JAMSTEC一般公開レポート ~しんかい6500など、海洋研究機材を多数展示
5月20日公開
5月20日土曜日、独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の横須賀本部にて一般公開が実施され、多くの家族連れ等で賑わった。
JAMSTECは海洋に関する調査を幅広く行なっている研究機関だ。海洋における地球環境や海洋の生命圏、海洋底の地殻変動など研究内容は多岐にわたっている。「地球観測研究」、「地球環境予測研究」、「地球内部ダイナミクス研究」、「海洋・極限環境生物研究」の4つの重点研究と、「海洋に関する基盤技術開発」、「シミュレーション研究開発」の2つの重点開発を中期計画として策定、推進している。
一般公開ではお馴染み研究内容のパネル展示のほか、岸壁では海洋調査船「かいよう」、「淡青丸」の公開、潜水調査船整備場では「しんかい6500」、「しんかい2000」などの実機公開などが行なわれた。主だったものを簡単にご紹介する。
本誌読者ならばスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」はご存じだろう。地球シミュレータはJAMSTECの管理下にあるので、その関連展示もあった。
地球シミュレータのプロセッサは2×2cmの大きさに6,000万素子を集積し、0.15μの配線で繋いでいる。これは髪の毛1本に約530本の配線ができる太さだという。なお、本体は横須賀本部ではなく、横浜研究所にある。
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地球シミュレータの模型 |
地球シミュレータAPモジュールそのほか |
岸壁では海洋調査船「かいよう」ほかが一般公開されており、中に乗り込んで実際に様子を見ることができた。「かいよう」は半没水型双胴船という特殊な形をした船で、もともとは300m飽和潜水技術「ニューシートピア計画」のための海中作業実験船として建造された船だそうだ。
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海洋調査船「かいよう」。長さ62m、総トン数3,385m、乗員数60名 |
「かいよう」配置図 |
「かいよう」コクピット |
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海底地震計「OBS」。ガラス球内部にDATレコーダー、センサー、バッテリが入っている。重さはアンカー含めて97kg。海洋調査船「かいよう」には100基ほど積まれているそうだ |
「かいよう」に搭載されているエアガン。水中で高圧の空気を放出して人工地震波を発生させる装置 |
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深海総合研究棟では「かいよう」で採取したエビを生きたまま展示。深海500~1,000mに生息している浮遊性のエビでプランクトンなどを食べている |
そのエビなど深海生物を生きた状態で飼育するための保温保圧型深海生物捕獲飼育装置「ディープアクアリウム」。水深2,000m相当の水圧で生物を飼育できる |
海洋研究棟では海洋観測関連機器などが展示されていた。海洋観測装置「アルゴフロート」は、圧力・水深・塩分センサー、送信用アンテナが装備されており、海の実測データを衛星経由で地上局に送信する機械だ。通常は水深1,000m程度のところを漂流しており、10日に一度、2,000mまで潜行する。そして水温や塩分を観測して浮上し、データ送信後、再び沈降する。いわば観測ロボットである。「ARGO(アルゴ)計画」で用いられている。
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海洋観測装置「アルゴフロート」 |
それをマッピングした図。Google Earthが使われていたが、あくまで一般向けデモ用とのことだった |
潜水調査船整備場では「しんかい6500」、「しんかい2000」などの実機公開などが行なわれた。しんかいは有人深海調査船で、'81年に作られて2003年に引退した「2000」は2,000mまで、'90年に開発された「6500」は6,500mの深海まで潜ることができるように設計されている。しんかい6500の動力源は酸化銀亜鉛電池で8時間駆動。1回の潜行で人件費含めて1,000万円程度かかるそうだ。
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前部にある覗窓 |
油圧駆動のマニピュレータ部 |
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有人潜水調査船「しんかい6500」。しんかい2000よりも少し細長い |
最大潜行深度6500m。乗員数3名。長さ9.5m。空中重量25.8トン |
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しんかい6500の前部 |
前部のカメラ群とマニピュレータ |
マニピュレータ基部についている茶色のブロックは浮き |
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マニピュレータ先端部分。70kgほどの物体を掴むことができる |
覗窓にカメラを押し当てて覗いてみた内部はこんな感じ |
クルーの潜行服。しんかいのなかには暖房器具はないため、寒さと火災の危険から乗務員を守る |
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携帯トイレ |
バラスト。浮上するときに海中に捨てる |
覗窓のカットモデル。アクリル製で、水族館の大水槽などに用いられているものと同じだという |
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持ち帰った生物サンプル |
岩石サンプル |
潜水シミュレータ棟では、深海の高圧環境を再現する潜水シミュレータが公開されていた。水深500mまでの環境を再現できる。潜水医学研究や、潜水作業の安全基準作成に用いられる。
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潜水シミュレータ。このなかにダイバーがこもり、深海の高圧環境を再現して生活する |
内部を覗いて見ても、まるで宇宙ステーションのようだ |
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サルベージ作業で用いられるヘルメット式潜水器。これだけで重さ20kgもある |
子ども向けにカップ麺容器の加圧実験も行なわれていた |
潜水訓練プール棟では、深さ3.3mのプールを使った潜水訓練の実演のほか、水中ラジコンのデモンストレーションなどが行なわれた。ラジコンはJAMSTECそのものの研究として行なわれているわけではなく、ラジコン潜水艦の愛好者集団「アクアモデラーズ・ミーティング」ほかによるボランティア(自腹)参加だそうだ。水中ラジコン、ロボットなど、水中ビークル全般に親しんでもらうことを狙いとしているという。
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ヘリコプターからの脱出訓練 |
プールのなかを覗き窓から見るとこんな感じ |
日本ラジコン潜水艦普及委員会のサイトや、アクアモデラー・ミーティング“自由プール試験”ホームページでは会場で流されていたプロモーションビデオを見ることができる。
潜水艦だけではなく、水中を無重力空間に見立てた宇宙船のようなモデルが水中を自在に舞う様子は一見の価値がある。会場では整理券を配り、多くの人たちに操縦させていた。一般の方々にはかなり受けていたようだが、JAMSTECの研究との関係などが分からず、そもそも何のために水中ラジコンがデモしているのか今ひとつ分かりにくかった点は残念。
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水中ラジコン。一部市販品もあるが、ほとんどがユーザーの自作だそうだ |
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8/27日に「船の科学館」にて開催される艦船模型の祭典「水ものフェスティバル」では「第2回・オレっちのノーチラス号コンテスト」が実施されるそうだ |
ペーパークラフト。帽子にして頭にかぶっていた子どももいた |
海洋科学技術館では、しんかい6500の実物大模型のほか、生き物ペーパークラフト教室などが開かれていた。ペーパークラフトはJAMSTECのウェブサイトからダウンロードできる。
□JAMSTECのホームページ
http://www.jamstec.go.jp/
(2006年5月24日)
[Reported by 森山和道]
PC Watch編集部
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