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最強のコンピュータ将棋ソフト「Bonanza」が
アマチュア竜王/名人と対局

「Bonanza 2.1 Commercial Edition」

11月18日 開催



 株式会社マグノリアが17日に発売した、第16回世界コンピュータ将棋選手権の優勝ソフト「Bonanza 2.1 Commercial Edition」の発売を記念し、対局イベントを東京・渋谷で18日、開催した。

Bonanzaを動作させたノートPC。奥に見える赤いのが“恐怖の扇風機”

 Bonanzaは、2006年5月に開催された第16回世界コンピュータ将棋選手権で初出場、初優勝を果たしたソフトウェア。カナダ在住の研究員、保木邦仁氏が開発し、すべての指し手を読む独特の思考エンジンや、ハイスペックなPCでの参加者が多い中、市販のノートPCで参戦するなど、話題を呼んだ。

 今回発売されたソフトはBonanzaのパッケージ版で、価格は9,800円。初回出荷の2,000本には、選手権の最中にノートPCを冷却していたものと同じUSB扇風機が付属している。対応OSはWindows 98 SE/Me/2000/XP。

 また、日本将棋連盟が17日、プロ棋士がインターネット上で対局を行なう「大和証券杯ネット将棋棋戦」の開始を発表。2007年4月より開始されるこのネット棋戦の開催に先立ち、2007年3月21日に渡辺竜王とBonanzaが公開対局を行なうオープニングイベントも実施予定となっている。これまでは、プロ棋士とコンピュータ将棋の公式な対局は行なわれていなかった。

●Bonanzaがアマチュアトップと対戦

 今回のイベントの対戦者は、2005年アマチュア竜王の清水上徹氏と、2006年朝日アマチュア名人の加藤幸男氏。解説には、日本将棋連盟から、勝又清和 五段、藤田綾 女流初段が招かれた。

 初戦は先手Bonanza、後手清水上氏となった。意気込みを聞かれた保木氏は、「僕が将棋を指すわけではないので(笑)」と話すと、清水上氏は「僕は将棋を指すので頑張ります」と保木氏に応える形でコメント。続いて加藤氏が「(清水上氏より)後から指すので、(初戦の)結果によって気持ちが変わる。先に挑戦する清水上さんに頑張ってもらいたい」と、プレッシャーにもなりかねないエールを送り、対局がスタートした。棋譜を用意したので興味のある方は参照されたい(Javaランタイムが必要です)。

Bonanzaを開発した保木邦仁氏 第1戦でBonanzaと戦う2005年アマチュア竜王 清水上徹氏 第2戦の相手は2006年朝日アマチュア名人 加藤幸男氏

 序盤は角道を開けたところから、後手の清水上氏が四間飛車へ。駒組みが続いたのち、Bonanzaが飛車先へ銀を進出させ、先に仕掛ける。それを見た清水上氏は、玉頭攻めと、Bonanzaの狙いが3筋のため2筋を破る十字飛車をにらみ、飛車を7筋へ回す。

 この局面で勝又五段は、「(Bonanzaにとって)3筋の攻めと7筋の守りの双方を考えなければならない。非常に難しい定石に入った。これは、コンピュータには難しかったかもしれない」と分析している。

 Bonanzaが出した結論は、そのまま3筋を銀で侵攻、清水上氏は2筋が空いたところにすかさず7五歩と十字飛車の手順へ。さすがに、ここで同歩は危険だとBonanzaも分かっており、人間が予測できない3三飛成と飛車角交換を行なう。

対局中の様子 勝又清和 五段、藤田綾 女流初段が解説を行なった Bonanzaが3三飛成と突入した局面

 飛車を渡したため、薄い玉頭と下段から飛車2枚に攻め込まれることが予測されるのだが、この時点でBonanzaは「歩1枚の劣勢」と分析。Bonanzaは持ち駒の角を活かす手順で攻めるが、清水上氏は的確な対応。Bonanzaは馬を作り、清水上氏は飛車を打ち込む。ここでBonanzaはかなり厳しい状況に置かれるが、悠然と馬で桂馬、香車を取ってゆく。

 局面はすでに終盤、清水上氏が7六歩で玉頭に迫る。Bonanzaはここでも悠然と、と金を作り、金を取る。直後に清水上氏が7七香車と王手を打った非常に危険な局面となったが、Bonanzaは歩1枚の損と分析した。

 7七の地点で駒の交換を繰り返し、清水上氏が角銀両取りの桂馬を打ったところで、Bonanzaがマズい状況だと気付いたという。この時点で歩2.5枚の損だと分析、長考を行なう“パニックタイム”に突入した。結局、銀を打って援護を増やしたものの、次の64手目、7七桂成であっさり投了となった。

清水上氏が7七香を指した局面。Bonanzaは歩1枚の劣勢という分析 投了図

 快勝した清水上氏は、「タダで取れる金を取るなど、駒の損得を優先しているといった印象」と感想を語り、保木氏は「途中までは(Bonanzaが)大喜び、その後ヤバいことに気付いたらしい」とコメントした。

●第2戦、Bonanzaは後手の四間飛車

 休憩の後、先手が加藤氏、後手がBonanzaで第2戦が開始された(2戦目の棋譜)。今回は後手のBonanzaが四間飛車を選択。居飛車穴熊を防ぐため9四歩と指したところで、勝又五段に「Bonanzaは藤井システムやっちゃダメ」と突っ込まれたが、その後は無難に美濃囲いに入る。

 駒組みが続き、Bonanzaが30手目に2二飛車と回る。直後に3二金と指し、飛車の働きを自ら止め、囲いに使える金を反対側に使う2重の不利になる手を選択。これはBonanzaに内蔵されている過去対戦譜から指されたようだが、やってはいけない手順だったようだ。

対局中の様子。たびたび楽しそうな笑顔が見られた 序盤は居飛車 対 振り飛車の定石通り進むが…… Bonanzaは飛車を2二へ自ら閉じこめてしまう

Bonanzaが立て直すかと期待がかかった局面。残念ながらBonanzaの思考に4三銀は無かったそうだ

 Bonanza側の指し手の選択肢が狭まる一方で、加藤氏は着々と歩を進出し自陣を整えてゆく。Bonanzaは42手目で想像もつかない2五桂馬を選択し、2四歩と指した。加藤氏は対局後、「この直後に4三銀と引いておけば、まだまだ難しかった」と語っていたが、Bonanzaにその選択肢は無かったそうだ。

 また、Bonanzaは過去対戦の手順から外れた時には、自らの思考で動き始めるため、急に凶暴化するという特徴があるそうで、今回も2五桂以降は人間が考えない手を打ち始める。手順は進み、48手目に6九角と打ち込む。人間には、金を寄り飛車を回れば角を取れるという判断ができる手だ。加藤氏は5七金へ馬を作らせないよう動き、続くBonanzaの2筋3筋の攻めを受けてゆく。

 加藤氏は55手目、美濃囲いの急所である玉の小瓶を攻め始める。Bonanzaには厳しい状況となったが、この時点で歩1枚の“優勢”と判断、会場の笑いを誘った。Bonanzaはおかまいなく2筋に歩で攻め入り、加藤氏は飛車を逃げると同時に角にぶつけ、Bonanzaは角を切る。加藤氏は手順に飛車で角を取りながら7筋へ回し、玉の小瓶への集中砲火を睨む。ここでBonanzaは8四歩と桂馬を飛ばさない受けの手を見せ、解説の勝又五段は感心していた。

 だが、加藤氏は容赦なく銀を玉頭へ進出させ、枚数の優位を作り出す。Bonanzaは2九飛成と王手を指すものの合駒で受けられ、直後に8八歩で王手をかける微妙な指し手を選択する。続いて、7六歩と桂頭を叩くものの8五桂とかわされ、手順に7三の地点への相手の援護を増やしてしまう。後手の玉は風前の灯火となっているため、人間は攻撃を継続しようと金の打ち込みから竜を回ろうと考えるが、Bonanzaは6九竜を選択。加藤氏に7六の拠点の歩を飛車で取られたところで投了した。

加藤氏が玉の小瓶に迫った局面 投了図。2戦ともあっさり投げる結果に

 対局後、勝利した加藤氏は「Bonanzaの四間飛車にかなり期待していた。でも、金銀が分裂する手順になって(金銀が)有効に働かなかった」と印象を語った。保木氏は「序盤のチューニングを頑張りたい」と今後の課題を挙げた。

 解説の勝又五段は、今回のような金銀がばらける手順は、Bonanzaにとって苦手な部類だと分析。さらに相手が強く、ミスが皆無であるため、逆転の可能性も薄かったという。対局中には「Bonanzaは終盤に強く、序盤で五分なら勝機がある。穴熊でガチガチに固めた後、怒濤の攻撃が見たかった」と話しており、Bonanzaの序盤の強化が待たれる。

 将棋は取った駒が自由に使えるため、指し手の選択肢が非常に広く、コンピュータは人間の“第一感”のような特殊な能力も持っていない。しかし、すべての手を読めるコンピュータ将棋は、より進歩する可能性を秘めている。今回は相手も強く、完敗と言える内容だったが、プロ棋士との対局が解禁されたこともあり、コンピュータ将棋のさらなる発展を期待したい。

□マグノリアのホームページ
http://www.magnolia.co.jp/
□ニュースリリース(PDF)
http://www.magnolia.co.jp/bona/Bonanza_release.pdf
□製品情報
http://www.magnolia.co.jp/bonanza.html
□日本将棋連盟のホームページ
http://www.shogi.or.jp/
□ニュースリリース(PDF)
http://www.shogi.or.jp/osirase/061117_daiwa.pdf

(2006年11月20日)

[Reported by yamada-k@impress.co.jp]

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