Motorola エド・ザンダー氏基調講演レポート
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会期:1月8日~11日(現地時間)
会場:Las Vegas Convention Centerなど
MotorolaCEOのエド・ザンダー氏。かつてはSun Microsystemsの社長を務めたこともある |
CESの基調講演の中で、もっとも重要とされているのが初日、最初の基調講演である。今回、この時間帯にスピーチを行なったのは、Motorolaである。今回は「携帯電話」メーカーとしてステージに上がった。
登場したのは、MotorolaのCEOであるエド・ザンダー氏。同氏は、なぜか自転車で登場。これは、Motorolaが新しく、発展途上国向けに開発したMotoFoneを充電するためだ。この製品は、環境が厳しい途上国向けに、防水機構や、直射日光下でも使えるディスプレイなどを採用している。また、自転車の発電機につないで充電を行なえるという特徴を持つ。さらに周囲の雑音をキャンセルする機能や、文字を使わないアイコンベースのユーザーインターフェースを持っている。
●もう誰も携帯電話を無視できない
同氏は、「世界では今1秒間に4人が生まれているのに対して、携帯電話は、1秒間に25台売れている計算になる」とし、携帯電話の急成長ぶりを指摘した。
携帯電話は現在20億人の利用者がおり、TVの視聴者の15億人、PCユーザーの8億人よりも多い |
また、携帯電話には、いまや20億人のユーザーがいて、TVの15億人、PCの8億2,000万人よりも大きな市場になっているとした。
つまり、同氏が言いたいのは、もはやエレクトロニクスの業界は、携帯電話が牽引しているということだ。「もうPCの時代じゃない」というのが、同氏の主張である。
これまで、CESでは、家電メーカーとIT/PC系の企業のCEOが交互に、この初日最初の基調講演を行なってきた。もともと、家電メーカーのイベントであるCESに、PC業界が入ってきたわけだ。そして、今回は、携帯電話業界がやってきたことになる。
つまり、消費者向けの電子機器は、大きく「家電」、「PC」、「携帯電話」の三極体制となっている。そして、CESもようやく、この体制を認知して、初日の基調講演に携帯電話メーカーとしてのMotorolaを登場させたわけだ。
実際、会場を見ても、携帯電話は非常に目立つ。日本だと、家電メーカーは総合メーカーであり、テレビも作れば、PCも、携帯電話も作っている。しかし、米国やヨーロッパでは、こうした総合メーカーは少なく、Nokiaなどのように単一カテゴリの製品しか作らないところがほとんどだ。
Motorolaも、半導体や通信機器など以前は、幅広いビジネスを手がけていた。しかし、大きく成長した半導体部門を切り離し、現在では、携帯電話をビジネスの中心に据えたビジネスを展開している。
これを実現したのが、現在のCEOであるエド・ザンダー氏である。同氏は、以前Sun Microsystemsの社長をマクネリ氏の下で勤めていた。その前は、Apollo ComputerやData Generalなど、コンピュータ関係をずっと歩いてきた人物だ。
サンダー氏は、2004年にMotorolaのCEOになると、同社を携帯電話中心の体制に切り替えた。Sunでは、ソフトウェア部門を担当していたこともある。Sun Microsystemsと携帯電話というとかけ離れているような感じがあるが、実は、Javaで深くつながっている。ザンダー氏は、もしかしたら、このときに携帯電話市場の将来性について気がついたのかもしれない。
ザンダー氏は、最初の発表として、Yahoo! との提携について述べた。Motorolaの携帯電話からYahoo! の各種サービスを呼び出せる「Yahoo! Go 2.0」を組み込むという。同氏はこれを指して「携帯電話の中にインターネットがある」と言った。
日本では、すでにソフトバンクが、同様のメニューを提供しているが、米国ではちょっと事情が違う。日本のiモードにあたるサービスや、フルブラウザによるインターネットアクセスは、携帯電話の数からみるとそれほど普及していないのである。日本国内で販売されている多くの携帯電話は、米国では、スマートフォンというカテゴリに相当する。通話、メッセージに加え、インターネットアクセスや電子メール、Java実行機能などを装備しているからである。技術的な点でいえば、今回のMotorola携帯電話の「Yahoo! Go」は、ようやく日本のiモードサービス程度のものが付いただけに過ぎない。
しかし、これは、特定キャリアのサービスではなく、Motorolaの電話機の標準機能として提供される点。これを提供するしないは、キャリアの判断もあるが、キャリアを飛び越して、MotorolaとYahoo! が提携するという点が新しい。たとえば、MotorolaのMOTORAZR maxxなどでは、ボタン1つでYahoo! Goを呼び出せるようになっているという。
今回の新製品はこれ、とMotorola最初の携帯電話を見せるというジョーク | Yahoo! Goを使えば、簡単に位置情報から簡単に、現在地に関する情報を検索できるというデモ | WiMAXの通信速度を従来の通信方式と比較するデモ。Motorolaは、3GやHSDPといった高速サービス以外に、WiMAXの利用も考えているようだ |
また、Motorolaは、「モバイルインターネット」に着目しており、WiMAXにも注目しているようだ。スピーチでは、携帯電話の各種通信プロトコルに比べてWiMAXが高速転送が可能なことを示した。将来的には、WiMAX内蔵携帯電話というのもありえるかもしれない。
FollowME TVを使えば、番組の視聴中に、その表示先を簡単に移動させることができる。もちろん、携帯電話で続きをみることも可能い |
Motorolaは、ケーブルTV用などのセットトップボックスのメーカーとしても大手であり、最後に、そのデモが行なわれた。これは、「FollowMe TV」と呼ばれるもので、セットトップボックスからネットワークを介して、各部屋へ動画を配信、見ていた番組を、人間の部屋から部屋への移動に合わせて、次々と再生する機器を移していくもの。リビングで見ていた番組の続きを、ベットルームや携帯電話で見ることができるといった具合だ。もちろん、配信はセキュアで、コンテンツは保護されている。
実は、今回、似た内容のデモを行なったメーカーは多かった。たとえば、ルーターで有名なシスコシステムズのチェンバース氏のスピーチでも同じようなデモが行なわれたし、NETGEARが発表したネットワークメディアプレーヤーにも同じような機能がある。
●CESは、家電、PC、携帯電話の3極体制へ
Motorolaは、現在、Nokiaに続き、全世界でのシェア第2位だ。3位にはSamsungが付けている。
今回、Motorolaが携帯電話メーカーとして基調講演に登場したが、それとは別トラックにあたる「Industry Insider Series」という技術系中心の講演には、Nokiaのオリペッカ・カラスブオ社長が登場。また、コンベンションセンターに、巨大なテントを設置し、独自のブースを構えている。メインホールを見れば、サムスンやLG電子は巨大なブースを構え、LG電子は、半分ぐらいを携帯電話に割いている。いつの間にか、CESでも携帯電話が主要な出展製品になりつつある。
今回のCESは、伝統的に家電と、そこに参入してきたPCという2極対立から、すでに巨大な市場に成長した携帯電話という3極構造になったイベントといえるだろう。
□2007 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/
□Motorolaのホームページ(英文)
http://www.motorola.com/
(2007年1月12日)
[Reported by 塩田紳二]