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Intelの次世代モバイルCPU「Penryn」が見えてきた




●クアッドコアには消極的なモバイル部門

 IntelのモバイルCPUロードマップには、クアッドコアCPUはない。

 OEMがデスクトップCPUを使ってノートPCを作る道はあるが、Intel側の公式なラインナップにはクアッドコアは用意されていない。Intelは、低電圧版「Kentsfield(ケンツフィールド)」をラップトップPCに推奨するという方向は取らなかった。IntelのMooly Eden(ムーリー・エデン)氏(Vice President & General Manager, Mobile Platforms Group)は、Intel Developer Forum(IDF)時にこう語っている。

 「45nmプロセス世代について語ることはできないが、現行(65nm)世代について言えば、クアッドコアはノートPCでは非常にニッチセグメントに留まるだろう。早い段階でクアッドコアが出てくる市場はゲームPCセグメント、そしてモバイルワークステーションだ。

 クアッドコアが65WならノートPCにも入れられる。しかし、それは厚手のノートPCとなり、ほとんどの人はそれを望まないだろう。もし、私がクアッドコアの代わりにバッテリ駆動時間が35分短くなると言ったら、いい取り引きだと思わないだろう。また、コンシューマスペースでは、4ストリーム(スレッド)を必要とするアプリケーションがそんなにあるとは思わない。近い将来に、クアッドコアがメインストリームに降りてくることはないだろう」

 Intelの45nmプロセス世代CPUは、クアッドコアを念頭に設計されているという。リーケッジ(漏れ電流)をうまくコントロールできれば、45nm世代でも無理をすればTDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)的にはクアッドコアをある程度薄型のモバイルに入れられる可能性がある。しかし、Eden氏の口ぶりからすると、モバイルではクアッドコア化を積極的に推進する方向にはないようだ。現状のPCのソフトウェア環境では、4スレッドを並列に実行することで得られる効用が小さいため、バッテリ駆動時間とのトレードオフでは有用性が薄いと考えていると考えられる。

Intel Mobile CPU Roadmap(※別ウィンドウで開きます)
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●Penrynはデュアルコア+6MB L2キャッシュで登場

 実際、Intelは2007年末頃の登場を予測している45nm世代の「Penryn(ペンリン)」では、モバイルはデュアルコア版を推進する。Core 2 Duo(Merom:メロン)系CPUが4MB L2キャッシュ版デュアルコアと2MB L2キャッシュ版デュアルコア、そしてまだ登場していない1MB L2キャッシュ版シングルコアの3種類のダイ(半導体本体)で提供されるように、モバイル版Penrynも3ダイがあると言われる。デュアルコアのPenrynは6MB版と3MB版、シングルコアのPenryn-Lite(Penryn-L)は2MB版になると見られる。

 45nmプロセスに微細化するため、6MBのSRAMを載せても、Penrynのダイサイズ(半導体本体の面積)はかなり小さくなる。6MBとデュアルコアで、サイズは100平方mm程度になる見込みだ。これは、Merom 4MBの143平方mmより一回り小さく、Core Duo(Yonah:ヨナ)の90.3平方mmより1サイズ大きい。製造コスト的には、非常に競争力が高い。シングルコアのPenryn-Lはさらに小さく、60平方mmを切ると見られる。また、TDPはMeromの34/35Wより下がり、30Wを切ると言われている。

 こうして概観すると、モバイルCPUは、45nm世代の前半となるPenrynまでは、Core Microarchitecture(MA)をさらに小型化、発展させて継続することがわかる。路線的にはMeromの延長で、フィーチャ的にはSSE4命令が増える。また、FSB(Front Side Bus)が1,067MHzに引き上げられるなど、バス回りの拡張も行なわれる見込みだ。おそらく、現在のCore 2で64bit時にMacro-Fusionが効かない問題も、この世代では解消されるだろう。

 しかし、CPUコアのサイズは依然として非常に小さく、効率の高いCore MAの特色は失っていない。

Intel CPU Die-Size and Microarchitecture(※別ウィンドウで開きます)
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●シングルコアMerom-Lの登場でCore MAへの移行が進む

 Penrynに至るまでのIntelの65nmプロセスモバイルCPUロードマップは非常に穏当だ。CPUが「Yonah(ヨナ)」ファミリから「Merom(メロン)」ファミリ、プラットフォームが「Napa(ナパ)」から「Santa Rosa(サンタローザ)」へとステップして行く構図となっている。CPUの動作周波数もほぼフラットで、CPUマイクロアーキテクチャとプラットフォームの交代でフィーチャが増えてゆくパターンだ。

 次の大きなリフレッシュは2007年第2四半期に予定されているSanta Rosaプラットフォームへの移行となる。Santa RosaはMeromと次世代チップセット「GM/PM965(Crestline:クレストライン)」、「ICH8M」、次期無線LANモジュール「Intel Wireless WiFi Link 4965AGN (Kedron:ケドロン)」あとはオプションでフラッシュメモリモジュール「Robeson(ロブソン)」かWANモジュール「Intel Wireless WWAN Link 1965HSD(Windigo:ウィンディゴ)」の組み合わせとなる。Santa Rosaでは、FSB 800MHzと36bitメモリアドレッシングがサポートされ、統合グラフィックスコアはGen4に移行する。現在のNapaプラットフォームが、YonahからMeromへの橋渡しになったように、Santa RosaはMeromからPenrynへの橋渡しとなる。

 Intelの2007年ロードマップの中で目立つのは、モバイル系バリューCPUのCeleron Mブランドにも、Meromコアが登場すること。と言っても、これはシングルコアで1MB L2キャッシュのカットアウト版「Merom-Lite(Merom-L)」だ。新ダイ(半導体本体)のCPUで、デスクトップのConroe-Lと基本的には同じものと見られる。

 Merom-Lのダイサイズ(半導体本体の面積)はデュアルコア4MB版Meromの143mm平方の約半分、77〜80平方mm程度になると言われている。これは、同じシングルコアの130nm版Pentium M(Banias:バニアス)の82平方mmや、90nm版Pentium M(Dothan:ドタン)の87平方mmとほぼ同じ。デュアルコアのCore Duo(Yonah)は90.3平方mmも、大きくは変わらないダイサイズだ。つまり、過去5年のIntelモバイルCPUのダイサイズのレンジに収まるのがMerom-Lということになる。45nm世代では、Penrynがここに来る。

 Merom-LベースのCeleron Mは、来年(2007年)の第1四半期から登場する見込みだ。面白いのはTDPで、シングルコアYonah SCのTDPは27Wだったのに対して、シングルコアMerom-LのTDPは30Wへと約11%程度上がる。しかも、動作周波数はYonahの2GHz(450)からMerom-Lの1.73GHz(530)へと下がる。Merom-Lではより熱く、より低速に。これが、YonahとMeromのCPUコア拡張の電力的なコストということになるのかもしれない。

Intel Mobile CPU(2005-2007)(※別ウィンドウで開きます)
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●TDPは35Wレンジまでで推移

 Intelの現在のCPUのプロセッサ・ナンバにはTDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)枠を示すパワークラス(Power Class)がつけられている。パワークラスTは24〜49Wの通常電圧版、パワークラスLが15〜24WのLV(低電圧)版、パワークラスUが14W以下のULV(超低電圧)版の位置付けだ。また、パワークラスUはデュアルコアとシングルコアのTDPが異なる2系列に分かれる。そのため、Intelのパフォーマンス&メインストリームモバイルCPUは、TDP帯では全部で4つのセグメントに分かれることになる。

 戦略は明瞭で、デュアルコアCPUについては、どのTDP帯もYonahからMerom、そしてSanta Rosaプラットフォーム版Meromへとシフトさせる。一方、シングルコアのULV版については、Yonahシングルコアを継続して提供する。つまり、来年(2007年)後半には、TDPが10W以上はMerom、その下はYonahシングルコアという区分になる。

 IntelのモバイルCPUは、Banias以降、同じ系統のファミリの場合、通常電圧版の約2分の1のTDPがLV版、約3.5分の1のTDPがULV版となっている。この法則はSanta Rosa版Meromでも継承されている。通常電圧版Meromの35Wに対して、LV版Meromは17W、ULV版は10W。Yonahと比べると通常電圧版(Yonah 31W)のTDPが上がった分だけ、LV版とULV版のTDPも律儀に上がる。その一方で、ULV版のシングルコアはYonah SCのままで10W TDPを維持する。TDP的にはボトムラインのシングルコアULVは乖離しつつある。

Intel Mobile CPU TDP Roadmap(※別ウィンドウで開きます)
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●年末までに95%がデュアルコアに代わるIntelのパフォーマンスモバイルCPU

 IntelモバイルCPUの、Merom化とデュアルコア化は、デスクトップCPUよりアグレッシブだ。Intelの現在の計画では、来年(2007年)の第2四半期の製品ミックス上では、Merom系を90%近い比率にまで持って行くことになっている。Core系ブランドは1年以内にYonahをMeromがほぼ完全に置き換えるペースだ。その結果、Coreブランドのパフォーマンス&メインストリーム系CPUのデュアルコア化も促進される。2006年の末までに、パフォーマンス&メインストリーム系モバイルCPUは95%がデュアルコアへと移行する。

 また、IntelはMerom-Lが登場したら、2007年前半にCeleron MもYonahからMerom-Lへと一気に置き換える。この理由は明快で、Merom-Lの方が製造コストが安いからだ。Yonahの場合は、シングルコア版は実際には派生チップではなく、片方のコアをディセーブル(無効)にしてあるだけだ。データシート上ではダイサイズ(半導体本体の面積)は90.3平方mmとなっている。それに対して、Meromから派生したMerom-Lのダイは77〜80平方mm程度。Yonahシングルコアは、片方のコアだけしか使わないので、歩留まりは高いものの、1枚のウェハから採れるチップ個数はMerom-Lより少なくなる。Intelにとっては、Merom-Lへと移行させるのに何も問題はないことになる。

 IntelはデスクトップではPentiumブランドを残すことを決めた。PentiumブランドをCeleron Dが占めていた価格帯に据え、Celeron Dをさらに下の価格帯に追いやった。しかし、モバイルでは異なるブランド戦略を取る。Pentiumブランドは残さず、CoreブランドとCeleron Mブランドの2本とする。Celeron Mブランドの価格レンジにも大きな変更はない。そのため、デスクトップCPUとモバイルCPUではブランドの位置付けがずれることになる。

 こうして概観すると、Intelのモバイルロードマップはデスクトップより整然としており、わかりやすい。それだけ製品の移行とロードマップがうまく機能していることを意味している。これは、同じくモバイル部門が開発しているPenryn世代でも継続されるだろう。問題は、その後で、エンタープライズ部門が開発している「Nehalem(ネハーレン)」世代が登場する2008年となる。

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(2006年10月10日)

[Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]


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