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展示会場レポート

クアッドコアCPUが早くもオーバークロックデモ
~DDR3のデモやコンセプトPCも展示

Showcase会場

会場:米San Francisco Moscone Center West

会期:9月26日~28日(現地時間)



 IDFではIntelやスポンサー各社の新技術の紹介に留まらず、Showcaseと呼ばれる展示場や、会場内の空いたスペースなどを利用して、実際にテクノロジーの利用したデモ、製品の紹介なども行なわれている。ここでは気になったものをピックアップして紹介する。

●早くもクアッドコアのオーバークロックが

 クアッドコアのCPUに関する展示は、Showcaseとは別に「Advanced Technology Zone」と呼ばれる専用エリアが設けてられていた。ここは、クアッドコアのCore 2 ExtremeやXeon 5300シリーズを搭載したシステムの展示を行ない、その上でアプリケーションを走らせて、クアッドコアのパフォーマンスを体験してもらおうというセッションだ。

 今回のクアッドコアシステムの展示でとくに目を引いたのが、Core 2 Extreme QX6700をオーバークロック動作させるデモが早くも実施されていたことだ。Falcon Northwestの「Mach V」は3.73GHzへ、Intelが展示したデモ機では3.5GHzへとオーバークロックさせていた。

 また、ことPCに関してはエンスージアスト向けPCがメインになっていることもあって、CPUを水冷しているものがほとんど。なかでも、Voodoo PCが展示した「Omen Extreme Gamer i:121」は、CPUだけでなくCrossFire構成となっており、Radeon X1800×2枚とHDDをも1つのラジエータで冷却するシステムとなっていたのが印象的だった。

 このほか、サーバー/ワークステーションの分野では、3Dレンダリングやモールドの成型シミュレーションをマルチスレッド/マルチタスクさせるデモを行ない、クアッドコアの優位性をアピールしていた。

Showcase会場とは別に設けられたクアッドコア体験コーナー「Advanced Technology Zone」 2.66GHz動作のCore 2 Extreme QX6700を3.73GHzへオーバークロックしたFalcon Northwestの「Mach V」 こちらはIntelのデモ機で、同じくQX6700を3.5GHzにオーバークロックしている
Voodoo PCの「Omen Extreme Gamer i:121」。CPU、ビデオカード2枚、HDDを水冷する仕組みになっている クアッドコアのXeon 5300のデュアルプロセッサにしているDellの2Uラックマウントサーバー「PowerEdge 2950」を利用したデモ。POV-Rayを使った3Dレンダリングのデモで、シングルスレッド時に比べマルチスレッド動作では7倍近い性能向上を見せている Core 2 Extreme QX6700を搭載したHPの「xw4400 Workstation」では、モールドの射出成型シミュレーションを4パターン同時実行するデモを行なっていた

●IntelとSamsungがDDR3 SDRAMの動作デモを実施

 Intelが2007年リリースを予定している次世代チップセット「Bearlake」での対応が見込まれるDDR3 SDRAM。駆動電圧が1.5Vへ下げられる一方、動作クロックは現在のDDR2 SDRAMを上回る800/1,066/1,333MHzが予定されている。テクニカルセッションで示されているスライドにもあるとおり、現在Evaluationの段階まで来ており、それを裏付けるかのように、今回のIDFではDDR3 SDRAMの動作デモが実施された。

 今回デモを実施したのは、IntelとSamsungである。いずれの機材もBearlakeが稼動しているわけではなく評価用に製造されたテスト用チップセットを用いているが、Intelは1,066MHz、Samsungは800MHzでの動作をさせていた。

 Samsungのスタッフによれば2007年登場する最初のDDR3 SDRAM対応チップセットは1,333MHzをサポートしない見込みだという。実際今回のIDFではELPIDA、Micron、Hynix、Qimondaが動作可能なDDR3 SDRAMモジュールを展示しているが、いずれも1,066MHz品。1,333MHz品は2007年以降という状況のようで、もう少し時間がかかりそうである。

Evaluationの段階まで進んだDDR3 SDRAMの進捗。今回のデモは、スライドでも書かれているIntelのテストプラットフォームを利用したものだ Intelが行なったDDR3 SDRAMの動作デモ機 ケース内にカメラを設置してDDR3 SDRAMモジュールをディスプレイに映し出している。どのメーカーのモジュールを使っているかは秘密とのこと
動作PC上でキャプチャしたCPU-Zの画面。CAS Latencyは7となっており、各ベンダーが展示した他のDDR3 SDRAMモジュールも同様であった こちらはSamsungの展示機。筐体の窓から内部のモジュールを見ることができたが、当然Samsung製のモジュールを使用している Samsungが展示したDDR3-1066の1GBモジュール
同じくSamsungが展示したDDR3-1066のSO-DIMMモジュール。ほかにRegistered DIMMも展示していた ELPIDAのDDR3-1066モジュール。容量は1GB MicronのDDR3-1066モジュールで容量は1GB
Hynixが展示したDDR3-1066モジュール。今回2GBのモジュールを展示したのはHynixのみ。1Gbitのチップを両面に計16個実装している QimondaのDDR3-1066モジュール。容量は1GB

●ATIが今週発表のMobility Radeon X1700をデモ

 7月にAMDによる買収が表明されたATI。今回のIDFではどういった形で参加するのか興味を持っていたが、シルバースポンサーとしての参加となっていた。当然、Showcase内にもブースを設けており、25日に発表されたMobility Radeon X1700を展示していた。

 ここでは、ASUS製のノートPCに同GPUを搭載して展示しており、HD解像度のMPEG-2の再生や3Dパフォーマンスをアピール。また、今回の展示では搭載ディスプレイに映像を映し出しているが、このノートPCにはHDMI端子を設けておりHDCPもサポートしているという。

 一方の3Dパフォーマンスについて、動作コアクロックなどは不明ながら、Mobility Radeon X1600に比べて10%の性能向上を見せるという。

ATIが展示したMobility Radeon X1700のデモ機。画面上ではHD解像度のMPEG-2が再生されており、このアクセラレーションをGPUが行っている デモ機の側面にはHDMI出力端子を装備。HDCPにも対応している

●電圧を変化させて電源効率を上げるIntel AMPSをデモ

 Intelが出したブースの1つでは、モバイル向けの新しい電源システムとなる「Intel AMPS(Adaptive Mobile Power System)」のデモがな行われた。このシステムは、ACアダプタの電圧を変化させられるのが大きな特徴となる。

 ACアダプタで生成されたDC電源は、さらに電源スイッチを用いてバッテリの充電などにも使われるわけだが、ACアダプタ側で電圧を変化させることでトータルのチップ数を減らし、1~3ドルのコスト削減と、実装スペースの節約につながる。無駄な電力が減る(平均0.3W改善するという)だけでなく、それによる発熱も減らせることになる。

 また、今後新しい素材を使ったバッテリが登場するなどして充電のために別の電圧を供給する必要が生じた場合でも、このシステムをそのまま利用できることになるという。

 この変化させる電力の決定を行なうためにPower Monitorチップを搭載するが、このチップはO2Micro、FUJITSU、Texas Instruments、ADIから、また、AMPS対応ACアダプタはDELTA、Lite-Onからの供給が現時点で予定されている。なお、このAMPSを利用したシステムは2008年の導入が予定されている。

一般的なノートPCの電源レイアウトでは、ACアダプタで生成したDC電源をバッテリチャージャーが再度電源変換を行なうなど、構成パーツも無駄な電力も多い Intelが提供したAdaptive Mobile Power Systemは、ACアダプタの電圧を可変させる。バッテリチャージも意識した適切な電圧を自由に供給できるようになるので、シンプルなレイアウトになり、構成パーツのコスト、パーツの実装スペース、無駄な電力(発熱)を減らせるという寸法だ

●少しずつ現実味が増してきたWireless USB

 ここ最近のIDFでは風物詩となっているWireless USB。今回も多くの企業が、論理層チップや動作デモなどを展示したが、その中でもStaccato CommunicationsとAlereonが行なったデモは、これまでとは異なり直接製品化につながりそうな現実味のあるものだった。

 まず、Staccato Communicationsのデモは、Wireles USBとBluetoothのコンボカードを利用したもの。このカードはMini PCI Expressカードの片面にWireless USB、もう片面にBluetoothのトランシーバを実装したもので、USBのアダプタを介して接続されている。

 ここから、Bluetoothのヘッドセットと、Wireless USBのレシーバへ飛ばし、Wireless USBのレシーバの先には通常のUSB Hubを介して2.5インチHDDが接続されている。こうしたソリューションの投入時期については、現時点ではMini PCI Expressの普及を待っている状態とのことで、主にOEM供給によってノートPCにあらかじめ組み込まれる形態を想定している。

Staccato Communicationsが展示したWireless USBとBluetoothのコンボモジュール。各面に、それぞれのトランシーバを実装している PCへはMini PCI ExpressカードをUSBに変換して接続。当然、原則としてはPCに内蔵する使用形態が想定されている Wireless USBのレシーバにUSBハブを介し2.5インチHDDを接続

 Alereonが行なったのは、PCとデジカメをWireless USBで接続するデモだ。Kodak製デジタルカメラには、SDIOの無線LANカードを装着して画像をPCへ転送する機能を持つものがあるが、今回SDIOで接続できるWireless USBモジュールをカメラに搭載。USB接続のWireless USBモジュールを取り付けたPCへ転送するデモが実施されていた。

 同社では、SDカードタイプのほか、CFタイプのWireless USBモジュールや、Hubなども展示。2007年中の製品投入を予定しているほか、2008年にはデジカメ内にWireless USBを内蔵してもらうようなソリューションの展開も検討している。

Alereonによる、手前のデジカメで撮影した映像を、Wireless USBを利用して転送し、PCの画面上に表示させるデモ。Wireless USBのモジュールはデジカメの下部に取り付けカバーを取り付けてある 受信するPC側には、USB接続のWireless USBモジュールが搭載されている Alereonが展示したSDIOとCFタイプのWireless USBモジュール
すでに小型化が進められており、SDカードサイズに収まるサイズも実現しているという Wireless USB Hub。レシーバとハブ機能を1枚の基板に収めている

●Intelが示した2つの新PCと超音波によるペン入力デバイス

 IDFでは毎回新しいコンセプトPCやプロトタイプが登場するが、今回新たにお披露目されたのが、「アーキテクチャに基づくものではなく、ユーザーの利益を考えるところからブレイクダウンして設計していった」という「Kitchen Windows」と呼ばれるものだ。

 このPCは、壁にかけて利用するもので、タッチペンを利用して操作を行なう。機能面の中心になっているのはカレンダーとメモ機能で、家族で共有して利用するカレンダーや、家族間の伝言板として利用するのが目的のPCというわけである。

 また、オッテリーニ氏の基調講演でも登場した、途上国の教育機関向けPCである「Classmate PC」も展示された。900MHz動作のCeleron Mと、Intel 915GMをベースとしたPCになっており、EthernetとUSBでインターコネクトされた無線LAN(WiMAX対応ではない)機能、サウンド機能などを内蔵している。液晶ディスプレイのサイズは7型で、解像度は800×480ドット。現状のコストはおよそ400ドルという。

 無線LANをUSBで接続しているのが珍しいが、こうした安価に作ることが大きな目的となるPCでは、どうしても保守的なパーツを利用することになる。Intelでは途上国向けには配線が不要な点を活かしてWiMAXを利用したインターネット接続の推進をうたっており、こうしたPCにWiMAXのモジュールが搭載される頃には、USB接続の製品の方が普及し、安価に提供されていると推測しているのではないだろうか。

 ところで、Classmate PCの写真の左側に少し写っているのは、超音波を利用したペン入力装置である。この製品もShowcase内で展示されていた。これはイスラエルのEPOS Technologiesが開発した技術で、受信機にマイクロフォンを搭載。実際に書くこともできる専用のペンを利用し、その動きを超音波を使って検知するものだ。

 電波ではなく超音波を利用しているので、各国のライセンスが不要であることをメリットの1つとしてアピールしている。デモではMicrosoft Wordを使って、絵を描写したり、入力した文字のテキスト認識などを行なっていた。

 今回展示されたのは、これまで製品化されたものから大幅に小型化したもので、受信機もペンも1チップで構成されている。受信機は2通りの製品が展示されており、1つは受信機内にデータを蓄積して、USBに接続した段階で転送するもの。もう1つはUSBに接続した状態で使用しリアルタイム入力とポインティングデバイス機能を持たせたものとなる。投入時期は前者が2007年第1四半期、後者はそれより遅い時期になるとのこと。

Intelの新しいコンセプトPCである「Kitchen Window」。タッチペンで操作が可能で、このスクリーンは上下にスライドさせることができる。また上部にはWebカメラも内蔵する 家族で共有カレンダーや掲示板ツールとして利用することを想定したシステムで、付箋のようなメモ機能や、写真/映像/音声の貼り付けなどを行なえる。またスケジュールの個人別表示なども可能<
途上国の学校などで利用されることを想定している「Classmate PC」。7型の液晶にCeleron M 900MHz、Windows XP Embeddedを利用したシンプルなPC Classmate PCのデモ機にも接続されているEPOS Technologies社のペン入力システム。ペンの動きを超音波を利用して受信する仕組み。左端がUSBに直接接続する受信機でポインティングデバイスとしても利用できるもの。中央が装置内にペンの動きを記録しUSBに接続した時点でデータを転送するもの。右端がボールペンとしても実際に利用できる入力用のペン

□IDF Fall 2006のホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/us/fall2006/
□関連記事
【9月28日】【IDF】オッテリーニCEO基調講演レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0928/idf03.htm
□IDF Fall 2006レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/link/idff.htm

(2006年9月29日)

[Reported by 多和田新也]

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