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Kentsfieldハンズオンセッションレポート

Core 2 Extreme QX6700のベンチマークスコア公開

会場:米San Francisco Moscone Center West

会期:9月26日~28日(現地時間)



 米サンフランシスコで開催中のIDFは、クアッドコアCPUの投入時期公表が1つのトピックとなっているが、IDF終了日の本日、クアッドコアCPUを搭載したPCを利用したベンチマークスコアも公開された。また、一部のベンチマークをプレスの手によって測定できるハンズオンセッションも行なわれたので、それらのベンチマーク結果を紹介したい。

●Core 2 Extreme QX6700を搭載したシステム

 今回のハンズオンセッションで試用することができたのは、Kentsfieldの開発コードネームで呼ばれたクアッドコアCPUの「Core 2 Extreme QX6700」だ(写真1)。2006年11月に投入されることが公表されたものである。オッテリーニ氏の基調講演で提示されたスライドによれば、デュアルコアCPUであるCore 2 Extreme X6800に対して、SPECintの結果が70%向上したとされる製品である(画面1)。

【写真1】KentsfieldコアのCPU。2つのCPUダイを1つのCPUにパッケージングした、Presler同様の仕組みとなる 【画面1】オッテリーニ氏の基調講演で示されたスライド。Core 2 Extreme X6800からSPECintにおいて70%の伸びを示したとされる

 このCore 2 Extreme QX6700だが、Windows上で確認すると、当然ながら4個のCPUを認識しているのが確認できる(画面2、3)。動作クロックは2.66GHzで、FSBは1,066MHz。Kentsfieldは、ConroeコアのCPUダイ2個を一つのパッケージ上に載せた格好となるので、L2キャッシュは4MB×2の計8MBとなる。このあたりの情報は、CPU-Zでも確認することができる(画面4)。



【画面2】デバイスマネージャーにおいて、4個のプロセッサを認識する 【画面3】もちろんタスクマネージャでも4つのプロセッサの使用率が表示される格好となる 【画面4】CPU-Zの結果。動作クロックやL2キャッシュの容量を確認できる。またCPUIDやSSE4対応のフラグが立っていることからも、コアマイクロアーキテクチャの製品であることを確信できる

 このとおり、プロセッサ自体は理屈どおりの情報を確認できたのみで、それほど目立った点はない印象だが、そのシステムについては触れておかなければならない点がある。それがマザーボードだ。

 今回の評価システムに利用されているマザーボードは、チップセットにIntel 975Xを搭載するものだが、その型番は「Intel D975XBX2」となっている(画面5)。従来の同チップセット搭載マザーとは外観こそ似ているものの、別の製品名となっているわけで、ボードリビジョンは「303」(写真2、3)。実は従来のD975XBXではKentesfieldを動かすことができないのだという。

【画面5】CPU-Zによるマザーボードの情報。マザーボードの製品名がD975XBX2となっているのに合わせ、BIOSバージョンの文字列も従来製品のX97510Jで始まるものから、BX97520Jで始まるものへ変更されている 【写真2】今回のテストで使われたシステムと同等の構成を持つ、別筐体の内部。CPUクーラーはクーラーマスター製が搭載されている 【写真3】マザーボードはIntel D975XBX2。ラベル末尾の「303」が現状ではKentsfield対応品とのこと

 また、このマザーボードには、ノースブリッジにIntel 975Xの新リビジョンが搭載されているとのこと。この新リビジョンの特徴はDDR2-800を正式にサポートする点となる。ただ、Kentsfieldを動作させるために新レビジョンのIntel 975Xが必須となるかは、現時点で不明である。

 もっとも、IDF期間中に行われたクアッドコアのセッションでは、同社Vice Presidentのスティーブン・スミス氏が「Conroeが動作するチップセットであれば、BIOSのアップデートは必要になるが、Kentsfieldを動作させることができる」と述べている。ということは、今回のハンズオンセッションにおいてKentsfieldを動かすために新しいD975XBX2が必須であるとされたのは、マザーボード(VRMなど)の問題ではないかと想像される。

●Core 2 Extreme X6800とのベンチマーク結果比較

【写真4】写真奥がCore 2 Extreme X6800、手前がCore 2 Extreme QX6700を搭載したシステム。筐体は異なるが内部構成はCPU以外が統一されている

 それではベンチマーク結果をお伝えしたい。今回のハンズオンセッションでは、Core 2 Extreme QX6700のシステムに加え、CPU以外の環境が統一されたCore 2 Extreme X6800システムも用意されており、この2システム間での比較となる(写真4)。

 なお、ハンズオンセッションの時間は非常に限られており、今回、筆者を含む報道関係者の手によって実行できたのは、PCMark05と3DMark06のみである。そのほかのデータに関しては、Intelから提供された数値を基に作成したグラフである。



【表1】テスト環境
CPUCore 2 Extreme QX6700
(2.66GHz,Kentsfield)
Core 2 Extreme X6800
(2.93GHz,Conroe)
チップセットIntel 975X
マザーボードIntel D975XBX2 Rev.303
メモリDDR2-800 1GB×2(4-4-4-12)
ビデオカードNVIDIA GeForce 7950 GX2(ForceWare 91.47)
HDDSeagate Barracuda 7200.10 320GB
OSWindows XP Professional(ServicePack2,DirectX 9.0c)

 では、まずはPCMark05の結果である。今回取得できたの、OverallスコアとCPUスコアの2つだ。まずグラフ1に示した総合スコアを見ると、OverallスコアではデュアルコアのCore 2 Extreme X6800が、CPUスコアではクアッドコアのCore 2 Extreme QX6700が、それぞれ上位のスコアを出している。こうした逆転現象の理由を探るため、各テストの詳細結果を見てみたい。

【グラフ1】PCMark05

 まずOverallの測定で実行されるテストだが、測定内容がバラバラであるためグラフ化はやめ、表2にまとめてある。数値はすべて、大きいほど性能が良いことを表している。ちなみに、表中で「HDD - XP Startup」から「HDD - General Usage」まではシングルタスクによるテスト、それ以降はそれぞれ2タスク、4タスクの同時実行となる。

【表2】PCMark05 SystemTest全結果
テスト項目単位Core 2 Extreme QX6700
(2.66GHz,Kentsfield)
Core 2 Extreme X6800
(2.93GHz,Conroe)
HDD - XP StartupMB/sec10.110.3
Physics and 3DFPS240.4264.4
Transparent WindowsWindow/sec1088.81231.3
3D - Pixel ShaderFPS321.8321.5
Web Page RenderingPages/sec4.75.2
File DecryptionMB/sec72.279.8
Graphics Memory - 64 linesFPS1810.41829.0
HDD - General UsageMB/sec6.16.1
 
Audio CompressionKB/sec3302.13199.6
Video EncodingKB/sec475.3546.1
 
Text editPages/sec192.6207.9
Image DecompressionMpixels/sec38.141.8
 
File CompressionMB/sec6.17.0
File EncryptionMB/sec70.445.5
HDD - Virus ScanMB/sec47.340.2
Memory Latency - Random 16 MBMaccesses/sec13.213.8

 この結果を見ると、多くのテストでCore 2 Extreme X6800が良い数値を出していることが分かる。これはCPUの動作クロックによるアドバンテージと見ていいだろう。2タスク同時実行においても、Core 2 Extreme X6800はデュアルコアCPUなので数値の低下が少なく、4タスク同時実行に関してもCPUのみに負担がかかるような組み合わせではないため、クアッドコアの効果が発揮されにくい状況になっている。

 一方、CPUテストの結果は、シングルタスクテストをグラフ2、マルチタスクテストをグラフ3にまとめているが、非常に分かりやすい結果が出ている。シングルタスクテスト、2タスク同時実行テストにおいてはCPUクロックで勝るデュアルコアCPUであるCore 2 Extreme X6800が良いスコアを出し、4タスク同時実行テストではクアッドコアであるCore 2 Extreme QX6700が良いスコアとなる。

【グラフ2】PCMark05 Build 1.1.0(CPU Test - シングルタスク)
【グラフ3】PCMark05 Build 1.1.0(CPU Test - マルチタスク)

 以前にも、デュアルコア+Hyper-Threadingでアドバンテージを持つPentium Extreme Editionと、デュアルコアのAthlon 64 FXで似たような傾向を示すことがあったが、Hyper-ThreadingではCPUリソースが実質2コア分しかないこともあり、今回のクアッドコアのほうが、より顕著に4タスク同時実行における優位性を示している印象を受ける。

 続いては3DMark06の結果である(グラフ4)。こちらはビデオカードの性能に大きく依存するSM2.0、HDR/SM3.0テストでは、当然ながらまったくといっていいほど差がない。だが、複数のAI処理と物理演算が同時に進行されるCPUテストにおいては、クアッドコアの優位性が明確に現れている。

【グラフ4】3DMark06 Buid 1.0.2(1,280×1,024ドット)

 さて、ここからはIntel提供によるベンチマーク結果をグラフ化したものとなる。グラフ5にはDivXエンコードとDVDオーサリングソフトを用いたもの、グラフ6はPOV-Rayに3Dレンダリング、グラフ7は3ds Maxによる3Dレンダリングのベンチマーク結果をまとめている。なお、グラフ5とグラフ7は単位が秒なのでグラフが短いほど良い性能を表し、グラフ6は1秒当たりに処理できたピクセル数を示しているのでグラフが長いほど性能が良いことを表している。

【グラフ5】動画処理
【グラフ6】POV-Ray Beata 15
【グラフ7】3ds Max 8 SP2

 このデータに関しては、ソースファイルや実行時のパラメータなど、詳細な測定データが不明なため、あまり詳しくは言及しない。ただ、いずれもマルチスレッド対応アプリケーションということもあって、Core 2 Extreme QX6700が非常に優れた結果を見せている。

●“条件次第で”大幅な性能向上が期待できるクアッドコア

 ということで、限られたテストではあるがベンチマークの結果を見てみると、動作クロックが下がったことが響いて、条件が合えば性能の向上が期待できる、という結論になるだろう。デュアルコア登場時と同じような結果である。

 4スレッド以上に分けて処理されるマルチスレッドアプリケーションや、アプリケーションをマルチタスクで実行した場合に、その効果は大きなものとなる。3DMark06のCPUスコアに関しては、実際の3Dゲームにおける効果に直結する可能性は低い。このようにまとめてみると、デュアルコアで効果を感じられる人が、クアッドコアでさらに高い性能を得られる点が、現時点ではクアッドコアの大きな存在意義ではないだろうか。

 ただ、ここで思い出すのは、初めてのデュアルコアCPUとなったPentium Extreme Edition 840が登場したときのことだ。それまでの最上位CPUであったPentium 4 Extreme Edition 3.73GHzと、新たに最上位CPUとなったPentium Extreme Edition 840の比較でも、今回と似たようにアプリケーションや使い方次第でデュアルコアの優位性が出る結果となった。しかし、そのときはクロックの低下が大きかったこともあって、デュアルコアが活きるシチュエーションでも50%強の性能向上に留まっていたのである。

 今回のクアッドコア登場で、当然ながらIntelの最上位CPUが入れ替わることになるわけだが、この性能向上は大きなところでは80%を超えている。使い方がマッチする人にとって非常に魅力的なCPUになる可能性を感じることができるのではないだろうか。

□IDF Fall 2006のホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/us/fall2006/
□関連記事
【9月28日】【IDF】オッテリーニCEO基調講演レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0928/idf03.htm
【9月21日】【笠原】Intel、CPUブランド戦略を修正
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0921/ubiq166.htm
□IDF Spring 2006レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/link/idfs.htm

(2006年9月29日)

[Reported by 多和田新也]

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