●Windowsクライアント用のVirtual PCを無償化 米国時間の7月12日、Microsoftはクライアント向けの仮想化ソフトである「Virtual PC」を無償化することを明らかにした。 すでに同社のWebサイトから、日本語版を含め現時点の最新版であるVirtual PC 2004 SP1をダウンロードすることができる。同社はサーバー向けの仮想化ソフトである「Virtual Server 2005 R2」を無償提供しており、それに続くものだ。 また同時に現在Windows Vistaをサポートする次期製品として開発が進められているVirtual PC 2007についても、2007年中に無償で提供する予定であることを明らかにした。これまでWindows Vistaについては、Windows Vista EnterpriseとWindows Vista Ultimateのみのフィーチャーとして、Virtual PCの機能を制限したVirtual PC Expressをバンドルするとしてきた。
Virtual PC 2004 SP1の無償化によって、Virtual PC Expressのバンドルが意味をなくすわけだが、代わりにWindows Vista Enterpriseの顧客には、1人のユーザーが利用する1台のデスクトップPCについて、4ライセンスのWindows Vista Enterpriseをインストールする権利を与えるという(Microsoft Virtual PC Guyのblogより)。また、Windows Vista Ultimateでも同等の権利が与えられる。 現時点でハッキリしないのは、1台にインストール可能な4ライセンスがWindows Vistaに限定される一方で、Windows Vista Enterpriseを購入可能なボリュームライセンサー(ソフトウェアアシュアランスに入っている企業)は、ライセンスをダウングレードする権利を持つことだ。これを組み合わせると、ほぼすべてのWindowsのバージョンについて、最大4バージョンまでWindows Vista上で実行できることになる(そんなユーザーがいるのかどうかは分からないが)。個人向けのWindows Vista Ultimateについても最大4インスタンス利用可能だという。 ●予想されるVirtual PC無償化の余波 これで、Microsoftの仮想化ソフトのうちサーバー向け(Windows)とクライアント向け(Windows)が無償になり、Mac版のみが有償として残ることになった。Mac版についてはIntel Mac対応版のリリースも確定しておらず、先行きが不透明な状況だ。 また、こうした仮想化ソフトウェアの無償化が、新たな火種になることも予想される。VMWare(一部の限定された製品の無償化に踏み切った)やParallels(製品ラインナップには話題のMac版のみでなく、Windows版もあり49.99ドルで販売されている)は、仮想化ソフトウェアで事業を行なっている会社であり、それを妨げることは間違いないからだ。米国で問題がなくても、欧州では問題化する可能性が否定できない。すでに同じ論理でWindows Media Playerのバンドルが問題視され、「the 2007 Office System」のPDF出力機能も問題になっている。 ただ、高く評価したいのは、1人1台という条件付きで(この条件は正当なものだと思う)、1ライセンスで複数インスタンスのOSを利用することが認められたことだ。従来のライセンスポリシー(仮想マシンごとにライセンスが必要)では、ライセンス料の負担が大きすぎて、大企業のサーバー以外で仮想化技術を利用することが事実上不可能だった。仮想化技術は、今後大きな飛躍が期待できる分野だけに、こうしたライセンスポリシーの変更がコンシューマー向けのクライアントOSにまで波及することを期待したい。
□Microsoftのホームページ(英文) (2006年7月13日) [Reported by 元麻布春男]
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