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「PC事業を手放すことは考えたことがない」
~富士通、経営方針説明会を開催

代表取締役社長 黒川博昭氏

6月9日 発表



 富士通株式会社は9日、経営方針説明会を開催し、同社代表取締役社長 黒川博昭氏が2005年度の業績を振り返り、今後の事業展開を説明した。

 その中で、PCおよび携帯電話、HDDで構成されるユビキタスプロダクトソリューション事業の展開に触れ、「PC事業を売却するといったことは、まったく考えたことがない。ただし、これらの分野は、富士通のような大きな傘の下で経営を行なうと、専門メーカーの早い動きに追いつかず、スピードに段違いの差が出てしまう。また、人の育て方にしても、顧客との接し方などがまったく異なり、富士通の大きなビジネス向けの育て方とは別のものとなる。PC、携帯電話、HDDの事業は、それぞれを1つのインディペンデントな会社として考え、キャッシュフローの範囲内でそれぞれに投資判断をし、事業にあわせた仕事のやり方をしてもらって構わない、と担当役員には話している」とした。

 さらに、「利益をあげることが重点課題だといっているが、もう生きていくことはできるという段階にはある。これからは、利益をあげるだけでなく、利益を高めるにはどうするかを必死に考え、その手を打ってくれ、と言っている。低い利益率をどう高めていくかが課題である」とした。

 2005年度におけるユビキタスプロダクトソリューション事業の営業利益率は3.3%。テクノロジーソリューション事業の5.5%や、デバイスソリューション事業の4.0%に比べると、営業利益率が最も低い。

●市場の変化に対応できる体質を

 「ユビキタスプロダクトソリューションの2005年度における利益構造は、前年度に比べて、価格低下の影響で約1,000億円利益が減少したのに対して、物量の増加で約300億円、コストダウン効果などで約700億円をプラス効果とし、前年度の313億円から、344億円の営業利益となった。事業環境の変化に対応できる体質を維持し、キャッシュフローの範囲内で成長を実現していく。クオリティ、コスト、デリバリーのさらなる追求をテーマに取り組むことで、利益の成長につなげたい」とした。

PCビジネス。差別化製品、SCM高度化を追及

 PCビジネスに関しては、日本では第2位、全世界では第5位のシェアであることを示したながら、「2005年度は825万台のうち68%が海外。2006年度は900万台の出荷を見込み、そのうち70%が海外になる。まだまだ厳しい状況にあるビジネスだが、世界で認められた革新的な製品の継続的な投入、セキュリティ機能の拡充やAV機能の強化による差別化、“Made in Japan”によって実現する最高品質の製品の提供を差別化策とする一方、SCMの高度化も追求する」とした。


携帯ビジネス。先進技術と独自製品を核に、将来のPCとの融合商品へ

 一方、携帯電話ビジネスについては、「なぜ、富士通が携帯電話端末事業をやっているのかという質問を受けることが多いが、近い将来には、携帯電話とPCとが融合した商品の開発へとつながっていくと考えており、それが事業を行なっている最大の要因だといえる。無線コア技術やプラットフォーム技術を独自開発する一方で、Symbian OSの採用により、同じく同OSを採用している三菱電機などの連携強化を進めている。自社独自の先進技術と、共同開発による技術の組み合わせによって、事業を推進していく。らくらくホンなどの独自製品によるビジネス基盤の確立とともに、IP技術やWiMAXと連携させた、富士通らしい利用シーンの創出などにも取り組んでいきたい」とした。


HDDビジネス。高品質ブランドの確立、First to Marketの実現

 さらに、HDD事業に関しては、2001年度にデスクトップPC向けの3.5インチHDD事業から撤退したことで、一時的に業績は悪化したが、その後、企業向け2.5インチおよび3.5インチHDD事業と、モバイルPC向け2.5インチHDD事業に集中したことで、業績が回復。いずれの分野でも業界第2位のシェアを獲得している。

 「この分野では、これからも厳しい戦いが続くだろう。だが、生産ラインの拡充や、生産能力の増強、1.8インチHDD市場への参入、独自の先進技術開発などによって、高品質ブランドとしての位置づけを獲得したい」とした。

 2006年度のユビキタスプロダクトソリューション事業は、売上高は前年比9%増の1兆1,600億円と成長を見込んでいるが、設備投資が前年の194億円から、今年度は300億円へ拡大することから、営業利益は44億円減少の300億円、営業利益率は2.6%へと縮小する見込み。

 「だが、市場の変動リスクを常に吸収できる体質へと強化することが大切であり、設備投資も将来の成長のためには必要」として、一時的な営業利益率の縮小を見込みながらも、ユビキタスプロダクトソリューション事業の体質強化を優先させる姿勢を示した。

事業環境の変化に対応できる体質を目指すユビキタスプロダクトソリューションの業績目標

□富士通のホームページ
http://jp.fujitsu.com/
□関連記事
【2005年5月25日】富士通、黒川社長が経営方針を説明
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0525/fujitsu.htm
【2005年5月25日】富士通、黒川社長が経営方針を説明
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0607/wc.htm

(2006年6月9日)

[Reported by 大河原克行]

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