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マイクロソフトが日本のPCメーカー8社と
PC Innovation Future Forum開催

11月6日 開催



 マイクロソフト株式会社は6日、日本のPCメーカー8社と共同で「PC Innovation Future Forum」を開催した。

 このフォーラムは、米MicrosoftのCEOであるスティーブ・バルマー氏の来日にあわせ、マイクロソフトが日本のPC市場へのコミットメントを行ない、PCメーカーの代表者に、今後のPCイノベーションに向けたさらなる協業や展望について議論することを目的に開催された。

 日本からは、エプソンダイレクト、NECパーソナルプロダクツ、シャープ、ソニー、東芝、日立製作所、富士通、パナソニックの8社の代表者が登場した。

米Microsoft 最高経営責任者 (CEO) スティーブ・バルマー氏

 冒頭、バルマーCEOがPCに対し、「よく、Microsoftのコアビジネスとは何かという質問を受ける。これは我々が長年続けてきたデスクトップビジネス以外に、サーバービジネス、エンターテインメント向けビジネスを展開しているため、『もはやクライアントPCは重要なビジネスではないのではないか?』という疑問に根ざして寄せられる質問だ。だが、我々にとってPCは非常に重要なものであることには変わりはない」と話した。

 また、PCが今後とも家庭、企業のどちらにとっても重要なデバイスとなっていくという認識を強調した。

 「PCは家庭及び企業における全てのデバイスをコントロールする機器である。携帯電話やセットトップボックスは重要なデバイスではあるが、最もインテリジェンスを持った重要なデバイスがPCであることには変わりはない。10年後には、全ての機能がサーバー経由で提供され、PCはダム端末になってしまうと考えている人もあるようだが、我々はそう考えてはいない。毎年、2億台以上のPCが出荷されているが、この数はもっと増えていくべきだ。例えば、日本の中小企業では数百万台のPCの利用が実現する可能性が十分にある」

 Windows Vistaに対しては次のように説明した。

 「よく、Windows 95とVistaを比較して、インパクトはどちらがあるのかを質問される。しかし、2つの製品は発売する時期が全く違うので比較するのは難しい。現代は、携帯電話やインターネット、デジタルオーディオプレーヤーなどの機器がPCと競合する製品として存在する。我々は今後12カ月、Windows Vistaというプロダクト中心にビジネスを展開していく」

 日本のPCを取り巻く環境については、次のように説明した。

 「日本で発売されているPCは、米国とは全く異なる。高機能でインテリジェント性が高いものが人気を集めている。米国にいて、こんな製品があればと思うようなものが発売されている日本というのはうらやましい市場だと感じる。その一方で、インドや中国のようにローエンドPCを求める需要も相変わらず増大している」

マイクロソフト株式会社 執行役 OEM 統括本部長 香山春明氏(右)、NECパーソナルプロダクツ株式会社 代表取締役執行役員社長 高須英世氏(中央)、エプソンダイレクト株式会社取締役社長 山田明氏(左)

 日本のPCメーカーでは、まず、NECパーソナルプロダクツの高須英世社長が次のように話した。

 「NECでは全社をあげて、NGN(Next Generation Network:次世代ネットワーク)の推進を進めている。電話網を全てIP化するNGNは、ユビキタス社会を実現するための重要なインフラとなる。NGNが実現した時には、PCにはモバイル、ホームネットワーキングという2つが重要なキーワードとなる。具体的にはモバイルノートPCは、現在のPCのフルファンクションをもちながら、バッテリ駆動時間をさらに長くするといった工夫が必要になる。ホームネットワーキング用のホームサーバーには、フルハイビジョン対応と共に、リッチコンテンツを蓄積し、スムーズに転送するといった機能も必要になるだろう。もう1つ、欠かせないのがPC化したデジタル機器との関係性。PC自体もデジタル機器の機能のファンクションを取り込み、さらに使いやすいものとなっていく必要があるだろう。PCにデジタル機器とは異なる特徴、差別化を実現する必要もあり、それについては我々ベンダーとマイクロソフトとの協力が不可欠となると考える。日本のコンシューマPC市場は、厳しい状況が続いているが、マイクロソフトにはWindows Vistaによってその状況を打破する、普及、認知の徹底をお願いしたい」

 2番目には、エプソンダイレクトの山田明社長がプレゼンテーションを行なった。

 「我々のコアコンピタンスは、直販ベンダーであるということ。ワン・トゥ・ワンでお客様の声を聞き、それを反映させるイノベーションを行う仕組みを持っていることが大きな強み。最近ではそれをさらに進めた、2日配達保証、1日修理といったことを実現し、できるだけお客様がPCを使えない時間を短くするホールプロダクツ戦略を実施している。これはPCの使いやすさを実現する重要な要素であると考え、さらにホールプロダクツ戦略を実現するために、『迅速性』をキーワードとしていく。また、PCの利用者がコンシューマではハイエンド層からビギナー、企業向けでは大企業から官公庁、中小企業へと拡大するにともない、使い方のニーズも多様化している。画一的なソフト、ハードではカバーできない需要が拡大しているため、我々はこれまでのBTOから一歩進んだBTOを実現し、1人、1人向けのサービスサポートを実現する必要性も感じている。マイクロソフトにも画一的ではない、個々のお客様向けプロダクトの提供が実現できるようなOSの提供をお願いしたい」

シャープ株式会社 情報通信事業本部 大畠正巳本部長(右)、ソニー株式会社 コーポレート・エグゼクティブ SVP VAIO事業部門長 石田佳久氏(中央)、株式会社東芝 執行役上席常務PC&ネットワーク社社長 能仲久嗣氏(左)

 3番目には、シャープの情報通信事業本部 大畠正巳本部長がプレゼンテーションした。

 「日本ではデジタル放送の普及が著しく、シャープでは新しいデジタル製品として、今年5月、“インターネットAQUOS”を発売した。放送とインターネットをシームレスに楽しむことができる機器であり、TV売り場におけるPCとして着実に浸透している。インターネットAQUOSによって、これまでになかった新しい市場の創出を実現することができた。PCの家電化によって、TV PCの需要はさらに拡大していくものと考えている。マイクロソフトにもぜひ、お願いしたいのはWindows Vistaの各バージョンでは、我々が必要な家電化したPCというニーズには今ひとつミートしていない部分がある。一般家庭向けとしては機能過剰な部分があり、価格面から見ても家庭の導入には厳しい部分がある。シンプルで、家電製品と親和性があり、価格もリーズナブルなOSも是非、ご用意願いたい」

 4番目のプレゼンテーションは、ソニーのコーポレート・エグゼクティブ SVP VAIO事業部門長の石田佳久氏が行なった。

 「VAIOを発売して10年になるが、一貫して取り組んできたのは、パーソナルコンテンツを取り込むことで、一般ユーザーが楽しむこと。2005年、HD対応のカムコーダーを発売したことで、映像クォリティはSDから一気にHD化した。その需要に対応するため、今年はノート、デスクトップの両方でHD書き込みができるPCを発売し、さらにプロユースの取り込みを狙い、秋にはノートでハイエンド映像編集ができる機種を投入した。先ほど、『PCがデジタル機器の中心であることには変わりはない』というコメントがあったが、そのためには新しいデバイスとの接続性を高めてもらう必要がある。マイクロソフトにはそういった点への配慮もお願いしたい。また、その一方で、リアルモバイルの追求として、VAIO Type Uのような製品も開発しているが、こうした製品を作るためにはカーボンファイバーマテリアルなどの技術も必須となる。こうした新しい製品を自由に組み立てることができるモジュラリティのようなものを確立してもらえるとありがたい。我々は製品を買ってもらった人に、『所有感』を得てもらえるような製品開発を実現したいと考えているが、そのためにOS側にプラグインのサポート、拡張性の実現といった権限を我々PCメーカー側にも認めて欲しい。また、地上デジタル放送のように、ローカルニーズのサポートをもっと積極的に行なって欲しい」

 5番目には、東芝の執行役上席常務でPC&ネットワーク社社長の能仲久嗣氏がプレゼンテーションした。

 「東芝ではイノベーションということばを、『プロダクト・イノベーション』、『バリュー・イノベーション』の2つから考えている。プロダクト・イノベーションを実現するのは、開発、生産、販売という3つの掛け合わせ。対して、バリュー・イノベーションは商品そのものに新しい価値を付加することで実現する。PCにおいては、差異化、差別化といったことになるのだろうが、世の中のデジタル化にあわせて新しい価値を創造していきたい。それを実現する技術には、ノートPCの専業メーカーとして、高画質化、高音質化、セキュリティ対策、堅牢性、高信頼性といったポイントを注力していく必要があるだろう。新しい技術への対応としては、地上デジタルTVチューナ内蔵、HD DVD内蔵の製品を発売したが、来年には記録型HD DVD対応の製品を発売する予定である。さらに、燃料電池、急速充電池など新しい提案を次々に行なっていく計画だ。Windows Vistaについてはマイクロソフトとは色々な開発を行なっているが、2007年1月の発売は必ず実現できると信じて疑わないでいるので、ぜひ、予定通りのスケジュールをお願いしたい」

株式会社日立製作所 ユビキタスプラットフォームシステムグループ ユビキタスシステム事業部 金子徹事業部長(右)、富士通株式会社 経営執行役 パーソナルビジネス本部長 山本正己氏(中央)、松下電器産業株式会社 パナソニックAVCネットワークス社 システム事業グループ ITプロダクツ事業部 事業部長 高木俊幸氏(左)

 6番目のプレゼンテーションは、日立製作所のユビキタスプラットフォームシステムグループ ユビキタスシステム事業部 金子徹事業部長が行なった。

 「日本では地上デジタル放送が85%の家庭で受信できる環境が整い、さらにブロードバンドも3,000万世帯に普及した。通信と放送の両方で、ハイビジョンコンテンツの利用できるようになった。その中で日立のコンシューマPCは、デジタル放送に対応したパーソナルTV、ホームサーバー機能の充実という2点に注力ポイントを置いている。パーソナルTVとは、個人の部屋や寝室などで利用する2台目のTV。日本には7,000万台の市場規模があると見込んでおり、そこでPCが主役になれる。ただし、今のままのTVを見ることができるPCでは駄目で、TVとしての機能を完全に備えながら、『PCも使えます』というアプローチが必要だと感じる。リモコンでの操作が可能で、すぐに電源を入れることができる機能も必要だ。日立では、パーソナルTVを普及させるためのソフト、チューナを揃え、お客様に満足度を提供していく。マイクロソフトにぜひお願いしたいのは、デジタル放送のための機能を標準として取り入れ、価格削減にも寄与して欲しい。さらに、ホームサーバーとしてのPCを利用するためには、家庭内のデジタル機器とのインターフェイスの標準化を実現する必要がある。当社ではコンシューマ機器も扱っているので、インターフェイスの標準化については協力できる部分もある。家電製品の中にはPCほど機能がないものもあるので、そうした機器もハンドリングできる標準化をぜひ、実現して欲しい」

 7番目に、富士通の経営執行役パーソナルビジネス本部長の山本正己氏がプレゼンテーションした。

 「イノベーションによって、新しいライフスタイル、ビジネススタイルをどう作っていくのか。そのための重要な鍵がフレキシビリティだ。そのためには、PCが最も得意な他のデジタル機器よりも一歩進んだ提案をどれだけ行うことができるのかが重要なポイントとなる。そのために、PCはデジタル機器の中で主役となる存在であることを早く宣言し、そのためにインターフェイスの標準化といったことを進めていく必要があるだろう。家電製品にも良いところがあり、例えば子供からお年寄りまで自由に操作できるといった点は、PCも取り入れていく必要がある。また、その一方で、日本はモバイルPCを世界に広めていく役割を担っている。日本の携帯電話は世界で最もリッチなファンクションを実現したが、同様にPCにおいても携帯電話と融合したような本当のユビキタス端末を日本発で提供していかなければならないと考える。マイクロソフトに是非、お願いしたいのは、Windows Vistaに搭載された各ハードメーカーがカスタマイズ出来る機能を今後も継続して搭載して欲しいということ。日本のPCメーカーは新しいことに積極的であり、日本での新しいトライを積極的にウォッチしてもらって、日本を新しいファンクションの発信地として認めて欲しい」

 最後に、パナソニックAVCネットワークス社 システム事業グループ ITプロダクツ事業部 高木俊幸事業部長がプレゼンテーションを行なった。

 「我々は新しい市場を構築していく、今まではPCが使われてこなかった市場向けのPCを展開してきた。例えば、“TOUGHBOOK”という製品は、これまではPCが使えなかったような場面で利用され、新しい市場を作っている。米国のお客様とお話しても、オフィスのIT化は一巡化しているものの、フィールドワーカーのIT化はまだまだ進んでいないということであった。もっとも、Let'snoteのように小型で長時間駆動のノートPCの良さは、空港で15型のノートPCを利用している方にはなかなか理解してもらいにくいとも感じているが、WiMAXが普及していけば、もっと長時間駆動のPCが必要となり、我々が想定していない市場までカバーすることが可能になる可能性もある。我々として、マイクロソフトにお願いしたいのは、セキュリティを気にするお客様が多いことから、定量的に安全性を示してもらうこと。例えば、このデータは1兆円使わないとHDD内の暗号化されたデータを見ることができないといったことを示してくれれば、安全のためにPCは持ち出さないといったお客様をカバーできる」

マイクロソフト株式会社 代表執行役 社長 兼 マイクロソフトコーポレーション コーポレートバイスプレジデント ダレン・ヒューストン氏(右)、米Microsoft 最高経営責任者 (CEO) スティーブ・バルマー氏(中央)、同OEM アジア担当 バイスプレジデント リック・ウォン氏(左)

 8社のプレゼンテーションを聞いたバルマーCEOは、「今日は、今年で最もよくメモを取る日となった。家電の良さをもっとPCに取り込むことや、TV放送との融合といったことは日本ならではの要望だと感じた。より小さく、より安価なPCの必要性もあらためて認識したし、Windows Vistaの発売にあたっては、あらゆる手を尽くしてPR活動を行なっていく必要があることも理解した。また、モジュラー化や、もっと容易にカスタマイズができるようにして欲しいという要望もよく理解した。これらの要望の一部は短期的に実現し、それができないものは色々と検討していきたい」と話した。

 これを受け、マイクロソフト 日本法人のダレン・ヒューストン社長が、「マイクロソフトとしても、今後もイノベーションを続けていくための努力は行なっていく。Plan-Jを通して、さらに日本市場にコミットメントする。今回のようなディスカッションは、ぜひ、Windows Vista及び新しいOfficeが発売され、半年後にまた実施したい」とコメントした。


□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1106/ms1.htm
【3月22日】Microsoft、個人向けWindows Vistaを2007年1月に延期
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(2006年11月6日)

[Reported by 三浦優子]

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