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AMDが小型PC用フォームファクタDTXを提案
~ATXより小さくケースの共有が可能

AMDが公開したFull-DTXの試作機。標準化を進めることで、より安価にSFFのPCを製造することができるようになる

会期:1月8日~11日(現地時間)

会場:Las Vegas Convention Centerなど



 AMDはInternational CESの期間中に、報道関係者に対してブリーフィングを行なった。1月10日(現地時間)に同社が業界に対して提案した、新しいフォームファクタの規格“DTX”に関する説明を行なった。

 DTXは、ATXの基本的な要素を利用しながら、より小型のマザーボードを実現することを目的とする。日本で流行しているようなスモールフォームファクタのPCを、より安価に実現できるようにした規格だ。AMDはこのDTXの規格化を今四半期中に終え、2007年の半ばには実際の製品として出荷したい意向だ。

●世界中でニーズが高まりつつあるスモールフォームファクタのPC

David Schwarzbach氏が手に持つのはDTXのレイアウトイメージ。1つの基板から4枚のDTXマザーボードを採ることができるので、製造面でも効率的であるという

 米AMDのDavid Schwarzbach氏(マイクロプロセッサソリューションズ部門 デスクトップディビジョン Athlon 64 and Athlon 64 X2ディビジョンマーケティングマネージャ)は、AMDがDTXの規格化に踏み切った背景として「米国を含めて全世界地域で、スモールフォームファクタ(SFF)へのニーズが高まりつつある。しかし、現状ではSFFに適したソリューションが無く、各ベンダが独自にやっている状況で、SFFはコスト高になってしまっている」と述べ、現状でSFFに適したマザーボードのソリューションがないため、高コストでSFFのPCを製造しなければならない状況を指摘した。

 これに関しては若干の説明が必要だろう。たとえば日本では、SFFのPCはすでにメインストリームになっている。小売店に足を運べば、PCというミニタワーやミドルタワーのPCは少なくなってきており、ほとんどがSFFのPCになっているのを目にするだろう。ただし、そうした日本のSFFのPCは、ほとんどが独自のレイアウトのマザーボードなどで製造されている。

 こうした独自レイアウトのマザーボードの問題点は、ずばりコストだ。標準的なATXやmicroATXマザーボードを利用する場合に比べて、どうしてもコスト高になってしまう。規格化され、大量に生産されるATXに比べると、カスタム品はどうしても高くついてしまうのだ。

●BTXが陥ってしまった“鶏と卵”のロジック

 では、以前Intelが提案したBTXはどうなのかと言えば、普及が進んでいないのが現状だ。理由は2つある。1つは、そもそもBTXは、130Wという高まり続けるプロセッサの熱設計消費電力(TDP)により難しくなる放熱を容易にするためのソリューションとして開発された背景があることだ。ところが、その後Intelがロードマップを変更して、電力食いのNetBurst系のマイクロプロセッサをキャンセルし、TDPが65WのCore 2 Duoを導入したため、BTXの130Wも処理できる放熱機構という特徴が意味を失っているのだ。

 もう1つの理由としては、BTXが“鶏と卵のロジック”にハマってしまっているという事実だ。BTXはマザーボードだけでなく、ケースに関してもBTX専用のものが必要になっている。したがって、ケースベンダとしてはBTXのマザーボードが増えない限り、BTXケースの量産に踏み切ることが難しい。ところが前述のように、BTXへ移行するメリットが少なくなっている現状で、マザーボードは増えているとは言えない。BTXマザーボードが増えないからBTXケースも増えない。そしてケースが増えないから、マザーボードも増えない……そんな鶏と卵のロジックにBTXはハマってしまっているわけだ。

●ATXのインフラをそのまま活用できるDTX

 そんな状況を変えるために、AMDが提案したのがDTXだ。「DTXはフルにオープンスタンダードな仕様だ。弊社の顧客はもちろん、競合他社であってもフリーに利用することができる。DTXはATXと同じマザーボード固定用の穴を使うことができる。AMDとしてはマザーボードのレイアウトだけがDTXに必要な仕様で、あとはPCベンダやケースベンダが自由に作れる仕様にしたいと考えている」(Schwarzbach氏)としている。ATXとの互換性を重視しながら、SFFに利用できる仕様というコンセプトで開発されたのがDTXというわけだ。

 DTXには2つの仕様が検討されている。1つはFull-DTXと呼ばれる仕様で、マザーボードのレイアウトとしては、microATXから2スロット分削った大きさのマザーボードとなっている。これに対して、もう1つのMini-DTXは、さらに縦方向の長さを、microATXの244mmから170mmに削ったものとなっており、Full-DTXに比べてさらに小さなSFF向けのソリューションとなる。なお、DTXでは基本的にはマザーボードの大きさが規定されるだけで、ライザーカードの高さなどはベンダ側の選択に任されることになる。

公開されたFull-DTXマザーボードのデザインイメージ。microATXのマザーボードから2つのスロットを取り外したものがDTXマザーボードになる Full DTXの仕様案を説明するスライド。ちょうどmicroATXから2スロット分削ったものとなる Mini-DTXの仕様案を説明するスライド。Full-DTXに比べると、縦方向が小さくなっている

 Schwarzbach氏によれば、Full-DTXはケース容量が6L程度のPCを製造することを想定しており、プロセッサのTDPは65Wが想定されているという。「今後65Wのプロセッサがメインストリームになると考えている」(Schwarzbach氏)との通り、Full-DTXがメインストリームという位置付けだ。Mini-DTXに関しては35Wのプロセッサが想定されており、6L以下の容積しかない超小型のPCを想定しているという。

 重要なことは、DTXのマザーボードはATXとケース固定用の穴が共通であるので、DTXのマザーボードはATXのケースに入れて使うことが可能なことだ。さらに小さいSFFケースのためのMini-ITXのマザーボードをDTXのケースに入れて使うこともできる。つまり、ATXとの共通のインフラが使えるので、BTXが陥ったような“鶏と卵”の論争に陥る心配もないと言える。

●今四半期中に規格策定を終了し2007年半ばには対応製品出荷へ

 今回AMDが提案しているDTXのアプローチは非常に理にかなったものだと言える。ここで思い出していただきたいのは、64bitの導入の時、大きなジャンプだったIntelのIA-64と、素直な拡張だったAMDのAMD64のどちらが選ばれたか、あるいはIntelのDirect RDRAMとDDR SDRAMの時にどちらが選ばれたのか、というこの業界の歴史だ。

 技術的にみれば、IA-64もDirect RDRAMも優れていたものだと思う。しかし、実際に選択されていったのは、技術的にみればさほど目新しくはないものの、その時点で使われていた技術の延長線上にあるAMD64でありDDR SDRAMだった。この業界での教訓として、大きな革新よりも、改良が好まれる、それは歴史がすでに証明していると言ってよい。したがって、筆者にはDTXのアプローチが理にかなったものに思えるのだ。

 Schwarzbach氏によれば、DTXの規格案は現在策定中だが、今四半期の半ばまでには仕様を策定し発表したいとのことだった。「我々は非常にアグレッシブなスケジュールを立てており、第1四半期の終わりにはリファレンスプラットフォームを作り、できれば2007年半ばには実際の製品を出荷したい」(Schwarzbach氏)とのことで、6月に台北で行なわれるComputexあたりでは実際の製品を目にすることができるかもしれない。

□2007 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/
AMDのホームページ(英文)
http://www.amd.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.amd.com/us-en/Corporate/VirtualPressRoom/0,,51_104_543~115265,00.html
□ニュースリリース(和訳)
http://www.amd.com/jp-ja/Corporate/VirtualPressRoom/0,,51_104_543~115270,00.html
□関連記事
【1月11日】AMD、省スペースPC向けフォームファクタ「DTX」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0111/amd.htm

(2007年1月15日)

[Reported by 笠原一輝]

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