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2007 International CES
Walt Disney CEO基調講演レポート

会期:1月8日~11日(現地時間)

会場:Las Vegas Convention Centerなど



 今回のCESの大きな特徴の1つが、コンテンツメーカーの基調講演が2つも組み込まれている点で、その1社がCES開幕日の午後に基調講演を行なったThe Walt Disneyだ。「Monday Night Keynote」と名付けられた講演では、同社の持つコンテンツと、その提供手段やユーザーの楽しみ方について語られた。

基調講演のタイトルは、同社傘下のESPNの番組「Monday Night Football」をもじったもの。講演は同番組のキャスター3人による中継風の映像からスタートした The Walt Disney Company President&CEOのRobert Iger氏

●Disneyが持つ価値の高いコンテンツ

 その、Iger氏の基調講演の前半は、同社の持つコンテンツの紹介に割かれた。そのコンテンツは、「ほかに比肩するものがないブランド力を持っており、その品質は世界的にも信頼され、消費者の深いところまで浸透している」と非常に強力なコンテンツであると自信を持って述べたIger氏。そして、現在は、そのコンテンツを新しいテクノロジーを利用して制作、配信していることをアピールした。

 例として最初に挙げられたのが、アニメ映画だ。2006年に買収したPIXARの3D技術を盛り込むことによって、アニメ映画の質を最大限に引き上げられたとしている。そして、そうしたアニメ映画の例として「RATATOUILEE」の予告編が上映された。

 続いて紹介されたのが、傘下の放送局であるABCで放映されたドラマ「LOST」についてだ。この作品は視聴者の反響が大きかったことで有名な作品だが、それだけに多くの視聴者に楽しんでもらえるようabc.comによるオンライン配信や、iTunesやハンドヘルドデバイスでも視聴できるようなマルチプラットフォームの作品へとなっていったという。そして、こうした状況を「視聴者が参加したドラマ」であるとした。壇上にはLOSTの主役であるMatthew Fox氏とEvangeline Lilly氏も登場し、このLOSTが引き起こした反響について、Fox氏が「この番組をどのように楽しんでいてくれるかを知る良い経験ができています。また、俳優以上に、番組に参加する視聴者の存在が、番組の普及に対して大きな影響力を持っているのではないしょうか」と、出演者の視点からコメントした。

 そして、Iger氏が「LOST以上に人々を熱狂させている」として紹介したのが、スポーツチャンネルの「ESPN」だ。ここでは、冒頭でも触れたMonday Night Footballに出演しているMike Tirico氏が壇上に登場。NFLのレギュラーシーズンは終わったが、今シーズンは非常に良い視聴率となっただけでなく、コンテンツを充実させた「ESPN.com」では毎月曜日ごとに2,500万ヒットを獲得したと述べた。

 このESPN.comのサイトではスポーツに関するさまざまな統計や、リアルタイムスコア、リアルタイムで収集しているアンケート結果などを見ることができる点をアピールしたほか、サイト表示のカスタマイズを行なう「My ESPN」などを紹介。こうしたESPNのスポーツ中継を取り巻くものを“ESPN Surround”とTirico氏は呼んでいるというが、マニアックなスポーツファンへの情報提供にはオンラインコンテンツが非常に重要な手段であることを指摘。

 そうしたTVとオンラインコンテンツが融合したものが「ESPN360」で、スポーツ中継のストリーミング配信や、オンライン独自コンテンツ、ESPN.com以上の詳細な情報などを提供している。

PIXARの3Dグラフィック技術を利用したアニメ映画の新作「RATATOUILEE」。2007年6月29日に公開が予定されている ABCで放映され、その後さまざまなプラットフォームへコンテンツが配信された「LOST」の出演者であるMatthew Fox氏(右)とEvangeline Lilly氏(中央)
Monday Night Footballに出演するMike Tirico氏 ESPNはTVだけでなく、インターネットやハンドヘルドデバイスなど多くのプラットフォームでコンテンツを配信。そして、スポーツに関わるさまざまなコンテンツを総称して“ESPN Surround”と表現した

●disney.comの新しいユーザーインターフェイスを紹介

 講演の後半は、Walt Disneyが作り上げてきた世界のオンラインでの楽しみ方について紹介。同社のオンラインサイトであるdisney.comは、同社コンテンツの情報を取得したり、ゲームやショッピングなどを行なえ、オンラインコンテンツに対する子供たちの経験を高めるための入り口をとして非常に成功しているとした。

 そして、その成功を続けるために用意したというのが、新しいユーザーインターフェイスである「Disney Xtreme Digital(Disney XD)」だ。子供がどのようにインターネットを使っているかを考えるところからコンセプトをスタートさせ、電話をかけながらメールを読むといった複数のことを同時に進行させるのが当たり前になっている今日の子供たちのスタイルに合わせたものになっているという。現在のdisney.com以上にエンターテインメントの要素を高め、カスタマイズ性を高めたサイトとなっている。

 このDisney XDを簡単にまとめるならば、Disneyキャラクターをイメージしたスキンに包まれた仮想デスクトップ上に、コンテンツにアクセスするためさまざまなウィジェットを配置するもの。動画、音楽、TV、ゲームなどのコンテンツや、コミュニティやチャットへの参加など、disney.comで提供されているコンテンツにウィジェットを利用して一画面内で作業できる点をデモで示した。

 またプレイリストやウィジェットの配置などはユーザーごとに保存されるので、プラットフォームを問わず、自分に好きなものに、自分で合った形でアクセスできる点をアピール。さらにDisney XDのプレミアムコンテンツとして、この春にマルチプレイヤーゲーム「Pirates of the Caribbean Online」をスタートさせることを発表。

 また、Pirates of the Caribbeanに絡んでは、2007年5月に公開が予定されている第3作「Pirates of the Caribbean At World's End」を紹介し、製作者のJerry Bruckheimer氏を招いて本作のアピールを行なった。

disney.comの新しいユーザーインターフェイス「Disney Xtreme Digital」。コンテンツの視聴やゲーム、チャットなどの機能を持ったウィジェットを、Disneyの作品をイメージしたスキンで楽しめる
Disney Xtreme Digitalでは、2007年の春にプレミアムコンテンツとして「Pirates of the Caribbean Online」を提供すると発表した 「Pirates of the Caribbean At World's End」の紹介に登場したプロデューサーのJerry Bruckheimer氏。「CESに来て、映像を楽しむデバイスが多様化していることに驚いた」とコメント

●「先進的なテクノロジーやプラットフォームでコンテンツを提供していく」

 このように、Iger氏の基調講演は同社コンテンツの強さと、同氏が「素晴らしいコンテンツを早く、利便性と手ごろな価格を両立して、さらに、iTunes、disney.com、ABCといった複数のメディアを通じてコンテンツを提供している」と述べているとおり、同社のコンテンツがマルチプラットフォームで楽しめる点を強くアピールしたものとなった。

 同氏は講演中、サウンドトラックを利用したトーキー映画として登場したミッキーマウスや、いち早くiTunes向けムービーのコンテンツプロバイダーになったことに触れ、「先進的なテクノロジや新しいプラットフォームを使ってコンテンツを作ってきたが、この姿勢は今後も続けていく。そのためのパートナーシップも重要だ」とし、また「10年前にはなかったメディアによってコンテンツを提供し、新しいテクノロジーを利用してさまざまなことを実行できることにエキサイティングしている」と述べている。

 つまり、ハードウェア/ソフトウェアベンダーと協力し、そうした協力会社のプラットフォームを利用した新しいことにチャレンジしていく姿勢を強く打ち出しているのである。現在の家電/IT業界においてコンテンツメーカーの動向が重要であることも、Disneyが高い価値を持つコンテンツを所有しているのも事実だ。それだけに、このDisneyが今後、どのようなことにチャレンジするかが業界の未来にとっても重要な意味を持ってくる。

 だが、今回の講演で語られた内容は、いずれも既存の枠組みを大きく離れるものではない。講演内にあったDisney XDにしても、技術的にもコンテンツ配信手段にも目新しさはなく、保守的な印象すら感じさせる内容だった。今回、CESで基調講演を行ない、新しいプラットフォームへのコンテンツ配信をしていきたいと述べたことが、具体的に新しい動きとなってくれることを望みたい。

□2007 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/
□Walt Disneyのホームページ(英文)
http://www.disney.com/
□関連記事
【2006年1月25日】Disney、Pixarを74億ドルで買収(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20060125/disney.htm

(2007年1月10日)

[Reported by 多和田新也]

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