2007 International CESレポート【Wireless USB/UWB編】 東芝がノートPC用のワイヤレスポートリプリケータをデモ
会期:1月8日~11日(現地時間) 会場:Las Vegas Convention Centerなど 東芝はCESの会場で、Tablet PC「PORTEGE R400」を展示した。注目されるのは、UWBを利用して、ワイヤレスにドッキングステーションと接続するデモを行なったことだ。
ここでは、PROTEGE R400の詳細と、Wireless USBおよびUWBに関する最新情報をお伝えする。 ●Microsoftと密接に協力 PORTEGE R400は電磁誘導式のペンを利用したTablet PCだ。液晶ディスプレイ部分が回転する、いわゆるコンバーチブル型になっている。 東芝やMicrosoftの関係者によれば、この製品は両社の包括提携の一環として、Windows Vistaを意識して開発された製品であるという。東芝のある関係者は「開発を開始したときから、Microsoftのエンジニアと一緒にWindows Vista時代のノートPCの要件を考えてきた。実際にエンドユーザーに対して調査を行ない、仕様を決めてきた」と述べていた。
●SideShowの機能をフルに活用 実際、PROTEGE R400には、Windows Vistaならではの機能がいくつも搭載されている。たとえば、SideShowの液晶を本体の前面に搭載していることだ。 SideShowにはグラフィックスまで表示可能な拡張版と、テキストのみを表示可能な基本版の2つの段階があるのだが、PORTEGE R400で採用されているのは基本版だ。 東芝の説明員によれば「基本版にしたのは、スペースの都合とテキスト版でも十分な機能を実現できるからだ」という。 PORTEGE R400のSideShowは基本表示では時計やバッテリー残量、メール着信の有無などが表示されるが、3つあるボタンのうち中央のボタンを押すことで着信したメールのヘッドラインなどを確認することができる。さらに、右端のボタンを押すと、Outlookに登録したスケジュールを表示できる。 ここまではSideShowの基本機能と言ってよいのだが、PORTEGE R400独自の機能として、Microsoft Exchangeのプッシュメール(メールが着信するとクライアントに通知する機能、携帯電話のMMSに近い概念)への対応がある。PORTEGE R400は、米国の3Gの通信方式であるEV-DOに対応しており、それを利用してExchangeのプッシュメールの機能を利用する。 さらに設定によっては、数分に一度PCをS3(メモリサスペンド)から通常モードへ復帰させメールサーバーへアクセスしてその後もう一度S3モード戻るという使い方も可能だという。 なお、3Gの機能は、ハードウェア的にはHSDPAにも対応させることは可能で、日本でも利用できる可能性はある。ただし、今回発表されたPORTEGE R400はあくまで米国向けで、日本で発売されるかどうかは未定だ。
●超低電圧版Core Duo U2500を採用 スペックの方も、Tablet PCとしてはかなり充実したものになっている。CPUはIntel Core Duo U2500(超低電圧版、1.2GHz)で、チップセット/GPUはIntel 945GM、無線LANはIntel Pro/Wireless 3945ABGで、いわゆるCentrino Duoブランドの製品となっている。 メインメモリは標準で1GBだが、メモリソケットは2つ用意されており、2GBのモジュールを利用することで、最大で4GBまで拡張可能。 HDDは1.8インチで、容量は80GB。液晶ディスプレイは12.1型で、解像度は1,280×800ドットのワイド型。従来の電磁誘導式のタッチパネル付き液晶ディスプレイに比べて明るくクリアーな表示が特徴だ。 無線関連では、すでに述べた3G(HSDPA対応)、無線LAN(IEEE 802.11a/b/g)の他に、Bluetooth 2.0+EDRに対応している。拡張スロットは、PCカードスロット(Type2)が1つ用意されているが、SDカードスロットなどのメモリカード用のスロットは用意されていない。 本体のサイズは304×239.5×29.5~31.9cmで、重量は1.72kg。12.1型液晶を搭載した製品としては標準的な重量となっている。なお、Tablet PCということで、OSはWindows Vista Business以上が必要になるが、このPORTEGE R400はWindows Vista Ultimateを採用している。
●Wireless USBの仕様を独自に拡張し1Gbpsの通信が可能 また、参考展示として、UWBで接続されたワイヤレスポートリプリケータのデモも行なわれた。 PORTEGE R400は、Wireless USBの機能を実装すべくUWBを搭載している。ただし、今回参考展示の機材は、Wireless USBとは正式にアナウンスしていない。というのも、Wireless USBを名乗るには、USBの規格を策定しているUSB Implementers Forumの定める認定試験をパスしなければならないのだが、現時点ではその認証の仕組み自体が定まっておらず、名乗れない状態であるという。そこで、とりあえずUWBと名乗っているわけだ。もちろん、Wireless USBのロゴがとれ次第、Wireless USB対応も名乗れるようになる。 なお、今回PORTEGE R400に実装されているUWBの機能は、Wireless USBにだけ利用されるものではない。Wireless USBの帯域幅は、有線のUSBと同じ480Mbpsなのだが、PORTEGE R400ではそれを東芝で独自に拡張して1Gbpsでの通信も可能にしているという。これは、今回デモしたポートリプリケータにDVI出力が用意されており、DVIのデータを無線で飛ばすために480Mbpsでは足りないからだ。 しかも、実際には1Gbpsでも十分というわけではないので、一度PC側で圧縮したデータをUWBに乗せており、ポートリプリケータ側で復号してディスプレイに出力している。そのため、解像度には制限があるが、SXGA(1,280×1,024ドット)までの出力が可能とのことだ。 デモでは、動画を再生したままで、内蔵ディスプレイとUWBで接続された外部ディスプレイに切り替えるという動作を確認できた。 ポートリプリケータとPCの間に障害物がない環境では1m程度は十分通信できている。ただし、UWBは指向性が強いので、障害物があると通信が途切れることもあった。実際の利用環境では、同じ机の上でワイヤレスで接続するという使い方を考えればよいだろう。 なお、このUWBのポートリプリケータは、第2四半期に投入が計画されているが、Windows Vistaのリリースと同時に投入されるPORTEGE R400の最初のバージョンにはUWBが搭載されない。したがって、Wireless USBやUWBが利用できるのも、第2四半期以降に出荷される製品からと考えた方がいいだろう。
●Wireless USBの認証プロセスは第2四半期頃に開始 このほか、セントラルホールに設置されたUWB普及のための業界団体“WiMedia Alliance”のブースでも、Wireless USBやUWBに関する展示が行なわれた。 すでに発表済みのYE DATEやBELKINのWireless USBハブや、Sigma DesginによるUWBを利用したビデオのストリーム再生デモなどのデモが行なわれ、実際の出荷に向けて準備が整いつつあることをアピールした。 各社ともハードウェアの準備はできつつある状況だ。今は、USB IFによるWireless USBの認証システムができるのを待っている状況だという。 関係者によれば、認証システム自体はまもなく仕様が固まる予定で、春には認証が開始される見通しだという。また、現在のWindows Vistaでは、Wireless USBのドライバは含まれていないため、各社ミニポートドライバなどを自社で用意する必要があるのだが、Vista+などと呼ばれるWindows Vistaの最初のServicePackにおいて、MicrosoftのWireless USBのドライバが用意される予定と伝えられている。 その登場を待って、Wireless USBの本格的な普及が徐々に始まっていくと見込んで良いだろう。
□2007 International CESのホームページ(英文) (2007年1月12日) [Reported by 笠原一輝]
【PC Watchホームページ】
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