装備。USB 2.0対応のUSBコネクタは本体左右側面に1ポートずつ用意されている。また、本体左側面にはミニD-Sub15ピンが用意されており、外部ディスプレイの利用も容易だ。有線LANがGigabit Ethernetに対応しない点はやや残念だが、必要十分なものが用意されていると言っていいだろう。 キーボードは、キーピッチが17.55mmと、フルサイズキーボードよりも若干だがピッチが狭くなっている。しかし、縦のピッチも約17mmほどあり、キーの形状が正方形に近いこともあって、キー入力は非常に軽快に行なえる。ストロークは2.5mmで、タッチは重すぎず軽すぎず、適度なクリック感もある。加えて、無理な配列やピッチの違いはほとんどない。LJ750/HHのキーボードはやや重いと感じたが、扱いやすさはこのサイズのモバイルノートの中でも随一という印象だった。 ポインティングデバイスは、パッド式のNXパッドが搭載されている。こちらも使用感は全く問題ない。スクロールボタンは用意されないものの、パッドにスクロール領域が用意されているために使い勝手は損なわれていない。
●高い堅牢性を実現、カスタマイズモデルではキズ修復塗装も LJ700/EEは、液晶パネル裏面の天板部分を凹凸を持つボンネット構造とすることによって、耐加圧150kgfという優れた堅牢性を実現していた。新モデルであるLJ750/HHでは、ボンネット構造の形状が新しくなり、凹凸の溝が2本から3本に増えている。これによって、本体素材として0.5mmという非常に薄いマグネシウム素材を採用しながら、前機種と同じ堅牢性を実現している。 LJ750/HHをベースとするNEC Direct専用のカスタマイズモデル「LaVie G タイプJ」では、「スクラッチリペア」という特殊な塗装が施されている。これは、本体表面に付いた細かな擦り傷が、自然に目立たないように修復されるというもの。原理的には、スポンジなどが変形した状態から元の形に戻るのと同じだが、これによって、小さな擦り傷であれば、もし付いたとしてもしばらく置いておくだけで目立たなくなるのだ。どうせなら、カスタマイズモデルだけでなく店頭販売モデルであるLJ750/HHでも採用してもらいたかったところだが、興味があるなら、カスタマイズモデルの選択も検討すべきだろう。 優れた堅牢性と並び、充実したセキュリティ性も特徴の1つ。標準でTPMチップを搭載しており、優れた暗号化機能を実現。また、加速度センサーを利用したHDDの保護機能「ハードディスクセーバー」も搭載されている。加速度センサーの情報を監視し、本体の落下など衝撃を受ける状況を察知すると、HDDのヘッドを待避させてHDDを保護するというものだ。標準ではハードディスクセーバーを実現するソフトがインストールされておらず、別途ホームページからダウンロードしてインストールする必要がある。また、HDDの動作モードを「AHCI」モードではなく「Enhanced」モード(いわゆるIDE互換モード)で動作させる必要があるために、パフォーマンスが若干犠牲になる。とはいえ、セキュリティ性を重視するならぜひとも活用したい機能だ。 ちなみに、ビジネスモデルであるVersaPro UltraLite タイプVMでは、指紋認証ユニットやFeliCaポートの搭載により、より高いセキュリティ性が実現可能となっているが、LJ750/HHには搭載されない。カスタマイズモデルではオプションでFeliCaポートのみ搭載が可能となっているため、より高いセキュリティ性を求める場合も、スクラッチリペア塗装と同様に、カスタマイズモデルの選択を検討しよう。
●3D描画能力は厳しいが、Home Premiumが動作する点は評価できる では、いつものようにベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark05(Build 1.2.0)」と「3DMark05(Bulid 1.3.0)」、「3DMark06(Build 1.1.0)」の3種類だ。また、Windows Vistaに用意されているパフォーマンス評価の結果も加えてある。測定時には、省電力設定は最大限のパフォーマンスが発揮される「高パフォーマンス」モードにし、HDDの動作モードは「AHCI」モードにして行なった。 結果を見ると、グラフィックまわりの結果がかなり低くなっている。GMS 950の描画能力は、Aeroが動作する最低限の描画能力を持っているに過ぎず、やはりどうしても結果が悪くなってしまう。Vistaのパフォーマンス評価でも、他の項目が4点台を記録しているにもかかわらず、グラフィック関連の2項目が2点台となっている。実際に利用していても、やや動作がもたつくような印象を受ける場面がかなりあり、スペック面ではギリギリだということが伝わってくる。もちろん、メインメモリを最大容量となる1.5GB搭載すれば、動作のもたつきはある程度解消されるはずなので、予算が許すならば、購入時に増設したい。 とはいえ、このクラスでVista Home Premiumを搭載し、Aeroが動作するスペックを実現している点は十分評価できる。もちろん、優れた堅牢性とモバイル性に優れた軽量ボディなどは、常に持ち歩いて利用するモバイルノートとして見逃せないポイントだ。また、実売価格が24万円前後という価格面での魅力も大きい。常に携帯して利用するモバイルノートでもVista Home Premiumを利用したいと考えているユーザーなら、十分に満足できる製品と言っていいだろう。
【表】ベンチマーク結果
□NECのホームページ (2007年3月5日) [Reported by 平澤寿康]
【PC Watchホームページ】
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