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アップル、Special Eventの模様を日本でも公開
~ 同社としては異例となる将来の製品「iTV」をデモ

サンフランシスコで講演するスティーブ・ジョブズCEO。日本では、録画映像に同時通訳をつけて上映された

9月13日 開催

会場:六本木アカデミーヒルズ49



 アップルコンピュータ株式会社は、12日(現地時間)に米サンフランシスコで行なわれたSpecial Eventをうけて、日本国内向けの発表会を六本木ヒルズで開催した。

日本での進行役はワールドワイドハードウェアプロダクトマーケティング担当副社長のデビッド・ムーディ氏

 発表会では、現地イベントの録画映像に同時通訳を付けて上映。冒頭と最後にワールドワイドハードウェアプロダクトマーケティング担当副社長のデビッド・ムーディ氏が登壇して、日本向けの価格や販売スケジュールを紹介するスタイルとなった。終了後は隣接する会場で新製品のハンズオンも行なわれた。

 現地Special Eventは、同社のスティーブ・ジョブズCEOが講演。U2エディションを除くiPodラインナップのすべてをリニューアルしたのをはじめ、iTunesの最新バージョン「iTunes 7」が発表された。あわせて、Disney傘下のWalt Disney Pictures、Pixer、Touchstone Pictures、Miramax Filmsの4社によるiTuens Storeでの映画配信も開始される。また同社としては極めて異例なことに将来の製品プランについても触れ、2007年の第1四半期に『iTV(仮称)』というiTunesの各種コンテンツをTV視聴するためのユニットを市場投入することを明らかにしている。


●iPodのラインナップをすべてリニューアル

iPodの北米マーケットシェアは75.6%に達する

 講演の冒頭にジョブズCEOは、北米におけるiPodのマーケットシェアが75.6%になったことを紹介。3,000種類を越えるiPod向けのアクセサリーが発売され、2007年モデルの新車のうち70%がiPod対応となるなど、iPod市場の変わらぬ好調ぶりをアピールした。ワールドワイドでのiPod出荷数は6,000万台を突破したという。

 また、先日NIKEとのタイアップにより北米地域で販売が始まった「NIKE+iPod Sports Kit」も、発売から90日に達する前に、45万ユニットを販売した。その好調ぶりを、米スポーツシューズ小売り大手のFootLockerのMatt Serra会長のコメントとあわせて紹介した。同製品は国内でも年内発売が予定されてはいるが、現時点で詳細な出荷時期は未定となっている。

 リニューアルされたiPodは液晶画面の輝度が60%向上。TVドラマや映画をiPodで視聴する際の快適さが向上したとジョブズCEOは説明する。またバッテリ持続時間も、30GBの映像再生時で従来の2時間から3.5時間へと75%伸びた。さらに、ライブやクラシック音楽など、曲間の途切れが気になる音源で(曲間の)ギャップレス再生がサポートされる。

 そのほか同梱されるヘッドフォンにも改良が加わったほか、iTunes StoreでiPod用のゲームも配信される。12日付け(現地時間)でパックマンやテトリス、ミニゴルフなど9種ゲームを配信。北米では1本4.99ドル、日本では600円で販売される。

日本では未発売だが「NIKE+iPod Sports Kit」にも対応する 曲間のないギャップレス再生をiPodとiPod nanoで実現。ライブやクラシック音源などに効果 iPodにはテトリスなど9種類のゲームが提供される。世界最大手のゲームパブリッシャーであるEAも参入

 従来製品が30GB、60GBの2モデル構成であったのに対して、今回の製品は30GBと80GB。北米ではそれぞれ249ドルと349ドルで販売され、国内価格は29,800円と42,800円。

 新しいiPod nanoは、2GB、4GB、8GBの3モデルがラインナップ。前述したiPodがいわゆる5th Generationのマイナーチェンジであるのに対して、nanoは『2nd Generatoin(第2世代)』という表現が使われている。従来モデルに比べてメモリ容量は倍増で、価格は据え置きというコストパフォーマンスの良さも強調されている。

 白黒の2色だった従来モデルに対し、新iPod nanoは計5色をラインナップ。その色使いはiPod miniを彷彿とさせるものだ。実際、本体表面の素材もiPod miniと同様に酸化皮膜処理されたアルミニウムが使われている。2GBモデルはシルバーのみ、4GBモデルは、シルバーにブルー、グリーン、ピンクが加わり、最上位の8GBモデルはブラックのみという仕様だ。最上位モデルがブラックのみという設定は、MacBookと同様である。iPodと同様に液晶画面の輝度は40%向上。ギャップレス再生やイニシャルワードを使ったクイックサーチ機能なども搭載している。

 北米では下位から149ドル、199ドル、249ドルの価格設定。国内では、17,800円、23,800円、29,800円となっている。パッケージングも簡略化され、容積は52%減。本日から販売が始まっている。

新しいiPod nanoの広告は、再び“色”を強調したものになった iPodとiPod nanoには曲名サーチにイニシャルサーチが加わった。残念ながら日本語の曲名には未対応 iPod nanoはパッケージも新しくなった。容積では52%減少したとのこと

 2005年1月の発売、発表以来価格改定はあったものの、モデルチェンジが行なわれていなかったiPod shuffleもモデルチェンジされた。USBコネクタがむき出しという特徴的なデザインの従来モデルに対し、新型のiPod shuffleは周辺機器の「Radio Remote」とよく似たデザインになった。本体は従来のプラスチックから、前述のiPod nanoと同じアルミニウムに変わった。本体背面には衣服などに挟むためのクリップも付いている。

 ジョブズCEOははじめてiPod shuffleの出荷数にも言及。従来モデルは累計1,000万台を出荷したとのこと。新iPod shuffleの仕様は1GBの1モデルのみで、北米では79ドル、日本では9,800円で販売される。出荷時期はともに10月の予定となっている。

iPod shuffle。バッテリは12時間持続する iPod shuffleの発売は10月を予定。すでに予約の受付は開始されている

●北米ではDisneyの参入で12日から映画配信をスタート

 もちろん、こうしたiPodの成功にはiTunesの存在が欠かせない。ジョブズCEOは引き続いて、バージョンアップされるiTunes 7の紹介を行なった。同氏によれば、iTunesのマーケットシェアは88%で、これまで15億曲をiTunes Storeで販売。これは、CDを含めた音楽販売としては、小売り大手のWal-MartやTarget、家電量販のBestBuy、そしてAmazonに続く第5位に位置するという。また2007年にはAmazonを抜いて第4位への浮上もありえると自信を見せた。iTunes Storeは現在、日本を含む21カ国で展開。そのすべての国で、トップシェアを確立していることがもっとも誇るべき点だとジョブズCEOは説明している。

iTunesのマーケットシェアは88%に達し、ほぼ一人勝ちの状態が続いている CDを含めて楽曲の販売というカテゴリで第5位の位置を占めるiTunes Store。2007年にはAmazonを抜いて第4位浮上を目指すと自信をみせた

 この日からダウンロードが始まったiTunes 7は、アルバムジャケットのアートワーク表示を中心に、大幅な改良が加えられている。iTunes Storeからダウンロードしたアルバムや曲だけでなく、CDからリッピングしたものに対しても、アートワークを自動的に検索してダウンロード、関連づけることができる機能が含まれている。

 そのほか、これまでは個別に提供されていたiPodのアップデータがiTunesに統合され、iPodの接続時に必要に応じて自動的に更新が行なわれるようになった。加えて、同一アカウントを利用するうえでの音楽ライブラリの統合やギャップレス再生、そしてこれまで320×240ドットの解像度で提供されていた映像コンテンツの640×480ドット化など、ジョブズCEOが「これまでで最大規模のバージョンアップ」と言うように、大幅な機能改良が図られている。

iTunes 7アップデートのまとめ。アートワークのダウンロードをはじめ、表示機能の大幅な強化。さらに映像コンテンツの640×480ドット化など、過去最大規模のアップデートが行なわれた アルバムのアートワークで聴きたい曲が簡単に選べる新しい表示方法。iTunes 7はすでに無償でのダウンロードが始まっており、実際に試してみることができる 日本市場ではまだサービスが行なわれていないため影響は少ないが、すでに320×240ドットの解像度で購入済みのコンテンツを640×480ドット化するには再度購入の必要があるとのこと

 さて、ここまでの記述でも「iTunes Store」と書いてきたとおり、この日から「iTunes Music Store」が「iTunes Store」へと名称が変わっている。これは、Disneyによる映画の配信が始まったことを大きな理由とするものだろう。ほかにiPodで利用できるゲームの配信があるほか、すでに2005年10月からは北米でTV番組の有料配信があり、PIXERの短編映画もかなり初期から導入されていたコンテンツである。そういう意味では、かなり以前から『音楽』に限らずさまざまなコンテンツが提供されていたiTunes Music Storeではあるが、やはりこのタイミングで「iTunes Store」としたのは、『映画』というメディアを大いに意識したものと思われる。

 その映画だが、本日付けで提供が始まったのはWalt Disney Pictures、Pixer、Touchstone Pictures、Miramax Filmsの4社。いずれもDisenyの傘下である。これはDisneyがPixerを買収したことでジョブズCEOがDisney最大の個人株主となったこととともに、これまでの同社とDisneyの深い関係から実現したものととらえて間違いない。2005年10月に開始されたTV番組の有料配信もABCからスタートしており、同局もDisney傘下である。

 実質的にはDisenyのみで始まる映画配信の開始だが、ジョブズCEOは2005年のTV番組配信を例にあげた。2005年、ABCとの提携で1局5番組のみで開始されたこのサービスだが、開始から1年を待たない現時点で、40局220番組を数えるまでに配信の規模は拡大した。これと同じ現象が映画というコンテンツでも起こると確信しているのである。

 12日付(現地時間)で配信されているタイトルは75タイトル。旧作の多くは9.99ドルで提供される。新作はDVDの発売と同時に配信され、事前予約と発売後1週間までは12.99ドル。1週間後以降は14.99ドルの価格設定だ。新作価格の14.99ドルが旧作価格に変わるタイミングは明示されていない。映画コンテンツは640×480ドットの解像度とドルビーサラウンドで提供され、ジョブズCEOによると「DVDに極めて近い画質」と説明されている。

 映画の配信は北米地域のみでスタート。日本を含むその他の地域では2007年のスタートを見込んでいる。

提供されるTV番組配信の推移。1局5番組でスタートし、1年を経ずして40局220番組まで増加した。これと同じ動きが映画配信でも起こるとジョブズCEOはサービスに自信をみせる 新作タイトルは事前予約と発売後1週間は12.99ドルで販売される。以降は14.99ドル
旧作の多くは、9.99ドルという価格設定になる 映画配信のまとめ。新作はDVDと同日にリリースされプリオーダーも可能。発売当日になると自動的にダウンロードがスタートする仕組みだ

●リビングルーム向けのハードウェア「iTV」を2007年に出荷

書斎(DEN)、リビングルーム、クルマの中、そしてポケットの中。すべてのシチュエーションにおいて、iTunesなどのコンテンツを共有化するというビジョン

 ジョブズCEOの講演ではお馴染みの「One more thing…」。実は、前述の映画配信開始がこれだったのだが、この日はさらに「One last thing…」が用意されていた。ジョブズCEO自身が「極めて異例」というように、「将来の製品計画に関しては一切コメントしない」が決まり文句の同社において、2007年第1四半期に出荷予定という製品がプレビューされた。

 「製造、出荷のメドがたっていない製品を紹介することは異例なのだが、本日の発表を含めて私たちのビジョンをより理解してもらうため」とあらためて前置きしてスライドに現れたのが「iTV」だ。名称も「あくまで予定」だという。商標関係の理由が、仮称となる大きな要因であることは想像に難くない。

 「iTV」は、iTunes Storeなどから入手したコンテンツを大型のTV受像器で見るためのユニットだ。iTunesのライブラリを持つPCやMacと無線LANや有線LANでiTVを接続。TV受像器側にはiTVからHDMIやRCAコンポーネントで映像を出力する。音声はLRのピンプラグに加えて光デジタル出力にも対応。ざっくりと言ってしまえば、Windows Media Centerでいうところの「Media Extender」にあたる製品だ。


プレビューされた「iTV(仮称)」。Mac miniの半分ほどの容積である Mac miniの半分ほどの筐体に、無線LANとEthernet、そしてUSB 2.0などを搭載する。電源は本体に内蔵されているとのこと
出力はHDMIに対応。ほか、コンポーネント出力も用意される。音声はLRのピンプラグと光デジタル音声にも対応 MacかPC、そしてiTunesが動作環境条件になる

 PC向けにもMac向けにも、サードパーティからこうしたプロダクトは挑戦的にいくつか出荷されてはいるものの、どれも決定打には乏しい。アップルコンピュータが提供する意味は、iTunesと完全な連携を図ることができるという、他社には真似できないアドバンテージがある。

 プレビューと紹介しつつもジョブズCEOは試作機を実際に手にとってみせ、デモまで行なって見せた。インターフェイスは現行のFront Rowにも似た感じだが、手も加えられている。特にコメントはされていないが、"Leopard"に搭載されるという次世代Front Rowとインターフェイスを共通化しているのは間違いないと思われる。

 デモは、映画、音楽、ポッドキャスティング、写真のスライドショーまで、iTunesに入っているコンテンツをひととおり披露してみせた。現時点でそうしたコンテンツが存在するわけではないが、HD映像にも対応する模様である。本体価格は299ドルと明らかにされた。

 ジョブズCEOがこの場でiTVをプレビューしてみせ、強調したかったのは、iTunes(とiTunes Store)のコンテンツが、書斎ではPCやMacで見られること。同じコンテンツがiTVを介してリビングでも見られること。そして冒頭に紹介した車内や徒歩なども含めた移動時まですべてがスケーラブルに統合できるということを講演の最後で示して見せたわけである。

ジョブズCEOの示す、コンテンツを視聴する流れ。MacやPCに蓄積されたコンテンツを大型のTV受像器で再生するデバイスが必要になる 購入済みの映画のほか、公開前のトレーラー(予告編)もオンデマンドで視聴できる

●会場で新iPodをデモ

iPodではパックマンをはじめとするゲームも楽しめるようになった。既存の第5世代製品でもアップデートで対応する。国内では1タイトルあたり600円で販売される

 隣接した展示スペースには、リニューアルされたiPodのラインアップが展示、デモンストレーションされていた。残念ながらiTV(仮称)は展示がなく、会場内のデモスタッフも、今日上映された内容以上の情報は持ち合わせていないという。

 iPod shuffleの実物は想像以上に小さい。iPodの周辺機器であるFMラジオ付きのリモコン「Radio Remote」とほぼ同サイズ。クリップで衣服に取りつけたとき、初めて見る人ならばきっとどこかほかに本体があると思うことだろう。

 iPod shuffleの従来モデルはUSBコネクタのむき出し感も特徴の1つだったが、新モデルはPCやMacとの接続に専用のドックを使うようになった。ドックとiPod shuffle本体の接続は3.5ミリ径の専用プラグで行なわれ、データ転送と充電の両方をまかなっている。クリップ部分は本体と同一素材で一体化しており、アップルのロゴはクリップ部分にプリントされている。

アップルロゴが背面のクリップ部分に位置するiPod shuffle クリップ分を開いた様子。デニムやオーバーなどの厚手の生地でも大丈夫
女性スタッフの袖口に付いたiPod shuffle MacやPCとは専用のドックを介してUSB 2.0で接続される データの転送から充電まで、3.5mm径のプラグで実現している

 iPod nanoは、酸化アルミニウム皮膜を使ったアルミの本体へとリニューアルされた。同社の旧製品をよく知る人なら、iPod miniを彷彿とするに違いない。カラーもiPod miniの最終モデルとよく似ていて、ブルー、グリーン、ピンク、シルバーはほぼ同色と言っていいだろう。しかしiPod miniにあったゴールドの設定はなく、8GBメモリ搭載の最上位機がブラックのみの設定となっている。

 iPod nanoの液晶画面サイズは従来モデルとほぼ同一。液晶画面の保護シートなどは従来のものがそのまま使えそうだ。画面の輝度は大幅に向上している。本体の形状がアルミで一体化され、従来モデルにあったステンレスとプラスチック部分の接続部分の角がなくなり、やはりiPod miniを思わせるように丸みを帯びたせいか、スペック差以上に薄くかつ小さく見えるのが特徴だ。

 iPod nanoに対応するレイヤードタイプのヘッドホンも同時発売となる。コネクタとプラグの形状は従来のiPod nano用と変わらないが、残念ながら従来製品対応のレイヤードヘッドフォンを流用することはできなくなっている。これは、iPodの30ピンコネクタとステレオミニプラグの間の距離が従来製品と新製品で異なるため。別売のiPodドックに接続するためのアダプタも、専用品が本体に同梱される。

5色のラインナップとなったiPod nano。黒は最上位モデルの専用色となる iPod nanoの背面の様子。素材と色の感じはiPod miniの最終モデルによく似ている
従来のiPod nanoとの比較。色の違いもあるが、角のないぶん新製品のほうが小さく見える。液晶のサイズは変わらないが、輝度は40%向上したとのこと この日発表されたすべてのiPod製品に付属する新しいヘッドフォン。やや小ぶりになった一方、ケーブルへのテーパー部分は長くなった

 30GBと80GBの構成となったiPodについては、外観上の差異はほとんどないと言っていい。ギャップレス再生など一部機能が向上した点と、容量アップ、コストパフォーマンスの向上などが主な改良点だ。

□アップルコンピュータのホームページ
http://www.apple.com/jp/
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(2006年9月14日)

[Reported by 矢作晃]

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